「若草物語」対「若草物語」

2018年8月19日 08:53

　ルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』（Little Women)は、何度も映画化されている。ストーリーは決まっているので、あとは俳優の演技だけの勝負になる。
　ここでは、最もよく知られている2つの作品、1933年(下の写真）と1949年（上の写真）を比較することにしよう。

　最初に、3女のベス（エリザベス）（49年では4女）。音楽の才能がある恥ずかしがり屋。
　33年ではジーン・パーカー（上の写真で右から2人目）、49年ではマーガレット・オブライエン（タイトルバックの写真で一番左）。　
　天才子役オブライエンが相手では、誰であろうと勝ち目はない。それに、パーカーのベスはポヤットした感じで、魅力に欠ける。文句なしに、マーガレット・オブライエンの勝ち。

　ピアノを贈られた礼を言いに、恥ずかしがり屋が勇気を出して、ローリーのおじいさんの大邸宅に行く場面。熱を出して倒れてしまう場面。ダンスパーティを階段から見る場面。どれも、印象的。

　つぎに、長女のメグ(マーガレット）。
　33年では、フランシス・ディー（上の4人の写真で一番左）。49年ではジャネット・リー（タイトルバックの写真で左から2番目）。
　やはり大女優リーの勝ちということになるだろう。
　ただしこの2人で、メグの性格付けがかなり違う。リーのメグは、頼りになる長女だ。それに対して、ディーのメグは少し頼りない。
　しかし、頼りないところがいい場面もある。ジョン・ブルック（ローリーの家庭教師）の訪問を受けてしどろもどろの応対をするところ。とてもよい。

　４女のエイミー（49年では３女）。33年ではジョーン・ベネット（上の4人の写真で一番右）、49年ではエリザベス・テイラー（タイトルバックの写真で一番右）。
　これは、大女優同士の衝突だ(ベネットは日本ではあまり良く知られていないが、アメリカでは人気女優）。「エリザベス・テイラーは大根役者」と思っている人は、この映画で若き日のテイラーのすごい演技力を見て、驚嘆するだろう（とくに表情）。
　場面ごとに見ていかなければ。

　子供たちがやる演劇の場面のお姫さま役。ベネットの勝ち。　
　先生に叱られて教室の外に出てきて、間違いだらけの英語でタンカを切るところ。2人とも素晴らしいできだが、どちらかというと、ベネット

　ダンスパーティーで、階段から眺めるところ。

　　ローリーのおじいさんに見つかり、エイミーが奇妙な英語を使って応対する。どちらも素晴らしい演技。

　メイおばさんに連れられて、ヨーロッパ旅行に旅立つ（実は、ヨーロッパ滞在中のローリーに会いに行く。つまり、ジョーの恋人を奪いに行くわけだ）。出発直前に、ニューヨークにいるジョーに会いに行く。メイおばさんにせかされて、部屋をでる。出がけに振りかえる。2人は、お互いの運命を了解しあったのである。
　この時のエリザベス・テイラーの何とも言えない表情！

　結局のところ、ベネットとテイラーは、引き分けといわざるをえない。

　最後に、主人公である次女ジョー(ジョセフィーン）。33年はキャサリン・ヘプバーン（上の4人の写真で左から2番目）。49年はジューン・アリソン（タイトルバックの写真で右から2番目）。これも大女優同士の衝突。場面によって判断しなければ。

　最初の場面。メイおばさんの家に掃除に行って途中で逃げ出す場面。これは文句なしにヘップバーンの勝ち。

　ローリーのおじいさんの大邸宅を訪れる場面。アリソンも悪くはないが、やはり超大女優ヘプバーンにはかなわない。早口でまくし立てるところ、すごい迫力。帰りがけに、ふり返ってローリーを見て肩をすくめる。これなど、ヘップバーン以外の女優では誰にもできない仕草だ。
　ダンスパーティーでローリーと踊るところ。どちらもよいが、僅差でアリソンの勝ち。

　プロフェッサー・ベアがゲーテの詩を朗読するのを聞くところ。どちらも良いが、アリソン。
　プロフェッサー・ベアとオペラを見に行って、帰ってくるところ。これもどちらも素晴らしい演技だが、僅差でアリソンの勝ち。
　このように、シーンごとに見ていくとジューン・アリソンが勝ちの場面が多いのだが、全体として見てみると、やはりキャサリン・ヘプバーンの存在感がすごい（彼女はこの時すでに、オスカー女優だった）。

　では、映画全体ではどうか？
　どちらも捨てがたい。こういう時こそ、「ローマの休日」の名せりふに登場して貰おう。

　Each, in its own way, was unforgettable. It would be difficult to ・・・.　

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