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どうでもいい話(2023年 8月分)


線維筋痛症と私⑫

直接の関連性は不明だが、持病を発症する数年前の20代前半、心療内科に1年半程 通っていた。

幾度かちょろっと触っているが、不眠 と 薬物依存。

薬物と言っても一般の薬局で買える解熱鎮痛剤。合法だからね、一応ご安心おば。

もともと精神も体質も何かに依存し易いタチだもんで、一度ハマると、なかなか自力で止められない。

最初のキッカケは、仕事中に酷い頭痛に見舞われた事。

休憩中に薬局で30錠くらいの小さい箱を買い、服用したのが始まりと思う。

薬飲んでも なかなか治まらなくて、お店に立ってるのが凄く辛かった。
独りだから、だれかと代わってもらうって事も出来なくて。

以来、頭が痛くなるのが怖くって、頭痛は痛くなる前に薬飲まないと効きが悪い、とも聞くしで、痛くもないのに鎮痛剤を常用し始めた。

最初のうちは、4~5時間開けて一日3回まで、を守っていたんだけど…

一日に4回飲むようになって、小一時間置きにバックヤードで水分補給する ついでに飲むようになってて。

100錠入の大箱が1週間もたないんだ。

その頃には流石に自分でも「何かが、おかしい」と、思い始めていた。

「止めなきゃ、止めなきゃ」て思いながら多重連用を続け、1年が計画。

もう、自力で止められるなんて、出来なかった。

これって、精神的なものだよな…

精神科はちょっと敷居が高くって二の足を踏んでいたんだが。
幸いなことに、最寄り駅から心療内科の看板が見えて、意を決して予約をしてみた。

心療内科の問診票って、内科や眼科と違って、なんて言うか特殊で、複雑性に富んでいる。

3枚くらいあったかな、図式に家族構成を描き込む欄とかあって、ちょっと困った。

だって私、家出人なんだもの。

──まぁ、ここで謀るのも、おかしな話だよな…

私の周りに親兄弟を描いていく。

血筋の父母は離婚、姉二人は嫁ぎ、母親は再婚、実父と義父の事は分からず、私はパートナーと同居中。

一応、正直に描こうと頑張ったものの、欄を大きく外れるわ、小ちゃい字になるわ。
地味にややこしい。

家族の事 聞かれたら、嫌だな…

もの凄く嫌だ、と思いながら、窓口に問診票を提出したのを覚えている。

呼ばれてドアを入ると、診察室も普通の病院とは雰囲気が全く違った。

大きなテーブルを挟んで薄ピンクの白衣の女医さんが座っていて、内装も落ち着いたトーンの木製のもの。

パッと見、純喫茶を思わせた。

席に座ると女医さんが分厚い入口のドアを締め切って外部と遮断。
耐熱ガラスのカップに、ハーブティーを注いで出してくれた。

ふうっと湯気を切り一口すすると、ふわっと優しい香りにホッとした。

だってさ、緊張するじゃない、初めての心療内科とか。

女医さんは問診票をペラペラめくって、いくつか症状だとか今の仕事だとか話をしたけれど、家族についてだけは聞いて来なかった。

何だろう、書き方にも「聞いてくんな」オーラが漂ってたんだろうか…

何にせよ、聞かれなくて良かったと思う。あの頃は。

とりあえず長年抱える不眠より先に、止めたい鎮痛剤の根本、頭痛の相談をした。

ズキーンッ!と一部に走る痛みでなくて、こう、頭全体がぎゅうって…

「タガで締め付けられる様な痛み?」

「あ!そんな感じです!」

頭全体が絞られる痛み。

一番最初の頭痛はズキーンとしたものだったから、偏頭痛と思われるが、その後発生した頭痛は “緊張型頭痛” と言うらしい。

ストレスを感じると発生し易い、ごく一般的な頭痛。

ストレス?ストレスかぁ…

そう言われてみれば、頭痛が起き易くなった時期と、初めて役職を貰った時期が合致している。

特に嫌いな接客を嫌々やっていたのも有るし、仕事をキチンとこなしたい自分のサガと、知らずのうちに のしかかる期待に応えなければ、という想いと、私生活でも行き場の無いストレスの捌け口が分からなくて もがいていた。

趣味の一つも有ったら良かったんだろうけど、当時の趣味は仕事一択。

パートナーにも私が創作する人間だとは伝えていなかったし、大っぴらに絵を描いたり物語書いたり出来てなくて、頭の中に溜め込むばかり。

精神は子供のまんまなのに 大人社会に出ていってしまったから、やり方が分からないまま、色々と抱え過ぎてたんだと、今は思う。

普段接客で接するビジネスマンの方々だって、思うようにはならない人生と戦って立派に飯を食ってると言うのに、なんたるザマだろう。

私の人生振り返ると、逃げてばかりだ。

おっと、脱線。

その頃には鎮痛剤も効きづらくなっていたので、薬名はド忘れしてしまったんだが、少量の抗不安薬が処方された。

うぅ…コレって、精神薬になるのかな…??

正直、飲むのが怖かった。

仕事中に飲むのは何が起こるか分からな過ぎて怖いんで、次の休みの日に飲んでみる事にした。

あの日は確か、親友らと久々に遊ぶ約束していて、半島の方へ電車で遠出したんだっけな。

薬の所為か遠出の所為か分からんが、自分でもドン引くくらいヤベぇテンション爆上がりだったのを覚えている。

とりあえず、テンション上がるだけなら大丈夫と思い、翌日からは仕事中にも飲むようにした。

ちゃんと医師に処方された薬が有ると、市販の薬は飲み合わせ分からなくて怖いっていうのも有り、鎮痛剤は飲まなくなった。

こうしてね、お医者さんに相談したら割とすんなりスパッ、と 止められたんですよ♪

余談であるが、その当時の最後に買った100錠一箱の解熱鎮痛剤が、度重なる引越しに付いて回り、先日の『積年の親不知』で私を助ける事になった、という。

不眠に関しては困った。

睡眠導入剤を処方してもらったんだが、当時の私にはキッカリ8時間効くんだよ。

飲んだ瞬間からの8時間じゃないんだ。
眠った瞬間からの8時間。

夜行性だもんで私、寝入りが凄く悪いんだ。

お薬飲んで 布団に入って 部屋真っ暗にして 目をつぶっていても、全然 眠れる気がしない。

寝付くまで2時間はかかるんだ。

慣れない最初の頃は ほとほと困った。
だって、目が覚めると出勤の時間だったりするんだもの。

「ぎゃああああッ!!?」

て、毎朝なってた。

3分間で身支度し終わる妙なスキルを手に入れましたよ(遠い目)
今は出来ないけどw

不眠に関して現在は、ベルソムラ・クエチアピン・エスゾピクロン・リフレックスを処方されている。

リフレックスは動悸がしちゃって うっさくて逆に眠れなくなるから、飲まない時が多い。

それでも眠れないから、数ヶ月前からネムラボというサプリも飲み始めてみた。

驚くことに、小一時間で眠れるんだよ。助かる。

3~4時間で目が覚めちゃうんだけどね。

最近は お腹一杯ご飯食べると強烈に眠くなる事に気付いた。
大体1時間は昼寝しちゃう。

これだけ眠れれば、結構 快調♪

私 若干、ショートスリーパー入ってるんじゃないかな、て 今は思ってる(笑)

⑬に続く──

シーン・ビジネス⑫

ワイシャツの需要は何も、ビジネスや冠婚葬祭に限った事では無い。

衣装としての役割も、その一つ。

ドラマやニュース番組にも欠かせないワイシャツであるが、T店所属時遭遇した ちょっぴり特殊な需要を、語ろうと思う。

T店は郊外に当たるが最寄りは終点駅、主要な乗り換え駅として そこそこ栄え、繁華街も入り組んでいる。

あの日は閑散期だったかな、いつも通り独り遅番で店内清掃に勤しんでいた。

「いらっしゃいませ~♪」

入店されたのは一名様、若いキャピッとした女性の方。

直ぐに声を掛けないのが、私流。
いつも通~り、忙しく掃除をしているフリをして、横目に様子を伺っていた。

彼氏さんにでもプレゼントかな?

レディース側は見向きもしないで、つま足は完全にメンズの壁面棚に向かっている。

あ、コレね、接客テクニックだよ。

“つま先が垂直に商品に向いていたら、興味の有る印”、“水平に向いていたら、興味が薄い印”、覚えておくと、結構 使えるよ。

ふと、頭が左右に振れた。店員を探してるんだ。

気になる商品が決まったみたい、行こう。

「サイズお探しですか?」

「あ!あの!コレの おっきいサイズ有りますか!?」

「こちらはLLまでなんですが、首周りは どのくらいですか?」

「分かりません!おっきければ おっきいほど良いんです!」

おっと。

まあ、サイズが分からないってのは、プレゼントには付き物だ。
大柄な方なのかな。

「こちらだと首周りが43cmで、袖丈が82cmと86cmを ご用意しております」

私は説明しながら商品山の一番下から大きなサイズを引き抜いて、パパッと畳を開いて平什器に置いた。

「えー、分かんないなあぁ(汗)試着とか、出来ますか?」

「出来ますよ、お連れ様ですか?」

「私です」

おっと。

当時は まだまだ全然ジェンダーレスの入口にも入っていない。
メンズを着られる方も中には居たけど、まだまだレアケース。

メンズとレディースの区別の付かないお客様も多い。
女性の方は明らかS。お胸が有るからMかもしんない。

日本規格のメンズとレディースとでは、およそ2サイズ変わる。
LLだと4L換算になる。

「コレはかなり、大きいですよ」

一応、羽織って貰って納得頂いてから、代替品を ご案内しようと思った。

ボタンを外して、広げ腕を通して貰い肩に掛けた。

「すみません、コレ、おしり隠れてます?」

──えッ???

「あ、いや、ギリギリですが…」

多分、私の頭上に?が飛び散っていたんだと思う(遠い目)

お客様は当たりを少しキョロッと見回して、片手を口元に当てたので、私は思わず耳を傾けた。

別に他に一切お客様が居ないと言うのに、コソコソ内緒話である。

「実はですね、お店の制服が白のワイシャツ一枚なんで、ぱんつが見えない丈のが欲しいんです」

──ぁあ!!!そういうこと!!!

ようやく合点が行きました。

アレです、彼シャツ。
多分、彼シャツ コンセプトの お店勤務なんです。

「だと短いっスね!全然、ぱんつ見えちゃいます!」

ウッカリ、普通の声量で答えちゃった。他に お客様が居なくて良かった、本当に。

「あ~…そっかぁ…」

「あ!ちょっと待って下さいね!」

シャツの袖丈と着丈は比例する。

イレギュラーにも既製品で対応出来るよう、袖丈の長いロングサイズ、3L4Lのキングサイズも用意してある。

イレギュラーサイズのサイズ表を確認すれば、やはり袖丈90cmのLから4Lまで着丈は同じ、一番長い。

サイズ的にはMでも おっきいくらいだけれど、残念ながら88cmまでしか無く、着丈も数cm短い。

私は手の届く白系のL90のシャツと、サイズ表を持ち、お客様の元へ走った。

「こちらですと、着丈は一番長いです。羽織ってみますか?」

「良かった!お願いします!」

折角だから、ご自身で ぱんつが見えないか確認して頂くべく、全身鏡の在る試着室に ご案内して、扉を静かに閉めた。

その間に私は、他に白系のイレギュラーが無いか、脚立に登って一番上のボックスから順に、裏側を向いて入ってる商品を確認する。

白系のシャツは汚れが着かないように、ロゴ付きの透明ビニール袋に入っている。

なんで、上の方の色柄の下に向後に挟んでおく場合が多い。

いくつかピックアップして、近場の半棚什器に置いた。

──ガチャリ。

「お疲れ様です、いかがです…か…」

「ちょっと、見てもらって良いですか(小声)」

試着室の扉から頭だけ出した お客様に、手招かれた。

おっとぉ…

試着室の扉の隙間から覗いてみれば、見返り美人に振り返り腰を…まあ、アレでした。

「大丈夫です!バッチリ、見えてません!」

「大きさは、も少し大きくても良いかなあ…」

シャツの裾をピラピラさせて ご確認される、お客様。

う~ん、私的 好みだと、ゆる過ぎな気もするけど…

まあ、お店に行かれる お客様の好みも分からんしな。

折角なので、残りの3サイズも試してもらった。

4Lとか もう、もう1人スッポリ入れちゃいそうだったけど、お客様的には「コレで良い」と言う。

身幅はさておき、お袖が いい感じに萌え袖になってて「 d(≧▽≦*) 」です。

「じゃあ、この着てる白いのと…他にも有りますか?」

地味に、全部 微妙に織柄の違う商品。お客様は気付いていない。

「コレは織り方が微妙に違っててですね、こう、光に当たると柄が出るんです」

私は自分の着ていた白織柄のシャツを摘んで、店内照明に照らしてピラピラしてみる。

「あ!本当だ!」

試着室から出られた お客様は、什器に仮畳みしておいた他のシャツを ご覧になられた。

「じゃあコレ、全部下さい!」

oh。

「ありがとうございます!」

サクサクッと決まり、私は商品をレジカウンターに運んで、試着室から お客様が出るのを待った。

「他にも有ります?」

「ううん…他は全部、色が入っちゃってますね」

イレギュラーサイズは種類が少なく、ストックも無く、店頭に全出し。

残念だ。非常に、残念だ…

あ、そうだ。

「うちの お店ではやってないんですが、M店とかI店だと、パターンオーダーも承ってます」

生地見本から選んだ生地で、首周り袖丈を選んで作れる、セミオーダー…と言えば、伝わるかしら。

着丈は選べないんだが、既製品と同じで袖丈に比例する。

料金は一枚あたり倍くらいになって仕上がりまで1~2週間頂いてしまうが、一応、ご案内した。

「ショップリストも ご一緒しておきますね♪」

「わ!ありがとうございます♪」

なんて気持ちの良い…
こんな可愛い良い子が居る お店ならば、足繁く通いたい…

だなんて邪念を抱きつつ、お品物の詰まったショップバッグを手渡した。

「また入荷します?」

「しますよ♪」

通常、販売した商品は同じ物が入荷するのだが、イレギュラーは生産数が少ないので同じ枚数、別の商品が入荷する場合が多い。

早ければ3日後には売れた枚数が入荷、長くても1~2ヶ月程すれば回転する、と お伝えした。

数日頂ければ、倉庫に白メインで発注も出来るし。

「お店で用意してもらった制服が、短くて困ってたんですよ~、他の子にも教えてあげよ♪」

「わぁ✨ありがとうございます~♪」

こんな感じで、その日の接客は終了した。

そういえば、ひと月くらい前に、カタギっぽくないベストのホスト系お兄様が、レディースの白シャツXLを大量に買われたり、別の似たような雰囲気の方が、やはりレディースを買われて行かれたけど…

お店の幹部だったのかしらん。

前者の方は2回くらいご来店されて結構 話し込んだんだけど、「飲食関係のスタッフの制服」だけじゃなくて、お仕事内容まで教えてくれてれば…

まぁ、流石に言い難いよね。
こればっかりは察しようが無い。

「昨日、予算行かないと思ったのに、すごい伸びたね!」

「そうなんスよ~♪実は…」

早速、翌日店長と同じく遅番のK君にも、彼シャツ需要の話を共有した。

ほら、私 居ない時に再来店されても、他のスタッフが やんわり知ってれば、まだるっこしい事ないじゃない。

後、本当に他のスタッフさんにも紹介して下さってて買いにいらしてくれたり、先の女のコさんは月イチ常連様ペースで ご来店下さったり、ドカッと お買い上げ下さるので、ありがたかったです♪

⑬に続く──

中学ひとコマ②

しつこいほど言ってるが、私は運痴である。

中学は確か3年間、体育祭の出番を減らす為だけに、放送委員に属していた。

体育祭の無い時期の お仕事は、全校集会の演台やマイク装置を設置したり、体育館の袖に登ったところにあるブースで音響調節をしたりなど。

かなり楽しい。

古臭くレコードなんかの再生機器が存在した学舎の放送室では、学級もちまわりで お昼の校内放送なんかもやってた。

しつこいほど言っているが、私は馬鹿な上に阿呆である(現在進行形)

放送委員は大概 同じメンツになった。

仲良し お馬鹿男子達&私。
当番の時は、放送室で給食を食べる。

あのメンツに、歯止めの利かない悪ノリを止める良識の有る人間なんか、居ない居ない。

お昼の校内放送は“歌詞の入った歌謡曲はダメ”という、ルールだった。

時折 生徒からリクエストが有らば、8cmのシングルCDを借り カラオケの部分を流すんやが、味気無い。

平常時は放送室の備品のオルゴールやクラシックのCDから2曲くらいピックアップするんやが、毎日のものだから必然的にネタも尽きる。

「飽きたね」

「飽きたね」

同じ曲ばかりでは皆も飽きよう。
私達は、まだ他のクラスの放送委員が流していない曲を探して、スチール製の戸棚を ひっくり返していた。

「お!何コレ!?」

一人が見つけたのは、効果音の特集CD。
恐らく演劇部の物だと思われるが、あまり使われた形跡も無い。

裏面には びっちり、色んな効果の名称が連なっていた。

「──こんなの有んの!?」

「何コレ!?面白い!!!」

用途も不明な効果音なんかも載っていて、我らがアドレナリンは頂点に達していた。

こんな面白い事、全校生徒にも教えてあげなくちゃ!

中でも爆笑したタイトルを、その日に流す事にした。

♫…テ~レレ~レレ~、テレ~レレ~レレ…

始まりのBGMを絞り、放送のテンプレを読み上げる。

「こんにちは、お昼の校内放送の時間です。今日の曲目は…」

曲目、で合ってんのか???

「『演劇効果音』より、『トイレの音』です。どうぞ」

じゃあああぁ…と、水流の流れる音が響いた。

「…ッ!…ッ!…ぶふッ!」

真面目なフリして読み上げてたけど、吹き出しちゃったよね。

そりゃあもう、放送室内 大盛り上がりで皆で腹を抱えて爆笑した。

凄く楽しかったもんで、その日から一週間ぶっ通しで 謎な効果音と『トイレの音』を流し続けた。

そして──

放送委員の顧問教師に呼び出しを食らった。

かなり、不評だったらしい。
少し考えりゃ、分かるんだけどさ、ご飯の時間なんだし。

ほらさ、放送室って隔離されてるから教室の様子なんて、分かんないじゃん?

爆笑の渦かと、思い込んでたんやがなぁ(遠い目)

「効果音CDは演劇部の物だから、使用禁止!」

元凶のCDまで、取り上げられちゃいましたよ。ちゃんちゃん。

シーン・ビジネス⑬

バイト時代は立地もあったが、店長と仲の良い本社の方々が しょっちゅう ご来店された。

よく分からんが、年配の方に気に入られ易い体質の私は、もれなく その方々にも気に入って貰えて。

「じゃあ、ちょっと店長借りるね♪」

「行ってらっしゃ~い!」

店長は良く おじさま営業のM氏と、SVのO氏に連れ去られていくんやが、その後ろ姿を見送る私には何故か『ド○ドナ』が聞こえていた。

多分、店長は自分をガツガツ売り込むタイプの方では無いから そういう時に話す事 無くて、私の話ばかりしちゃってた所為だと思う(遠い目)

私が色々と勝手やっても大半は「いいね!」て賛同してくれるし、「こういうの、作って!」て依頼される事 多かったし…

いや。

「○○さんが遅番の次の日は『今日はどんな事されてんのかな~♪』て、毎朝 出勤が楽しみなんだ♪」

て言われた、アレ。

当時の私はストレートに受け取って喜んでたんやが。

遠巻きに「余計な事してんじゃねぇよ」って 圧だったら、どおしよう(今更)

さておき。
私が入店してから約半年。

最初に採って下さった営業S女史は、本社に新しく出来た販売促進部門を一人で担われていた。

あ、この方が本社で色々と私の事を喋ってる可能性も有ったな。なんか知らんが、気に入って貰えてたし。

こういう面では、私は人運に とても恵まれていたと思う。

販促部から、イーゼル一脚とB2サイズのアルミ製の額縁2枚、ポスター数枚が店舗に届いた。

今後、セールや季節には専用ポスターが全店に届くのだという。
T店は先行テスト掲示。

「おはようございま…え、何コレ!? 何コレ!?」

そりゃあもう、初めて見るイーゼルに新品の額縁に、出勤しなテンションMAXな私。

「○○さんが来てから組み立てようと思って♪やりたいでしょ?」

「こういうの、好きだと思って○○さんの為に とっておきました♪」

て、店長✨ななこりん✨

ちょうど その日の入荷商品が、店頭出し終わったところで、後回しにしていた備品類が残ってただけなんだけど(笑)

私の為に好きな作業とっておいてくれたって言われると、俄然やる気が出ちゃうよね。
人心掌握術が巧みすぎだよ、二人とも。

早速、イーゼルのパーツを出して、パーツを棒の てっぺんから差して、
三脚を広げて立ててみた。

「「おおお~✨……ぉお?(一同)」」

小さい。

「なんかコレ、小さくない?ですか?」

「なんか、小さいよね…」

イーゼルの上下の額縁を押さえるバーの距離が、めいっぱい伸ばしても額縁は入らない。

イーゼルの規格は分からないが、明らかワンサイズ小さかった。

「え、サイズ間違っちゃんスかねえ(汗)」

とりあえず挟んで額縁を固定するのは諦めて、下段のバーに立て掛けて店頭の立ちトルソーの前に置いた。

イーゼルは一脚、額縁は2枚。

「もう一個の額縁、どうします?」

「置くところ無いし、あそこに掛けられないかな?」

私は、店長が指差した先を目で追った。

…………oh。

そこは、床から3mはあろうかという、レジカウンター後ろの白壁だった。

横には数段のガラス棚が在りディスプレイスペースだが、店舗の中心に向かって味気無い柱が広がっている。

確かに、幅的には額縁サイズなんだけど…

無茶言うな。

と 思ったのは、内緒だ。

ちょっとばかし旧式で、組子になってる額をネジで留める仕様。

中身を差し替える為には額縁を開かないといけないんだが、開けるためには額縁を手元に下ろして、プラスドライバーでネジを外さなければならない。

壁にフックを付けて付属のヒモで引っ掛けちゃうのが、楽なんだけど…

「このくらいッスか?」

私は試しに両手で額縁を掲げ、柱に添えてみた。

「もっと上~」

「こ…このくらいッ…スかッ?」

背伸びして額縁の下ーの辺りを掴み、めいっぱい掲げてみた。

「もっともっと上~、てっぺん辺り~」

MAJIKA。

3mの柱の てっぺんじゃあ、5段脚立の頂点に立って作業せねばならなくなる。

私が居る時に掲示物が替わるなら問題無いんだが、他のスタッフも出来ないと…となると、安心安全に作業出来る環境じゃないと。

「うぅ~ん…ちょっと この紐じゃあ、短いッスね…」

「紐が見えちゃうと見栄え悪いし、テグスとかじゃダメかな?」

「テグスかぁ…」

アルミ製の額縁だけど、流石にB2サイズあると そこそこな重量になる。

よくある手芸用のテグスじゃあ、耐久性が不安だ。

壁にフックを取り付けるにしても、両面テープ式のでは壁紙ごと剥がれ落ちるかもしれないし。

壁にネジ式のフックを取り付けられたら、安心なんだけど…

この壁って、館のじゃないよな?
ネジ刺しても良いよな?

──ていうか、そもそも この壁の素材は、何??? 穴、開くの???

穴が空いたとしても、もしも石膏ボードだったら、耐久性が不安過ぎる。

コンコン…

ノックしてみると、思いの外 軽い反響音がした。

コレ、石膏ボードなんじゃあ…

「ちょっと覗いてみます」

柱の上部は天井と接してはおらず、人一人分くらい隙間が在った。

私は8段脚立をバックヤードから引っ張り出して、レジカウンター内にガシャッと設置した。

頂点まで上ると、頭一つくらいは柱の上部を覗ける。

「うわッ!」

「大丈夫ー!!?」

「ホコリがヤベぇッス!」

流石にね、商品の無い所までは煤払いしてなかったからね。
恐らくオープン当時から降り積もったフワフワがね。

店長にガムテープを取ってもらい、貼り付けてフワフワを撤去した。

はわわ✨柱の中って、空洞だったんだ…✨

見ちゃいけないものを見ちゃった気がして、ワクワクしちゃったよ。

厚みは1.2cm程だろうか。
素材はベニヤの合板だった。

コレならネジは刺さるか。

──ん?
コレ、上から覗けるなら、何も表にネジ刺さなくても、良くね?

「んんん~…」

どの道、この高さじゃあデッカイ脚立 出さないと危ないし。

いっその事、ヒモを壁の裏に固定して、額縁を、ヒモから取り外せるようにしたら、どうだろか。

なんかもう頭の中は作成ばかり考えていて、多分 始終かんばしくない顔をしたまま脚立を片し、店長と何を喋ったかも覚えてない。

翌日、私は出勤前に使える物が無いか、ユ○ワヤに寄って探す事にした。

推理アニメ御用達のピアノ線とか、売ってたりしないかな。

人の首はねちゃうぐらいだもの、アルミの額縁にも余裕で耐えそう。

探してみたら、有るもんだね。

太さはざっと1mm程。透明だから多少太くとも目立たないし。

あとは…ナスカン。

誤記
3m ✕ → 4m ○

2wショルダーバッグなんかのベルトとバッグを繋げる、金具のとこ。

の、丈夫そうなやつをチョイス。

カラビナが復旧した現在では なかなか見なくなったが、私はあれに家の鍵 付けてズボンのベルト通しに引っ掛けてジャラジャラ言わせて歩いていた。

未だに鍵にはナスカン付けちゃうんだな。何かと便利なんだよ、あれ。

それとL字金具とネジを買って、出勤した。

「何やってんスか?」

「ヒッヒッヒ、コレはだねぇ…」

遅番のK君に実演してみせる。

適当にピアノ線を出してナスカンの お尻を2つ通して、額縁の紐を通す為の三角形の金具に、ナスカンをパチッと。

ピアノ線を輪っかにして持ち上げれば、いい塩梅に額縁が持ち上がる。

「ぉお!スゲぇ!」

「じゃろう!」

我ながら良い思い付きだったので、得意である。

レジに脚立を広げて作業開始。
その間、店頭はK君にお任せ。

大口会計が入れば脚立から降り、ウエットティッシュで手を拭いてサッカーに入り、終われば昇る。
ちょっと忙しない。

K君も脚立を避けながらレジに入んなくちゃいけなくて頭ぶつけたり、すんごい邪魔そうにしてた。
文句言わなかったけど。

いつもなら閉店後に独りでやるような作業なんだけど…

だってほら、傾き加減がわからないから、もう一人 人手が欲しかったんだよ。

柱の内からベニヤにネジ打ったら、貫通しそうで怖いな。

空洞にはベニヤを打ち付けて固定する為の角材が何ヶ所か在ったので、そこにL字金具を下向きに固定する事にした。

L字金具の片側の穴にピアノ線を通し、ナスカンの お尻を通し、柱にぶら下げてみる。

両方揃えて同じ高さで、線は切らないまま仮に結ぶ。

額縁をナスカンに下げて、脚立から下り、高さ具合を確認する。

「んん~、もうちょい、上かな~?」

2~3度くり返して、横のディスプレイ棚と高さバランスを整える。

額縁を外したら、本チャン仕上げ。

色んなスタッフが触るとなると、額縁を下げる度に角度調整とか、多分やり切れない。

ピアノ線をL字金具に結んじゃう事にした。

マスキング代わりに お店のロゴテープを手の甲に何度か付け接着を弱めて、壁にマーキング。

軽く結んで、マーキングのラインでナスカンの高さが同じかどうか確認。

額縁を再度ぶら下げてみて、K君に傾きが無いか見てもらう。

「あ、もうちょい右…」

「こう?」

「いや、反対ッスよ、酷くなりましたよ(笑)」

だなんて作業して「あ、OKOK!今です!」GOサインが出た。

「おりゃー!」

ギュッと結べば、そうそうズレない。

ピアノ線は長めに残して切った。

「ふいいぃ✨出来た~✨」

「おおお~」

パチパチパチ。

「じゃあちょっと、K君 外してみてよ」

「え?何で?」

「いや、ほら、アレだろ。私以外でも作業出来んのか、見ときたいんだよ」

という訳で、K君に額縁の着脱テストを行ってもらった。
ナスカンを外して付けても、額縁は傾いていない。

「おおお~、いい感じじゃ~ん」

「いいっスね、コレ。凄い楽♪」

明日、店長が出勤したら、驚くだろうなあ♪

なんて凄く楽しみにしながら、その日は上がった。

翌日──

「コレ!コレ凄く良いわね!何度か外してやってみちゃった!」

うお!? 説明前にテスト済みとな!?

出勤しな、ベタ褒めされた。照れくさい。

「高さ具合は どスか?コレで良ッスか?」

「コレで良いよ、思った通り♪」

だなんて、大した事してないのに お礼言われちゃうと、困っちゃう。

長めに残していたピアノ線の遊びは、ハサミで短く整えた。

──と、作業内容を思い出したら楽しくなっちゃって つい 前置きが長くなったんやが、本題である。

おじさま営業のM氏と仲の良いSVのO氏が、初めて共連れ ご来店された日の事。

軽く初めましての ご挨拶をして、私は店内に団子にならないよう、店頭近くでネクタイの箱ディスプレイ変更でもしようと思った。

脚立を開いて10×10程のボックスに巻いて入っているネクタイを、ぽいぽい空き箱に放っていた時だった。

「コレ!コレ凄いね!誰がやったの!?」

O氏が柱に下げてある額縁に気付いて、声を上げた。

当然、私は名乗り出ない…
つもりだったんやが、またも店長にチクられちゃった。

「ナスカンとは!着脱がちゃんと考えられてて、素晴らしい!ピアノ線なら切れる心配も無いな!」

「おー、やっぱりな!こういうの やるのは○○しか居ないもんな!」

なんか、凄い地味な部分で、またも めっちゃベタ褒めされてる…(引)

「こういう人材がさ、うちの会社には必要なんだよ!」

それは、小さな事を解決する便利屋的な お仕事部署だろうか…

ならば、ちょっとやりたい。
とか、思っちゃった。

こうしてね、良くわからんうちに、一度も本社に行った時無いペーペーのバイトは、名が売れて行っちゃったんですよ(遠い目)

─おまけ─イーゼル

イーゼルと額縁が届いた数日後、販促部のS女史が視察に訪れた。

私は早速「このイーゼル、小さくないッスか?」と、投げかけた。

「これね、B2サイズ用のだとワンサイズ大きいのがあったんだけど、いきなり足の奥行が倍になっちゃうの」

なるほど、自社は小さな間口の店舗も多いから、全店で店頭に置けるサイズ、との事であった。

「あとね…」

S女史が小声で、手指で上向きに丸を作った。

「コレがね、倍以上すんのよ~」

「…ぁあ~あ!」

なるほど、経費的な問題も、絡んでいたんだな。

─おまけ─犬か猫か

M氏は生粋の犬派であった。
私と店長はガチガチの猫派。

良く三人で犬猫論争を繰り広げたもんだ。

どんなに猫の良さを語っても「か~ッ!猫なんて!」と、全然分かって貰えなかった、M氏との想い出。

「○○、知ってるか?」

いつもならM氏の愛犬のベタ褒め話を聞く時間、その日は勝手が違っていた。

お散歩中、砂利敷きの駐車場で愛犬の粗相を片付けていたM氏が、野良猫を見かけたんだと言う。

「猫がさ、駐車場の隅っこでトイレしちゃったんだよ。『あーあー、そんなところに…』て思ったらさ、何と!用を足した所にザッザッて、砂利を掛けたんだよ!」

普通の事では。

と 思ったのは、内緒だ。

M氏は驚きを隠せない様子で続ける。

「いや~、猫って綺麗好きなんだな!初めて知ったよ、頭良いんだって!」

「──え!!?」

還暦近くなって 初めて猫の習性を知った方が、目の前に!!!

そっちの方が驚いたよ。

まあ、中には居るんですね、こういう方も。勉強になりました。
ちゃんちゃん。

⑭に続く──

中学ひとコマ③

中学のテストは基本、平均点以下、赤点ギリギリ。ていうか、赤点。

そんな私でも、夏休みの自由研究が2回、学校代表に選ばれた。

まあ、受賞はしなかったと思うんやが…いや?2回目は何か貰ったっけな…?
この辺記憶が曖昧なんやが、夏休みの課題に悩んでいる子が居たら、ご参考までに。

─ 一年生 ─

夏休み前に特に用途も決めず、理科室で赤青リトマス紙を借りた。

だって色が変わって面白いじゃん。
色々 浸けてみたいじゃん。

研究は『植物の持つ浄化作用について』とした。

当時 騒がれていた酸性雨が強くなっていったら、地球環境に どんな影響を及ぼすのか…?

なんて、結構 真面目な題目だ。

ただ、このタイトルを思い付いた時には夏休みが半分終わっててな。

種から植物を育てる時間は、無い。

もっと早くに思い付いていたらば、朝顔だとか育てといたんだけど。

適当に苗を買う事にして、近所の花屋さんに赴いたんやが…

あの お花屋さん、切り花と温室栽培の鉢植えがメインな お店だったんだよ(遠い目)

手頃な価格の苗が無い。

ようやく見つけたのが、モロヘイヤの苗だった。

お小遣いで買えたのが、1株。

母親に泣きついて「高い!」て文句言われつつ、追加で3株買って貰った。

なんやが。

そもそも、酸性雨って、何???
何で出来てるの???

“酸” と付くからには、酸性なんだろうな~、程度の事しか分からない。
phも分からない。

何か適当に台所に在った米酢を、水道水で割って使う事にした。

せっかく4株あるから、日当たりの良いところ・悪いところ での差も、やってみる事にした。

実家の居間の一番日当たりの良い窓辺と、ダンボール箱で覆った所と、2箇所 2株ずつ設置。

この時点で色々と気付くと思われるが、まぁまぁ、生暖かく読み流してくだされ。

2株のうち片側は酢水、片側は水道水をやり、観察を始めた。

3日目──

ダンボールで覆っていた2株が、枯れてしまった。

…ハッ!光合成!!!

植物が育つ為には “光” が必要だって、ポーンッ!と忘れていたのだよ(遠い目)

「高かったのに、す~ぐ枯らしてからに!」

なんて母親に怒鳴られつつ、日向に残った2株の観察を続けた。

なんやが。

観察、て、何???
何したら良いの???

酢水と水道水をやるしか、出来ない。

一週間後──

水道水を与え続けたモロヘイヤは青々としげっていたが、酢水の方のの葉が黄色くなってきた。

…ハッ!この辺にしておかないと、また母ちゃんに怒られる!!!

観察は中止せざるを得なかった。

この状況で、どうレポートを まとめれば…

悩みに悩み、青色リトマス紙を気孔の多い葉っぱの裏にラップで巻いて様子を見てみた。

特に色の変化は無かった。

とりあえず それだけでレポートに書いてみたんだけど、1枚にしかならんくてな。

ううん、結果が ただ「枯れました」だけじゃあ、なぁ…

モロヘイヤって、食えるんだっけ。

ここはやはり、食べ比べしてみるしか。

…ゴクリ。

モロヘイヤなんてオシャンティーな野菜、食べた時 無い。

黄色い葉っぱはもちろん、青々とした葉っぱですら、食べてみる勇気が出ない。

どうしよう…

先に勇者に食べて貰いたい。

チキンである。

カラカラカラカラ…

当時、私はハムスターを飼っていた。
滑車を忙しなく回すハムスター。

カラカラカラカラ…

ハムスターって、モロヘイヤ食うのかな…?

試しに青葉と黄葉を一枚ずつ千切り、左右の手に持ってハムスターに差し出してみた。

青葉はムシャムシャ食べたけど、黄葉はクンクン匂いを嗅いだだけで食べなかった。

黄葉の中には ろ過しきれない酢酸が残っているんだろうか。

…ゴクリ。

勇者に毒味をさせといて、後から ちみっと かじってみた。

…苦い。

味の違いは、私の舌では分からなかったな。

ともあれ、私はハムスターと自分と味見してみた結果を、イラスト入りで書いてレポートを なるたけ埋めよう、と思った。

ううん、字が綺麗に書けないな…

かなりクセ強な私の文字は、自分で読むのも難解な為、当時 覚え始めていた母親のワープロで罫線も使って、A4レポート3枚に まとめた。

──そいつが、学校代表に選ばれちゃった。

総評は、こうである。

「ワープロでのレポート作成、及び、動物実験を行った所が良い」

つまり、自由研究の内容と結果は、さておかれたんだな(笑)

─ 二年生 ─

夏休み前、特に用途も決めず理科室で、駒込ピペットとビーカーを借りた。

だって水滴垂らしたいじゃん。
色々 滴下してみたいじゃん。

研究は『素材による色落ちの違い』

木綿・化繊に着いた醤油のシミは、どちらが落ちやすいのか。

どちらかと言えば家庭科の内容だった。

夏休みが始まると早速、手芸屋さんで木綿とポリエステルとナイロンの白い端切れを買った。

そいつを1cm×3cm程の短冊に切り分け、醤油・麦茶・墨汁・朱肉なんかで色付け、区分けしたコピー用紙に整列して貼り付けテーブルに広げた。

こいつに、水、中性洗剤や洗濯洗剤や漂白剤なんかの家庭に有る薬剤を埋めて滴下。

…ううん、1度じゃあ良く分かんないな。

目に見える変化は、漂白剤だけである。

「アンタ いい加減、テーブルの上 片しなさいよ!」

なんて母親に怒鳴られながら、毎日 夏休み期間、滴下を続けてみる事にした。

結果──

お察しの通り、洗剤を滴下した方が、水だけより色が薄くなった。

実験資料の現物を多くレポートに添付して、「自由研究やりました!」的な、厚みだけは出た。

それだけ(笑)

─三年生─

夏休み前、特に用途も決めず理科室で、アルコールランプと五徳を借りた。

だってガラスの蓋を被せるだけで火が消えるんだよ、不思議じゃん。

いやまあ、酸素が無くなるから、なんですがね。

なかなかアルコールランプを使った研究が思い浮かばず、夏休みの最終日が来てしまった。

…困った。

観察系には、日数が足りなさ過ぎる。

研究は『茶封筒で水が沸かせるか』

以前、なんかの会話で母親が「災害の時は茶封筒で水を沸かせる」て言っていたのを、思い出した。

何で!? 封筒、燃えないの!??

母親の話では、どうも水を入れた茶封筒を 直接 火にかける、らしい。

物凄く、不思議である。

早速、母親の仕事備品の残りから茶封筒を頂戴して、コストも0円。

茶封筒の底を折って内側に三角の耳を折り込んで、水を入れて五徳に乗せ、アルコールランプにマッチで火を点けた。

燃えちゃうんじゃないかって、ちょっと怖い。

火にかけて数十分ほど、固唾を呑んで見守っただろうか。

ぽこぽこ…ぽこぽこぽこぽこ!

何と、茶封筒の中の水が、沸騰した。

す、凄ぇ✨✨✨

アルコールランプの火を消して冷ましてから茶封筒の底を確認してみたけれど、穴が空くどころか、コゲもしていない。

わ~♪本当だったんだぁ~♪

時には私のアレな母親も、本当の事を言う。
まあ多分、テレビか新聞で見たネタなんだろうけども。

水を沸かせるって事は、料理も出来るんじゃね?wkwk

ちょっと楽しくなってきた。

試しに塩水を茶封筒で沸かしてみたら、見事に しょぱい お湯が出来た。

み、味噌汁とかも…

流石にアルコールランプの小さい火で水を沸かすのは、時間が掛かり過ぎて日が暮れてしまった。

私は時短の為にガスコンロを使う事にした。

魚焼きグリルの網をコンロの五徳に乗せ、溶いた味噌入りの水を茶封筒に入れ、火にかける。

結果──

100cc程の具無しの味噌汁が出来た。

水を入れた茶封筒は強く、燃えもしない。

に、煮物とかは…!??

砂糖と醤油を入れた水を沸かしてみた。

流石に茶封筒の底は黒くコゲ、穴が空いてしまった。

ううん、流石に耐久力が足りないか…

そこで目に入ったのが、アルミホイル。

茶封筒の底にアルミホイルを巻き、試しに水を沸かしてみた。

おおお!?さっきよりも早く沸騰したぞ!!?

熱伝導が良くなった為と思われる。

これらの結果を総合して、レポートに まとめる事にした。

最後のレポート用紙の下段が半分くらい空欄になってしまったので、私は災害時にも作れる茶封筒鍋を、図解で描き、自分で実際に作った物を添付して提出した。

自分では正直、ここまで作り込んだら、もう茶封筒に こだわらんでもコピー用紙とかでも良いのでは。

と 思っていたのは、内緒だ。

後──

学校代表に選出され、前回は無かったのに理科教員の指導の元、レポートの見直しを行った。

煮物の汁はコゲたのは、耐久力不足だと思っていたんだが、違ってた。

「砂糖には炭素が入っているから、炭素がコゲたんだよ」

なるほど!そうだったのか!

化学式を追記して、ついでに、直接 紙を火にかけたのに燃えなかった仕組みも教えてもらった。

紙に染みた水は100度以上にはならないから、汲んだ水が無くならない以上、紙が燃える為の温度に到達せず、紙は燃えずに湯が沸いた、らしい。

へええぇ✨✨✨

知らずに実験していた自分が、一番 驚いた。

学校代表で出品された自由研究のレポートは、特別大臣賞みたいなの貰ったっけな?

添付した茶封筒鍋が「災害に着目している、実用性の有る作成物」だったのが、評価されたみたい。

参加賞として、2本目の で○こちゃん のボールペンを貰った。

表彰状より、で○こちゃんのボールペンの方が嬉しかったのは、内緒だ。

ホラーハウス⑦

これはハウスな話では無いんだが、ホラー繋がりで。

私が子供の頃は毎年、夏になるとテレビで心霊写真特集が組まれていた。

視聴者から募集したリアルな心霊写真を取り上げ、除霊師が本物か偽物か鑑別して本物だったら、霊が何を訴えているか教えてくれて、最後は除霊してくれる、というもの。

めっちゃ怖いんやけど、つい、観ちゃうのよね。

「母ちゃん、家にも心霊写真 在る!?」

小学校高学年の時だったかな。
こういうの投稿してみたい お年頃だもんで、もれなく私も実家に心霊写真が無いか確認した。

「無いよ、そんなの」

無いらしい。

なぁんだぁ~(ちぇっ)

残念ではあるが、在ったら在ったで怖いんで、無くて良かった、と思ったもんだ。

一時は5人家族だった実家の収納には、古い分厚い台紙の重た~いアルバムが、わんさ と入っていた。

アルバムの多さに比べて、私の幼少期の写真はかなり少ない。
3番目だからね、仕方ない。

中学生くらいの時だったかな。

あの時は心霊写真を探していたんじゃなくて、若い父親が空中で飛び蹴りしている引き伸ばされた写真を探していた。

昔チラッと見たくらいだったんだが、格好良い、と思ってたから欲しかったんだ。

無いなぁ、無いなぁ、捨てられちゃったのかなぁ…?

アルバムを開いてはパタパタめくって、閉めては仕舞う。

二女が赤坊になり、長女も赤坊になった頃。

父親と見知らぬ外国の女性が、並んで写っている写真を見つけた。

え゙…コレ、見ちゃって良かったやつ…???

旅行先だろうか。
どこかの旅館っぽい腰窓に二人は仲良さそうに並び腰掛けていて、満面の笑みの父親が隣の困惑してそうな表情の女性の肩を抱き寄せている。

なんか、見ちゃいけない写真かもしれない…

私はアルバムを閉じかけた。

──あれ?

父親と女性は肩を抱き合っていたけれど、女性は両手を膝の上に揃えてなかったか…???

一瞬、見間違いかとも思い、もう一度、写真を確認する事にした。

やはり、はにかむ女性は両手を揃えて膝の上。

父親の左手は女性の肩の上。
右手はグーで膝の横。

そして、父親の右肩の上には…

なまっ白い、女性の手の甲。

「ぎゃあ…!?」

いや、誰かがイタズラで後ろに潜んでいるパターンかもしれない。

私は写真の背景を よくよく観察した。

背景は自然豊かな山脈。
左右と下は旅館の窓枠。

2階より上だろう窓枠には、落下防止には心もとない、30cm程の柵…

「ぎゃあああああッ!!?」

背後に人が入れる隙間なんか、無い無い。

ヤベぇ!マジもんの心霊写真だ!!!

バタンッ!とアルバムを閉じ、ゴスッ!と元の位置に押し込んで、バシンッ!と納戸の扉を閉めた。

背筋がゾワッてしちゃったから、母親が帰ってくるまで布団にくるまってた。

うえぇ、成仏してくれぇ…(号泣)!

手の持ち主が誰かも気になるし、
女性が何者なのかも気になるし。

なんかね、投稿だとか真実の究明だとか、やっちゃいけない気がしたよ。

⑧に続く──

ナイトメア(悪夢)②

これは小説の話ではなくガチの夢。
ノンレム睡眠時に視る、悪夢の話。

大人になった今では視ないんだが、小学生高学年くらいまで、毎年毎年 同じ時期に、全く同じ内容の夢を視た。

夢の舞台は物心ついた頃、一番最初に住んでいた、古~い団地。

お使いを頼まれた私は、近所の八百屋で袋いっぱいに黄色いミカンを買って両手に抱え、家に向かって団地の合間を歩いている。

すると、知らないおじさんに背後から話しかけられる。

「ねぇ、君。お菓子を食べに家に来ないかい?」

え!お菓子✨!?

ダメだダメだ。母ちゃんが「知らない人に物を貰っちゃダメ」って言ってた。

私はおじさんに向かい頭を左右に振って、再びトコトコ帰路に着く。

子供の歩幅は狭い。
歩いても歩いても家の入った団地の棟に全然着かない。

ふと、何の気なしに背後を振り返ると、さっきのおじさんからも距離は無い。

トコトコトコ…
ひたひたひた…

トコト…
ひたひ…

おじさんは子供の歩みに揃え、同じ速度で後方を歩いている。

よくわかんないけど怖くなってきて、私は走り出した。

抱えたミカンがポロポロッと何個か落ちてしまった。

「ねぇ、君!ミカン、落としたよ!」

おじさんも落としたミカンを拾って掲げて、走って追いかけてくる訳だ。

よくわかんないけど もの凄く怖くって、私は走り おじさんから逃げ回る。

走って走って団地中走り回って──

ハッ!!!

ようやく目が覚めるんだが、起きてからも一日 怖ぇんだよ、登下校の道のりが。

知らないおじさんが、ミカン持って走って来そうでさ。

もしも実際あった事だったんなら…

ひょっとしたら、おじさんはただの親切心だったのかも、しれないけどね。

分かりませんね。

父親も、アレ⑧

映画が大好きだった父ちゃん。
特に好きだったのが、カンフー映画。

父親が若かりし頃には、昭和の時代に懐かしい、雑誌の通信講座でカンフーを学んだそう。

正直、紙面で単独で、どうやって格闘技を習得するのか、運痴な私には想像出来ない謎な世界である。

アジア圏に海外出張も多く、朝や休日は現地の方々に混じって、広場で太極拳をやっていたそうな。

よく居間の ど真ん中でテレビ観ながら太極拳やっていたな。
太っちょな お腹で短い腕を大きく ゆっくり回して、最後に足を踏ん張って両腕を突き出すんだ。

私も ちょろっと教えてもらったけれど、他は もう覚えてないな。

何でだったか経緯は忘れてしまったんだけど、小さい時に赤いプラスチックのヌンチャクを持っていた。

2本の棒が短い糸で繋がっていて、どう遊ぶものなのか、よく分からない。

「ほら、貸してみ」

父親にヌンチャクを託した。

ヒュヒュヒュヒュン、ヒュン!パシッ!

「ほわたぁ!」

なんと、あの人ヌンチャク扱えちゃうんだよ。

父ちゃん、カッケェ✨✨✨!

左右の手で交互に八の字を回して、脇に挟んで決めポーズ。

私も教えてもらったんだけど、もう忘れてしまったな。

調子付いた父親は、様々なヌンチャク技を披露する。

ヒュンッ!スポッ!…ガチャン!

「やべッ(汗)」

「コラー!外でやりなさい!外で!」

あの時は座卓の上の茶碗か何か割ったんだっけな。

母親に こっぴどく叱られて以来、私はヌンチャクを扱う父親を見ていない。

ていうか、ヌンチャク自体が行方不明になってしまった。

母親に処分されてしまったんでしょう。多分だけど(笑)

⑨に続く──

父親も、アレ⑨

若かりし父親は、恐らく三十代半ば。
今は無き実家に引っ越して間も無く、私と同じ年頃に、“ヤツ” に目を付けられていた。

── “魔女” である。

お察し鋭い方はお気付きだろうが、まぁまぁ、生暖かく読み流して下され。

引っ越し業者のトラックに相乗りして新居に到着した父親は、そりゃあもう大張り切りで家具の運び入れを手伝っていた。

引っ越し業者さんが去って落ち着き始めた晩御飯時のこと。

──ビギーンッ★

「はぅあ!!!」

気を抜いた瞬間に、魔女が一撃 食らわせたんだ。

何って、そう。
毎度お馴染み、ぎっくり腰である。

「と、父ちゃ~ん!!?」

完全に腰から崩れ、母親の支えでは立ち上がることすらままならず…というか、父親の体重的に持ちあげらんなかったんだと思う(遠い目)

あの日の事を、母親は こう語った。

「あ~も~恥ずかしい!引っ越したばっかだってのに、救急車沙汰だなんて!」

母親は救急車を呼ぶ際に、一つ注文をしたそうな。

「サイレン、鳴らさないで来てもらえませんか」

気持ちは分からんでも無い。

ピーポーに点滅する赤灯、何事だっ!? て 絶対、野次馬 出てくるもんね、昭和な団地。

『規則なので、サイレンを鳴らさない事は出来ません。救急対応中はサイレンは止まりますから』

でしょうね。

こうして、隊員二人がかりに両肩を借り、父親は自分の足で救急車に向かって行った。

その後ろ姿は まるで、捕らえられた小太りのエイリアン。

「あ~も~、恥ずかしい!サイレンは一時止めてくれてたけど、赤ランプ点滅し続けるわ、走り出したら即サイレン鳴るわ!
『どうしたんですか~?』って色んな人に聞かれて恥ずかしかったわ!」

ですよね。

こうして、父親は3日くらい入院したんだっけな?

新天地で転職先も決まっていたと言うのに、初っ端から一ヶ月間 休みをもらった。

母親は すんごい嫌だったそう。

私は よく分かんないけど、普段 家に居ない父ちゃんが、ずうっと家に居てくれて嬉しかったよ。

ずうっと布団でゴロゴロしてたけど(笑)

時代は昭和。
当時は腰椎コルセットも、完全ギプス。

骨折ばりに石膏で作られた太鼓の胴みたいな円筒のギプスを父親は、腹巻みたいに上げ下げして着脱していた。

随分 良くなった、休暇の終わりの頃の事。

父親と お風呂に入る事になり、脱衣所で衣類を洗濯カゴに放っていた。

「○○、見ててみ!」

パンイチにギプス腹巻の父親が、ちょいちょいと私の注意を引いた。

「ふんぬッ!」

ゴトンッ!

なんと!父親が両手を突き出し力んだら、ギプス腹巻が床に落下した。

す…凄ぇ!!?

手品でも見せられたんだと思った。
継ぎ目の無い硬い円筒が、手を使わずに落ちたんだよ、すげくねぇ?

「父ちゃん、今の、どうやったの!??」

「ふふふん(得意気)」

まぁ種明かしすれば、ビールっ腹に力を入れて、凹ませただけなんやけどね(笑)

⑩に続く──

幼少ひとコマ④

お買い物。
いつの間にやら出来るようになっていた、生活能力。

初めて独りで お買い物が出来た時の事を、覚えておいでだろうか?

私は覚えていない。

なんか気が付いたら当たり前のように、お店に行って、財布を出して、会計して、帰宅する一連の作業が出来るようになっていた。

母親から姉二人の初めてのおつかい話は何度か聞いたんやが、私の話はされた時が無い。

多分なんのトラブルも無く、すんなり素直に「じゃあ、いってくる!」「ただいま、かってきた!」くらいで終わっちゃったんじゃないかな、と思う。

母親は「泣きわめいてくんなきゃ、ツマンネー…」と思ったことだろう(しみじみ)

とはいえ、ひょっとしたらアレが最初かな~?? という出来事は、有る。

今日は、その日に想いを馳せてみるとしよう。

──時は、古い2DK団地住まいだった昭和、私は恐らく3~4歳。

当時ハマっていた お菓子があった。

カ○ボーン。
もう流石に見なくなったんやけど、まだ生産してんのかな?カル○ーン。

小さい骨の形をした、カルシウムで出来たお菓子。
どストレートなネーミングだな。そういうの、好きだ。

ラムネ菓子より軽い歯応えでシャリシャリと、ミルク系の味だったかな。
牛乳をイメージさせる牛が描かれた、青と白の箱だった。

駄菓子よりも高い、一箱100円。

「かあちゃん、かあちゃん!これ、かって!」

よく母親の買い物に付いて行っては、勝手にスーパー内を独りでウロチョロして、めぼしい菓子を母親に届けたもんだ。

「これが、お金。これが、値札」

買い物の基本、お金の種類と値札の読み方と釣り銭の計算は、実地で母親に習った。

ある時、団地の近くに初めてコンビニが出来た。

○ーソンである。

「百円あげるから、好きなの買ってきな」

「やったー✨♪!いってくる!」

余程「おなかすいたー!」って、仕事の邪魔でもしたんだろう(遠い目)

私は母親にもらった百円玉を握りしめ、○ーソンに走った。

目的はもちろん、カ○ボーン。
当時は消費税導入前で、百円玉が一枚有れば買えちゃうんだ。

お菓子棚の下に しゃがみこみ、値札が100円なのを確認して、私はカ○ボーンを手に取った。

レジに向かおうと立ち上がると、視界には他にも100円表記の お菓子の存在。

アレもコレも100円だと…!?

「これ、くーださい!」

「400円です」

え!!? 100円じゃないの!!?

実は私、お金の使い方を理解してはいなかった。

同じ“100”の値札の商品は、百円玉一枚で何種類でも買えると思ってたんだ。

私はおずおずとレジのお兄さんに百円玉を渡した。

「え~っと、コレだと足りないな。あと3枚持ってない?」

「もってません!」

「じゃあ、全部は買えないから…どれか一つ、選んでね」

とても優しい、お兄さんであった。
○ーソンの青白ストライプの制服しか覚えてないんだけど。

私の顔に盛大に?が書かれていたのか、お兄さんは懇切丁寧に、値札同士の “足し算” を教えてくれたんだ(ホロリ)

そ、そうだったのか!!!

目からウロコが落ちたよ、マジで。

私はカ○ボーンにテープを貼ってもらって、足し算も教えてもらって、ほくほくルンルンで お家に帰りました、とさ。

こうやってね、幼子は少しづつ少しづ~つ、成長して行くんですよ。

⑤に続く──

小学ひとコマ③

小学校入学を控えた、とある春休み。
色々と事情があり、従兄弟一家も一時期 私の実家に住んでいた。

「○○!おつかい行ってきて!」

「いーよ!なにかってくんの?」

実家の近くにはチェーンのパン屋がオープンしたばかり。

母親から課せられたミッションは「メロンパンを5つ買って来い」というもの。

従兄弟一家が5人、うちも5人。

メロンパンを半分こして、みんなで仲良く朝ごはんの予定だ。

「いってきまーす!」

私は母親から預かった五百円玉を握りしめ「メロンパン、5つ♪」「メロンパン、5つ♪」と復唱しながら歩いて行った。

パン屋のトレーとトングを手に持って、メロンパンの元へ まっしぐら。

値段は一つ100円、持っているのは500円。

よし!買える!

ちゃんと確認したよ。

「すみませーん!」

まだ幼稚園上がり。
パン屋のトレーにメロンパン5つも載せたら落っことしそうで、怖い。

私は店員のお姉さんを呼んだ。

「メロンパン、5つください!」

お姉さんにトレーを渡し、代わりにレジまで運んで貰うことにした。

「メロンパンだけで良いの?」

「メロンパンだけでいいです!」

レジスターに会計を入力する。

「メロンパン5つで、515円です」

──えッ!!?

「500円じゃないんですか!?」

さっきちゃんと確認した。メロンパンには“100”の値札が出ていた。

100+100+100+100+100で、500…じゃ、なかったの!?

何か計算間違いしちゃったんだろうか(焦)

手を使って数え直していた私に、お姉さんは衝撃的な言葉を放った。

「今日から“消費税”が始まってね、100円のパンは一つ103円になるの」

な、なんだと!!?

何かよく分からんが、そういうもんらしい。

「500円しか持ってないんです!なんとかなりませんか!?」

ちゃんと五百円玉を見せて、交渉したよ。

「うう~ん、それは出来ないんだ」

ええーッ!!?

「うちんち、いとこもいて全部で10人で、朝ごはんにメロンパン半分こして食べよう!てなってるんです!」

ちゃんと、情にも訴えたよ。

「ごめんね、決まりだから。
メロンパンを一つ減らして、4つにすると、412円だから買えるんだけど…」

あ!メロンパン買えない訳じゃないのか!

という経緯で、私は再び店員さんに社会の仕組みを懇切丁寧に教えて貰って、メロンパン4つを袋に入れて真っ直ぐ帰宅した。

「ただいま~!買ってきた!」

「アンタ、遅かったじゃない!寄り道してたんでしょう!」

「してないよ!」

母親にパン屋の袋を手渡した。

「…ちょっと!メロンパン4つしか入ってないじゃない!アンタ食べたんじゃないでしょうね!」

「食べてないよ!買えなかったの!」

「4つしか残ってなかったの?」

「違うよ!今日から“しょうひぜい”っていうのが始まって、足りなかったんだ!」

私はポケットからジャラジャラと、細かい釣り銭を母親に手渡した。

「え?細か…消費税って…あー!アレか~!」

母親にも消費税の事を教えてあげた。

「何よ、こんな小さい子が独りでお遣い行ってんだから、まけてくれたって良いのに!」

いや、ちゃんと交渉したよ。

って言いたかったけど、あの時は言葉で表現出来ませんでした。

大人になってから「個人経営ならまだしも、チェーン店とは融通が利かないもんなんだ」と、教えてあげましたよ。
ちゃんちゃん。

④に続く──

幼少ひとコマ⑤

これは母親から聞かされた話。
私がまだ言葉も足元も おぼつかない、よちよち歩きだった時代。

おやつの時間に、袋に入った4個入の あんドーナツを出したらしい。

「わーい!あんドーナツだ~♪」
「あんドーナツだ~♪」

姉二人は大喜び。

「お姉ちゃん達、手を洗って来なさい」

「「は~い♪」」

あんドーナツの袋を座卓に置かれると、姉二人は手を洗いに、母親は お茶をいれようと離席した。

お茶をいれて戻ってきた母親が目にしたのは…

袋の中に1つしか残っていない、あんドーナツ。

「も~!○ーちゃんも、○っくんも、あんドーナツ食べ過ぎ!○○の分が無くなっちゃうでしょ!!?」

「え!?私たち、まだ食べてないよ!??」

激おこプンプンで「嘘おっしゃい!」と母親は辺りを見回した。

「…あれ?○○、どうしたの?」

独り座卓に背を向け壁に向かい座り込んでいる私に、母親は声を掛けた。

ビクッと身をすくませて振り返った、私──

の片手には あんドーナツ、もう片手にも あんドーナツ、おまけに口にも ひとつ、あんドーナツ。

「○○…」

両手が あんドーナツで塞がった私は、口に咥えた あんドーナツを「どうやって食べたらいいの!? どうやって食べたらいいの!?」て、凄ぇ困ってたんだってさ(笑)

⑥に続く──


さて。

「世の中夏休みの間ぐらい仕事の話は止めるかな」と勝手に始めた夏休み企画で小話連投してたんやが、いい加減盆休み終わったっぽいんで、主な表題に戻ろうと思う。

正直、現役時代の事なぞ、思い出したくもない。

てのは、内緒だぞ。たははw


シーン・ビジネス⑭

T店勤務から遅遅として進まんのやが、まあまあ、今しばらくT店の話をさせてちょーよ。

先日『シーン・ビジネス⑩』で語りそびれた、初期の頃に変わり行った仕組みたち、いってみよー☆

─新人研修─

もっぱら仕事は店舗で店頭に立ったまま、店長ないし先輩スタッフが教えるマニュアル無しの教育だったんだが。

これだと店舗毎に、独自の教育が施されちゃうんだな。
要は、教育にも店舗差が出てしまうのだよ。

店舗への負担削減、というのを表向きに、チェーン展開ならではの統一性を出す方向へシフトチェンジが始まった。

新人研修の場は本社。
地方の場合や学校などで本社に行けないスタッフは結局、店舗毎にはなってしまうんだけど。

店舗でも統一の教育を施す補助のため、本社と近隣店長総出で、新人教育DVDが作成された。

ちなみにこの時、私はバイト副店長だったので、お留守番。T店長が駆り出されて「嫌だ嫌だ」言いながら本社に出向して行った。

後日、完成した新人研修DVDと画面付きのDVDプレーヤーが、店舗に届いた。

「ほおぉ、コレが噂の…✨」

「何かコレ、スタッフ全員観なきゃいけないみたいだから、○○さんも休憩室で観てきて。私も観た」

マジか。

「コレって、店長出てるんですか?」

「うん、ちょろっとだけど…」

「観ます✨✨✨」

という経緯で、私もDVD一式を持って、館の喫煙所に移動したんだな。

DVDをセットしてイヤホンを着け、タバコに火を点け再生ボタンを押下した。

『はぁい!ぼく、これからみんなと一緒に働く、シャツです!』

「ブッフォッ!」

冒頭、教育テレビを思わせる可愛いゆるキャラ(?)ワイシャツ君が、出現した。

あんまりパンチがあったもんだから、笑っちゃって笑っちゃって他の従業員に白い目で見られて、笑いこらえるのに必死だったよ。ごめんなさい。

まあまあ、中身は普通に基本の接客応対やら、採寸の仕方なんか初歩の技術的な事。

何か知らないこととかやるかな~って思ってじっくり観たけど、DVDの中には無かったな。

3章くらいからなり、尺はトータル2時間近く。

逆に、ゼロからこの物量を2日間で全部マスターって、鬼か。

と思ったのは、内緒だ。

ついでに言わせてもらえば、見知った顔の店長さんや社員ばかりだから、そっちばっかり目が行っちゃって集中出来んかった。

色んな意味で面白いDVDであった。色んな意味で。

─マニュアル─

新人研修と合わせて、無かったマニュアルの精査が行われた。

全店共通の知識関連の印刷物が入った赤ファイル、発注書等が入った青ファイル、全スタッフに配られた新人研修DVDの内容を丸っとおさらいしたかのような心得ハンドブック。

特に赤ファイルの中身は重要で、ハンギングのハンガーの本数から 平什器のネクタイ展開本数まで 事細かに記されていて、3日くらい掛けて私と店長とでお店の作り替えを行った。

地味に大変。

元々『シャツの知識』というアパレル協会辺りが出していた冊子とハンドブックの内容は一部重複していたが、社則なんかも載っていたから知識としては中身薄な印象。

まあ、そこまでは要らんしな(特例を除く)

最後にメモ欄があり、閉じかけた時に気付いた。

…シャツくん!

さり気な~く、印刷されてましたよ。

─ディスプレイツール─

T店は立地的にも・坪数的にも・売上に対して平日昼間の手隙具合にも好条件が重なっており、よく全店展開前のツール試験運用に使われた。

ワイシャツを立てて飾る金属の、小さいイーゼルのような奥行きのある三角形のタイプから、折りたたみの出来るスマホスタンドのような形状に変化した時は、作った人 天才か、と思ったもんだ。

折りたためる背中の支柱の安定性悪く倒れ易かったり、接地面が低くなった事で什器に触れ易く汚れに気を遣わなければ行けないのが、玉にキズだったな。

ちなみに、旧タイプには無かった滑り止めキャップが、新タイプには着いていた。

あんまり倒れ易いんで、ある時、じっくり観察してみた。

斜めに後方へ倒れて欲しい背中の支えが、ぴよっと前に倒れてしまうスタンドをいくつか発見した。

これじゃあ、倒れますよ、って言ってるみたいなもんだよなぁ。

スライドする支えの部分の穴には、斜めに角度が付いていて、それが前方へ倒れてしまう要因だ。

B品か…?

思い上に報告しかけたんやが。

…コレひょっとして、支柱の前後が逆、なのでは。

試しにゴムの滑り止めキャップを外して背中の支えをシューッと引き抜いて、ひっくり返して挿し直したら、あら不思議。

ちゃんと、後方に倒れるようになったのよ。

全部直してやった、全部。

こういう試験品て、工場が慣れてない状態で組み立てられるから、パーツ自体は規格通りA品だけど組み立て間違っちゃった、て事は良くある。

同じくらいの頃だったかな、謎の長細いダンボール箱が店舗に届いた。
およそ15×15×120cmの直方体。

「何スかね?コレ」

「何かしらね」

あんまり謎なんで、私が出勤するまで開けられていなかった。

サッとカッターでビニールテープを切って中を覗くと…

中には謎の金属の棒が何本か入っていた。

「…何スかね?コレ」

「何かしらね…」

怖々 引っ張り出してみると、細い金属の棒には三箇所ネジ付きのコの字の金属が溶接されていて、棒には数個プラスチックのクリップが着いていた。

流石に店長は本社に確認の電話をした。

「コレ、什器に着けるシャツフック、ですって」

あ、あ~!そゆこと!

このコの字を棚板に はめるのか。

早速、一箇所試しに設置してみた。

「何か、棚板 傷つけそうッスね…」

バリの残る金属片を直接、木板にはめてネジで止めるるのは抵抗があるんだが、致し方ない。

「あれ?コレ、なんか…」

クリップの個数は全部で10個。
間のコの字をはさんで6個4個に別れていた。

コの字の溶接された支柱が邪魔で、クリップをスライド出来ない。

「え~、これじゃあディスプレイの数と山数が合わないじゃない~(汗)」

と、店長が嘆いたのもあり、再び じっくり観察してみる事にした。

クリップは金属棒を挟み込んでプラスチックを両側から金属片で押さえた、洗濯バサミ式。

この金属さえ外せれば、5個5個に直せるな。

早速、独りの時間に作業開始。

シャツフックを棚板から撤去して、クリップの挟む側にマイナスドライバーを差し、くりっと縦に捻るれば、あら不思議。

ポコッと外れちゃうんだな。

後は位置を直してプラスチックを合わせ金属片で止めるだけ。

全部のクリップを5個5個につけ直してやった。

数週間して、クリップからシャツが滑落しやすくなってしまった。

よくよく見れば、プラスチックの内側に嵌っていたはずの滑り止めゴム片が、消え失せている。

あちゃー、外れ易いんかコレ。困ったなあ…

棚に落ちていた物も幾つか見つけたけれど、気付いた時には行方不明になった個数が多過ぎた。

営業さんが来たら ゴムだけ発注出来るか聞いてみよう、と思っていた折。

「○○さん、最近よく朝モップ掛けてて拾うんだけど、何かしら?コレ」

店長が開いた掌には、白い3×10mm程の物体。

「…あ!コレ探してたんスよ!シャツフックの滑り止めです!」

「本当?良かった!何か分からなくて捨てないでおいたよ」

何と、店長が機転を利かせて拾い集めてくれていたので、無くなった箇所の滑り止めが ほぼ元通り。

いやぁ、謎な物体過ぎて助かりましたよ。

それでも多分、他の店舗でも無くなっちゃってるだろうから、販促のSさんに報告した。

別途、発注出来るようになった。

おじさま営業M氏が、謎の鉄の棒を持って来た。

「…何スか?コレ」

コの字の土台からは溶接された くの字の棒、くの字の背には5箇所の突起。

「コレな、ハンガーを段違いに掛けられるツールだよ!作ってもらったんだ!」

真っ直ぐ水平のハンガーラックに取り付けて、後方から段々降りてくるように掛けられる、という。

「おおお、凄ぇ!」

早速取り付けてハンガーを掛れば、ちょいと小洒落た感じになった。

んだが。

「…下段の商品が隠れちゃいますね」

「棚板下げれば何とかなるかしら?」

上方にはトルソーが飾ってあり、高くなるとハンガーに手も届かなくなるので上げられない。

下段には50cm程空白地帯が在るから、一段分下げれば棚数は減らさなくて良い。

早速作業に取り掛かり、商品を撤去してガラスの棚板を外した。

「──あ!レールが無い!」

何と、可動式の棚板を乗せるための支えを嵌める壁に埋まったレールが、床から50cm無かったのだ。

「どうします?棚数減らしますか?」

「えー…棚数減らすと商品置けなくなっちゃうし…」

という経緯で、見栄えより商品数を取った。

折角作って貰ったツールだけど T店では使えずに、ひっそりバックヤードで眠りについてしまったのだよ、名前も分からぬ謎の棒。

何か作る前にね、実店舗の規格も測った方が良いよ。うん。

─トルソー─

半身と全身の首無しタイプの布張り木製マネキンが、強化プラスチック製に変更になった。

「あ!こいつ、掌が無い!」

木製は手首や指など可動するパーツが付いていたが、プラスチック製は手首でスパッと ちょん切れている。

手首が無いのはメンズだけ。
レディースは決まった形から可動しない掌が付いていた。

「…まあ、あの指すぐ取れるし、お子様がイタズラして変なポーズにされてますしね(遠い目)」

「そうね(しみじみ)」

早速、着せ替えようとメンズの腕を肩から引き抜いて、思った。

──胸板、屈強だな(ゴクリ)

ちゃんとね、胸筋がしっかりくっきり、溝が掘られてるんだよ。
なかなかにマッチョ仕立てなんだよ。羨ましいよ。

ディスプレーを着せ替える度に「抱きつきてぇ…」て思っていたのは、
私だけじゃ無いハズだ!!!
みんな、自分に正直になりたまえよ(泣)!!!

─COOL BIZ─

今では当たり前になっているクール・ビズだが、始まった当初はよく分からない仕組みだった。

初めてクール・ビズを知ったのは、本社から送られてきた水色長方形のロゴPOPで。

出勤したら店頭イーゼルに貼られていたので、早速 店長に聞いてみた。

「何スか?クール・ビズって」

「分かんない」

だそうだ。

同時にチーム・マイナス6%という表記がされていて、そこが推し進めているようだけど、それ以上の情報は一切無かった。

よく分かんないまま、初年度のクール・ビズは終了。

すっかり忘れてた、翌年。

再びクール・ビズのPOPが店着した。

クール・ビズが本格始動した年だ。

今ほど衣服の自由は無かったが、5月から多くの企業がノータイ・半袖ワイシャツを率先して導入した。

それまでは真夏でも長袖ワイシャツにネクタイを締め、おまけに背広まで着込んでいた殿方方は大いに困った。

半袖のワイシャツなんか、持ってない!

そう、忘れもしない。
爆発したんだ、売上が。

前年売上を軽く超え、前年比140%~200%越え。

もちろん、そんなに売れるだなんて、誰しも夢にも思わない。

生産予定も例年通り長袖多めで組まれていたが、半袖に仕様変更して在庫の確保に追われてた。

半袖ワイシャツは「ダサい」と抵抗が残っていた方も、上着もネクタイも着用しないで長袖ワイシャツ一枚にすると、汗ジミや変色が誤魔化せなくて新調する方も多くいらした。

ネクタイは期間中売れなくなってしまったが、ぶっちゃけ、ワイシャツの方が単価が高いから嬉しい悲鳴。

土日はファミリー層で大盛況。
平日夜は仕事帰りのビジネスマンで大盛況。

オープン初日の売上が最大値だったが、とある土日に軽く超えた。

レジ入って、長蛇の会計待ち列を こなしたら、即ストック補充、サイズ測ってサイズお出しして、またレジ入って抜けられなくて…エンドレス。

ストックも すっからかん で、店頭もスカスカしだして、それでも売れるんだから、凄いよ。

楽しかった。凄く、楽しかった。

秋物予定も繰り上げてまで半袖生産したっけな。

お陰で秋冬展開が品薄状態。

あの年は通年なら残っているはずの、福袋に入れるシーズンオフの商品在庫すら無くて、わざわざ福袋用の新作シャツを生産してた。

それなら店舗に一度入荷して欲しい、なんてスッカスカの店頭で店長と愚痴ったものだ。

更に翌年からはクール・ビズに特化した涼やかな素材でワイシャツを生産するようになった。

“かりゆし” の問い合わせは多かったな。
自社では取り扱わなかったけども。

──ただな、本社に欲を出されてな。

予算が前年に合わせて組まれていたのだよ(遠い目)

「こんなの、行かないよ!」

てね、店長も嘆いてた。

予算を落とす他店が続発する中、T店はギリギリ予算達成に こぎ着けたっけ。

地味に、日間予算をクリアさせる為に、ポケットマネーを注ぎ込んだのは、内緒だ。

「昨日なんか、あとネクタイ一本で予算行ったのに…○○さんなら、あと少しで予算届くなら買ってくれたのに!」

てな、店長にはバレてたけど(笑)

─社販─

従業員は割引価格で商品を購入出来る仕組みのこと。

給与から天引だった社販が、POSレジ導入により、レジを通さねばならなくなった。

直接、お財布を出して会計しなければならなくなったんだ。

店頭に立つには自社の商品を着なければならない。

困ってたのは、新人スタッフ達。
大概が10代20代のフリーターである。

お分かりいただけるかな、最初の給与まで約ひと月半、収入が無いんだ。

社割も表示価格から最大4割引。

最初に1枚ワイシャツが支給されるけれど、2枚目以降は買い取らねばならない。

フルタイムでシフト入ってる一人暮らしの子とか、洗い替えが欲しいけど、先立つものが無くて買えなくて…

「いつ選択してるの?」て聞いたらば、「もう5日洗濯してない(笑)!」と言う猛者もおったよ。

ひと月まるっと同じワイシャツで、なんだか あの子 汚ぼったくなってるな~…と思っても、流石にね、そればっかりは私でも指摘出来ませんよ…ねぇ。

因みに、4割引でも利益になっているんだって、とある本社の方が教えてくれたよ。

あこぎ やな…

と 思っていたのは、内緒だ。

─監査部─

外部の経営コンサルタントにテコ入れしてもらって、帳票類も刷新されて、それまで連絡ノート(一般のB5ノート)に連絡事項が有る時のみ記入すれば良かったものが、毎日スタッフ全員『日報』を書かねばならなくなった。

月間目標に個人目標も立てねばならず、ちょっと面倒臭くなってきた。

スタッフ間の交換ノートは毎日 楽しく書いたり読んだり出来てたのに、何でだろう。

それまでのユルユル感を知っているだけに、反発心やら抵抗やら抱いちゃって、ついていけなくなってきてた。
表には出さんかったけど。

同時期に監査部が立ち上がり、細かなチェックが全店舗に入る事となった。

監査部=帳票的なもの

ていう先入観を私も店長も持っていて、2人で必死こいて売上情報等の保管場所やら整頓して、鍵付きの引き出しやバックヤードに置き場を作った。

んだが。

初めて入った監査の日。
私が監査部長の相手をしたんだが。

何かね、売上高やら接客やら店舗作りなんかの、販売に関する事をメインで尋ねられた。

え、折角 置き場作ったんだから、そっちもチェックしてよ…監査、だよね???

思ってた。

まあ、逐一全部 的確に答えてたら、なんか知らんが監査部長には気に入ってもらえたんやけど…

拍子抜けたのは、言うまでもない。

監査にも、色々あるんだな(遠い目)

─過不足金─

溜め銭、レジ売上と実現金が合わなかった時、帳尻を合わせる小銭の事。

一円十円 合わない時は、溜め銭が増えたり減ったりしてたんだけど、「釣り銭準備金 以外の現金を店舗に置かないように」と、本社から指示が来た。

要は、多ければ過上のまま納金、足りなければ不足のまま納金せよ、とのこと。

会計での釣り銭間違いは、多くとも少なくとも客離れの一因となりうる。

同時に、500円以上の過不足金は発生の午前中までに、金額と原因と予防法を、本社へ報告をせねばならなくなった。

過不足起きると原因究明でレジ締めにも時間を要するんだけど、報告書作成まではスタッフには強要出来ない。

いつも「明日に託して」と言って、早番スタッフに連絡メール入れたり、休みの日でも対応してた。

自分はサービス残業して、当日中に全部終わらせちゃうんだけど。

だってさ、分かんないままとか気持ち悪いじゃん。スッキリ寝たいじゃん。

─WARM BIZ─

ウォーム・ビズ、これもクール・ビズと同じく、始まった当初はよく分からないものだった。

初めてウォーム・ビズを知ったのは、やはり本社から送られてきたオレンジ色のロゴPOPで。

出勤したら、20×5cm程の小さなPOPが、アクリルケースに入れられて什器の上に乗っかってたので、早速 店長に聞いてみた。

「何スか?ウォーム・ビズって」

「単語的に、暖か素材、て事かしら?」

だそうだ。

やはり、特に情報も無い中、クール・ビズと対なのかな、くらいで、メンズニットの上にPOP出てただけ。

翌翌年からは、クール・ビズの爆発に乗って、ウォーム・ビズも爆発するんじゃないかって予測で、ウール素材のネクタイやワイシャツなんかの暖か素材シリーズの生産が始まった。

んだが。

こっちはね、クール・ビズ程の人気は博さなかったな。現行は知らんけど。

既に某メーカーが暖かインナーをバンバン出てたり、皆様 上に着込むものは大概 持ってたりしたからね。

どっちかと言うと暖か靴下だとか、ひざ掛けとだか、プラスワンで温度調節出来る物の方が、需要があった印象。

カーディガンとかベストとかの羽織物は、品薄だったよ。

─自社ブランド─

商品の価格帯や素材により、ブランド名の統一化が図られた。

3ブランド名、タグも10種類くらいになったかな。

全部、自社の工場が作っている商品、なんだけどね。

中でも一番お高い価格帯の商品は、高番手の細い糸を使ってたり布地の打ち込み本数も多くて触り心地良くて。縫製もパターン(型紙)も ひと工夫あって、凄く良かった。

今も生産してるかは、知らないけれど(笑)

──流石に語り尽くしたか?
他にも思い出したらば、話の途中で脱線するかと思います。

⑮に続く──

幼少ひとコマ⑥

今現在は くどくど四の五の語っている私であるが、小さい頃は口より先に手が出る子だった。

気になるものを見かけると、とにかく触って確かめなければ気が済まなかった。

いや、若干 現在でも そういやそうだな まず触ってみてるわ、と思ったんだが、置いといて。

あれは、一家揃って動物園に行った時の事。
パンダでも見たのかな?覚えてないんやけど。

「母ちゃん、おしっこ」

そこそこな混雑ぶりで、私は母親に手を繋がれて、トイレに並んでいた。

女子トイレって ほら、個室が並んでいるじゃない。

何となく、空いたり閉まったりする白い扉を不思議に思っていた。

1人はけ2人はけ列は進み、つぎは私たち母子の番。

あ、なんだろう?コレ…

扉を支える蝶番の金具は、いくつか真横に線が入っていて、とてもとても気になった。

キィィィ

「…いたぁい!!!」

何とね私、一番手前の個室に入った方の蝶番に、手を突っ込んでしまった。

「えええ!!?ちょっと、アンタ何してんの!!?すみません、すみません!」

声に驚いて見知らぬ女性の方は扉を開いてくれたんやけど、えれぇ力で閉まる扉に挟まった右手親指は、真っ青に内出血して ぽっくぽくに腫れた。

後に母親は語る。

「こんな馬鹿な事するの、アンタしかいなかった!」

大人しい姉二人は こういった怪我とは無縁。三番目にして、血相変えて病院に連れて行ったそうだ。

その時、右手はこれでもかと包帯ぐるぐる巻にされていて、自分で包帯変えたりしてたの覚えてる。

あれがさ、便利で面白いと思った。
包帯の端っこを留める、両側に金属の小さい爪の着いた平ゴムのやつ。名前は知らん。

一週間ほど経ったら、親指の爪の付け根側が浮いてきた。

指先は繋がったままで爪がぶら下がってる状態で、あ、爪が無くなっちゃう!と流石に危機感 抱いたんやけど…

よく見たらね、小ちゃい爪の赤ちゃんが頭を出していた。

おおお!!?爪って、はえるんだ✨✨✨

結構感動した。

ただな、剥がれた元の爪が指先にずっと付いてたままで、新しい爪が伸びるまで放置しちゃってさ。

随分薄くなって20代頃には血の色も失せたけど、今だに右手親指の爪の先には、治りきらない爪がぶら下がってた痕が残っている。

まあ、コレのお陰で最悪、両手の親指を見比べれば左右が分かったもんだから、覚えずに済んだんやけどね。

あんまり人前でやる訳にはいかんから、チョンチョンして親指 見る癖は無くなったけど。

…いや、コレの所為で、未だに左右が分かってないのかも(笑)?

⑦に続く──

そうそう、思い出した。

あの時の爪はI先生(お医者さん)が「新しい爪が伸びれば自然に取れるよ」て 仰ってたんやけど、しっかり屈強な皮が3mmくらい、爪と繋がって頑張っちゃっててな。

随分 新しい爪が伸びても自然には取れなかったから、I先生がハサミで皮膚を切って取ってくれたんだっけ。

シーン・ビジネス⑮

接客嫌いで嫌いで ひたすら以外の雑務に逃げていた私だが、これでも二度、お客様から指名で お褒めの言葉を頂戴している。

どちらもT店所属時代の話。

─ケース1─

あの日は閑散期だったかな。N店から店長直々、中番ヘルプに入ってくれていた。

N店長はレジカウンターの中から、早番のT店長はレジ前に立ち、店長同士の込み入った話をされていた。

N店へも何度かヘルプに入っていたのでN店長とも顔見知りであったが、流石に、ねえ。

聞き耳立てるのは、良くないかな。

遅番の私は独りレジから離れ、レジから一番遠い店頭ネクタイ什器のディスプレイ変更して時間を潰していた。

「何だ、この店は!」

突然の怒鳴り声に振り向けば、おじさまが憤り聞き取れないくらいの早口でズカズカ店舗にご来店された。

「お客様に背を向けて楽しくお喋りか!たるんどる!責任者は居ないのか!」

とか何とか。

あきらか あたおかな難癖を捲し立てながら、レジで会話していた店長二人にまっしぐら。

うわぁ…ヤバぃ人、来たぁ…(引)

責任者を出せと言っても、一直線に進んだ先が店舗の責任者である。
他店の責任者もおる。

私は戦々恐々、様子を伺っていた。

恐らく団塊世代の おじさまの言い分から察するに「若い男女が お客様をぽっぽいて、キャッキャウフフと会話に勤しんでいる」ように見えていたっぽい。

N店長は私と同い年だけど、T店長は2回りは年長。
パッと見、ロングの茶髪に小さいから、最近の女子だと思い込んだようだ。

うわぁ…お店の中、お客様なんか居なくて、スタッフ三人だけだったのに…(引)

「私が店長です。どうもすみません、仕事の話をしてたんです」

T店長もT店長で あまりにも あたおかな言い分にカチンときてて、まともに相手をする気は無さそうだ。

そりゃそうだ。
お客様からの申し出ならさておき、突然入ってきた ただの通行人なんだから、相手になんかしないよ普通。

お客様が店内に居ないことは、店頭で脚立に登って半身で店内を逐一確認していた私が保証する。

それにしても、ちょっとT店長も語調がいつもより つっけんどんに聞こえはした。

こういう熱が下がらないクレームの時は話を聞く担当者を変えるのが一番なんだが、店長より格下の私が、どうフォローに入ったものかわかんなくて、背筋を伸ばして待機の姿勢をとったまま、動けなかった。

おじさまは「はあ、はあ」と流し聞きする店長らに向かって、30分くらい怒鳴り散らして気が済んだようで、店外に向かって歩みだした。

あ、流石にこのまま帰しては、二次クレームに繋がるのでは。

「ありがとうございました!」

私は他のお客様対応と同じく、退店するおじさまに向かい挨拶をした。
いつもより長めの最敬礼には、一応した。

「…ひぇー…おっかなかったですね、店長、大丈夫ですか?」

私はおじさまが通路に見えないことを確認して、店長に声を掛けた。

「ああいう、頭おかしい人の話は、聞かなくて良いのよ」

「て、店長、強いっスね…」

なんて事件が発生した、数日後──

本社から連絡が来たと、店長から聞いた。

「もー、こないだの人、本社にクレームのメール入れたみたい」

「マジっスか」

懸念した二次クレームに、本社を巻き込んで発展してしまった。

「あ、あと、○○さんにお褒めのメールが来てたって」

「え?いつの話っスか?」

そんな神対応してただなんて、全く、身に覚えがなかった。

お客様は普通、販売員を善く思って下さったら、その場で直接 礼を述べ、終了する。

クレームは逆に、くすぶった思いが消化されなくて、お客様の声BOXやらお客様センターに申し入れる。

一概に全部がそうかと言われれば、まあ そうで無いケースもあるんやが、一論として。

わざわざ時間を割いてまで名前も知らぬ販売員を褒めるなんて、面倒臭くて普通はしないのだ。

「クレーム入れたのと、同じ おじさん」

「えッ!!?何でッ!??」

全く、身に覚えが無い。

店長の話だと あの おじさまは どうも『スタッフ二名はレジ内で談笑していたが、もう一人のスタッフは 対応が良かった』的な事を、なかなかな長文メールの末尾にポロッと書いていたらしい。

「私、何か した…???」

何度思い返しても、おじさまが激おこ中、私は遠くで遊技場仕込みの待機の姿勢をとり、退店挨拶 後 これまた遊技場仕込みの最敬礼をした、だけ。

正直、お辞儀の綺麗さには自信は有りはした(過去形)
が、それだけ、である。

わ、わざわざ個人を特定する褒め方を…

クレームになっちゃった店長の手前、もの凄くバツが悪い。

同日中に、真偽確認で本社からM営業とO氏が来店された。

私も どういった状況だったのか説明に追われ「店長同士の打ち合わせをしていただけです」と豪語した。

「やっぱり、コレ○○の事か。シフト的に そうだと思ってたんだ」

A4用紙に びっちり認められたクレームのプリントを指して、O氏にもM氏にも褒めちぎられて、凄く困った。

このクレームお褒め内容は名前を入れて、本社全体に行き渡ったと言う(遠い目)

こんな状況下だよ。手放しで喜べないよ。

余計な事をしてくれたな…(怨)

と 思っていたのは、内緒だ。

─ケース2─

そろそろ春になる、という閑散期。

あんまり暇なんで、私は平什器に上の方の商品を降ろして、ペタペタ ガムテでホコリを取っていた。

「すいませ~ん」

「はい!いらっしゃいませ!」

入店しな商品には目もくれず スタスタと早足で真っ直ぐに、若いリクルートスーツの女性が 私の元へとやってきた。

「あ、ごめんなさい、客じゃないんですけど…」

「お困りですか?お手伝い致します♪」

客じゃない、と言われても、店舗の入ったショッピングモールに ご来店されている時点で、お客様である。

前者と言い分違うじゃねぇか。
なんて声が聞こえた気はするが、それはそれ、これはこれ。

入り組んだ館内では、良く道を尋ねられたりなんかする。

大通路に半分角地の自店は、道案内のサービスカウンターもどき にもなっていた。

「あの~、説明しにくいんですが…ええと、そのメジャー貸してもらえますか?」

「コレですか???」

お客様が指さしたのは、私が首から提げている商売道具のメジャーだった。

サイズが分からないのかな?

ぶっちゃけ、女性の採寸は気が引ける。試着して貰ったほうが手っ取り早い。

「ご試着も出来ますよ?」

「あ、ええとぉ、そうじゃなくて…」

なかなか要領を得ない。
お客様は、カバンの中から一枚のA6程の紙片を取り出し、見せてきた。

こ…コレは!フルオーダーの発注書!…か!??

罫線で囲われた欄には一マス一マス、首周り胸周り腕の長さから手首周り~股下までのcm空欄、ここに実寸を記入するようだ。

「実は、就職が決まって…」

「あら!それは おめでとうございます♪」

「あ、ありがとうございます…で、ですね、そこが制服なんですけど、この用紙を記入して提出するように言われまして…」

ほおぉ…これヌード寸法を記入する様式だよな、そんなん中高生の制服作りに行った時にしか目にしてないぞ。

一般的に社会人の制服はSML~、女性物なら せいぜい号数である。

…既製品じゃないな、作るやつだ。
一体全体、何の仕事に就けたんだ??

なんて、不要な詮索が口から出そうになったが グッと飲み込み、話を最後まで聴く。

女性の話では一人暮らしの家にはメジャーが無く、買いにショッピングモールに来店したが売り場が分からず訪ねようとしたところ、偶然、私がメジャーを首から提げていたので借りようと思ったんだそう。

なるほどな~、メジャーと試着室お貸ししても良いんだけど…

肩幅や着丈なんかは、自身で測るのは難儀だろう。

「よろしければ私が、お測り致しましょうか」

「わ!良いんですか!?」

うん、暇だし。

店内に他の お客様もおらんし、かまわん。
私はレジからボールペンを持って来つつ、首からシュッとメジャーを引き抜いた。

「メジャーって、必要な時は必要ですけど、そうそう使わないですよね~」

「そうなんですよね、買っても困っちゃうかと思って」

「次使おうと思った時には見当たらなくて、結局また新しいの買っちゃうんですよね(笑)」

「そうなんです、そうなんです(笑)!」

なんて談笑を噛ませながら空欄を埋めて行ったんだが。

く、くうぅ~…測りにくい…

男性ならばソフトタッチだと逆に緊張される方多いから 気にせずグイグイ触っちゃうんだけど、女性はな~…

正直、どこまで触って平気か分からない。その上、触る気無くても隆起に触れちゃったりするから、本当 困る。

いつもより かなりな へっぴり腰だったのは、言うまでもない。

「助かりました!ありがとうございました~!」

「また お困りの時は、ご来店下さいね♪」

出来れば、買い物で。

なんて下心満載で、女性の方を お見送りして数日後──

「○○さん、お返事、書いて」

「え?」

店長が差し出してきたのは、ショッピングモールの “お客様の声” BOX投函用紙。

お客様から店舗へ意見が来ると、店長が返事を記入して館へ返却、後、館内に掲示されるんだが。

「これ、○○さん宛になってる」

「ぇえッ!?」

受け取り読めば、あの時の採寸の要約とお礼文。
『困っていたので、大変助かりました!ありがとうございました!』
冒頭に『○○さんへ』と私の苗字が記入して有った。

う、わ~!わ~!わぁ~!?
名乗ってないのに、いつの間に名札覚えてくれてたの!?

内心、パニックである。

名指しで お礼文もらえる事ほど、嬉しいことは無い。

「こんなことやってたとか~、も~、教えてよ~」

「あ、あはは~(汗)」

だって、職務と無関係なただのお節介なんだもの、店長には言えないよ、普通。

「職務外の事に時間割いたから、叱られちゃうかな~、と思いまして…」

「う~ん、他の お客様を放っておいてやってたら問題だけど、暇だったんでしょ?」

「超絶、暇でした」

流石T店長、私が他のお客様を放ったらかすなんてしないって、分かっていらっしゃる。

ケースバイケースだけれど、下手な事すると会社的に問題視されちゃうから、真似はしない方が無難と思うよ。

早速お返事を書くべくボールペンを構えてレジカウンターの隅っこに陣取どった。

んだが。

な、なぁんも気の利いた言葉が思い浮かばない(泣)!

褒められるなんて まず無い人生だったから、卑屈な言葉しか出て来なくって、気の利いた応え方が分からない。

おまけに ちょいちょい会計が入るから店長と位置交換してレジ打ちして、全然、集中出来ないんだ。

「──店長。ちょっと、休憩室でコレ書いてきて良いッスか?」

「いいわよ」

「あざッス…」

という経緯で、休憩室の長テーブルに移動して、携帯でお礼文へのお礼文を検索したり何なり、頭フル回転で30分くらい掛け お返事を書いたんだな。

いや、だってさ、ショッピングモールに掲示されてるお客様の声の用紙、見た時 有るかな。

A6位の用紙半分がB罫線になってる感じ、あれに びっちりよ、びっちり お礼文が詰まってたの。
文字も綺麗で誤字も無くてさ、あれ書くの結構 時間掛かったと思うの。

普通のご意見て一行二行くらいで、回答の店長らの文の方が長いんよ。

だから、せめて回答用の半分は私も びっちり埋めなきゃじゃない。
「どういたしまして」一言 程度では終われない世界なんよ。

何て応えたかは忘れてしまったけれど、欄外に一行はみ出すまで お返事書いて、店舗に戻った。

こういう時な~、気の利いた人間になりたいって、心底思う。

─おまけ─ビックリマーク症候群

なんて言葉が昔は有った気がしたんやが、メール文で上司やらと連絡する部下が陥ったりする『!』に、恐怖心や拒絶反応を起こしちゃったりするやつ。

今でこそ どぎついくらい『!』を多用している私であるが、実は、ビックリマーク症候群で二十代半ばから10年強、部下への激励や友人へのメールですら、一切『!』を使用出来なかった。

文脈的に『。』だと味気なくて『!』を使いたい時は、代わりに『☆』や『♪』を使っていた。

なんでそんなことになっちゃったかって、私を採って下すった営業さんが担当変わった後も、店舗の日割予算をクリアすると『やったね』とか『頑張ったね』てメールをくれたんやが…

全ての単語の末尾が『!』だったんよ。
仕事の指示メールも、全部『!』。

それも、そこだけ赤い絵文字を使うんよ。

ちょっと、当たりキツイな…

なんて、思い始めた辺りから『!』を見るのも嫌で怖くなっちゃった。

コレってさ、漫画や小説を書くのには致命的だから、何とか使うように心掛けた訳で。

今、もしもビックリマーク症候群の方が私のポストを見ていたりしたら…

ごめんなさい。

としか言えない。本当に申し訳ない(礼)

まだ私もね、赤文字の『!』には、抵抗が有る。
多分、あれは一生使わないと思う。

⑯に続く──

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