【感想文】こんな時だから『ペスト』読もうぜ(その1)

こんな時じゃないとしないだろうな、ってことをしよう、と考えて思いついたのが「大好きだった小説を原語に近い形で読み直し、尚且つ全力でおすすめしよう」ってことで、アルベール・カミュの『The Plague(ペスト)』PDFをダウンロードして読み始めて驚いた。

四月十六日の朝、自分の診療所に出かけたバーナード・リウー先生は足の下に何か柔らかいものを感じた。
(When leaving his surgery on the morning of April 16, Dr. Bernard Rieux felt something soft under his foot. )

「今日じゃん」

4月16日。ちょっと遡ると「194x年のオラン(アルジェリアの都市)」での出来事。70年前の今日。これはいいぞという直観。まだ何をどうするかも決めてないけど、取り急ぎ今日ポストすることに意義がある。あるある。んで見切り発進。

この小説はもう本当に最高の小説で、いや、最高といえば他にも『カラマーゾフの兄弟』とかもあるけど、「こんな時だからこそ読みたい」では今ナンバーワンだと思うんだよね。ちょっと前に国営放送でこの作品に関する番組をまとめて再放送していて(さすがだな)って思ったけど、残念ながら時間の制約もあり、俺が最高と思ってる箇所が全部は語られてなかったんだよ。

以前一読を勧めた知人の感想は「怖かった」で、確かに恐ろしい描写はあるんだけど、作品全体としてはタイトルから想起されるようないわゆるパニックものなんかでは全然なくて、とてつもなく過酷な状況に置かれた男たちが奮闘する、熱い熱い物語なんだ。

敢えて「男」と書いたのは、この作品が第二次世界大戦下の状況を厄災で覆い隠したものなせいか、登場するのがほとんど男ばかり。女性は「誰々の妻は〜」とか、比較的ぼんやりと描かれてる(読み直して改めて気づいた次第)。

じゃあ女性は全然関係ないのか、というと『異邦人』のマリィのような奔放なキャラはいないけれど、女性を称賛した箇所は随所にあって、主人公である医師リウーの奥さんへの思いとか、母親の描写なんか(著者アルベール・カミュ自身の愛と尊敬と感謝を込めたとしか思えない)もう、泣けるのなんの。

そんな訳で、今や大概の物語に思い入れることができなくなった俺が今最高にイケてると感じるキャラ『ジョゼフ・グラン』氏を中心とした(いや端っこなんだけどそこがまた○)魅力的なキャラクターたちの活躍を紹介しようと思ってるぜ。

とはいえ原作も長い方だし、この状況もすぐには改善しそうもないからのんびりやることにするよ。この作品でオラン市民が困難を切り抜けるのは2月。全部で5章に分かれてるからざっくり2カ月に1章ってペースかな。

あ、そうそう。読み聞かせのYouTubeビデオが著作権侵害、って残念なニュースを読んだから敢えて書くけど、翻訳も著作物だからね。なので元のテクストは著作権の切れた英語版をもとに自前の意訳で紹介するよ。

なるべく簡素な日本語にするのが主旨だから、幼稚さとか誤訳が気になる人は是非是非、日本語に翻訳された小説を読んでね。

それじゃ始めようか。戦いはまだ始まったばかりだ。

戦争が始まると人々は言う。「馬鹿馬鹿しすぎる。長続きするわけがない」だが、戦争がいかに『馬鹿馬鹿しすぎ』ていようと、長続きすることの妨げにはならない。
(When a war breaks out, people say: "It's too stupid; it can't last long." But though a war may well be "too stupid," that doesn't prevent its lasting.)



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