【声劇フリー台本】独白

強かなのでウジウジしてるだけではない若干キレ気味な人の一人用台本です。
ご利用の際は利用規則をご一読ください。


【利用規則】


◆この台本の著作権は全て影都千虎に帰属しています。

 商用・非商用問わずご利用いただけます。
 ご自由にお使いください。

 利用時のご連絡は任意ですが、ご連絡をいただけますと大変励みになりますし、喜んで影都千虎が拝聴致します。

 音声作品には以下を明記するようお願いいたします。
・作者名:影都千虎
・当台本のURLまたは影都千虎のTwitter ID
(@yukitora01)

 配信でのご利用も可能です。
 配信で利用される際には、上記二点は口頭で問題ございません。

 また、配信で利用される場合、台本を画面上に映していただいて構いません。

 台本のアレンジは自由ですが、台本の意味合いが大きく変わるような改変(大幅にカットするなど)は不可とします。
 便宜上、一人称・二人称を設定しておりますが、いずれも変更していただいて問題ございません。


◆無断転載、改変による転載、自作発言は絶対におやめください。


【台本】


 知っていた。
 興味を持っていないということは。
 気付いていた。
 何も見ていないということは。

 私の本質は【こちら】ではなく【あちら】だった。
 けれど選ばれたのは【こちら】だった。
 そうだろう。【こちら】のほうが、【あちら】に比べて随分と分かり良い。
 だから【あちら】ではなく【こちら】が選ばれることに対しては何の違和感もない。
 何も思うところはない。


 しかし一つだけ違った。
 私は、私には、【あちら】を選んだのだという『嘘』がどうしても許せなかった。
 私にとってそれが何よりもの侮辱だった。
 【あちら】を選んでいないということぐらい、すぐに分かった。
 私であるからこそ、その『嘘』は火を見るよりも明らかだった。

 知っている。
 そういったささやかな箇所で、私は見下し続けられていたのだと。
 あれをしてやろう、これをしてやろうと施しているつもりだったのだろう。
 もっと言えば、私に対してさほど興味を持っていないのも知っていた。

 気付いていないとでも思ったのだろうか。
 思ったのだろうな。
 だからこそ、こういう結末を迎えたのだ。

「私のものであれば」としきりに口にしていたのも不愉快極まりない。
 笑わせてくれる。
 よくもまあ、私を手懐ける為の道具ツールとして使ってくれたものだ。
 それが私の何よりもの地雷だと、知らないはずがないだろうに。
 私がそう言われて喜ぶのだと思ったのだろうな。

 思いあがるなよ。
 馬鹿にしてくれるなよ。

 私は思っているよりもずっと狡猾な人間だ。
 私だけでない。きっと誰しもがそうだ。
 コミュニケーションを円滑にする為であれば演技などいくらでもする。
 良好な関係維持のために言葉などいくらでも飲み込むし、相手が何を思わんとしているかも察する。

 自分だけが特別なのだと思わないことだ。
 自分だけが出来るのだと、他人を見下さないことだ。

 常識を欠いた言動の数々を許容していたことなど知る由もないだろう。
 どれが常識を欠いた言動だったのかも分からないことだろう。

 当然だ。私は指摘しなかった。
 きっとこれまでの誰もが指摘しなかった。
 あえて言わなくていいだろうと、自分の中に押し留めたに過ぎない。


 私は思っているよりもずっと強かな人間だ。
 この感情を、あの時間を、どこをとっても無駄なものになどしてやる気は無い。
 これは未来の私に対する贈り物プレゼントだ。
 どれもこれも経験値の糧としてやる。
 そうしていつか、見下された私の【本質】を引っ提げて高らかに笑ってやるのだ。

 他人がこの様を見てどう思うかなど知ったことではない。
 自己責任の世界だ。
 勝手に見たのはそちらだ。
 私には関係のないことだ。

 過去は変えられない。
 経験は無くならない。
 あとはどう自分が調理してやるかだ。

 記憶が消えないのなら、何度も思い返してしまうのなら。
 ならばいくらでも利用してやろうじゃないか。
 心地良い闇に沈んで停滞したところで澱んで濁っていくだけだ。
 そんなのは性に合わない。

 これは私の意地だ。プライドだ。
 好きなだけ見下せばいい。
 好きなだけ嘲笑えばいい。
 そんなものと私は違うのだと、私はこうして見せつけてやろう。

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