母乳育児の話  #2


みなさまごきげんよう。
ご無沙汰しております。ゆうきです。

母乳育児に関連するお話をよくXで拝見して以降、当事者として色々思うことがあり、久しぶりに筆を執らせていただきました。

これから産む方は体験談の一つとして、もう産んでいる方は乳児の時に思いを馳せながら、ご覧いただけると嬉しいです。

前提

Twitterでもリアルでも荒れがちな話題。
正しい&詳しい話はプロの助産師さんとお医者さんへ。はっきり言ってここにあるのは素人母の一個人のお気持ちの話がほとんどです。全ての文に私の場合は、と頭に思い浮かべてお読みください。
母乳育児を推進したい訳でもミルク育児を批判したい訳でもありませんので、その点もご了承ください。

我が家の状況

上の人も下の人もほぼ完母。
一緒にいる時は全て母乳、私不在で夫や保育園に預ける時のみミルクというスタンス。上の人は卒乳済み、下の人はそろそろ保育園なので朝晩の授乳以外はミルクになる予定。あっさり出るようになる人もいるようですが、私はしんどい思いをして、でも最後は完母になった母の1人です。

上の人の産前

ドラマ「コウノトリ」を観て出産全般にビビっていた初めての妊娠。何かあった時のためにNICUのある病院で産みたい、特に根拠なくそう思った私は、地元の大病院に分娩予約を入れた。
大学から地元を離れ、かつ一番近い病院でもなかったので何の情報もない。里帰り後の健診で母乳推進してますと助産師さんから指導を受けた時も「へぇ。まぁ出るなら母乳がいいんだろうから助かるな」くらいにしか考えていなかった。
今なら言える、
覚悟はいいか??

魔の頻回授乳

麻酔もなく、人並みに苦しんで私のお産は母子共に健康に終わりました。夜中の12時から陣痛がきて産まれたのは21時台。満身創痍。

とりあえず寝る。4人部屋母子同室。
助産師さん「添い寝は禁止ですからコットの中で寝かせてくださいね。」眠る。朝方起こされる。「授乳の時間です。これから3時間毎の授乳が始まります。時間になったら母乳部屋に来てくださいね」

始まりました、頻回授乳。
母乳は乳腺を通って血液を元に作られるけど、乳腺の開通工事のためにはとにかく吸ってもらって刺激しないことにはいけないらしい。そのためどんなに空けても3時間毎に授乳する。授乳するというより授乳を試みる。新生児は飲むのも下手、新生児母は飲ませるのも下手なのでオムツ替えて授乳してオムツ替えての一連の作業に1時間半近くかかる。そうして1時に起きて2時半までかかったとしても次起きるのは4時。インターバルが3時間ではなく、3時間毎に、1日8-10回の授乳を目指す。あれ?1日って24時間だったよね?産後のボロボロの身体で始まる頻回授乳。しんどすぎた。死ぬ。でもみんな母乳育児頑張ろうと決めて入院してきた方ばかりなので全妊婦さんが真面目に取り組んでちゃんと4時過ぎに起きてきてた。(みんな3時間毎に集合するのでだんだん顔を覚えていく)、助産師さんも常に1人2人が母乳室に常駐して、マッサージしたり指導してくれる。
とにかく眠い。吸わせても吸わせても出ない。お腹減ってるからめっちゃ泣く。子が泣くから眠いのに中々眠れない。そんな3時間毎。3日くらい経ってもあまりに哺乳量が増えず、体重が2500gを下回る。(産後一時的に体重が減るのはよいけどあまりに減りすぎのため)助産師さんが重々しい口を開く「ミルクをあげましょう」お願いします。その頃にはすっかり授乳がうまくいかないことに、常に子が泣いていることに、全然眠れないことに憔悴しきっておりそのお願いしますですら大号泣。

おーなんかみんなで同じ部屋で授乳するなんて部活みたい(?)と思っていたあの頃に帰りたい。でも他の人も、私のように中々出ない人がほとんどでたまに出るけど赤ちゃんが飲む量が追いついてなくて母乳過多で辛そうな人もいて、毎日あの部屋では誰かが泣いてた。大の大人が胸を出して泣いているあの光景が私にとって母乳育児のスタート地点。その印象があまりに強く、Xでは普通に出るようになったママを散見するので最初は驚いたけど、いろんな方の話を聞くと本当にすんなり出る人もかなりいるよう。個人差激しすぎる。お産が痛いのもアダムとイブのせいなら、母乳がすんなり出ないのは誰のせい?いい加減にしろ???

何回も何回も吸わせるのに出ない。出ないから飲めない。10分くらいかけて搾乳して10mlとかを手で絞る→その後吸わせる→ミルクという授乳の大変なところもミルクを準備する手間も両方こなす。何度も言うけどそれが3時間ごと。眠い。
(最近Xで産後父子同室にしたら良いと言う方に対して昼間仕事してるのに夜子供の面倒を見させるのか!父親が死ぬぞ!と言っている方がいましたが、そんなことを言っていたら授乳婦は大体もう死んでいる。)

ミルクのおかげで体重の減りが止まり予定通り1週間足らずで退院。あれだけ退院直前まで哺乳量が増えなくてマッサージを受けていたのは私だけだったように思う。

産後2ヶ月頃まで

退院後も手絞り→飲ませる→ミルクの連続。段々40mlしぼれるようになった。片側15分ずつかけて40mlを搾る。もちろん産院と同じで母乳の分泌を促すために3時間ごとにあげる。でもすぐにうまくは吸えないから手絞りで柔らかくする、その上お腹がいっぱいにならないからミルクを用意してあげる。授乳にかかる全てのタスクをこなすハメに。手絞りってめっちゃ時間かかる上に対して大した量は絞れない。悲しいけど。眠い、つらい。里帰りはしてるけど母乳を軌道に乗せたいなら子を親に預けて眠るのも1、2時間しかできないから、ただただ眠い。新生児期って生後たった1ヶ月しかない尊い時期のはずなのに、凄く辛かった。
そうこうしているうちに出るようになったけど、次は分泌できたものが吸いきれず乳腺炎。38度の熱。総合病院は本来熱ある人出入り禁止なのに、どうしようもないから病院へ。葛根湯とカロナールとお友達に。その後近所の桶谷式の助産院を勧められて週2、3日通う。
最終的に2ヶ月を迎える頃に搾乳やミルクを卒業でき、普通の頻回授乳のみで子を育てられるようになった。

軌道に乗ればあとは楽。
あげたいときにすぐあげられる。後片付けもいらない。荷物最小限で出かけられる。復職までは1日6-8回くらい、復職後は朝晩のみ。あの辛かった日々が遠い。
そんなこんなで、1歳半でぼんやり卒乳した。

なぜ母乳に拘ったのか


そんなに辛いからやめれば良かった、ミルクにすれば良かったと思われるだろうが、当時の私はそう思えなかった。母乳神話がどうというより、「(本来母乳でも人工乳でも良いのだが)目の前でおっぱいを求めて吸ってでも飲めなくて泣く我が子」を目の前にして罪悪感でいっぱいだった。おっぱいの出るママでなくてごめんね。おっぱいが出ないのに吸わせ続けてこれは虐待か?でも吸ってもらわなきゃ出ないんだよ。。そんなことを本気でそう思って、辛かった。これが本能かと言われればそうかもしれないし、ただ母乳をあげたいと言うエゴだったのかもしれない。他の方も謎の使命感に駆られて辛い思いをしたと仰っていた。
もしかしたら長子を育てる時にありがちなこうなりたい母像に自分自身が夢見ていて母乳をあげる母になりたかったのかもしれない。分からない。

辛い辛いばかり言っているけれど、きっと上の人も辛かったと思う。吸っても吸っても出ないおっぱいを前に、いっぱい泣いていた。母乳育児は子供との二人三脚、母子初の共同作業である。

とにかく何回も何回も親も子も涙した母乳育児だった。

下の人の産院

上の人の保育園もあり、下の人は無痛分娩のある都内のクリニックにした。
食事が美味しいと評判で、お値段も120万近くするような病院。ちなみに上の人の時は80万近くしたので手出し30万、今回は手出し70万。ひえぇ。東京は産むのも高い。都内でも高くない病院もあると聞いたが、我が家から通う距離の病院はどこも似たり寄ったりだった気がする。

またあのしんどい授乳になるのかな…次こそはもう少しミルクに頼って心に余裕を持ちたいな。そう思いきや、今回は産んだ直後一瞬出ない&乳頭混乱で悩むものの、退院する頃には普通に完母になっていた。産道と同じで、一度開通工事が済んでいると次も楽らしい。あの涙の日々のおかげで下の人にはスムースに授乳できるのかと思うと、上の人が更に愛おしかった。
下の人を産んだクリニックは本当に何も言わなくても「はいじゃあ寝る時間なので預かりますね」とすぐに預かってくれて、むしろこちらが母乳で育てたいので、泣いたら連れてきてくださいと言わなければそのまま母が寝ている間にミルクをあげてくれるような環境だった。退院したら上の人もいるので病院にいる間はなるべく休んで体力の回復に努めたかったけど、このシステムは衝撃だった。母乳出なかったらマッサージとかしていただけます?と聞くとうーん…しますよ?みたいな反応。母乳の方どれくらいいます?と聞くとこの病院にいらっしゃるお母さんはあまり強いこだわりではないですね、と。

そこで上の人の病院で言われたことを思い出した。
「母親が産んだあと母乳育児をしているかどうかの割合は産院によって異なります。当院で産んだお母さんは9割以上母乳育児です。」
そうだ、あの病院しか知らなかったからあれがスタンダードだと思っていたけど、違ったんだ。

考えてみれば産院なんて産んだ数しか経験しない。どちらの産院もほとんど前情報がない状態で分娩予約をした。比べてみて、初めて分かった。あの病院は本当に母乳育児に力を入れている病院だったのだということを。

その後、当時を思い出して産院でミルクをあげるのも母乳相談室の乳首を使い(後述する母乳育児推奨の哺乳瓶の乳首のこと)頻回授乳を進め、無事完母になって退院した。
その後も今に至るまで、預ける時以外は完母である。ちなみに一度下の人の退院後に電動搾乳機をレンタルしたことがあったが、その時は1回の搾乳で左右合わせて200ml絞ることができた。体重の増加も順調なので、足りてないことはないだろう。

まとめ

上の人の時なんであんなに辛い思いをしてまで完母に拘ったのか、今となっては謎である。ただ、下の人が一瞬乳頭混乱になって授乳を拒否された時も辛くて、胸が張り裂けそうだった。腕の中でお腹を空かせて泣かれることが辛かったからだと思う。ミルクを準備する間泣かれているのも辛い。世の中にはD-MERという母乳をあげること自体が苦痛に感じる症状もあるらしいけど、私にとっては辛くもあり、幸せな時間でもあった。非効率、伝統的で今風じゃない、そうは思うものの仕方ない、私がそうしたかったんだもの。
そんな私だけど、母乳育児は自己満足の世界だと思っている。スムーズに適切な量が始めから出る方は何も苦労しないのでしょうけど、基本的に軌道に乗るまでは苦労苦労苦労涙涙涙の連続。あれを人に強制したいとは全く思わない。子供産む前に仲の良い友人があれだけ辛そうにしていたら多分、ミルクにしなよ?便利なものは使っていかないと!子供だって母乳かミルクかなんて覚えてないんだし!と声をかけていたとすら思う。
それくらい母乳育児をしたいと思う感情は意味不明だなと思う。意味不明なんだけど、やりたいし、幸運にも努力した結果出るようになったから私はそれで良かったと思ってる。逆にあっさり出た子で全然拘らなかった!ってこといたし。本当に個人差。みんな好きにして欲しい。
ただし母乳に拘る道端の人やたまにXで見る男、お前らは絶許な。

余談だけれど、ミルク代と母乳の食費どちらがかかるかとかどちらが優れているかという議論はと
ても不毛だと思う。どちらもお金も手間もかかって素晴らしいです。ミルクなら鉄分が取れる話もよく聞くし。専門家以外は宗教戦争になるだけなので不毛。


後悔(と呼ぶほどではないけど)があるとすれば、それだけ母乳育児は大変だよ、最初はスムーズに出ないのが当たり前なんだよ、という情報を得てから挑みたかったということだろう。上の人の産院ではほぼみんな軌道に乗るまで苦しんでいたのに私はその事実を知らなかった。ただNICUがある病院をと選んだだけだった。そこまで辛い思いをしてまでやりたいのか、考えていなかった。
逆に、母乳育児をしたいと思う人が下の人の時のような産院だとかなり難しいと思う。母乳育児は一にも二にも頻回授乳とたまにマッサージだと思うから。

下の人の産院で産院の違いを如実に感じた私はGoogleマップのそれぞれの口コミを詳細に書いた。もしこのnoteを読んでいるのが経産婦の方だったら、ぜひそのことも含めて(もちろんそれ以外についても)口コミを書いてほしい。母乳に限らず事前に知らないのと知っているのでは選択する際にもした後も感じ方が大きく変わると思うので。
みんなが分娩予約をするときに参考にできるような口コミがもっといっぱい書いてあったら良かったのになと思う。

母子同室について

最近Xで話題の母子同室について。産後退院までの間母子同室で過ごすことに議論が起こっているよう。
ここで考えたいポイントがいくつかあります。

①WHOの母乳育児10か条

24時間母子同室が推奨されており、母乳育児のスムーズなスタートに頻回授乳が必要というのが教科書?の内容であること。
母乳育児したい方は一度は目を通すと思いますがとにかくこれをフル推進したのが上の人の時の病院だった。

②母子同室≠添い寝。

私が産んだ産院はどちらも母子同室かつ添い寝はNG。
頻回授乳でとにかく眠いと産院によっては添い寝添い乳を推奨されるらしいけど、産前に漫画「透明なゆりかご」を読んでいた私は添い寝添い乳は絶対にしないと決めていた。(ベビーの安全第一だし、お胸の形も悪くなるって言うし。)
寝る時は添い寝添い乳禁止コット(車輪付き新生児用ベッド)で寝かせることを全ての産院で徹底すべき。大人の布団顔にかかっただけで死ぬ生き物を育てているということを忘れてはいけない。

③頻回授乳はしたいけど母子同室はしんどい。

本来であれば頻回授乳をしたい授乳婦は3時間毎に赤ちゃんのところへ通うのがベストだと思う。下の人の時はそうだった。でも、その体制が取れる病院とそうでない病院があるのは確か。
少し話が逸れるけど下の人の病院は全てのコットにベビーセンスを取り付けており、呼吸が止まったらすぐにブザーが鳴る仕組みを導入していました。しかし、大病院で基本的に人手不足が常である産科で基本預かりで安全を担保するのは難しいのではと感じるところもあります。やれる病院もあるかもしれませんが、体制にかなりバラツキがありますし病院としてはリスクなので今の産婦人科を取り巻く環境では難しいと思います。現実的な策としてはもし夜は預かってくれる病院で産みたいのであれば産んだ方の口コミを調べて、ご自身で選択する必要があると思います。

そう、何にしても、情報が大事。とにかく情報を集約し次の出産を控えたママさん達が自分の思う出産、産後を少しでも実現できるように、産んだ私たちはGoogleマップに口コミを書こう。それを提唱したい。
(ちなみに下の人を産んでから上の人の口コミを書いたのですが、とっくに10,000人以上閲覧されているようです。特に総合病院の話題は少ないので需要があるんだろうなと何となく思っています。)

母乳育児を支えてくれたものたち


物品系で私の母乳の助けとなったもの。

①母乳相談室

母乳育児をする上で欠かせないと思う乳首。産院やネットでしか買えないです。一瞬他の乳首を使ったら乳頭混乱を起こしたのでもう私はこれしか信じられない。(これじゃなくてもいける人もいると思うけど、桶谷式ではこの乳首が推奨されています。)

②メデラ 乳頭保護クリーム

何でもいいのだけど、裂けたら終わり(母乳は終わらないけど気持ち的には終わり)なので保護保護。最初の2週間くらいはこまめに塗ってた。

③麦茶
これも何でもいいのだけど、母乳育児、めっちゃ喉乾くし水分取られるので水分取るのが大事。産前もよく飲んでいたけど、母乳育児している時もこれでもかってくらい飲み物をよく飲むようにしてた。リアルに1日3Lとか。でも飲む量減ると出なくなるから大事だったんだと思う。

④葛根湯
乳腺炎でも飲んだけど、少しでも具合が悪い&出が悪いと思った時にはこれを飲む。母乳の主成分は血液なので、とにかく血流を良くすることが大事。

⑤メデラ シンフォニー電動搾乳機


フォロワーさんに教えていただき下の人の産後に1ヶ月レンタル。電動で両方から同時に絞れるの最高。手絞りは時間かかるのよね、、自分の母乳がどれだけでてるのか、確認するのに最適。
上の人の時は母乳が安定してからは百貨店のベビールームにあるスケールで計りました。たまにだけど。

さいごに


長々と私の母乳育児について語りました。
冒頭にも書いた通り、全ての文に私の場合は、をつけて読んでください。

母乳が出るか出ないか、それは体質なので、つわりがあるかないかくらい個人差があるものだと思います。私は努力してたまたま出るようになりましたが、ちゃんと出るようになるまで3ヶ月かかった方の話も聞いたことがありますし、そこまでする前にミルクにするという話も聞きます。それはそれで良いと思います。
生かしているだけでどっちも大変で凄いです。

1人でも多くのママさんがご自身の納得のいく育児ができ、かつ短い新生児期を、短い乳児期を、尊い命と向き合う時間を、楽しむことができますように。

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