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憲法から勉強してはいけない3つの理由

思い返せば、予備試験受験時の私の憲法の勉強はことごとく裏目に回った。
予備試験論文で唯一評価がCを下回ったのも憲法である。

かといって、勉強不足だったわけではない。むしろ、過剰なほど勉強したような記憶がある。芦部憲法を読み、判例百選のまとめノートを作り、憲法ガールも全て読み、旧司法試験の過去問にまで手を出し、さらには精読憲法判例という実務家向け判例集までやりこみ、万全の状態で試験に挑んだ。

それでも成果が出なかった理由はいろいろ考えられるだろうが、まず確信しているのは「憲法から学習を開始した時点で間違っていた」ということだ。

そもそも、予備試験の勉強をしようと思ったときになぜ憲法から始めたのか、今ではあまり覚えていないが、おそらく「とっつきやすそう」「憲法が分からないと法律って分からないんじゃね」という思い込みが原因だった気がする。今ではこのような思い込みは完全に間違いだということが分かっているが、なにせ当時は法律素人だったので上記の考えに至ったのも無理はない。

そして、私以外にも、このような間違った思い込みに騙されて憲法から学習した人はいるのではないか。なにせ大学や予備校では未だにカリキュラムとして最初に憲法を教えることが多い。

彼らの言い分はこうだ。
「憲法は国家を縛るものだから、法律より上なんだ。だから、まず憲法を学ぶ必要がある。」

しかし、憲法は国家を縛るものなどといったきれいごとに騙されてはいけない。憲法は国家を縛るものであるとともに、国民を縛るものでもある(憲法27条1項参照)。そして、憲法を理解しないと法律が理解できないという必然性は全く存在しない。憲法と他の法律科目は単純に領域が異なるだけであり、憲法が法的に法律より上位に立つことは確かだが、特別視する必要は全くない。むしろ、これから説明するように、法律が分かっていないほうが憲法を学ぶ上で支障が出る。憲法を知らないことは法律を学ぶ上で一ミリもデメリットにならないのだ。

それでは、具体的に、なぜ憲法を最初に勉強してはいけないのか、解説していこう。

1他の科目の知識が必要

先ほど述べたように、憲法を学ぶ上では民法や刑法などの法律の知識が必要になる。例えば、憲法訴訟ではよく公序良俗(民法)や正当行為(刑法)、裁量(行政法)などといった概念が登場してくる。他の科目を全く勉強したことのない人だと、これらの意味不明な概念が登場したときに、全く対応できなくなってしまうのだ。実際、私は憲法を勉強した当時、これらの概念が全く分からないまま、憲法の学習を進めてしまっていた。今思うとこれは非効率以外の何物でもない。法律6科目を理解した後に憲法を学んだ方がスピーディーに知識を吸収できるのは間違いない。

2条文解釈が学べない

さらに問題なのが、憲法を勉強していても条文解釈をする力が全くつかないということだ。本来、法学というものは条文が出発点であるはずである。しかし、憲法は条文があまりにも短いので、条文を見たところで何も解決しない場合が多い。条文には違憲審査基準が載ってないし、保障される権利も曖昧である。だから、条文から離れて延々と判例と学説を学ぶということになってしまう。最初に憲法を勉強してしまうと、「法律とは条文と無関係にひたすら判例と学説を覚えることなんだな」と勘違いしかねない。やはりまずは民法や刑法など、条文解釈をメインとするオーソドックスな科目から入ったほうがいいように思う。

3努力が結果に直結しない

これも大問題である。これは最初に勉強してはいけない理由というより、あまり時間をかけてはいけない理由といったほうが正しいかもしれない。憲法の勉強が結果に直結しない理由は簡単で、「知識を問う比率が少ないから」である。刑法や刑事訴訟法の知識率を80%だとすれば、憲法はせいぜい30%である。つまり、憲法の知識をいくらつけても、30%に持っていくことしかできないのだ。そうであれば、勉強量が結果に結びつく科目を優先的に対策したほうが賢い。つまり、憲法はもっとも優先度が低く、後回しにしてもいいことになる。大学受験でも、知識率の低い国語に時間をかけるのは悪手で、文系なら英語や社会科に時間を回すのが鉄則とされていたが、予備試験でも同じことが言える。他の科目が仕上がれば、憲法で高得点を取る必要はなくなる。書き方のコツを覚えて問題文の事情を拾いまくれば最悪それでも合格できてしまう。

以上のようなことを私は知らないまま、予備試験に突入してしまった。私のような犠牲者を一人でも多く減らしたいとの思いから、今回の記事を書くことにした。まとめると、憲法はトリッキーな科目なので、決して最初に勉強してはいけない、ということだ。

予備試験後、司法試験を受けるときには勉強法を変え、無事にA評価を取ることができた。「今までの努力は何だったんだ」という気持ちに襲われたが、過去のことを悔やんでも仕方がない。是非とも反面教師にしていただきたい。

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