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【予備試験】切ってもいい科目

予備試験はおそらく、法律系資格試験の中で最も科目数が多い試験だろう。短答8科目に加え、論文では法律基本7科目+実務基礎2科目+選択科目と合計10科目もある。ちなみに、司法試験は短答3科目、論文8科目なので、科目数でいうと予備試験の方がはるかに負荷が高い

予備試験が難しいといわれている最大の理由は科目数の多さにあるだろう。問題の難易度がそこまで高いわけではないものの、膨大な範囲の学習が求められることから、時間がかかる。時間がかかるから、多くの受験生は対策が間に合わない。対策が間に合わないまま、短答試験や論文試験を受験する。記念受験も含め、このような受験生が過半数を占めることから、予備試験の合格率は極端に低い。

それでは、この科目数の壁を乗り越える秘訣はないだろうか。その前に、この壁というのは多くの人が思っているほど高くないということを認識する必要がある。私も勉強を始めたときは「9科目(当時は選択科目はなかった)を1年で合格レベルに持ってくのはさすがに無理じゃないか」と冷静に思っていたが、勉強をするにつれて「意外となんとかなる」ということを実感するに至った。

これは、私が猛勉強して時間を捻出したというより、そもそも10科目中、本当に時間がかかる科目が一部に過ぎないということを知ったからだ。経験上、民法と刑法は範囲が膨大なので時間がかかる。そして、民事訴訟法や憲法も対策が難しく、時間がかかる。しかし、それ以外の科目は民法や刑法と比べるとそこまで時間はかからない。行政法は民法の5分の1ぐらいの範囲しかないし、商法も条文がとっつきにくいものの、論文に出る範囲は限られているので意外とすぐ完成する。刑事訴訟法も同じように決まった論点しか出題されないため対策が容易で、実務基礎科目に関しては短答後から対策しても間に合うぐらい必要勉強量が少ない。選択科目も、一般的にはそこまで時間がかからないという風に認識されているはずだ。

そう考えると、科目によって必要な勉強量が大きく異なるという事実に気が付く。であれば、科目数が10個もあるというのは、そこまで大きな意味を持たない。むしろ、時間がかかる科目を如何に攻略するか、時間がかからない科目を如何にタイパよく乗り切るか、ここが大事になってくる。

そこで、ようやく本題に入るのだが、予備試験の論文対策においては「均等に勉強しない」という姿勢が求められる。予備試験の論文試験は、科目によって得点しやすいものとそうでないものに分けられる。これは、得点しやすい科目で得点できなければ他の受験生に差が付けられるし、得点しにくい科目に時間をかけてもそれに見合う成果は得られない、ということを意味する。これは司法試験でも全く同様である。得点しにくい科目を得意にするという戦略も考えらるが、単純に難易度が高いのでおすすめしない。

以上の事実を踏まえると、次のような対策が有効となる。
①得点しやすい科目は得点源(どのような問題が出てもAかBを取れる状態)にする。
②得点しにくい科目は時間をかけすぎず、合格者に差が付けられない程度の答案を書ける力(B~C、悪くてD)を身に着ける。

そこで、②に該当する科目を「切ってもいい科目」と呼ぶことにする。注意が必要なのは、対策しなくてもいいということではなくて、時間をかけすぎず、高成績を狙わないという意味で「切ってもいい科目」と呼んでいるに過ぎないということだ。

そして、結論からいうと、「切ってもいい科目」というのは憲法、民法、民事訴訟法の3科目だ。この3つの科目は、時間をかけようと思えばいくらでもかけられるが、投入した時間に見合う成果が保証できない科目である。

逆に、この3つ以外の①の科目は、得点源にすることが十分に可能な科目である。優先度としてはまず①の科目を得意にし、余った時間で②の科目を補強する、という姿勢が基本となる。

私が受験したときは、憲法はDしか取れず、民法はA、民訴はBだった。しかし、これでも十分に上位合格できる。なぜなら、この3つ以外の科目は「どんな問題が出てもAかBを取れる状態」にしてあったからだ。民法はたまたまAが取れたが、狙ったわけではない。要件事実と短答知識、さらに過去問や重問で培った力が運よく発揮できたからに過ぎない。

それでは、なぜ憲法、民法、民事訴訟法の3つは切ってもいい科目なのか。まず、過去の記事でもお伝えしているように、憲法は知識と成績が比例しない。なぜなら論文憲法は知識を問う場ではないからだ。たいていの科目は知識を問う場であるが、憲法に関しては学説・判例の知識を披露するだけでは成績が取れないようになっている。

また、民法に関しては、単純に範囲が多すぎる。かといって、典型論点が必ず出題されるわけではない。予備試験黎明期の民法は典型論点の出題をむしろ避けていたような感じさえする。近年は典型論点が出題される傾向にあるものの、それでも現場思考型の問題は出てくる。これは知識を詰め込めば答えられるようになるものではない。むしろ、そのような細かい知識を詰め込むことは非効率で、有害である。きちんと条文を探して解釈できる基礎力を身に着ける必要がある。

民事訴訟法は、理論的に難しい問題が出題される科目である。出題される論点によって、出来が異なるということが多々ある。要は、出題ガチャ要素が強いということだ。それゆえ、得点源にしづらい。個人的には、このような科目を得点源ととらえるのは危険だと感じる。リスクを下げるためには、より確実性のある刑事系や選択科目に頼るべきだと思う。

逆に言うと、この3科目以外は、得点源にすることがそこまで難しくないので、1科目でも不得意な科目があると極端に不利になる。具体的には行政法、商法、刑法、刑事訴訟法、実務基礎、選択科目は全てできるようにする必要がある。特に、行政法あたりは怪しい人が多いのではないかと思う。

今回はここまでにしておこう。予備試験において、奇を衒うような勉強はすべきではない。難しい科目を無理に得意にする必要はない。どうせたいていの場合は得意にできないのだから。それよりも、簡単な科目で高評価を取ることに注力してみよう。


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