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【落ちこぼれ修習生向け】脳死で2回試験落ちを回避する起案術

こんにちは。ゆっくり法律です。今回は落ちこぼれ修習生向けに、最低限の力で二回試験を突破する起案術について、刑事裁判の事実認定を題材に解説していきます。

偉そうに書いてますが、何を隠そう、私自身が落ちこぼれ修習生です。起案ではC評価しかもらったことがなく、教官にもかなり心配されている部類です。まともに対策したことない、答案を書くのが疲れるから薄く書いてしまう、など色々な理由がありますが、二回試験まであと1か月となった今、さすがに言い訳をしている場合ではなくなってきました。

同じような修習生は他にもいるのではないかと思い、備忘録も兼ねて、現時点の自分の刑裁起案の心得を解説していきます。それでは早速みていきましょう。

1無罪は論外


こんなことを書くと真面目な人に怒られそうですが、刑裁起案では必ず有罪の結論にしましょう。これは検察起案でも同じです。もちろん実際の裁判でそのような考え方をしていたらまずいですが、これはあくまでも試験です。試験にさえ受かればいいというマインドの下、なぜ無罪にしてはいけないかを解説します。

まず、有罪か無罪かを悩む時間が無駄です。例えば問題文を読んだ後に無罪か有罪どちらかにするかを非常に悩んだ末に書き始める人がいますが、初めから有罪に決めておけば、そのような時間はカットできます。また、試験が始まる前から有罪と決めておけば、問題文を読む段階から「有罪にすべき根拠はどれか」を意識して効率的に記録を読むことができます。つまり、結論先取りにすべき、ということです。

では、結論先取りがいいとして、なぜ無罪ではなく有罪にすべきなのでしょうか。まず、起案で扱うのは公判における事実認定です。つまり、逮捕段階や勾留段階ではなく、既に検察官によって起訴された後の話です。検察官が起訴するということは、それなりの根拠・客観的証拠が揃っているということです(なお日本の有罪率は99.9%)。もちろん起案では判断が難しい事案を扱うので、必ずしも有罪であるとは限りませんが、それでも検察官が起訴すべきと考えるに至ったそれ相応の証拠があるはずです。起案においては、そのような証拠が何かというのを探ることが最も重要なのです。もちろん上級者はそのような証拠を見抜いたうえで無罪の結論を出すこともあり得るかもしれませんが、落ちこぼれ修習生は深く考えず、有罪でいきましょう。下手に無罪にしたところ、重要な証拠を見落としていた、というのが最悪のパターンです。有罪決め打ちで、検察官の視点に立って重要な証拠が何かを考える、この姿勢を忘れないようにしましょう。

2証人尋問から記録を読む


記録を読むのは大変です。特に、無機質な捜査報告書や実況見分調書を読むのは骨が折れます。漫然と読んでいたら、それらの記録がどのような意味を持つのか、見抜けません。そこで、オススメなのは証人尋問・被告人質問を最初に読んでその後に他の証拠を読む、というやり方です。何より、証人尋問では口語で事件に関する解説をしてくれます。堅苦しい捜査報告書を読むよりはるかに楽です。また、尋問者がどこを重点的に尋問しているかというのはどの証拠や事実が重要であるかの大きなヒントになります。自分で記録を読んで重要な証拠や事実が何であるかを判断するより、尋問でしつこく聞いている内容から逆算して考える方が圧倒的に楽です。

特に、被告人質問における反対質問では、検察官が被告人に対して不利な事実を突きつけることがあります。たとえば、「なぜ○○したんですか。本当は殺そうとしていたからじゃないですか」などのような反対質問があった場合、この「○○した」という事実は、検察官にとって有罪立証のための重要な事実である可能性が高いです。このようなヒントを見落とさず、答案に盛り込むようにしましょう。

そして、証人尋問や被告人質問で事件の全体像及び重要な証拠や事実についてざっと抑えたところで、それ以外の記録を精査していきます。

3間接事実は3つ拾う


刑裁起案では、直接証拠のない間接事実型がよく出題されます。そのような場合、間接事実をいくつ書けばいいのかで悩むことがあると思います。1と同じですが、悩むこと自体が無駄なので、初めから「間接事実は3つ書く」と決めておきましょう。もちろん余裕があれば4つ書いてもいいですが、3つ書けば何とかなります。2つだと心もとないので、弱い事実でもいいので3つ目を探して書くようにしましょう。

4反対の間接事実も必ず書く


意外と重要なのが、消極に働く間接事実(消極事実)に触れる、ということです。例えば犯人性が問題となる場合、犯人性立証につながる間接事実だけでなく、それと逆方向に働く間接事実(アリバイなど)についても最低1個は触れるようにしましょう。積極方向に働く間接事実(積極事実)を如何に綺麗に書いたところで、消極事実を説明できなければまともな判決とは言えません。争われているという時点で、積極事実・消極事実の両方が存在するということです。積極事実があるのはもはや当然なので、そこだけ書いたところで意味はなく、消極事実を否定できて初めて説得力のある起案になるのです。

消極事実を書く場所についてですが、私の場合は総合判断の中で取り上げるようにしています。例えば、1間接事実A、2間接事実B、3間接事実C、4総合判断という構成で、4の中に「1~3によれば、Aが犯人であることは合理的疑いをいれる余地がない。間接事実D(消極事実)が存在するが、○○なので上記心証を覆すには至らない。よってAは犯人である。」と書いてしまいます。消極事実は最低1個書ければ「分かってる感」を示すことができるので、十分です。余裕がある場合は2つ以上書いてもいいです。

終わりに

もちろんこれは最低限心がけるポイントを説明したに過ぎず、これ以外にも気を付けるべきことはたくさんあるはずです。それらについては、起案の講評などで各自しっかり習得してください。

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