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エビデンスあり!お年寄りも若者も記憶力には差がなかった

「最近物忘れがひどくなって……」⇒「年だな……。」

 というお決まりの言葉がありますが、脳科学的にはこれはまったく根拠のない話です。

 じゃあ、どうしてお年寄り(というか中年以降かな)は一般的には記憶力が落ちるという誤解があるのでしょうか。この記事の中に興味深い実験が載っていました。

若者と年配者の記憶力にはあまり差がない

米タフツ大学のアヤナ・トーマス博士らのグループは、次のような実験を行いました。18〜22歳の若者、60〜74歳の年配者を各64人ずつ集め、多数の単語を覚えてもらったあとに、別の単語リストを見せて、それらの単語がもとのリストにあったかどうかを尋ねたのです。

その際、まえもって「これは、ただの心理学実験です」と説明していたときには、若者と年配者の正解率は、ほとんど変わりませんでした。ところが、テストまえに「この記憶試験では、高齢者のほうが成績が悪い」と告げておくと、年配者グループの正解率のみが大幅に低下したのです。

要するに、この実験では、フラットな状態では、若者と年配者の記憶力に大差はないが、「高齢者のほうが成績が悪い」という先入観を植えつけられると、年配者は記憶する意欲を失い、一気に"記憶力"を減退させたというわけです。

ニューズウィーク日本版上記記事より

 若者でも「お前は馬鹿だ」と親や先生に言われると、やる気が無くなるだけでなく、実際にバカになっていくというわけです。これと同じことが中年以降老年まですべて当てはまるわけで、これはとても納得の行く実験結果ですよね。

加齢とともに減少するニューロン細胞は記憶力には大して関係のない細胞だった

 でも、年とともに脳の神経細胞が減少するのは事実です。この事実は筋力の衰えと一緒で人間に寿命がある限りは覆すことができません。

 多くの脳科学者はこの事実を以って、加齢とともに記憶力が減退するのは自然現象だとしてきたのですが、この考え方そのものも間違っていた可能性が高いことが最近明らかになりました。

 有名な話で、アインシュタインの脳味噌の重さは一般人と変わらなかったというのがあります。実際に死後、アインシュタインの脳はグラムを計測されていますが、普通の重さでした。


 ところが、この重さを測ったというのがそもそも、意味のないことだったのです。その時同時に別のものも計測していたのですが、大事なのはそっちでした。そこには、明らかに普通の人間とは違う特徴があったのです。

天才アインシュタインの「脳」の実態はこうだった

カリフォルニア大学バークレー校の著名な神経解剖学者、マリアン・ダイアモンド博士は、アインシュタインの脳を調べた人物として広く知られています。ダイアモンド博士は同僚らとともに、何日もかけてアインシュタインの脳細胞を計測・集計し、47歳から80歳までの男性から採取した脳の細胞データと比較したのだそう。

すると、驚いたことに、世紀の天才アインシュタインの脳と、一般人の脳のニューロンに関して、何ひとつ差異は見られなかったのだとか。しかし、神経細胞(ニューロン)ではない細胞の数、つまり神経“膠”細胞(非神経細胞)と呼ばれる「グリア細胞」が、脳の4領域すべてにおいて群を抜いて多かったのです。

STUDY HACKER上記記事より引用

 つまり、重さは変わらないけど、ニューロンとグリア細胞の割合が違っていたということです。つまり、これまで脳の働きはニューロンに注目していたのですが(脳をお手本にしている最近のAI研究もニューラルネットワークが花形)、どうも、注目すべきなのはそっちじゃなかったらしいのです。AI研究も間違った方向でずっと頑張ってきた(Googleもだから今頑張ってることは間違ってる)という考え方が出てきています。

 神経細胞(ニューロン)が緻密な脳のネットワークを作って,記憶や学習という脳の中心的な役割を果たしているのに対し,グリア細胞はこれらを補佐する脇役と考えられてきた。グリアの役割はニューロンに栄養を運んだり,軸索を絶縁して電気信号を送る手助けすることで,積極的に脳機能に影響を与えているとは考えられなかったからだ。
 しかし,最近の研究から,グリア細胞の別の姿が見えてきた。グリア細胞はニューロンが置かれた状況をモニターしながら,グリア同士で情報をやりとりし,ニューロンのシナプス形成をコントロールしているらしい。記憶や学習という脳の高次機能は,実はグリア細胞によって支えられている可能性が高い。
 本格的なグリア研究はまだ始まったばかりだが,今後の成果によっては,ニューロン中心だったこれまでの脳のモデルが劇的に変わるかもしれない。

日経サイエンス上記記事より引用

脳細胞は確かに減少するけど減少しても記憶力には関係ないということ

 というわけで、最初に戻りますが、お年寄りと若者では記憶力には差がありません。

 なんちゃって脳科学者の好きな、加齢とともに記憶力の減退という図式は初歩的なデータ解釈の思い込み、誤解だったわけです。

伊東四朗さんは若者よりすごい記憶力!

  記憶力といえば、バカな話ですが、円周率を1000桁覚えました。ある時、新聞のコラムに円周率30桁を語呂合わせで簡単に覚える方法が書いてあった。

 02年ごろだったと思います。ドラマの撮影の合間にブツブツ、電車の中で変なおじさんと思われながらブツブツ(笑い)。どれくらい期間がかかったか分かりませんが、いつの間にか1000桁になっていました。

 ほかにも百人一首に日本の旧国名、米国50州、世界の国名、野球のメジャーリーグ30チーム、サッカーのJ118チームとかも覚えました。方法はとにかく反復。驚かれるけど期限がなければ誰でも覚えられますよ。やらないだけ。ばかばかしいから(笑い)。

スポニチ上記期より引用

 結論 加齢は言い訳にできなくなったとも言えるかも(笑)

 とはいえ、加齢とともに記憶力が減退するっていうことで、本気で悩んでいるお年寄りは意外と少ないのではないか、というのがみこちゃんの普段の観察でもあります。

 記憶力がないと言ってあたふたしているのは、むしろ受験生です。

 つまり、お年寄りはそれなりに功成り名遂げて身退くは天の道なりという境地で、もう若い頃散々頑張ったから、記憶力が衰えましたってことにしておこう、ですませている感じもしなくもありません。

 言い方を変えれば、受験生みたいな切羽詰まったがむしゃらな意欲が衰えたことの積極的肯定かもしれせん。常に積極的であることはやっぱりしんどい面もありますし、そういうのは若い者に任せた!というのも、これまで頑張ってこられた年配者の特権でもあるなと、私は思います。

 これまで頑張ったんだから、若いものがうんうん唸って頑張らなきゃいけない、というのはむしろ失われつつある日本人の美徳と言えるかもしれない。いつまでも、年配の人に頼っていてはいけませんからね。

 でも、逆に意欲のある年配の方に「もう年なんだから」というのは、とても罪深い一言ではないかな、と思います。意欲のある若い人に「あんたはどうせバカだから」というのが罪深いように、意欲のあるお年寄りを心無い言葉で冷やかすのは、これまた失われつつある日本人の大切ななにかかも知れない。介護の現場でそんな言葉が普通に出ていないといいのですが……。

 最新の脳科学は、そんなことを教えてくれます。

 

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