PP Conflictsと企業の競争力(Young et al., 2008)

前回に引き続きYoung et al. (2008) をレビューします。

今回はPP Conflictsが企業の競争力に与える影響を考察した部分です (p. 209)。

競争力を阻害する要因

競争力を阻害する要因が以下の4点で整理されている。

(1)素質がないと思われる家族や友人、取り巻きを重要なポジションに置く

(2)支配株主が所有している、あるいは支配株主に関連している組織に対して市場価格を超えた価格で消耗品や資材を購入したり市場価格を下回る価格で製品やサービスを販売したりする

(3)過度の多角化など、企業の業績を犠牲にして、個人的、家族的、あるいは政治的なアジェンダを推進する戦略に関与する

(4)イノベーションのための支出を低下させる

(3)は経営者の帝国建設 (empire building) から、(4)は経営者によるquiet lifeの選好からも説明可能でしょうか。

論文にはこうしたPP conflictsによる競争力の阻害は新興国企業で生じやすいことが示されています。

資本コスト上昇と過小投資問題

論文にはPP Conflictsが大株主と少数株主の利害対立をより深刻化させる結果として資本コストが上昇することが書かれています。これは資金調達の側面で不利になり、過小投資問題を生じさせます。

このようにPP Conflictsが競争力を阻害する要因を先行研究レビューを通じて示している点で非常に有益な論文でした。

日本企業を対象にした場合はどこまで当てはまるのでしょうか。

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