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大キレットを越えて

9月末、北アルプスの山稜は段々と
黄葉で彩られてきていた。

今年の9月は雨の日が多く、更には2度の台風直撃で鬱々とした日々が続いていた。
けれど、ようやく快晴予報が。

ちょうどその予報日は、
ずっとずっと、心待ちにしていた
【大キレット⇄槍ヶ岳】の往復縦走当日。

うきうき、わくわく。遠足前の子どもみたいに、縦走前日はいつもより眠りに着くのに時間がかかった。

今回の予定では、
北穂高小屋を出発し、大キレット、南岳、中岳、大喰岳おおばみだけを通過して、槍ヶ岳、そしてヒュッテ大槍に宿泊する。コースタイムでは6時間ほど。そして翌日また、同じ道を歩く。どちらの方向からも、この岩稜を体験してみたいのだ。

キレットで大きなアップダウンはあるものの、
ほぼ3000mの稜線を歩く。

そしてこのルートでの核心部は、
なんといっても大キレット

スタートしてからすぐ、核心に触れる。まさに、ショートケーキの苺に飛びつくような計画だ。

登山中の事故の原因で多いもののひとつが、疲労。緊張感のあるところを一番初めに終えれると思うと、俄然やる気が出る。


では、ヘルメットを装着して、
いざキレットへ。

いきなりの急降下が始まるけれど、2度ほどは途中まで歩いたことのある道。初めての時よりも、サクサク降りていくことができた。

文句なしの快晴。肌寒いけれど、歩くとすぐ汗ばむようなベストコンディションな中、
いくつもの岩を登って下って越えていく。

岩を掴み、足裏で地面を感じて、
常に一瞬、一瞬を捉えていく。

右側には、常念岳が。


岩を綱渡りのように渡っていくと、
長谷川ピークにたどり着いた。

「あれっ?」


夢中で岩を掴み、時々考え事をして。

そうしていたらあっという間に、
南岳に着いてしまった。
つまり、大キレットは終了。
2時間40分ほどの道のりだった。


赤い屋根の建物が南岳小屋

少し休憩。持ってきたおにぎりを、軽々と頬張る。エネルギー補給をしたら、またザックを背負い直して、歩みを進めていく。

南岳小屋を越えていくと、今度は美しい縦走路が始まった。

知らなかった。キレットの向こう側には、こんなに美しい稜線が続いていたなんて。
そしてそれは、あの槍ヶ岳まで続くのだ。

キレットは、崖っぷちを歩くような稜線。だから、『ただ怖いだけの道』だと思っていた。
けれど想像以上に歩きやすくて、(そうは言っても経験者向き)とても丁寧に整備してくれているのがわかる道だった。

整備してくれている人の顔も知っている。
だからこそ、安心して歩けたのかもしれない。


危機回避は大切なこと。けれど、「危ない。危ない。」と、想像だけでジャッジするって勿体ないな。

体験してみないとわからない世界は、
まだまだたくさんあるみたい。

これから旅はまだ続きます。
今回は、一旦ここまで。


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