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念願のタラブックス

タラブックス TARA BOOKS は数年前に日本でも話題になり、
ツタバ*で作品をよく眺めていたから、訪れるのを楽しみにしていた。
(*スターバックスが併設しているオサレな蔦屋書店のことを我が家ではこう呼んでいる)

タラブックスは1994年にギータ・ウォルフという名の女性によって設立された出版社である。インドでは女性が起業することがとても珍しい時代であった。
紙から製本まですべて手作りで行っており、インドの民族芸術による繊細な絵・インクの盛り上がり・鮮やかな色彩、など全てが観るものを魅了し、一つ一つが芸術作品である。社会や政治をテーマに扱った内容も評価されている。


そんなタラブックスは、ローカルマーケットの込み入った路地を入った先にある。

本当にこのすぐ先にあのお洒落なタラブックスがあるのか?


ごみごみした路地を抜けると、急に嘘みたいに静かな場所に出る。
なんだか時間の流れが急に変わった様な感覚。

店の前の通りは静かで緑がきれい


ちょっとわかりにくいが、ここが入り口であった


お客さんがいなかったからか最初店内は開放的で生ぬるーい空気だったが、私が入ると扉を閉めてクーラーを効かせてくれた。
入り口近くで座っているお兄さんは、目が合うときれいな笑顔を見せてくれてとても印象がよかった。
インドでは知らない異性に笑顔を振りまくのはよくないこととされている、と何かで読んだ。日本よりも男性の店員さんの笑顔が少ないのはそういう文化があるのかなと思っていたが、やはりお店に入って笑顔を向けられると気分がよくなるものだ。


店内は静観なギャラリー空間で、
高窓から光を取り入れまるで教会のような雰囲気がある。

光が神々しい


アート作品として飾られている


日本語訳版もたくさんあった

存分に立ち読みし、1番心を打たれたのは
『みなそこ』という絵本の中にある「ムンバイ」という一編。
西インドの小さな村で育った兄弟は
ムンバイにある大学へ三時間かけて通って勉強した
村から遠く遠く離れて
離れるほど村のことをよく考えて
こころは村に近づいた

という物語。

この絵本の英語名は 『The deep』  という。
英語で読むのもよいが、訳された日本語には、なにか心の奥を叩いてくれる力がある。じーんとする。

私は海外ドラマをよく観る。
好きなドラマをさんざん英語で観たあとに、日本語字幕を入れて観ると、同じシーンでもまた違った響きをもらえる。その日本語に感動して涙が出ることもある。

翻訳ってなんて素晴らしい仕事なんだろうと思う瞬間だ。



タラブックスの作品は一つ一つシルクスクリーンで刷っており、
インクの厚みで手触りがぽこぽこしていて、とてもとても素敵である。
しかし、ホテル滞在中の身としては大きいものは買えず、
今回は鑑賞だけでおしまい。
お兄さんの笑顔に見送られてタラブックスをあとにした。
アパートに移ったら買いにくるよ~


日本の和室にも合いそうだ。

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