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男性育休はこれからの育児の土台~9ヶ月の育休体験談~

「9ヶ月間も育休を取れるなんてすごいね!でもお金とか大丈夫なの?」

これは、私の夫が9ヶ月間の育休を取得したときに親族から言われた言葉です。調べてみると、2週間や1ヶ月の育休を取得したかたの体験談ばかり。

厚生労働省※でも、育休取得日数は2週間未満が51.5%と、まだまだ育休を長期間取得する人は多くありません。(参考:育児・介護法の改正について,厚生労働省)
いざ長期間の育休を取ろうと思っても、周りに経験している人がおらず、不安なことも多いのではないでしょうか。

この記事では、夫と同じく、9ヶ月の育休を取得したSさんにお話を伺いました。
実はSさん、子どもが生後2ヶ月のときに6時間のワンオペをやりとげた、凄腕のパパさんです。育休中の過ごし方からパートナーとの関係、お金事情まで詳しく聞いています。

ぜひ最後までご覧ください!

Sさん
大手生命保険会社に勤める10年目の総合職。第一子(女児)の誕生と同時に、2023年2月~11月の9ヶ月の育休を取得。
感染症流行による病院受け入れ拒否を懸念し、里帰り出産はせず。妊娠中から子どもに先天性疾患があることが発覚したこともあり、夫婦2人で育児をがんばることを決意し長期間の育休を取得。両実家のサポートは金銭援助のみ。
最近のショックだったことは、仕事から帰ってきたときにスーツ姿だったため、子どもに「この人だれ?」という顔をされたこと。

育児に専念。「自分は育児ができる」と認識できた

——まず9ヶ月の育休を振り返った、全体的な感想を聞かせてください。

全体的な感想としては、”仕事のことを全く気にせず育児に専念できる”時間を取れたことがとてもよかったです。

働いていても育児はついてくるものです。仕事をしながら、慣れない状態で子どもの世話をするのは、とても大変なことだったと思います。
仕事をしていたら、朝早くに出勤して、夜遅くに帰宅するので、そもそも育児や子どもとの時間が取れないですし。もし、生後3ヶ月で復職していたとしたら、仕事して帰ってきて、夜中2時半にミルクあげるという生活は、さすがにきつかったと思います。
日中に、自分の睡眠時間や、休憩する時間を取れるのは育休のいいところです。

育児に専念して、ミルクを作ったり、オムツを変えたり、寝かしつけをしたりなど「ちゃんと自分も育児ができるんだ」と認識できました。そのベースがあるから、仕事が始まってからでも育児ができています。

——お子さんが生後2ヶ月のときにワンオペを経験したと伺いました。最初から育児に自信はありましたか?

いや、最初は怖かったです。育休に入る前は、妻に子育てを任せて、私は家事の方を多めにするのかなと思ってたんです。 でも、育児をしてみたら、私と妻で2時間ずつ交互交代で育児をする方法があっていて。自分でなんでもできるようになる必要がありました。
やってみたら、案外できたんです。ミルクもあげられるし、お風呂も入れられるし。男でも、できないことはないんだなと思いました。「ママじゃないといや」はまだ言われていません。

——やってみるって大事ですよね。育児技術はどのように身に着けたのですか?

妊娠中からインターネットの動画や無料でもらえる育児雑誌で手順を頭に入れました。オムツ替えの仕方や、沐浴の仕方とか。
また、妻が産後に病院で沐浴を経験していたので、実際やってみてどうだったかという話を聞いて情報をアップデートしていました。
脳内シミュレーションだったんです。自分の場合は、先に手順を入れておかないと動きづらいタイプだったので、 大まかな流れだけ把握しておきました。

1人1人が独立して子育てを行う

——一日のスケジュールを教えてください。

私のほうが朝に強かったので、朝の子どもの世話をしていました。6時から妻が起きてくる9時くらいまでです。妻が起きてきたら、一緒に朝ごはんを食べて交代します。
基本は2時間ずつ、休憩と子どもの世話を交互に行っていました。お互い、うまく休憩時間を回していました。手が空いたほうが家事をしていました。
お風呂は1人が子どもと一緒に入って、もう1人がお風呂上がりのミルクを作るなど、お風呂からあがった子どもを担当していました。こちらは1日ごとの交代です。

早い段階から完全ミルク育児だったのも関係して、家事も育児全般も1人1人が独立して行っていました。

——Sさんとパートナーさんが1人1人独立して子育てしていたのですね。

そうですね、うちの場合は。家庭によっては、夜勤と昼勤みたいにやっているお家もあると聞いたことがありますが、それよりは2時間ずつこまめに休憩するほうがリズムがあっていました。
あと、ご飯を食べるときは、夫婦一緒に食べていました。

ご飯は一緒に食べる。夫婦の話し合いを大事に

——パートナーさんとご飯を一緒に食べることにこだわりがあったんですね。

最初は、「別々で食べた方が休憩時間取れていいんじゃないか」と話をしていました。子どもが病院から退院して1ヶ月ぐらい経ったときに、私も妻もしんどくなりそうだったことがあったんです。

でも、せっかく休みを取って一緒に家にいるのに、別々にご飯を食べるのももったいないなと思ったんです。妻と話し合い、やっぱり一緒にご飯を食べたいよねという話になり、あとの時間でうまく休憩時間を取っていこうと決めました。

——パートナーさんとぶつかったことはありますか?

1回ありました。子どもが家に来て1ヶ月も経たないぐらいのころ、2人とも慣れない育児に悪戦苦闘して家事がおろそかになっていたんです。そこで、私が休憩時間に家事をしていたら、妻から「今は休憩時間でしょ」と言われました。
妻としては、自分の休憩時間はできるだけ寝たいという希望がありました。しかし、私が家事をやることによって妻も休憩時間に家事をやらなければいけないというプレッシャーを感じたのだそうです。

自分は残っている家事が気になります。だから家事をしたのだけど、それによって妻自身が休みづらいのであれば、家事をやる回数を減らそうと折り合いを付けました。

——パートナーさんとはよく話し合いをされていたんですか?

家族会議を月に一回しています。そこでは、 お互いの気になっているポイントや、改善したいことなどを言い合うんです。このような機会を設けることは大切だと思います。

また、日頃伝えきれていない感謝を伝える「ほめほめ会」も家族会議のときにしています。小さなことでも「ありがとう」と言い合うんです。余裕がなくなってくると殺伐としてくるので。これのおかげで、常に「ありがとう」と言い合える環境になってきました。

それ以外でも気になることがあったら適宜話し合っています。

——話し合いができる環境は大切ですよね。Sさん自身は、育休中にストレスがたまったときはありましたか?

あまりなかったです。育児に慣れてきたときに、4時間とか長めの休憩をもらって、1人で買い物やカフェに行っていました。あとは、子どもがお腹の上で寝ているときにYoutubeやSNSをみて気分転換をしていました。

仕事もお金の不安もなく過ごせた9ヶ月

——9ヶ月間育休を取得するなかで会社からなにか言われたことはありますか?

会社からはなにも言われていません。うちの会社は、割と男性も育休を取りやすい会社なんです。

実は、最初は6ヶ月取得する予定でしたが、その後3ヶ月延長したんです。子どもの手術が生後5ヶ月のときにあって、手術後に生活がバタバタしそうだったからです。

6か月育休を取るときも、3ヶ月延長するのも抵抗はありませんでした。ただ、3ヶ月延ばす申請をした際に、上司から「2ヶ月延長の10月に復帰してもらえると、他の人事異動の手続きと一緒に手続きができて楽なんだけど」、という話はありました。でも、11月の復帰希望であればそれでいいです、じゃあ11月に復帰しましょうということで終わりました。
復職してからもとくに不利益はありません。ただ、育休はいる前の担当ではなく、3年前にいた担当へ異動になったため、浦島太郎状態にはなっています(笑)

——育休中に転職活動をしたり、資格を取る人が多いと聞きます。その時間はありました?

時間はありました。ただ、やる気がありませんでした(笑)

子どもは今でこそベッドで寝てくれるようになったのですが、生後半年まではまったく寝てくれなくて。私が抱っこして、お腹の上で寝るスタイルが主でした。身動きができないので、スマホしか触れないんです。そのときに、懸賞の応募やアンケートモニターをしていました。

——育休中のお金の不安はありましたか?

社宅住まいなのもあって、収入が全くなくなって困ることはなかったです。

育休中は、育児休業給付金がもらえるのです。最初の約6ヵ月間は額面3分の2、6ヶ月を過ぎると額面の2分の1のお金が支給されます。給付金には税金もひかれないですし、普通に働いてたときの手取りと同じぐらいのお金をもらえていました。(※2023年11月時点、厚生労働省HP

ただ気をつけてほしいのは、すぐに育児休業給付金は振り込まれないことです。私の場合は、育休をとって2ヶ月後に入金されました。出産に関する入院費や2ヵ月間の生活費は確保しておくことをおすすめします。

育児は怖くない!貴重な時間を楽しんで

——最後に、これから育休を取得される方に向けて、アドバイスがあったら教えてください。

育休に入る前に、家のことを1人でできるようにしておくことが大切だと思います。2人で育児をする場合、1人が子どもの世話をして、もう1人が休憩や家のことをサポートをする側に回ります。1人で家事ができないと、そのバランスが崩れてしまいます。
せっかく育休をとって家にいるのであれば、子どもの世話もできて、家事もできることが理想的な姿です。そのため、家のことはなんでも自分1人でできるようにすることが大事だと思います。

子どもの世話はとりあえずやってみる!やればなんとかなります。恐れずに、どんどんやって経験を積んで、育児を楽しんでください!

——Sさん、貴重な体験談をどうもありがとうございました!

編集後記

Sさんのお話のなかにパートナーさんともめたエピソードがありました。私自身、産後2ヶ月間は家事をする余裕がなく、夫が家事をしてくれていたときは感謝と同時に苛立ちを覚えたことを思い出しました。夫も育児をして疲れているのは一緒で、「あなたが家事をやらないからやっているんだ」と言われているように感じたのです。私たちもお互いの意見をぶつけあって解決をしました。夫婦といっても他人。話し合いは大切だなと思いました。

Sさんは、育児に全力投球できる環境があったことで、育児に関する自信をつけ、復職してからも積極的に育児に参加できているのだと感じました。まさに、「育業」と呼ぶにふさわしい育休だったのではないでしょうか。

男性が育休を取得して、安心して育児に専念できるようにするためには、会社の理解とお金の余裕が不可欠です。その体制が徐々に整いつつあります。
赤ちゃんの時期はほんの1年。せっかく育休をとるのだから、ぜひ全力で育児を楽しんでください。


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