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大地の恵み(6)かりん

駐車場の脇に一本かりんの木がある。植木屋さんが手入れに見えたとき、枝も葉もちゃっちゃっとおろす。大きく枝がそろっているのにどうして?と思ったけど、やがてわかった。伸びるのは早いし棘がある。触れようものなら飛び上がるほど痛い。でも花は可憐できれいだ。花びらは長いところで1センチほど。
 やがて松の木に虫がついて切ったのをきっかけに植木屋さんよばなくなり、自力で枝をおろすようになった。植木バサミで上の枝を切ろうとしたが、枝が入り組んでいて太くてなかなか切れない。その上見上げているから首が痛くなるし、くらくらくするから、しばらくじっとしている。見かねたらしくいつものように向いの家のご主人が道具持参でいらして、おろして下さった。
その時に言わなくていいのに「かりんの実がつくからこの枝は残したい」 
 
 秋に小さい実がいくつか出来た。時々見上げて、大きくなるかなーーと楽しみにした。
 今年は強風の台風がいくつか山陰にも到来。小さめの実は成長することなく落ちた。全部なくなったと信じたが奇跡的に一つだけ実が残った。
 落ちないうちに採ろうと思い忘れ、時々もうなくなったかな?と見にいき、今週採った。
 
 ずっしり重い。測ったら460グラム。かりんは喉にいいと聞いているのでジャムにする。ネットで調べたら、4つに割って皮をむき、この皮と種と一緒に煮て、出た汁で果肉を細かく切ってコトコトとろみが出るまで煮つめる・・・
書けば簡単だけど、実際に始めると4つに切るのは、硬かった。皮と種は煮る根気があったけれど、いい香りは気に入った。でも魔法でも使わないと、果肉をコトコトやるのは~。
挫折しそうになったが、圧力鍋を使って完成した。
 
 ジャム、嬉しい。味見をしながら、かりん様との春から過ごした半年は子育てしたのだと思いあたる。花は可愛いなあと赤ちゃんみたいに感激する。そうするうち枝は伸び放題になり、まさに手がつけられない放蕩息子。ようやく実をつけたけど世間の冷たい風で落ちてしまう。ラッキーにも一つ収穫出来て加工しようとしたら硬くて・・・
 自分の子育てになぞらえながら、自分も子供だったと思い至る。親には心配かけなかったとか、努力して今日がある、とか偉そうに思ったけど、収穫後のあの硬さと同じようにつっぱっていたことは多かった。(笑)
 
ゆうこの山陰便り №189 加筆修正

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