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帯状疱疹になった話。

なんと、突然帯状疱疹になってしまった。


「帯状疱疹」と言えば、真っ先に思い出されるのが雅子さまだ。
原因として、重なる心的ストレスや疲労があげられていたと思う。
なんとなく「大変そう」なイメージがあったけれども、それを身にしみて実感することになった。


まあ、原因はなんとなくわかる。
「夏の疲れとか」「夏の疲れとか」「夏の疲れとか」……
普段はのんびり暮らしている自分が、春先からお盆頃をピークに、いわゆるメンタルに重圧がかかる多忙を極めた。炎天下での作業も重なり、こういうのがちょっと遅れてムクムクと頭をもたげてきたのだろう。


帯状疱疹について詳しく知らなかったので、あれこれ調べてみたところ、

「子どものときに罹った水ぼうそう(水痘)のウイルスが、治っても体内に潜んでいて、ストレスや疲労で免疫力が低下したときに活性化、皮膚に水疱ができる」

といった類のものらしい。
症状としては、ピリピリした神経系の痛み→赤い発疹・水ぶくれ→かさぶた、といったように進行していき、水ぶくれが収まるのに数週間かかる。
その他、主にわかりやすい特徴として、からだの片側にだけ発疹ができる。
主に上半身にあらわれるそうだ。


最初に症状が出たのは、頭を這うピリッ!ピリピリッ!という感電のような、不定期な頭痛だった。たまーに神経痛はあるので「ん?」ぐらいにしか思っていなかったが、それがだんだんビリビリと強さを増していき、あっという間に我慢できないほどの痛みに。

昔、頭痛持ちだったのだがそれとは違う。
ずーん、ずーん、ずーん、というやつではないのだ。
ピリピリで検索して「後頭神経痛というやつかも?」と勝手に解釈したが、ロキソニン(鎮痛剤)を飲んでも改善しないので、内科へ。

その日は代診の先生だったが、ひと目頭を見るなり、

「あー、これは帯状疱疹やね」

えええええ! 全然想像してなかった方面から来た。

「このおでこの部分と、ここ(まゆげのあたり)ね。それから頭(髪の毛)の中。赤い発疹できてるね」

あー。まゆげのところは吹き出物かなんかだと思ってた……。
頭の中とか、全然気づかなかったし。主に右側である。

「抗ウイルス剤、出しとくね。これは必ず全部飲み切ること。途中でやめたらダメ。それから痛み止めと軟膏ね」

後でわかったことだが、帯状疱疹は早期発見早期投薬がキモ。発疹が出た時点で皮膚科や内科に受診して、きちんと抗ウイルス剤を飲むことが大事だ。
抗ウイルス剤は、7日間続けて服用する。一日、一回。
発疹の部分には、小さな軟膏を塗るように言われた。
これがまた、頭皮、つまり髪の毛の中にはうまく塗れなくて困ったが、こればっかりはしょうがない。
というか、何より頭が痛い。皮膚の痛みではなく、神経の痛みだ。

鎮痛剤のカロナールがなかなか効かない。
頭が痛すぎて眠れず、つらい夜になった。
あまりに痛いと、不安になってくる。病気の情報は探せば探すほど不安を煽るものもあるから、普段は気をつけていても、こんな風に自分が病を得て心が弱っているときは別だ。

そういえば、十年以上前実家の父が帯状疱疹になったとき、ちょっとした入院騒ぎになったのだった。
ブツブツで背中が大変、みたいな話を母からは聞いていたのだが、そのときは病気のことをよく知らなくて、時間はかかっても薬を塗っていればそのうち治ると思っていた。
そんなとき、母からちょっと上ずった声で電話があり、

「なんか、お父さんがおかしいんよ」

ズボンを足の先のほうから履こうとしたり、なにか言動が変だと言う。
いやな予感がして、新幹線に飛び乗った。

実家でぼんやりしていた父の様子は、確かにおかしかった。
いろいろなことを思い出せない。弱々しく笑っているだけで、会話のキャッチボールができない。
愛用のパソコンの前に座ったが、スイッチの場所がわからない。

今まで見たことのない父だったので、思い切って信頼するかかりつけ医に電話してみたら、「すぐ救急病院に行ってCT撮りなさい」とおっしゃる。
取るものもとりあえず、タクシーで大きな救急病院に行って診察してもらうと、画像診断後そのまま入院することになった。
ウイルスが、どうも脳のほうにいってしまったらしい。
救急で点滴をしてもらい、そのまま入院治療を続けて事なきを得たが、入院当時は引き算もできなかったそうなので、本当に恐ろしい。


話がそれてしまった。
初診の日にもらった抗ウィルス剤は、効き目が出るまでに数日かかるという。それよりも、頭痛がまったく治まらなかったので次の日も医者へ。
代診でなくいつもの先生がにこやかに、

「あー、これはもう帯状疱疹で決まりやねー」

「先生、頭痛いです」

「あー、カロナール効かないか。じゃあ、もう少し強いの出そうか……胃は弱い?」

「弱いです!!!」(キッパリ)

はははは、と笑いながら先生、じゃあロキソニンを胃薬と一緒に出しとくね、とカルテに書き込みながら言った。
(あっ、ひょっとしてロキソニンは胃薬と一緒に飲まなあかんぐらいの強さだったんか……普段ナチュラルに使ってたよ)


幸い、ロキソニンはかなり頭痛を和らげてくれて、あとは湿疹から水ぶくれになった部分の皮膚としての痛みに移行する。
そおーっと頭に触れてみるけれど、あーあかん。まだ痛い。
抗ウイルス剤を飲み終わり、一週間たつと、なんとか我慢できるほどの小さな痛みになってきたので、ロキソニンはやめてみる。
一週間後の再診。
軟膏でハードに固められた頭をちらっと見て、

「うーん、だいぶよくなってきたね。……もう頭洗っていいよ」

いや先生、触ったらまだめっちゃ痛いんやって。
いくら気の毒そうだからと言っても、今はたぶんまだ、シャワーのお湯が当たるだけで激痛やと思う。
「頭洗えないと死ぬ」病は持ち合わせていないので、もう少し、もう少し。

「このまま様子みて、痛みがなくなっていけば終了かな。(抗ウイルス剤飲み終わったから)もうウイルスいないから」
「我慢できるぐらいの痛みだったら、ロキソニン飲まなくてもいいですか」
「うん、やめたからって痛みが残ることないから大丈夫」

はっきり言ってくれるので、安心する。

帯状疱疹の場合、治った後も神経痛だけが残る症状もあり、それがツラいらしいので、ちょっと心配にはなっていた。そうか、あまり酷くならないうちに受診できたのがよかったのかもしれない(まだ先のことはわからないけど)。
頭がめちゃくちゃ痛かったときは、このままもしかしてクモ膜下出血とかだったらどうしようとか、ひとりで倒れて死んでたらとか、あらぬ不安に取り憑かれていたから、やっぱり病を得たときはメンタルにも気をつけないといけない。


ずーっと頭が洗えないので、相方に

「臭かったら言ってな。リビングで寝るし」

とは言っているが、今のところ大丈夫そうだ。真夏でなくてよかった。

そんなわけで、ほぼ2週間家にこもりきりだ。
顔なので化粧はできず、なにか(紫外線をふせぐようなものとか)塗ることも憚られて、マスクに眼鏡に目深にかぶった帽子という怪しい格好で一度か二度、近所のスーパーで買物したぐらいである。
ぼちぼち、ぼちぼちでんな。

おきらくなちっこいペンギン。ゆるーーーいファジサポ。介護とか雑記。