「窓辺の猫」第四十回 猫旅の準備(防災対策)
花粉症の三毛猫が脱走してしまった。
飼い猫の脱走はままあることだ。年に数回くらい。
また、私の帯状疱疹も恒例化した。
今年はやけに早い。
医師の診断は受けてないが、多分そうだろうと決めつけている。
毎年違う場所にできるものなのか。
今年は肩に湿疹だ。
幸いというべきか。
今年も隣県の兄弟と家族旅行する計画がある。3月末の予定だから、今帯状疱疹ならばその頃なら体調は復調しているのではないか。
大体私は行かなくとも良いのではないか。
それが独身の気軽さというものでは?と最近になってようやく気づいた。
とりあえず、予約のキャンセルはもったいない。
出かけるのは1カ月先だ。
それでも宿泊して家を空ける予定が出来ると何となく準備を始めるものだ。
猫をどうやって連れてくか?
県内に一泊。置いていっても良さそうだ。
しかし、猫可の宿泊施設の予約が取れてしまった。
年に一度くらい防災対策に良いかと思っている。
災害報道に接する度に、ペットの犠牲や野良化の問題が目につく。それは多少仕方ない側面もある。
人間が被害に遭っているのに、ペットが全部無事というのは難しいだろう。
とはいえ、なんとなく積み立てを始めた。
ネットアプリで毎日100円。
月3千円。人間の保険より安い。猫だから。いざとなれば、それを猫探しの資金にするのだ。ワクチン代もとって置かないと。
もっとも我が家の猫の一匹は、車が大好きである。多分置いて行かれそうなら隅から出てくる気がするが、こればかりはわからない。大きな地震だと怯えて出て来ないかもしれない。もう一匹は、人間にいつもひっついているから生きてさえいればやはり出てくるのではないか。
しかし、それも室内であればこそ。
我が家の三毛猫はハーネスさえ付ければ脱がないが、脱走したらお手上げだ。ごはんにつられない。捕まえようとしたら、追いかけっこやかくれんぼと間違えて、人間を振り回す。体調崩すほど全力で遊んで、疲れたら帰って来る。車に乗る振りをしたら捕まえられるが、車が家にない時もある。
そうだ。車で逃げる前提にしているが、車がなかったらどうしよう。道が寸断されて、家屋が倒壊したら、猫と荷物と庭に命からがら逃げ延びても、歩いて猫二匹連れてどうやって避難所に行くのか。
猫が脱走する前にちょうど片付けをして猫のお出かけセットを確認していた。
その後に玄関掃除をしていたら、玄関扉を10センチほど開けて掃き出したところで、後ろに潜んでいたらしい三毛猫が逃げ出した。
外猫との喧嘩が心配で夕方の風に吹かれながら、スマホ片手に玄関外の椅子に座って小一時間。noteを読みながら、帰って来ない時はどうやって猫を探せば良いのだろうと考えていた。
しかし、その脱走セミ猫は、おびき寄せるためにおいたごはんには見向きもせず、そっと帰ってきて扉の前に立って静かに扉を前脚で叩いた。気づかないふりをしたかったが、また逃げられたら私が風邪をひく。
扉を開けて、ごはんをあげて、徐に抱き上げて風呂場に連れて行った。2日前に大掃除したばかりのお風呂。しかも猫が逃げる前にも洗ったばかり。
猫を洗って自分もシャワーを浴びたら、再び風呂掃除をしなければいけないと分かっていたが、明日にすることにして、猫をおでかけに連れていくためのグッズ、もとい、いざという時の猫の防災グッズを確認した。
猫のキャリーにトイレと猫砂を入れたら重いだろう。
ペットシートとフードは1週間分、ペットシートは臭いが気になる人がいるかもしれないから、毎日変えるつもりで持っていきたいが、荷物になる。ハーネスに慣れているから外に出てさせれば良いだろうか、セミ猫の方は。しかし、トンボ猫はケージには慣れたがハーネスには慣れていない。やはり複数枚以上ペットシートをバックに詰め込む事にした。猫グッズを入れるバックは洗いやすいように保冷のトートバッグだ。猫がハーネスなら、いざとなればキャリーにトートバッグを入れられる。
キャリーは車輪のついた台車が取り外し出来る。大きめだから、猫二匹入る。歩いて避難所に行くなら自分の荷物のキャリーと猫二匹のキャリー二つと三つ引きずって行くのは現実的ではない。キャリーは人間と猫とそれぞれ一つ。トートバッグはどちらのキャリーにくくりつけよう。背中に背負うバックに猫を入れる
爪とぎも入る。二匹いるから爪とぎは二つ。それでも猫二匹入るスペースはある。
ただしやはりトイレが持っていけなそうだ。車移動でないなら、トイレの砂が現実的ではない。
ハーネスは軽いから、あるだけ持っていく。汚れた時の替えが必要だ。
ノミダニの薬は定期的にやっているから、軽いけど持って行く必要はないだろう。
ただ、心配なのは、人間がいなくなって猫だけになった時。
ワクチン接種している事を分かるようにしておきたい。
ネットに記録を残せば分かるだろうかと考えた。とりあえず時期がわかれば良い。
あまり考えたくはない事だ。
三毛猫のセミは、人間に対する警戒心がほぼない。ごはんにつられず、抱っこもそれほど好きでないが、膝を叩けば案外簡単に膝に乗る。大人しく誰にでも撫でさせるから、雑種でもほぼ拾ってもらえるのではないか。
よその家で快適に暮らすだろう。
後輩のトンボ猫はよくわからない。
ごはんに対する執着が凄まじく動きが鈍いから見つける事は簡単そうだ。そもそも外に出て行く事が考えられない。
しかし、ひとたび出てしまえば、警戒心が上がって暴れるのではないかという気もする。
セミ猫は、ふみふみも威嚇のシャーもやんのかステップも噛みつきもしたことがない。
しかし、トンボ猫は今は治ったが噛み癖があった。ノミダニ薬をつけたら威嚇もする。普通の猫なのだ。
案外捕獲は難しいのではないか。
猫の健康手帳を持って行けるか?
人間が一緒に連れて避難する事を考えれば、特に問題はない。しかし、猫だけ他に預ける可能性があるなら、健康手帳を持って行きたい。連絡先やかかりつけなど個人情報が載っているから、流石にネットにはアップできない。そもそも災害時は電力が遮断されるかもしれない。スマホに記録しても意味がないだろうか。
また、セミ猫が痩せてきた。
よく食べるように見えるが、わからない。
いっぺんに一食分を食べ切る事がないからだ。
最近は、後輩のトンボ猫が近くにいないと食べなくなった。トンボ猫がセミ猫の残したごはんを食べるのでなるべく別部屋でごはんあげるようにしたら、セミ猫がさらにごはんを残すようになって困っている。催促しては残して後輩にあげたがる。
ボス猫気質だ。脱走すると必ず外猫を追い回す。
ただし、必ず喧嘩するかというと違っていて、噛みつかれるまでは何もしない。追いかけ回して、相手が逃げればそれでいいが向かって来たら応戦するのだ。トンボ猫ともそんな関係で席は退けてあげないが、トンボ猫が怒って噛みつこうとして来たら一端は引く。追いかけて来なければ喧嘩はしない。
そもそも席を取れたらごはんのおこぼれがもらえたらトンボ猫はそれでいい。
うん。二匹は、心配するほど目立って迷惑をかけない気がして来た。
久しぶりに脱走されて、いつぶりの脱走か思い出せなかった。脱走記録もつけなくてはと考えていたら、なんだかいろいろ心配になってしまった。予測出来ない事まで心配しても仕方がない。
もう、寝よう。
よろしければサポートお願いします。いただいたものはクリエーター活動の費用にさせていただきます。