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「窓辺の猫」第28回 猫が窓辺にいない

我が家の三毛猫はテレビっ子です。世界の大自然の風景だけでなく、スポーツやら料理やら猫の動画すらよくじっと見ています。

赤い衣装を着たスポーツ選手や一人キャンプする人の夜の焚き火には特に惹かれるようです。

それだけテレビが好きだと窓の外には興味を示さないかといえばそんな事はありません。
我が家には二匹の猫がいて先輩の三毛猫がセミという名前で、後輩の麦わら柄の猫がトンボと言います。この猫の名前の由来や性格はnoteで何度も書いたのでおいておきます。

今回は三毛のセミ猫の特殊な行動の話です。

テレビっ子のセミ猫は、トンボ猫より活発です。持病がありますが、冬になってより活動的になって来ました。起きている時間が長くなり、テレビを見れば窓辺で外を眺めたり、ご飯の催促もよくするようになりました。

セミ猫は人間をあごで使うので、人間がそばに来るとくいっとあごをあげて扉まで誘導して扉の前にお座りして扉を開けさせ、ごはんの場所まで誘導します。自分で扉を開けられるのに人間を使います。
そしてごはんを数口食べては後輩に下げ渡し、走り回ります。後輩のトンボ猫は先輩の残りごはんに夢中で追いかけません。
ごはんを取り上げてもどうせ先輩の足に追いつかないと思っているので、追いかけません。先輩が近くに来たら遊んでもらおうとちょっかいかけますが、トンボ猫の方が体格が良くて接近戦は分が悪いので、セミ猫は基本的に追いかけっこしかしてあげません。
後輩の動きが鈍いので、セミ猫は人間に遊んでもらう方が好きです。そんな先輩に後輩は嫉妬して、爪とぎでしょっちゅうバリバリやってます。

バタバタ走り回っていたかと思うと冷たい窓のそばに居座って、くしゃみして鼻水を拭いてもらいに人間のそばにやってくるセミ猫は抱き上げようとするとまたバタバタ走り回ります。ゼェゼェ息が切れるまで走り回って、人間の膝をベッドにしに来ます。
それが人間のゴールデンタイム。テレビ見たり動画見たりnote読んだり、まだ起きていてトイレに行きたい時間帯なのです。

猫はいいですよ。トイレ掃除は人間にお任せで、人間が身動きして寝にくかったらモンク言って爪立てれば良いんですから。
しかし、人間は猫に長時間膝を借りられると足は痺れるし、トイレには行けないし、困りものです。

膝からおろすと不満そうににゃあと鳴いて、当てつけみたいに真っ暗な外の景色を眺めに窓辺に行くわけです。身体の弱いセミ猫が窓辺で眠り込んでしまったら風邪ひきます。

最近はセミ猫がいないとカーテン裏でくつろいでいないか探すことが増えました。

それにしても、我が家のセミ猫様は帰ると必ず窓辺にいて「よくも留守番なんかさせて」と恨めしい顔で見て来ますが、よそ様の猫は冬の夜に窓辺にいたりするんでしょうか。

よその家を覗き込んだりする事がないのでよく分かりませんが、野良猫はどこでもよく見かけるものの、窓辺にいる猫を見た経験がほとんどありません。子どもの頃の漫画やアニメでは猫はやっぱり窓辺にいるものでした。
しかし、実際は我が家の二匹の猫のうち、郵便屋さんだろうが宅配便だろうが、鳥が鳴こうが野良猫が窓を叩こうが必ず窓に見に行くのは三毛のセミ猫だけです。

トンボ猫はそんなに外にも内にも関心がありません。関心があるのは、ごはんを盗み食いする事だけです。

一体どっちが猫らしい猫なのでしょうか。それともどっちもそれが猫らしさなのか。
セミ猫の好奇心と執着心は異様な気もします。

例えば、最近我が家の庭にやってくる猫や鳥が増えたようなのですが、セミ猫は身体の大きい灰縞のボス猫風の猫だけ敵視しているようなのです。どんな猫が来ても物音で気づくようですが、灰縞の猫にだけ唸って吠えます。窓を叩いて怒り狂います。
この冬空の最中、家の中でぬくぬくしている猫に窓外に近づいただけで怒られる猫がなんだか気の毒になった来ました。
丸々してセミ猫より元気そうな猫も、あまりの剣幕で毎回吠えられるので、態度が殊勝になってきたようです。
なんでそんなにしょっちゅううちに来るのか分かりませんが、セミ猫に吠えられると窓を叩き返していたのが、最近は身を縮めてうずくまり、しばらくすると去っていくようです。その大きな背中は、冬の哀愁を託っています。

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