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我が家の庭の風景 part.88

柿の葉が夕焼け色に染まり始めた。実の色と同じ濃い橙色だ。
柿はどうやら、落葉広葉樹であるようだ。
但し、葉が色づいている裏庭の二本の木には柿の実はなっていない。
青いうちに鳥に食べられた柿の実の代わりのように色づいて、虫食いだらけである。

柿の葉の色は毒々しい。

柿色の葉っぱは、緑の葉っぱよりも虫に好まれているように見える。試しに葉っぱに鼻を寄せて匂いを嗅いでみた。甘い匂いはしなかったような気がする。隣の大きな柿の木の実が地面にたくさん落ちていて、その実の匂いすら外で甘く感じない私の嗅覚などあてにならない。
試しに葉っぱをかじってみようかと思ったが、虫食いだらけの葉っぱである。寄生虫が怖いのでやめておいた。よしんば食中毒になってしまったら、病院で「柿の葉っぱがおいしそうに見えたので、食べたらお腹壊しました」と恥ずかしい告白をしなければならない。それは、避けたい。
柿の葉茶にしてもいい。我が家にお茶の材料はたっぷりあって、これ以上茶葉を増やしたら、家族の誰かに捨てられてしまう事は目に見えているけれども、ちょっとぐらいなら試す価値はあるのではないか。その際は、やはり緑の葉っぱと柿色の葉っぱで、香りや味が違うのか比べてみたい。

秋は色づく季節である。また歪む季節でもある。我が家の庭の野菜たちは、色づいて歪み始めた。

ナス科の植物たちに、特に顕著だ。
ミニトマトの実は不揃いで皮が硬くなってきた。茄子も同様だ。ただし、秋茄子は皮を剥くと甘くほどけておいしい。
ピーマンもシシトウも縮んで曲がり、シシトウなどは赤くなると、まるでどこかのお菓子のパッケージで見た激辛唐辛子みたいだ。

家人が根性曲がりだと野菜も根性曲がりになる。

家庭菜園に対して肥料などいらないのに、父がせっせと肥料をまき続けているから、肥料不足という事はないだろう。

野菜が曲がるのは、気温の変化によるストレスなのかもしれない。野菜が曲がれば曲がるほど、ストレスが大きいということか。

ストレスはまた、形を歪ませるだけではなく思ってもない変化を起こす。

9月の後半に裏庭に出てみたら、ショウガに花芽がついていた。
以前も書いたが、ミョウガとショウガはよく似ている。根っこの花芽の部分を食べるので、子供の頃から庭でミョウガの花はうんざりするほど見てきたものの、ショウガの花を見たことがなかった。植えてそのまま放って置くと根っこが腐ってしまうので、掘り上げが必要だ。毎年勝手に茗荷のように生えてくるわけではない。
とは言え、多少生態が違うとしても、見た目にはショウガとミョウガの枝ぶりはよく似ている。
ミョウガの先の方が赤いあの白っぽい花芽を覚えていると、ショウガの花がみょうがと全く違って、緑色で硬そうなのが意外だった。

興味深く思ってネットで調べてみたところ、ショウガの花はとても珍しいらしい。花芽がついたとしても、11月まで放っておいて、花を咲かせるのは難しいそうだ。
緑色の硬い花芽はまだ花が咲きそうではない。台風が来たら一巻の終わりだ。ぽきっと茎ごと折れてしまうだろう。

もし、奇跡的に11月までもって花が咲いてくれたら、私にとって一生に1度のものを目にすることになるかもしれない。

地上部分の生姜の葉っぱが枯れて、早く生姜の土の中の花色部分を収穫できることを楽しみにしていた。しかし、生姜の花がそれほど珍しいと知ってしまうと、もはや生姜の収穫などどうでもよくなった。いつ花が咲くだろうと、そのことばかりが楽しみで仕方がない。

ショウガやサツマイモなどとは、たまに花芽がつくことがあるらしく、それはやはり急激な気温差がもたらすストレスによるところが大きいらしい。ストレスによってできるものは、私の顔のニキビみたいなものだろうか。
いや、あまりに喩えがよろしくない。ストレスという事は、植物が生き抜くにはよくない環境だろうから、植物が流す涙と思う思えば良いだろうか。
汗や涙が吹き出物より喩えとして適切かどうかは五十歩百歩かもしれない。しかし、涙は美しく喩えられることもある。美しい表現などされたこともない吹き出物よりマシだろう。

あるいは、ストレスが強い生存本能を呼び起こして、花芽をつけさせるのだろうか。まだ花が咲いていないので、ショウガの花がどんな見た目をしているかわからない。あえてネットでは画像検索しないことにした。咲かなかったら調べてみようと思う。今のところ、そんなに美しい花が咲くようには思われない。しかし、美しい花が咲けば咲くほど生存競争に有利だと言うことにもならないだろう。

激しい気温の変化が与えるストレスは人間にもある。私も植物のように何らかの変化をもたらされているのだろうか。死んで花芽は咲かないが、ストレスでは涙の花が咲くのだろうか。逆境が成功を呼ぶのだろうか。逆境なんてなるべくない方がいい。

葉ショウガをひと口楽しもうかと、葉っぱをもぐことも考えた。さらにストレスを加えたら、もしかしたら花が咲くかもしれない。しかし、それを人間に置き換えてみると、ショック療法のように、あえてストレスを与えることによって一か八か成長を促そうとするようで、人道的でない。勝手に花芽がついたのだ。勝手に花が咲くか、こちらが楽しみにしているとしても、余計な手などを加えないほうがいいだろう。

異常気象と雑草に耐えて生き抜くショウガ。
この記事を下書きしてしばらくして。
10月1日ショウガの花が咲いた💐翌日の2日は9月以来初めて最高気温が摂氏29℃と30℃を下回り、最低気温は11℃となった。暖房つけたいほど急に寒くなり、人間にもストレスだ。
10月9日収穫。掘り方が悪くて端が削れてしまった
乾姜やガリやジンジャーエールが作りたい

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