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3連覇が生んだ歪み

1990年~1994年西武以来のリーグ4連覇を目指して、始まった広島の2019年シーズンですが、浮き沈みの非常に激しい戦いを繰り返しているうちに、安定して勝ち星を重ねた巨人にゲーム差を付けられ、現状4連覇という目標達成は風前の灯火と化しています。

そんな状況の今季の広島ですが、丸佳浩は巨人へ移籍し、不振の田中広輔に代わってルーキーの小園海斗が遊撃手の位置につき、クローザーは中崎翔太からフランスアに交代するなど、3連覇を支えた選手構成に大きな変化が訪れているのは、見ての通りです。

このような変化が生じたというのも、3連覇中にジワジワと生じていた歪みが、今季に入り様々な形で表出したという点が大きいように感じます。

そこで、3連覇中だった広島にどのような歪みが生じていたのかという点について、以下にて整理していこうと思います。

1.作ろうともしなかった代替選手

これは、主に田中広輔・菊池涼介の二遊間コンビの話となりますが、この両者を過信し続けて代替選手を作ろうともせず、出場をさせ続けたことが、徐々に歪みとなっていき、今季に田中の故障及び大不振という形で表出してしまったのではないでしょうか。

代替選手と述べていますが、当然この両者と同等の実力を備えた選手がチーム内にいるはずがありません。

しかし、疲労の軽減や若手に経験を積ませるという意味で、試合展開やシーズンの趨勢によっては彼らを交代させることが出来たはずです。

とりわけ、過去3年はいずれもシーズンは独走状態にあったため、フルで出場させる必要性はどこにもなく、ここで然程意味のない出場を続けた結果が積もり積もって、最低限レベルの代わりを務められる選手は誰もおらず、不動のレギュラーは故障を抱えたまま出場を続けざるを得ない事態を招いてしまったのでしょう。

菊池については、今季数試合コンディション不良で欠場しているように、田中ほど出突っ張りではなかったため、長期離脱はありませんが、MLB移籍が既定路線の中で、次代を担う選手である曽根海星等の選手を試せているかというとそうではありません。

また、以前指摘したように、現在のコア世代である田中・菊池らの世代と、次代のコア候補世代である坂倉将吾・小園海斗らの世代との間を繋ぐ選手がいない、という事態も引き起こしており、直近だけでなく今後のチーム作りにも大きく影響を及ぼしてきています。

2.稚拙な投手運用による疲労蓄積

3連覇中は、いずれもシーズン80勝以上を挙げていたため、当然勝ち試合を担う投手たちの出番は増えてきます。

だからこそ、コンディション維持のためにもきちんと登板管理を行う必要があるはずですが、投手コーチは変われども、4点差や5点差といった明らかに登板が不要な場面で、勝ちパターンを担う投手が毎試合のように登板することは変わりませんでした。

そのために、中崎翔太は球速を落としてしまい、スライダーのキレも失うと同時に、クローザーの地位も失いましたし、今村猛も球威を取り戻し、2013年以降の不振から立ち直ったものの、登板過多からか再び球威を失い、一介のリリーフ投手まで地位を落としてしまいました。

リリーフ投手は、他のポジションに比べどうしても回転サイクルが早くなってしまいますが、最低限の管理もなっておらず、目先の勝利を優先させ続けると、過度な疲労蓄積という歪みがジワジワ生じ、あっという間に焼け野原状態に陥ってしまうわけです。

今季、中村恭平に代表されるように、多くのリリーフ投手が台頭していましたが、このままでは中崎や今村の二の舞となってしまうのは明らかでしょう。

最低限の対策くらいは敷いてもらいたいものですが…

3.四球に対する不寛容さ

広島の投手に対するドラフト方針というと、コントロールに難はあるものの身体が大きく、高出力を持つ投手を獲得するという色がハッキリしています。

そのような特徴を持つ投手を、ある程度モノにするメソッドを持っていたため、岡田明丈や薮田和樹に代表されるような投手たちが、一軍の舞台で二桁勝利を挙げるような活躍が出来るまで引き上げることが出来ていました。

しかし、そのような投手たちが一瞬の輝きに終わり、継続して活躍することが出来ていません。

そのような事象が生じている要因としては、コントロールよりも高出力ぶりを優先しドラフトで獲得してくる投手の特徴と、四球を忌み嫌う首脳陣の考え方がマッチしておらず、そのギャップが投手の成長を阻んでいる面があるのではないでしょうか。

シーズン独走中で余裕があるにもかかわらず、四球が多いとの理由で早々にマウンドから降ろされてては、成長もありませんし、むしろ萎縮していくだけでしょう。

そのようにして、四球を恐れて縮こまった結果、変にコントロールを意識してしまい、スピードボールで押していくという自分の良さを忘れてしまい、持ち味の出力が落ち、コントロールも大して良化していないという中途半端な投手に成り下がってしまっているのではないでしょうか。

連続的に戦力化出来たはずのものも、戦力とならないままとなってしまうために、下に続く投手に要らぬ負担をかけてしまうという歪みが生じ、これまた将来にも悪影響を及ぼしていくわけです。

4.まとめ

以上の項目をまとめると、「タナキクマル」や勝ちパターンなどの形にこだわり過ぎたことや、全ての試合に勝とうとするような力を抜かな過ぎたことに尽きるでしょう。

結局は勝利していても、マクロな視点の無さは明らかであり、将来的には破滅を呼んでしまう勝ち方であったという結論に至ります。

次世代においては、このような事象を繰り返さないようにして欲しいですが…

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #歪み #3連覇

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