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REALITY IS MAGIC

NEAT REVIEWから出版されたAnson Chenの作品集です。 Luke Jermayが序文を書いていることからも分かりますが、著者はマジックを通して本当の魔法のような体験を与えようとするスタイルのマジシャンで、この本に掲載されている作品も観客の体験に重きを置いている作品が多い印象です。 基本的にはメンタルマジックですが、予言、変化、移動、念動、復活などバラエティに富んだ現象の作品群で、演じるシチュエーションはホッピングや大人数のショー、友人に見せるようなカジュア

    • ストロングマジック

      Darwin Ortizが1994年に著したクロースアップマジックのプレゼンテーション術に関する本で、今回読んだのはその日本語訳版です。 マジックを通して、観客に与えたい印象を与えることを目的として、現象、キャラクター、アクト、観客と4つのテーマに分けて書かれています。 現象については同書の半数ページ以上を占めており、どうしたら現象を明瞭に見せることができるのか、観客が興味を持続するためにはどのような構成にしたらいいのかなど、具体的な手法とともに解説されています。 一つひ

      • Six Impossible Things

        Joshua Jay がコロナ禍前にニューヨークで240回以上に渡り行ったマジックショーの映像です。 2022年にvanishingincから映像が販売されていましたが、この度スクリプトマヌーヴァから日本語字幕版が販売されました。 ショーの説明ではイマーシブという言葉が使われており、通常のマジックショーよりも没入的な体験ができるように考えられたショーのようです。 なお、1回あたり20人限定、再訪不可の条件付です。 (最近東京にもイマーシブ体験ができる施設がオープンしました

        • FACTFULNESS

          FACTFULNESSは、副題の通り、10の思い込みを乗り越え、データを正しく基に世界を正しく見る習慣を持つための本です。 著者のハンス・ロスリングさんは残念ながら原著の出版前の2017年に亡くなっていますが、息子のオーラ・ロスリングさん、その妻アンナ・ロスリングさんとの共同作業によって書かれました。 日本語版が出版されたのは2019年ですが、世界100万部越えの大ベストセラーのようで、2024年になった現在でも書店でよく見かける印象です。 読む前は小難しいビジネス本だ

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          9本

        記事

          A FLORIN SPUN

          2023年12月、とあるメールが届いた。 メールによれば、新しい本を書いたけれど中身はまだ教えない、とのこと。 中身が分からない本を買うような変人たちのために作られた販売ページには本の書影だけ。 それから数日。 私の元にもその本が届きました。 タイトルはA FLORIN SPUN。 著者はHector Chadwick。 中身はコイントスの結果をコントロールするテクニックとその適用例について書かれた本でした。 テクニックに関してはコインをテーブルでスピンさせる方法や

          A FLORIN SPUN

          The Definitive Mental Mysteries of Hector Chadwick

          Hector Chadwickによるメンタルマジックの作品集。 本書は2008年に出版されたMental Mysteries of Hector Chadwickを基盤として、いくつかの作品、エッセイが追加された決定版です。 サイコメトリー、チェアテスト、メンタル風カードマジック、ブックテストなど現象のバリエーション豊かな作品に加え、one ahead、equivockなどに関する示唆に富んだエッセイも収録されています。 著者のHector ChadwichはDerren

          The Definitive Mental Mysteries of Hector Chadwick

          アルマンド・ルセロレクチャー2024

          スクリプトマヌーヴァ主催のアルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーに参加したので、感想を書いていきます。 アルマンド・ルセロさんのオンラインレクチャーは2021年に続き2回目で、前回はカード、コインを使い、バラエティに富んだ現象のレクチャーでしたが、今回はFind four(4枚のエースを集める)という一貫したテーマに沿って、いくつかの作品とそれらに使われている策略の考え方を共有するスタイルのレクチャーでした。 意図的だと思いますが、最初は解法として技法に重点を置いた作

          アルマンド・ルセロレクチャー2024

          THINK BIGGER

          THINK BIGGER (Sheena Yengar著 櫻井祐子訳)  選択肢がない課題に対して、どのように解決策を導き出すのかを6つのstepで解説した本です。 著書のSheena Yengarさんは前書"選択の科学"において、様々な実験や著者自身の経験を通して、多くの選択肢の中からよいものを選ぶ方法を解説し、同書はベストセラーとなりました。同書の中でも、多数の選択肢よりも限られた選択肢の方が購買意欲が上がる傾向にあるということを示したジャムの実験はマーケティングの世

          THINK BIGGER

          2023年を振り返る(手品演技編)

          2024年も早くもひと月が経ちました。 今更ながら2023年を振り返ろうと思います。 今回は2023年に演じたマジックについて。 飲み会やマジックの交流会などを除いては、マジックを演じる機会も段々と少なくなってきていますが、ありがたいことに会社の仕事の一環としてクリスマスパーティでマジックを演じる機会がありました。 環境としてはちょっと特殊かもしれませんが、個室でディナーを食べている家族に向けて5分〜7分程度でマジックを見せていくスタイルです。 昼と夜で時間帯が分かれては

          2023年を振り返る(手品演技編)

          質と量とRory Adams

          質と量どちらを優先するのがいいのか。 そんな話は聞き飽きるくらいに双方の意見があると思いますが、今回は「量」の話です。 その前にRory Adamsの話からしたいと思います。Rory AdamsはDynamoなどの有名マジシャンのコンサルタントです。 Rory Adamsはマジックコンサルタントをしながら、one aheadというマジック関係の記事を投稿するサブスクを運営しています。 コンサルタントの視点から書かれた記事やオリジナルのトリックの解説などもあり、内容としては

          質と量とRory Adams

          ある閉ざされた雪の山荘で

          映画化されたということで東野圭吾さんの"ある閉ざされた雪の山荘で"を読みました。 そして公開された映画も観ました。 まずは原作について感想を。 書かれたのは約30年以上前ということでしたが、今読んでも楽しめる作品でした。どんでん返しがすごいという前情報があったので、期待値を大きくしたせいもあり、そこまで驚きはしなかったのですが、きれいな構造の作品だと思いました。前情報なしで読みたかった作品ですね。 どんでん返しといいますか、往々にしてミステリは驚きを期待してしまっている分

          ある閉ざされた雪の山荘で

          超・自習法 ULTRA LEARNING

          超・自習法(スコット・H・ヤング 小林啓倫 訳) MITの4年分のカリキュラムを1年で習得したという著者による学習術の本。 Nate Staniforthというマジシャンのマジックを創作するオンラインコースを受講した際に紹介されていたので手に取ってみました。 Nate Staniforthに関しても書きたいことはあるのですが、彼についてはまた別の記事に譲るとして、今回は簡単に同書の感想を書きたいと思います。マジックの話は一切ありませんが、マジックの創作を含め、あらゆる分野

          超・自習法 ULTRA LEARNING

          honmikujiをしてみた話

          年始の話。久しぶりにBOOKOFFに行ってみるとhonmikujiなるものを発見。 その名の通り、何が出るかはお楽しみの本のおみくじ。 普段はあまり中古本は買わないのですが、自分が選ばない本との出会いを求めて買ってみました。自分で選んだ本ですら積んでいるので、言いづらいところではあるものの、普段であれば選ばないものとの出会いは、半ば強制的に世界を広げてくれるという意味ではたまには必要だなと思ったり思わなかったりします。今回は必要だと思ったんだと思います。 さて、おみくじの

          honmikujiをしてみた話

          Young Girls Are Coming To the Canyon

          Young Girls Are Coming To the Canyon (Andy) Jerxブログ(※1)の著者AndyによるWWC(White Wand Chronicles)のvol.2にあたる本で、2021年秋から2023年春までのサポーターに配布されました。前作のWWC vol.1同様に一冊の中で一貫したテーマはなく、基本的には単独の作品が一冊にまとめられています。一貫したテーマはないものの、E.D.A.S(※2)と名付けられたフレームワークを用いた作品がいくつ

          Young Girls Are Coming To the Canyon

          マジケ2023秋出展に寄せて

          マジックマーケット2023秋最終日ですね。 リアル会場には残念ながらいけなかったのですが、今回もオンラインにて出展しました。今回は過去に販売した作品集Calmと、新刊としてRoom Vol.1というアイデア集を販売しています。せっかくの機会なので、今更ながら宣伝しようと思い、これを書いています。 Calmに関しては過去にも宣伝したので、今回は軽く触れるに留めますが、3種類のメンタル寄りのカードマジックを解説しています。作品数は少ないものの何度も演じてきた作品ばかりで、レパー

          マジケ2023秋出展に寄せて