社会学史

資本主義とその未来


マルクスは、資本主義ではなぜ労働者は貧しくなるのかという謎を出発点に資本主義の記述を試みた。資本家ひとりの意思ではなく、彼にそうさせる複数の意思による意図せざる結果を謎として捉え、資本主義社会に何らかの法則があるのではないかと考えた。そこでマルクスは労働力が商品になることが原因なのではないかと考えた。具体的には、近代以前は生産したものを領主が直接搾取するので搾取される割合はわかるが、近代になり契約をして賃金を得るという資本家と労働者の関係性になったためにいくら搾取されたかわからなくなり、労働力商品にしかなり得ないということである。これらは内化なき外化の状況を生み出し、その帰結として疎外を生み出すとした。マルクスは、資本家と労働者が明確に分化し利害が対立し、失うものがなにもない労働者と資本家の階級闘争が勃発し革命が生じるということと、生産の拡大を至上命題とする資本主義だが、資本家は贅沢すると資本競争で負け労働者は低賃金のために購買力がないために、総じて社会に消費力がないという矛盾が生じるために恐慌が起こるという理由から資本主義は崩壊すると説明した。しかしながら、これらのマルクスの予言は現在の資本主義を見るかぎり外れたといえる。彼の予言が外れた要因としては、彼のモデルは純粋資本主義だった点が指摘できる。現実の資本主義は他の異なる仕組みと関係し合う不純資本主義であった。とはいえ、資本が多くの矛盾を生み出す現代に生きる私たちにとってマルクスの予言は重要性を増しており、学ぶことは多くある。(650字)

個人(人間)と社会


デュルケームは、個人の意思とは別に独自の論理で動いてしまう社会がどのようなメカニズムから生じているのかについて「もの」として社会を捉えて社会を記述することを試みた。親友ヴィクトル・オメーの自殺をきっかけに自殺論として展開した。自殺者数に変動がないということ、国により固有の自殺率があること、自殺者数に漸増傾向があることから、個人的要因だけではなく社会的な要因があるのではないかと考えた。具体的には自殺の類型として3つ提示した。第一に、集団の凝集性が強すぎると「私」が生きる意味が感じられず自殺が増加する、集団本意的自殺。これは、軍人が市民よりも自殺率が高いということにも象徴される。第二に、人々が社会から切り離されていると感じれば感じるほどその社会を根拠にも目的にもしている生からも切り離されていくことになるという、いわば人のために生きるということが実現されなく個人が運命の支配者になることで生じる、自己本位的自殺。第三に、欲望が無際限に増大するアノミーがトリガーになる、アノミー的自殺がある。これらの自殺類型から、自由と平等を過剰から引き離し人々に望ましい連帯感を持たせることができる集団を再建することによって自殺の増加を食い止められると結論付けた。(526字)


私の評価


二人の社会学者をそれぞれのテーマをもとに記述した。両者とも社会の謎を解明する理論や思想を展開しておりとても納得感があった。ここで私がとりわけ評価したいのは、資本主義とその未来について論を展開したマルクスである。現在、世界は気候変動や格差の問題に直面している。これらの問題は資本主義がもたらした弊害ともいうことができる。目下、対峙している新型コロナウイルス感染症の拡大も資本主義との相性は非常に悪かった。資本主義のもとでは合理化が志向されてきた。資本合理性を高めるために、一部に資本を集中させるという形で都市が生まれたが、この集中により感染症が瞬く間に拡大するという事態に陥った。また、先進国の多くは資本主義によって豊かになり、その豊かな資本を使いワクチンを先んじて確保することができた。しかし、後進国は資本が乏しいがゆえにワクチンを十分に確保、流通できなく変異株の発症の温床になったりもした。このような事態を人々が目の当たりにしたことで資本主義に対する懐疑心も高まりを見せた。脱成長を唱えた書籍がベストセラーになったりしたことがそれらを表象しているといえる。そんななかで、資本主義というシステムを冷静かつ批判的に分析していたマルクスの理論からは、これからの資本主義の行方を考えるうえで多くの足掛かりがあると思われる。
したがって、今現在の社会状況にマルクスの資本論をはじめとした理論体系から参考にしたり応用したりすることが多くあると考え、彼を格段に評価する。(628字)


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