義父のはなし
私の義父は、かなりおもしろい。そして、めちゃくちゃ温かい。
一見ひょうひょうとしていてお堅いけれど、実はめちゃくちゃおもしろい。私は義父が大好きだ。
キャリーするバッグやのに・・・
さかのぼること約10年。
両家顔合わせのとき、スーツを着た義父は、キャリーバッグを手に持って登場した。キャリーするバッグやのに、普通のカバンみたいに持っている。しかも「重いわー」ってずっと言っている。
その瞬間、私の「オモロイ人センサー」がMAXを示した。
絶対この人、オモロイわ。
家でも学校でも友達の間でも、ボケたらツッコむの世界で育った私。センサーは体に埋め込まれているようなもん。笑 無意識に、オモロイ人を探している。
会場の料亭までの道を、夫と私、両親、義祖母、義父でゾロゾロと歩く。
「いやー重い。なんでこんな重いんやろ」
斜め前でキャリーバッグを持ちながらつぶやく義父に、こらえきれず話しかけた。
「そのカバン、タイヤが付いているんで、引くといいですよ」
ちょっといいですか、とキャリーバッグを引いてみせた。
「えっ!?そうなん!?ほんまやなー、めちゃくちゃ便利やなー!」
大きな目をさらに大きくして、義父が驚く。そうこうしている間に料亭に着き、うちの両親へのお土産のさぬきうどん(詰め合わせセット)が手渡される。
義父をあれほど苦しめたキャリーバッグは、一気に軽くなった。
義父とケッコン?!
義父のオモシロ話ナンバー1は、入籍にあたり戸籍謄本を取り寄せたときのエピソード。
入籍日を2週間後に控えたある朝、義父からかかってきた電話に出た夫が、
「いや違う違う。僕のを送って!いやいや、オトンのちゃうくて僕のね!!」
何やら熱心に話している。
なんとなく予想はついたけれど、義父、自分の戸籍謄本を送ってこようとしたらしい。
危うく、義父と入籍するとこやった…
義父と夫の名前は漢字で一文字違いなんやけれど、そこは間違えないでもらいたい。笑
元・やり手営業マン
義父は大手カメラメーカーで30年以上、営業をしていたそうだ。20年ほど前、義母の病気が発覚し、長期にわたる看病のために早期退職を願い出たらしい。
働き者の義父は、ここ10年ほどの間だけでも弁当配達に野菜配達、マンションの管理人など、あらゆる仕事をしている。
夫のタフさ(体力面)は、父ゆずりかもしれない。
とことん、気配りの人
そんなオモロイ義父は、私が知る中で1番、気配りができる人だ。
毎年、私の誕生日にはバースデーケーキが送られてくる。誕生日が平日の場合は必ず、直前の休みに届く。
息子たちの誕生日は1日違いなのだけれど、まとめることはしない。
それぞれ1つずつのバースデーケーキに、名前入りのプレートとロウソクがそれぞれ添えられている。
「ケーキを1つずつ用意したから、ケンカしないようにね」
そんな義父からのメッセージが込められているように思える。
サラッと、相手に気付かせないように。
これが心を配るということか。つくづく頭が下がる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?