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”AI”と”データセンター”と”再エネ”と

①AIってなに?

AIとは人工知能(Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス))の略称。コンピューターの性能が大きく向上したことにより、機械であるコンピューターが「学ぶ」ことができるようになりました。それが現在のAIの中心技術、機械学習です。
 機械学習をはじめとしたAI技術により、翻訳や自動運転、医療画像診断や囲碁といった人間の知的活動に、AIが大きな役割を果たしつつある。

 また近年で世界的ブームとなっている生成AI(ジェネレーティブAI)は、急速に進化しているテクノロジーであり、複数の業界を変革する可能性があります。市場規模は2028年までに、世界で518億米ドル(約7.5兆円)、日本で28億米ドル(約4,070億円)にまで拡大すると予想されています。

生成AIの市場規模はどう推移するのか


AI半導体王者のエヌビディア(NVDA)を例にみてみよう。
エヌビディアの株価が年初来高値を更新するまでの主な出来事を確認してみると(図表①の部分)、マイクロソフト(MSFT)が生成AIのChatGPTを開発したOpenAIに今後数年で、数十億ドルを追加投資すると発表した1月からエヌビディアは上昇基調が続きました。
その後、株価が1日で10%以上上昇したこともあり、いずれも決算発表の翌取引日でした。1回目は2/23の14.0%高、2回目は5/25の24.4%高です。いずれも決算発表で市場予想を上回るガイダンスを発表したことが好材料となりました。
特に5/24の決算発表では、8/23(引け後)に発表される予定の24.1期2Q売上高について、市場予想を5割以上も上振れるガイダンスを提示し、市場を驚かせました。マイクロソフトを筆頭とするテック大手のAIへの設備投資がいかに旺盛かが伺える内容でした。決算発表後、アナリストたちはエヌビディアの業績見通しと目標株価を相次いで上方修正しました。

エヌビディア(NVDA)とSOX指数の年初来推移と主な出来事

AIの進化は留まることを知らない。
10年後のAIは、今よりもさらに高度な技術と広範な応用が期待されている。AIの能力が人間を超え、より高度な問題解決能力を持つようになる可能性があるのだ。例えば気候変動や経済不況、病気の流行など複雑で大規模な問題に対する解決策をAIが提案する日が来るかもしれない。


②データセンターってなに?

データセンターは、コンピューティングマシンとそれに関連するハードウェア機器を保管する物理的な場所です。
これには、サーバー、データストレージドライブ、ネットワーク機器など、IT システムが必要とするコンピューティングインフラストラクチャが含まれています。
これは、企業のデジタルデータを保存する物理的な施設のことを指します。

総務省がまとめたデータによると、
世界の大規模データセンターの数は、増加傾向が継続し、2021年第3四半期末におよそ700にまで増加している。世界のデータセンター容量に占める割合は、米国が49%とほぼ半分を占めており、次いで欧州・中東・アフリカ地域(19%)、中国(15%)、中国以外のアジア・太平洋地域(13%)となっている。
世界のデータセンターシステムの市場規模(支出額)は、2021年に23兆7,069億円(前年比24.0%増)となっている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で2020年は一時的に減少に転じたものの、2021年は2019年とほぼ同じ水準に戻っている。

世界のデータセンターシステム市場規模(支出額)の推移及び予測

なお、日本のデータセンターサービスの市場規模(売上高)は、2021年に1兆7,341億円(前年比11.6%増)となっている。

日本のデータセンターサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

②-1 データセンター需要拡大の背景

デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIによって、データセンターの需要が拡大している。金融や医療、エネルギー産業に至るまで他分野にわたりサービスの提供・研究開発に影響を及ぼしているのも特徴である。
世の中のデジタルシフトは、ビジネスにおいてもAIの利用幅を広げ、自然に対話が可能な生成AI「ChatGPT」のようなサービスの拡大にも繋がっている。デジタル化の波が、クラウドサービスの需要増加とデータセンターの拡大に大きく関わっている。

特に、クラウドサービスプロバイダーの大手AWSなどが日本市場に入ってきてからは、クラウドのサーバーを設置するデータセンターの建設が加速している。 この背景には、情報の信頼性や反応速度が要となる企業にとって、データセンターの選択が生命線であると認識があるからだ。
一方で、データセンターの地域集中も大きな問題となっており、東京都心の地価高騰や大規模地震、首都直下型地震などリスクも考慮して、関西地域などへの分散化が進んでいる。

 代表的なクラウドサービスプラットフォームの例を挙げると
AWS

Google

Microsoft


②-2 国内データセンターの新設置動向

2022年以降、日本のデータセンター設置は加速の一途を遂げている。
これにはいくつかの要因が顕在化したからだ。
そのどれもが一過性ではなく、長いものが数年先まで継続し、さらにその後のデータセンター新設にも影響を与える長期トレンドといえる。

総務省の補助事業で採択された民間提案のうち約60%は、各社からデータセンターの新設計画が発表されている。
経済産業省が進める土地構造施策では、最終的に10ヘクタールの用地が最大10の自治体で提供され始めている。 また国際的にも加速している脱炭素対応についても、詳細な項目までのプロセスも含め2022年より順次国内データセンターで対応が開始されている。

2022年以降に新設予定のDC立地状況

また化石燃料への依存によって、高騰する電気料金への対応として、データセンター利用企業が支払う利用料の値上げが始まっているほか、データセンター事業者が仕入れる電力コストを削減するため、データセンター事業者は敷地内太陽光発電に取り組んでいる。
データセンターにおける再エネ、脱炭素対応は、これまで主に非化石証書購入だったが、始まったのはデータセンター事業者が自主的に敷地内に太陽光パネルを設置(または誘致)して発電、自家消費するものである。
この動きはハイパースケール型・リテール型両方のデータセンター事業者が仕入れる電力料金を固定化できる点が魅力である。もちろん電力料金が高騰したことで再エネ発電が割安になったからではあるが、将来にわたって電気料金は高止まりすることが見込まれており、いま再エネ自家発電・自家消費を開始しても十分なコストメリットがあるとの判断がデータセンター事業者にある。


②-3 AI活用拡大によるデータセンター活用例

 1)さくらインターネット生成AI向けクラウドサービス開始

 2)ソフトバンクとNVIDがAI活用の次世代データセンターで協業】


②-4 データセンター海外誘致

全世界の主要都市70以上でデータセンターの設置、稼働がされている。

データセンタープラットフォームMAP


現在、データセンターの新たな投資先としてある国が注目を浴びている。
それは、シンガポール隣国であるマレーシアだ。

マレーシア経済特区「CyberJaya」
マレーシアの美人タレント ジュリアナ・エヴァンス(可愛えぇ❤)

東南アジアのデータハブであるシンガポールで土地の確保などの問題によりデータセンターの新設が難しくなるなか、周辺国が新たな投資の誘致へと動いている。足元で活発化しているのがマレーシアだ。シンガポールに近い立地に加え、地震や津波などの災害も少なく政府の減税や安定的な電力供給といった積極的な支援も投資を後押ししている。

高温多湿なマレーシアでは、地球に優しい運営をより強く意識して事業を進めていかなければならないと指摘。データセンターの運営コストは電力の調達が約3分の1を占めるといい、「管理においては電力調達をどう行うかが重要なポイントになる」と専門家は述べている。


②-5 課題

DCの需要拡大の一方で、課題もある。
それは「消費電力負荷の大きさ」です

国内全体における消費電力(電力需要)の推移については、資源エネルギー庁の統計デー タおよび推計を参考にすると、2018 年時点での電力需要が 896.2 TWh、2030 年時点での電力需要推計は 864.0 TWh となっている。これに対して、前段で紹介した国内データセン ターの消費電力推計の結果を組み合わせると、2018 年時点では国内の電力需要の 1.5%程 度だったデータセンターの消費電力が、2030 年時点では 10%を超える可能性がある。

国内総消費電力とデータセンターの消費電力

これはデータセンターの消費電力は国内全体のエネルギー政策において重要なファクターとなることを示唆している。
2050 年のカーボンニュートラルの実現に向けて、資源エネルギー庁では 2030 年に国内 全体で 46%の CO2 削減(2013 年比)を目標として定め、そのために総発電量の 36~38%を 再生可能エネルギーで賄うと示した。データセンターの電力消費においても、その影響を鑑 みてこれらに追随するような目標設定を行っていくことも検討する必要がある。


③再生可能エネルギーの活用

多くのハイパースケーラーや大手デベロッパーは、概ね 2040 年前後での実質排出量ゼロ を宣言している。多くの事業者が 2025 年までの再エネ利用率 100%の達成をほぼ実現可能 な範疇としている。
各社は、カーボンニュートラル達成の要件として、再エネ利用の最大化のために、各種技 術開発もテクノロジープロバイダーと連携のもと進めている。

③-1 市場規模

富士経済(東京・中央)は2023年2月20日、再生可能エネルギー(再エネ)などを含む「グリーンエネルギー」の国内市場の予測を発表した。2035年度の同市場は、2021年度比16.3倍の2兆2757億円になると見込む。足元では電力価格が高騰し、コスト高のグリーンエネルギーの導入を見送る中小企業などがあるものの、大企業では導入が増えている。

グリーンエネルギーの国内市場予測

全ての電力を再生エネでまかなうことを目指す国際的な企業連合「RE100」やESG(環境・社会・企業統治)投資など社会的な環境価値への意識の高まりや政策によってグリーンエネルギーの提供事業者は増加している。2035年度のグリーン電力市場は1兆9459億円となる見込み

③-2 企業の取り組み事例

1)Amazon
Amazon 社は再生可能エネルギープロジェクトの導入に注力しており、主に自社開発及 び PPA により再生可能エネルギーを調達している。

【プロジェクト概要】
Amazon 社の直近の具体プロジェクトとしては、再生可能エネルギーの導入に力を入れ ており、最近では 2021 年 4 月に 9 つの、6 月に 14 の新規太陽光・風力発電プロジェクト を発表した。これは、AWS データセンターの他、Amazon のオフィスの電力供給減とする。 発表されたプロジェクトを含め、世界で 85 のユーティリティー規模の、147 の屋根上太陽 光のプロジェクトを展開する。

【再生可能エネルギー調達詳細】
Amazon は将来の野心的な取り組みと安定調達を目的に自社での電源開発に注力してい る。既に 12GW に達する再生可能エネルギー容量を今後も更に進めていく予定。アマゾン は、PPA と自社開発したユーティリティープロジェクトを区別しておらず、両方の手段を 用いて目標達成を企図している。2021 年、アマゾンはエネルギーストレージとペアになっ た太陽光発電プロジェクトを初めて導入。今回の 2 つの既存プロジェクトにより、アマゾ ンの再生可能エネルギー貯蔵容量は 250MW となる。蓄電池の導入により、アマゾンは太 陽が出ていない時でも、最大の需要がある時に太陽光発電を調整することができる。

2)META(Facebook)
Meta のデータセンターは、ソーシャルネットワークサービス(SNS)における動画や写 真のホストを主に行っている。再生可能エネルギー調達方法としては、バーチャル PPA や Green Tariff の構築など、証書の購入にも積極的である。

【プロジェクト概要】
ユーティリティーと協同で Green Tariff を構築し、再生可能エネルギープロジェクト からのエネルギー購入を可能にすることや、クレジットの購入を行う。また、政府と共同の 研究開発も行う。

【プロジェクト例 ① 詳細】
オレゴン州の Prineville データセンターでは、Pacific Power 社の Schedule 272 tariff ス キーム(Blue Sky Connect とも呼ばれる)を利用しての再エネ電力証書(REC)の購入に より 100%再生可能エネルギーを達成する。

Prineville データセンターにおける Blue Sky Connect 概要

③-3 再エネ100%施設の稼働予定

Zホールディングス(4689)
2021年1月、傘下のヤフーで使用する電力を2023年度までに100%再生可能エネルギーに切り替えると発表した。ヤフーが消費している電力の95%がデータセンターで使用されている。国内では、福岡県北九州市と福島県白河市にデータセンターを保有しており、ここでの使用電力をすべて風力や太陽光といった再エネに切り替える。

NTTデータ(9613)
本社が入る東京・豊洲センタービル群で使用する全電力を2022年4月より100%再エネに切り替えた。また、2030年までに自社データセンターでも使用電力をすべて再エネ化するとしている。

三菱商事(8058)
2021年9月、アマゾンとの間で、再エネを活用した日本初の長期売買契約を締結した。三菱商事が太陽光発電施設の建設支援などを行い、アマゾンがこうした450カ所以上の施設からデータセンターなどに使用する再エネを調達する。 2022~2023年に順次稼働する予定で、すべてが稼働すると年間2万3000メガワット時(一般家庭5600世帯分以上の電力に相当)の再エネを生成する。アマゾンでは2025年までに自社消費電力を100%再エネにする目標を掲げている。


④セクター投資の最新ニュース

2024/1/19 各種媒体にて発表
AWSジャパン、日本市場への新たな大型投資を発表 5年間で149億6000万ドル規模
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社AWSジャパン)は19日、2023年~2027年にかけて、日本市場に対し、2兆2600億円(149億6000万ドル)の投資を行うと発表した。

AWSジャパンの長崎忠雄社長は、「この投資のなかには、データセンターの建設、サーバー導入の費用やデータセンター間をつなぐネットワーク機器などの各種設備投資、長期的に発生する運用費用、機器のメンテナンスなどが含まれている。日本のお客さまは、 国外にデータを持ち出さず、日本で利用でき、低遅延でのクラウドサービスの利用、日本における雇用の確保、AIなどの先端技術の活用、地域コミュニティの支援、再生可能エネルギーの導入といった点での効果がある」と話す。

これは日本経済の成長分野にとって、とてつもない追い風となりそうだ


⑤結び

先に説明してきたように、
AIの進化に伴い、データセンターの需要増加へ。
データセンターの需要が増加することで、関連する事業者は電力供給の安定化と脱炭素社会貢献との共存を実現させるため、再生可能エネルギーへの置換が加速している。

この相関関係にいち早く気づき、
経営を支える新たな「柱」として事業に打って出た企業は特段に成長期待が大きいと私は考える。

企業成長戦略としての多角化を
「水平型」「垂直型」「集中型」「集成型」に分類し、
中でも全く異なる市場での新事業を展開する「集成型」の場合は、経営資源に乏しい企業には、かなりハードルが高い戦略となるが、あえてこの険しい道にチャレンジした”あの”経営者はきっとビジネスチャンスを見逃さず、成功のカギを握っていたのでしょうね。
正に【得成竹于胸中】を心得ている。


得成竹于胸中とは、
ものごとを始めるに先立ち、十分に腹案を練り、全体の完成図を頭のなかに措いてからスタートすることで、一気に仕上げられるもの



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