読書メモ−「つきあい方の科学」R. アクセルロッド

昨今の状況で「積ん読」が解消されつつあって嬉しい気持ちです。

つきあい方の科学:バクテリアから国際関係まで
(Minerva21世紀ライブラリー) (日本語) 単行本 – 1998/5/20
R. アクセルロッド (著), Robert Axelrod (原著), 松田 裕之 (翻訳)

発表が1984年ですけど、今でも全然面白いです。
みんな読んでる名著ですかね、早く教えてほしかったです。Kindle版がないんだよね、、

第I部 序論
第1章 協調関係の諸問題

第II部 協調関係の出現
第2章 『しっぺ返し』の成功ーーコンピュータ選手権において
第3章 協調への道筋

第III部 親交も先行きの見通しもない協調関係
第4章 殺しも殺されもしない戦争ーー第一次世界大戦の塹壕戦において
第5章 生物における協調関係の進化

第IV部 当事者と調停者へのアドバイス
第6章 効果的な選択とは
第7章 協調関係を育てるために

第V部 結 論
第8章 協調関係と社会構造
第9章 互恵主義のたくましさ

訳者あとがき
新装版にあたって
本文原注および訳注
付録B 理論的諸命題の証明
付録A 選手権の結果
参考文献
索 引

前半は問題提起と実験結果で、「囚人のジレンマ」においてうまくやる方法が考察されています。
「他者とのつきあいにおいて、いかに利益を最大化するか、搾取されないためにはどうしたら良いか」という問題において、裏切り合うよりも協調し合うほうがお互い得になるよね、という大枠で、「しっぺ返し」という戦略が如何に有効な戦略であるか検証されています。

最適解である「しっぺ返し戦略」は、日常生活で共感・活用できる部分があり、ためになります。
仕事の取引先との関係や、中途採用者と既存社員の間で起こりそうな軋轢であったり、家族関係においてもよくあるケースかなと。
理論を知らなくても、人生の経験則で独学の「しっぺ返し戦略」を実践してる人多いんじゃないかな。恋愛や人間関係の悩みのアドバイスとして、目にすることも多いです。

しっぺ返し戦略/成功につながるつきあい方の特徴

①相手が協調してる限り、不要ないさかいは避けること
②相手が不意に裏切ってきた時は怒りを表す可能性を示す
※裏切られた場合、怒りを表すタイミングは早ければ早いほうが良い。
③一度怒りを表した後は、長く遺恨を持たないこと
④相手がついてこれるよう、(①〜③の)明確な行動をとる

「しっぺ返し」は“retaliation”でしょうかね。
①ができない人間には、そもそも近づいてはいけません。

上記の方法を、筆者は“上品な戦略”としていて、その上品さを「自分からは決して裏切らないという性質」と定義しているんですが、エモで的確な表現だと思いました。

「第3部4章/殺しも殺されもしない戦争」第一次世界大戦の事例、この章はとても引き込まれた、ここだけ読んでも面白いです。

つきあう期間(が事前にわかるならば)によっても有効な手段が変わってくるよね、という時間の問題にも触れつつ、後半は前半の結果を踏まえてのアドバイスが書かれています。

以下、後半でマーカー引いたとこピックアップ。

当事者向けアドバイス2
 「羨望は禁物」
・相手の稼ぎと自分の稼ぎを比べることは、相手を潰すことが目的でない限り、よい基準ではない。
→相手を潰すor自滅する覚悟がない限り、仕掛けないほうが良策
当事者向けアドバイス3 
「自分の方から決して裏切らないこと」
調停者向けアドバイス6
「相手を正確に識別すること」
相手の過去のふるまいを記憶しておく能力を磨く
「しっぺ返し」のような“上品な戦略”を多くの人が採用する集団であれば、そうではないもの(上品ではない戦略を使うもの)を撃退することができる。裏切られた場合はすぐ怒ることで、上品な世界を安定させやすい。(その際、怒りに手を抜いてはいけない)

最後に社会構造の考察と、協調関係・互恵主義に対しての結論提示でまとまります。とても面白かったし、利己主義の先に未来をみる良い本だと感じました。40年ほど前に発表された研究ってのを考えると、未来というより理想かなあ、、

200ページ程度ですが、全編通して読みやすい文章ではないので、読書苦手な人にはつらいと思われます。


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