おとぎ話「花と鏡」④

「花と鏡」⓷の続きです。

その日、ローズとマーガレットは久しぶりに二人でお屋敷の中を、お手伝いしながら周りました。夕方になる頃にはローズの服や顔に少し汚れがついている状態でした。

いつもなら、汚れるとすごく嫌な気持ちになり、すぐに着替えていましたが、今日はなんだかこの状態も悪くないなと感じていました。

「お姉さま!お顔に汚れがついてしまっております!!」

「いいのよ、たまにはね。いつも私が汚れないかわりに他の人たちが作業をして汚れていたのでしょう?それを実感することが出来てよかったわ」

そう言ってにっこり笑うローズを見て、マーガレットは美しいなと思いました。

『いつものお姉さまもとっても美しいけれど、今日は一段と輝いてみえるわ』

その日の夜、ローズは疲れて夕食後すぐに部屋に戻りました。

ちらっと視界の隅に鏡があるカーテンが目に入ります。

ローズは少し考えましたが、鏡を見る事はなく、そのまま眠りにつきました。



翌日、王子さまは約束通りローズたちの家に来ました。

ローズは王子さまに会った瞬間に謝罪をしました。

「王子さま、この間は大変失礼いたしました」

「・・・僕も少し意地悪な事をいってしまった、申し訳ない」

「いいえ。王子さまのいうことは最もでした。わたしはお庭を宝物だと言っておきながら何もしていませんでした。あの綺麗な状態であることが当然だと思っておりました。綺麗な状態を保つために、沢山の人が手入れしてくれていることを、わたしは見えていませんでした」

この前は『自分が正しい』といった態度をとっていたローズからそんな言葉が出ると思っていなかった王子さまは少し驚きました。そして、彼女は自分が間違っていたことに対して素直に謝罪できるまっすぐな人だと思いました。

「お姉さま・・・」

王子さまがその声の方向に目をやると、そこには以前とは比べ物にならないくらい美しい姿をしたマーガレットが立っていました。

「あ、君は・・・」

「王子さま、改めて紹介いたします。わたしのとても大切な妹のマーガレットです」

ローズは優しい目をしてマーガレットを見ています。

王子さまは、二人の顔を見て、仲直りしたのだと感じました

「王子さま、この間は来ていただいたのにも関わらず、あのような恰好で迎えてしまい申し訳ございませんでした。改めてご挨拶させていただきます、お姉さまの妹のマーガレットと申します」

「いやいや、とんでもない。今日は一段と美しいが以前、見かけた時の君も十分綺麗だったよ」

マーガレットは王子さまにそう言われて顔を真っ赤にしています。

そんな二人を見て、ローズは以前とは少し違う、胸がチクッと痛むような感覚になりました。

その後、ローズと王子さまは前と同じようにお庭でお茶をして、楽しく過ごしました。



その後、王子さまは一週間に2、3回ほどローズのお屋敷に訪れるようになりました。

その度に、ローズと王子さまは一緒にお庭を散歩したり、時には音楽を楽しんだりと少しずつ距離が縮まっていました。また、ローズだけではなくマーガレットも交えて楽しく会話をしたりもしました。

「こんな美しい姉妹と、毎日過ごせるお父様は幸せだろね」

王子さまは美しい笑顔で言います。

「そう思っていただけるなんて光栄ですわ。王子さまと、こうしてお話しすることが出来て私はとっても幸せですわ」

ローズも笑顔で答えます。

「お姉さま!王子さま!!あちらに虹がかかっております!一緒に見に行きませんか?!」

「虹か!いいね、一緒にみよう!」

王子さまはマーガレットの後に続きます。

三人は空に現れた綺麗な虹を眺めていました。

そこで、ローズはふと、マーガレットの視線が虹ではなく王子さまに向いていることに気が付きました。

「マーガレット、本当に綺麗な虹だね」

「い、以前、王子さまが虹がお好きと言っていたので」

マーガレットはもじもじしながら答えます

「おぼえていてくれたんだね。ありがとう、とても嬉しいよ」

王子さまはマーガレットに笑いかけました。

マーガレットも笑います、その頬は赤く染まっていました。

――ああ、やっぱりマーガレットは・・・・

マーガレットの幸せそうな顔をみてローズはある決意をしました。



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今日はここまでにします。

続きは明日公開予定です。

以上、星空夢歩くでした。

文字数厳しい・・・

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