「乙女×文楽1」2話の初期シナリオ

乙女×文楽1巻の2話「人でなしが、人でなしに逆恨みされた話」の

初期のシナリオが発掘されたので掲載します。


本編は以下よりご覧になれます。

https://t.co/wY0PaC2YwG?amp=1


【初期シナリオ】

夕暮れの学校
ドサッという物音
一人の少女、姫宮可淡がひざま付いている
その背後で
「なんで?!」
とつぶやき舌打ちをして立ち去っていく人影
髪飾りが夕焼けの光に反射して光る
ため息をする可淡
カバンを拾う
そのカバンからは人形の顔が覗いている。

ああ…びっくりした

と呟きながら校舎から出ようとすると
渡り廊下を
保険医の女性と女生徒が談笑しながら歩いている
それを見る可淡が反応する。

蚊が飛んでくる
手で追い払いながら
「私の血は吸えないよ」

別の日
学校
保健室
そこに日本人形が置かれている
少女と共に居る保険医


保険医「最近貧血の子が多い先生もなんか元気が無さそう」
少女「そう?」
  「…あの人形の所為だったりして」
保険医「まさか?」
少女「どうしたのあの人形?」

保険医「今朝来たら保健室の前に落ちてたのよあとで職員室に届けようと思って…」
少女「でも人形ってなんか怖い」
保険医「あらかわいいと思うけど」


少女「だめよ人形なんかより生きてる人間の方をみなきゃ」

少女「先生…私が元気をあげようか?」
抱きついたまま保健室のベッドに倒れる

保険医「不思議ねあなたと一緒にいると疲れが無くなるもの」

少女「でしょ?」

首筋に噛み付こうとした瞬間

ノックをする音
狼狽する二人
可淡が現れる

可淡「人形がここにあると聞いたのですけど…ああこれです」


保険医「あなたの人形なの」

可淡「はい」
人形を取る際
少女の近くに寄る
去り際少女に耳打ちする

「…!!」

激昂した少女が可淡を追う。

校舎裏

少女「待ちなさい!あなたさっき私に何て言った!?」

可淡「小声だったから聞こえなかったのかしら?
   欲情したメスの蚊みたい…と言ったのよ」
   「あなたああやって仲間にしようとしているんでしょ
   吸血鬼のお嬢ちゃん」

少女「何…言っているの?」

可淡「もう忘れたの?酷いね!」
   「昨日血を吸おうとした相手も忘れるなんて」

少女「…」

少女に近づく可淡

お互いの目が合ったまま動かない
ニヤッとする少女
少女がすっと手を差し出しそれに惹かれるように
可淡が少女に近づく一方
少女が可淡の肩に手を回し
首筋に噛み付こうとした瞬間
保健の先生がそれを観ていることに気が付き
少女は狼狽する

教師は寂しそうに笑い去っていく

締まったという顔をした少女は
立ち尽くすがハッとして追いかけようとすると
背後から可淡の人形に抱きつかれる

少女「な…なにこれ
なんで動いてるのこいつ!?」

ガブ(文楽人形の頭部に仕込まれたギミック)が発動して
人形の変貌した鬼の顔に驚き尻餅をつく


可淡「ははは…吸血鬼も驚くんだね」

涙目の少女

可淡「昨日驚かされたからそのお返しよ
   それと…
   彼女をずっとあなた無しで生きられなくするつもり?」

少女「…そ…そうよだって私は先生が好きだもの」

可淡「でも…そうやって過去に何人も好きになった相手を
   ひとでなしにしてしまったんでしょ?
   それもあなたが望んだことなの?」

涙が止まらない少女

可淡「それでも構わないなら私は止めない
   今すぐ彼女のもとに行って誤解を解くといいわ」

少女「えっ?」

可淡「言ったでしょ
   仕返しがしたかっただけ
   あなたが何をしようが
   私はどうでもいいもの」

  「…この後の事は
   あなた自身が決めることなのだから」

人形を回収して立ち去る

少女「…」

別の日

寂しそうに一人で歩く保険医
可淡とすれ違う

保険医「あの…」

振り返る可淡

保険医「…なんでもないわ」

すれ違う二人

あの後あの少女の姿が校内から消えてしまったという…。

【完】



完成原稿と見比べると保険医ではなく少女が吸血鬼であったり

人物同士のやり取りが多くラストも異なっており割と素直な話になっています。

何故完成版とは異なっているのかと、いう理由は忘れました…。

おそらく本編ラストのインパクト狙いと、その際に可淡を襲うのは

保険医より少女の方がいいという理由だったかも。

こちらの「青臭さ」もよかった気もしますが完成版ではラストが「青臭い」

という点で狙い所はブレていなんですよね。

つまり狙い所が「初期シナリオの過程」と「完成版での結果」で

それぞれ入れ替わっているのがこの作品なのだと思います。

あと姫宮可淡が相手の行動選択に介入しすぎている上に

その通りに相手が動いてしまっているのであまり面白くないという判断

だったのかも。

乙女×文楽の制作順では事実上の第一話なので主人公である「姫宮可淡」の

キャラクターを探りながら書いていましたがこのシナリオの時点で

完成していますね。

むしろここでの「皮肉屋」「毒吐き」「小悪魔的」が正解で

1巻、2巻での彼女は「お人好し」の部分が強調され過ぎなので

今後の彼女のキャラクター像を見直すきっかけとして

この初期シナリオを公開しつつ考察してみました。

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