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今こそガッシュを楽しみたい--5--道具の話

あまり世間に見せられない光景ですが、どうせ閲覧もないしで、恥を忍んでおります。ここから眺めても判るように、普段からなるべく粗末なもので描くようにしています。この周りにも色々と積み上げてあるのですが、とてもお見せできません。動くと何かが落ちる。そんな狭いところで描いています。住宅事情です。

左に見える棒は--腕鎮--です。わんちん…。と言ってもカインズなどで売っている普通の棒です。ある程度大きな絵はボードに立てて描かざるを得ないし人物などの細かい部分の筆入れには必要なものです。とはいえ、現実には油彩以外ではあまり使うことはありません。油彩では描画途上を触ってしまうと大変です。

経済的にあまり余裕のない人でも絵を楽しむことができれば幸いだと思います。以前私は、もう油絵を描くことはないと思うので、画材や道具、つまり油絵具やオイルやイーゼルなど、そうそう木枠だって結構値の張るものです。それらを身近な人に譲ろうと思ったことがありました。

身の周りには幾つも絵画サークルがあり、最も身近と思われたグループに申し入れたところ、講師の意外な反応でした。

安い絵の具は持ってこないように。

そんな言い方をされたら、私もピシャッとすべきでした。それなら結構ですと。でも普段の性格の大人しさと言うか、へらへらと笑って済ませただけでした。いまならもうそんなことはない。しかし後悔は先に立たない。余計なことをしたものです。絵を描く人、とりわけ教えている人には意外にこんな人が多い。それを思い出すべきでした。

安物と感じるかどうかはともかく、時は経っているけど全て専門家用であり、なかにはより高級な品も混じっていました。オイルもブロックスやルブランやレンブラントやニュートンで、そのまま使わないのじゃもったいないと思っただけのことでした。それを彼ら彼女らが使ってくれたかどうかは知らない(こちらからはもう接近しないので)けれど、どうせなら、絵の具もろくに買えないけれど絵を描きたいと思っているような人が居たら、そちらへ持って行った方が余程良かった。手元に残った絵の具はそうしようと思っています。初歩の人であれば私でもどうにかなるかも知れません。

ここでは不透明水彩に関してだけ述べていますが、身の周りにあるどんなものでも絵は描けるので、道具に過剰に煩くなるのは考えものだと思っています。絵の具は学童用でも充分に練習できますし、筆もいきなり高価なものを揃える必要はないと考えます。学童用絵の具とはつまりはサクラぺんてるの類ですが、それしか買えないという人があれば、ぜひそれで頑張ってくださいと伝えたいです。この類の絵の具には随分厳しい意見を持っている人も現実に居るのですが、私はそれ程の不自由を感じたことはありません。勿論これはレベルの問題かも知れませんが、あまりろくなものが身に着かない間に絵の具講釈になるのは私としては歓迎できません。


やっすいのも並んでますが大丈夫ですって、大丈夫

さらに、筆も文具屋さんで見かけるぺんてるのレギュラー(金色の軸の奴ですね)で充分です。これで描けないという人が、一本何千円の筆を買ったらうまく行くなんてことはほぼありません。100均の中にも使えるものはあります。習字筆なども面白いです。あれは意外に高いので自分で工夫して筆を作ることも可能です。大方の人は皆自分の頭で考えて適当な道具を作っています。

今は便利なものが100均で手に入るようになっています。さすがに10色セットで100円などという絵の具はちょっとしんどい(使えると言っている人も居ます。念のために…)ですが、例えば筆洗やパレットなどは何等不都合はありません。


描いていると適当に絵の具で汚れるのですよ

ついでに言えば、私は普段パレットでなく皿を使うことが多いです。これはアクリルを使っていた当時からの習慣で、描画を中断する時でもフィルムや皿などを被せて置くと乾いてしまうのを防げます。筆も水に浸けっ放しです。アクリルは一旦乾くとどうしようもありません。ここには見えませんがブッチャーズトレイ(お肉屋さんにあるような肉皿)を使ったりしていました。絵の具を溶くのにある程度の面積があった方が楽ですし、これも上からビニールなどを被せて置けます。

右上に黒の絵の具を溶いている白い丸皿がみえますが、これは植木鉢の下に敷くもので100均です。上に同じ皿を重ねることもできるし、最初の内ちょっとだけ弾きますが、私には使いやすいものです。他に見えるのは近所のお茶屋さんで纏め売りされる小皿(30円から50円)です。画板も小さなものであれば100均で間に合います。もちろん100円以上の大きいのもありますが、描画に影響のない部分は徹底してコストをカットするのもなかなか面白いです。私は断捨離はできない人間ですがしみったれるのは嫌いではありません。

人は最初の内は丁寧に物を使いますが、慣れてくるとかなりぞんざいな使い方をします。これはある程度やむを得ないことです。段々と今描いている絵に神経が行くのが普通です。私自身は細切れの時間を利用して練習しているのでいちいち片付けるということはやりません。その時間はかなりもったいないものです。そこに差しさわりがない限り周りがどんなに汚れても関係ありません(ちょっとばかり言い訳ですが)。勿論、そこをきちっとしていないと絵を描く気にもなれないという人も居られるでしょう。万事が丁寧な方だと思います。人にはそれぞれの流儀があります。私は893随分な方です。

しかしながら、作業をした後は片付けないと寝床も確保できない場合があります。それぞれの住環境は仕方がありません。悪条件でも可能な限り知恵を発揮して楽しむのが良いと思います。へこたれないのが一番です。

興味深いのですが、油彩画家さんのなかにも、パレットがいつも磨き上げられていて綺麗な人と、絵の具がびっしりとこびりついた状態で使っている人があります。パレットが綺麗な人はやっぱり整った綺麗な絵を描く人が多いようです。激しい絵を描いている人はその辺のテーブルの上がパレットになっていたりする。そっちに構っている状態じゃないのでしょうね。そういう人のパレットはそれ自体がアートだと思うことがあります。愉快なことです。

ということで、私は絵の具にも道具にもあまり神経質になることはないです。使えるなら使う。その判断だけです。ただし、生まれつき整理が悪いので描いたものをどこに置いたか分からなくなることがありますが、今さらどうしようもありません。

では世間の皆様方、クリスマスの夜をお楽しみください。私は一杯やるだけですが、甘いものが好きだった母のためにケーキの一つでも買って来ようと思います。

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