やっぱり詐欺だったんだ!

何年か前の話になるのですが
私はある人から
「この投資案件どう思う?」
と言われて
カラーのパンフレットと
資料を渡された事がありました。

魚を養殖する技術を開発したので
その養殖水槽をたくさん設置して
事業をするという内容でした。

そして事業収支が計算されていたのですが
その中に減価償却がありませんでした。

PL(損益計算書)であれば減価償却がありますが
CF(キャシュフロー)では減価償却がないので
今回の事業収支は
CFに基づいて作成されていると思いました。

しかしそれならば
最初に養殖水槽を準備するために
大金が必要になりますので
もう一度、初年度の事業収支を見てみたのですが
設備投資のためのお金について
記載がありませんでした。

つまりその事業収支計画書には
CFという意味でもPLという意味でも
養殖水槽の設置という設備投資について
何も書かれていなかったのでした。

またPLでは以下のように
利益を5段階に分けて記載する事になっています。

・売上総利益
・営業利益
・経常利益
・税引き前当期純利益
・当期純利益

しかしその事業収支計画書では
営業利益と経常利益が混同・混合されていて
正規の書式ではありませんでした。

これはおかしいと思った私は
以下のように伝えました。

・この事業収支は事業内容を反映していません。
 養殖水槽なしで収支が計算されています。
・この事業収支計画書の記載ですが
 営業利益と経常利益が混同・混合されていて
 正規の書式ではありません。
 簿記をきちんと勉強した人なら
 このような収支の記載はしません。

要するにその事業収支計画書は
「書式」も「内容」もダメダメだったのでした。

それから1年ほど経ち
養殖水槽の事業計画者は
自宅兼事務所の家賃が払えずに
強制執行で追い出され
車中泊をしている事がわかりました。

「やっぱり詐欺だったんだ!」

これによって私は

・現場にも行かず
・事業者にも会わずに
・書類だけで投資詐欺を見抜いた。

という事になってしまい
妙な信頼を得てしまったのでした。

財務三表の勉強が
こんな所で役に立つとは
思いもよらなかったのですが
素人が見よう見まねで書いた収支計画表は
案外、世の中に出回っているのかもしれません。

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