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子を生み、育てる

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子育てについて、フリーランス目線で綴るマガジン
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押してあげればよかった。

1歳の息子を膝に乗せてブランコに乗っていると、5歳くらいの男の子が近づいてきて「俺も乗りたい」と声をかけてきた。 オッケーちょっと待っててね、と声をかけ、息子に「順番こだから、もう終わろうね」と声をかけてブランコを止め、降りた。 その子はブランコを代わったあとも何か話しかけてきたが何を伝えたいのか理解できず、揺れるブランコの近くにいると危険なので話もそこそこにその場を離れた。 その後、別の遊具で遊んでいると、しばらくしてその男の子の声が聞こえた。 「誰かブランコ押して

「いい母親になりたい」と思っていたけど

いい母親になりたい。 子を産んで1年と半年、ずっとそう思っていた。 育児は怖い。とても怖いのである。長くて、お金も時間も莫大にかかり、目処がつかず、何が起こるかわからない、人ひとりの人生がかかった、壮大なプロジェクトなのだ。私は母として、この命を幸せに導ける器になりたい。 そしてなるべく間違えたくない。「もしも」も事前に把握しておきたい。 そう思っていたので、書店の目立つところに平積みされていたこの本を見つけた瞬間、私のアンテナが大きく反応した。 正直なところ「どうして

ハッピーでもバッドでもない人生を、ささやかな思い出と生きていく

昔、深夜にどうしようもなく悲しいことがあり、男友だちを呼び出してドライブに連れて行ってもらったことがある。 彼は泣いたり怒ったりする私の話をずっと聞いてくれたあと「俺、町を出ようと思ってるけど、一緒に行くか?」と言った。いつ?と聞くと、今。と言う。きっと何か事情があったのだろう。好きでもない女を連れて行きたいほどの孤独を考えるとノリで行ってあげたい衝動に駆られたが、結局なんとなく断った。20年前の話だ。 そんなたわいもない記憶を思い出したのは、短編小説『夜空に泳ぐチョコレ

映画『僕は君たちを憎まないことにした』を観て、私も人を憎まないことにした

昔、スナックで働いていた時、ちょっと悪そうなお客さんに「あんたはここぞという時、人を殺せるタイプの人間だ」と言われたことがある。ああそうだろうなと思った。もしも誰かによって大切な人の命が奪われたら、私は報復に行くだろう。返り討ちにあったっていい。私はそういう人間だと思う。 幸いそんな機会は訪れず平穏に暮らしていたので、その会話をすっかり忘れていたけれど、映画『僕は君たちを憎まないことにした』を観て思い出したのだった。 映画は、妻をテロリストに殺害されシングルファーザーとな

両立は諦めた

「育児と仕事の両立」という言葉について、ずっと考えている。 出産前は絶対に両立してやる!と意気込んでいたけれど、いざ産んでみると「両立ってなんだ?!」というメンタルになったのだ。 「両立」を辞書で引くと、「ふたつの性質の違うものが両方ともうまくいくこと」と書かれている。 なるほど、両方ともうまくいく、か。 ところで育児が「うまくいっている」とは、どの状態を指すんだろうか。子が死ななければ「うまくいっている」?それとも成長曲線が順調なら「うまくいっている」と言っていい?

メルカリで売った本と、息子の入院

メルカリで本を売った。 出品してすぐに買い手が決まり、明日にでも郵送手配をしようと思った矢先、息子が肺炎になり入院することになった。 一歳児の入院は親の付き添いが必須だ。すぐさますべての仕事を調整(という名の融通のお願い)し、病床に入った。睡眠不足の朦朧とした頭でふと、本を送っていないことに気づく。慌ててメルカリアプリより購入者へメッセージを送った。こういうとき私は、多少言い訳がましくとも正直に事情を伝えたい。事情を伝えた上で、お急ぎであればキャンセルして別の方から購入した

出産するとキャリアは止まるのか

第一子を妊娠したとき、大きな幸せとともに大きな葛藤が訪れた。 子が生まれるのはうれしい。たのしみだ。 だけどフリーランスになって3年目、このタイミングでキャリアを止めることになるのか。 不安だった。 いつからいつまで働けないのかよく分からないし、会社員はだいたい一年ほど育休を取るらしいけれど、フリーランスの私が1年も休むのはリスクだ。1年の休暇が向こう5年に影響するかもしれない。そもそも育休手当なども当然ないので、休む限り無給というのも恐ろしい。 とりあえず大きな案件ほ

高速道路の思い出

高速道路が嫌いだった。 もともと運転が嫌いだ。だけど公道ならまだ「こんなところにこんなお店できてたんだ」とか「あの小学生、制服おしやれだな」とか、少しは楽しみが見出せていた。 だけど高速は全然だめ。運転しかやることがなくて、ただただ運転をするためだけに自分が存在しているようで嫌なのだ。 だけど最近、高速があんまり嫌いではなくなった。なんなら少しだけ好き。高速道路に思い出ができたから。 高速道路に思い出ができたのは、ちょうど去年の今頃。妊娠後期だったわたしのお腹の中で、

保活はどうしてこんなにアナログなのか

第一希望の保育園にうかりました! うれしいやら、寂しいやらですが、保育園については本当にたくさんの方に相談にのっていただいた結果なので、園選び、タイミングなどなど、すべてにおいて最善だと思ってます。いや、最善にします。 「AがあるからBができない」という考え方が昔から大嫌いで、育児と仕事、その他もろもろ全部やりたいんじゃー!と、ただただ一生懸命やってましたが、時間も体力も有限。(いい歳だしね) 「AもBも大事にするためにプロに頼る」ということを最近意識している次第です。

いいにおいがする

通っている整体のおねえさんに「いいにおいがする」と言われた。 香水などはつけていなかったので「どんなにおいですか?」と尋ねると 「赤ちゃんのにおい!」「ミルクみたいな」と返ってきた。 へぇぇ〜!0歳児と毎日いると赤ちゃんのにおいになるのか!と感慨し、はっとした。 「おっぱいが出るから、体が乳製品寄りになってるという可能性は!」 おねえさんは笑った。爆笑にちかいレベルで笑ってくれた。 半分笑ってくれたらいいなという気持ちで言ったのでうれしかったけれど、家に帰って「自

産後はじめての誕生日プレゼント

誕生日に夫に買ってもらったネックレスが完成したらしく、ショップに取りに行った。 出産後はじめての誕生日だからと、「好きなアクセサリーを選んでいいよ」と言ってくれたものだった。 お店にアクセサリーを見に行った日、実は「気にいるものがなかったからいいや」と言うつもりだった。妊娠出産で夫にはかなり金銭的に負担をかけていたし、出産してから今にかけてかなりの息子ボケにおちいっているので、そもそも装飾品に興味がわかなかった。 向かったショップは、結婚指輪を買ってもらったお店。店内をさ

2023年の抱負と、少しの振り返り

2023年になりました! あけましておめでとうございます。 さて。去年ははじめての出産と育児で、幸せだったり気が狂いそうだったりして、うまく振り返れる自信がないので振り返りません。 かわりに2023年の目標をふたつ掲げます。 ひとつめ、 「孤独を受け止める」こと。 去年が孤独だったわけじゃないんです。むしろ初めて育児をした人間にしては孤独じゃなかった方じゃないかな?だからというわけではないけれど、今年はちゃんと、孤独を背負える人間になりたい。 息子が生まれたことで、

パパの育児と理想の家族

産後4ヶ月あたりで若干、鬱っぽくなった。 一日中抱っこしてないと泣き続ける息子に悲しくなり、一日に数回、コントロール不可能な涙が出るようになったのだ。 一度、泣いているところを夫に目撃され、数時間休憩をもらったのだが、その数時間が逆にわたしを落ち込ませた。が、その数時間でみるみる落ち込みはピークを超え、超えた途端にだんだん腹が立ってきた。 親族が近くにおらず、少しずつではあるものの産後2ヶ月で仕事も復帰して、わたしはとてもがんばっているじゃないか。 なのになんで、どうして

みんなやってる凄いこと

子どもってやつは、なんと教わることの多い存在だろう。 母になり、2ヶ月と少し。物理的にはお世話をしているけれど、精神的にはめっちゃ育てられているなと思う。 なにより、出産という壮絶な経験をたくさんの女性たちが済ましてきたという事実に、いまさらながらビビる。少なくとも1世紀分くらいの期間内に日本の人口一億数千万人分、この国のどこかで妊娠と出産が行われてきたのだ。そして今この瞬間もきっとどこかで、新しい産声があがっていることにビビる。 「みんなやってること」妊娠出産を通して