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歌の魅力

  野球のルールはよくわかっていないけれど、高校野球はよくテレビ観戦します。球児たちのひたむきな姿に心打たれるのはもちろんですが、それに加えてさまざまな高校の校歌を知ることができるのが楽しいのです。

 伝統校の重厚な歌詞、新しい学校の軽やかな歌詞、それぞれの地域の美しい地名が入った歌詞などを、メロディーとともに味わえる貴重な機会です。

 私の住んでいる秋田県でいえば、昨年(2018年)の夏の大会で旋風を巻き起こした金足農業高校の校歌(近藤忠義作詞、岡野禎一作曲)が、選手たちの背中を反らせる独特の歌唱法とともに印象的だったのは記憶に新しいですし、2014年の夏の甲子園に初出場した角館高校の校歌(小松耕輔作曲)は歌人の島木赤彦作詞、斎藤茂吉補作詞、ということで興味を引かれました。

 これは角館出身の日本画家でアララギ派の歌人でもあった平福百穂の依頼により旧制角館中学校歌の作詞に取り組んでいた赤彦が、詞の完成を待たずに病に倒れた後を茂吉が補い、まとめたものだそうです。旧制角館中学校跡地にある平福記念美術館の庭で、茂吉の自筆と推敲がそのまま写しとられたその校歌の歌碑を見たことがあります。

 私自身の母校は野球部のない女子高校だったため、野球場に校歌を響かせたことはありませんでしたが、ゆったりとした旋律と穏やかな内容がとても好きでした。

 高校だけではなく小学校や中学校の校歌も今も歌うことができます。

 小学校の頃はわけもわからず卒業式で「仰げば尊し」を歌いましたが、現在では歌う学校は少ないかもしれません。代わって定番の卒業ソングとなっているのは埼玉県の中学校の先生がてがけた「旅立ちの日に」(小嶋登作詞、坂本浩美作曲)、アンジェラ・アキ「手紙~拝啓 十五の君へ」やレミオロメンの「3月9日」、いきものがかり「YELL」など。もっと新しい曲も続々と登場しているようです。秋田県では<秀麗無比なる 鳥海山よ>で始まる県民歌(倉田政嗣作詞、高野辰彦補作詞、成田為三作曲)を歌う学校もあります。

 甲子園、卒業式、そして入学式でも歌われる校歌やその他の歌、皆さんの思い出の歌はどんな歌でしょうか。

(2019年3月21日付「河北新報」、「微風旋風」欄掲載、加筆修正あり。冨樫由美子)

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