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肌感覚でマーケティングするということ・再び

ホテル運営会社に10年ほど勤めている間、ほぼずっといわゆる「企画」の仕事をしていた。

宿泊プランもあれば、イベントもあれば、体験プログラムのようなものまで。

決めていく過程は、とにかくたくさんアイディアを出して、それを組み合わせたり、要素分解したりしながら形に仕上げていくイメージ。私自身はゼロからアイディアを沸き起こすのはあまり得意ではなかったから、無数のアイディアを組み合わせたりテーマを決めてまとめていくほうが得意で、感覚的には「編集」に近いことをしていたかも。


で、決まるまでには、もちろん「コスト大丈夫?」「ホントにできる?」「安全?」みたいな議論はするんだけど、そこさえクリアしてしまえば、あとはあーだこーだやってるうちに、たいてい満場一致で「それだ!」みたいな空気になる時があって、そこに疑いの余地が挟まることはほぼなかった。

今あらためて思い返してみると、「それ本当に魅力的?」「お客様に指示される?」「市場規模あるの?」という、いわゆるマーケティング系での議論をしたことがほとんどなくて、つまり、かなり感覚で決めていたわけだけど、それでも、たいてい満場一致できたし、会社からも問われることはなかったし、結果も外したことはなかった。(思ってた以上に反応がよかったことはあったけど)

別に自慢話がしたいわけじゃなくて、そんな感じでも「できる組織はできる」ってことなんです。

別に市場調査やマーケティング理論が大事じゃないわけじゃない。思い込みは危険だし、ちゃんと疑って、ちゃんと裏付けとって、ちゃんと理論を積み上げて…ということは不要だとは思わない。ただ、これだけ消費が多様化して消費者行動が読めない時代に、正確なデータは出てこないし、コツコツやってたら時間がかかる。かたやノリと勢いで決めいっちゃうライバルたちには追いつけないのだ。

最近の仕事で、どうにもそこを譲れない、というか「肌感覚」というものがどうしても理解できない人たちを相手にすることがある。「根拠はあるのか?」「市場規模はあるのか?」「本当にそれでお客様は来るのか?」と、全てにデータを求められると、うむむ…となってしまう。

わからないならイサギヨク超絶賢いコンサルファームにでも丸投げするか、いっそターゲット層の社員に一任しておくれよ…と喉元まで出かかりつつ、むむっ待てよ、でも私たちも必ずしもいつも自分たちが企画のターゲット層とは限らなかったな。それでも、満場一致できていたのはなぜかというと、たぶん、お客様とはコミュニケーションをいつもとっていたから、そのコメントや行動パターンをいつの間にやら熟知できていた。それと、お客様の反応がどうとかこうとかいう前に、自分たちが提供したいこと見せたいことがハッキリしていたから、「絶対いいから見て!」と熱量込めて伝える自信があったのだと思う。

なんか、ここまで書いてて、前にも「肌感覚のマーケティング」について書いたことあるなと思い出しました。

今読んでみて、我ながらよくわからんこと書いてるけど、大きくは変わってないと思う。

データに決定の根拠を求める態度というのは、一見すると「正しく論理的に判断」「ビジネスの世界なら当然そうあるべき」という態度のようにも思えるけど、もしかしたら「自分たちのやりたいことがわからん」というだけの可能性もあるということ。

もちろん一から十まで感覚で決めることはできないし、人に説明するときにはやっぱり理論て必要だけど、「肌感覚が発動しない」という状況にはちょっと危機感感じておくといいかもしれない。


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