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アラフォーフリーランス。人間ドックでDXを目の当たり

先日人間ドックに行ってきました。

会社を辞めて、健康保険が全額自己負担になって、腰が抜けそうになった人は数知れないと思いますが、私もそのひとりでして、「うん、そりゃ必要だからね」など平然とした顔はしていますが、毎回支払うたびに指先が冷たくなるのを感じます。

幸い持病もない健康体なので、病院に行かないと決めて保険も払わなきゃお金はかからないんですけど、そこはやはりいつ何時なにがあるかわからず、払った限りは、自己負担3割の恩恵と、健康診断の権利をきっちりと享受しようじゃないかと、むしろ以前より予防的に医療サービスを受けるようにしています。

健康診断は、以前は無料の町のものを利用したんですが、駐車場で検査着のままオッサンの横で待たされる(検査機材を備えたバスでバリウムなどの検査を受けるので、待機が外なんです)という体験をしたので、引っ越しを機に、オプション料金を払って人間ドッグというものを受けてみることにしたのです。

はじめて体験したのは一昨年の年末。
いくつかの総合病院が選択肢にあったのですが、家から近くて、ネット予約もできる「厚生連健康管理センター」なるところに行ってみました。そうしたら、そこがあまりに快適で、これはもう検査バスには戻れん、、、ということで今回も同じ所に行ってきたわけです。

前回ははじめてだったこともあって、関心しつつも細かい所まで目が行き届かなかったのですが、今回は余裕があったので、いろいろ必要以上にキョロキョロしてきました。

下駄箱から診断まで。一括で繋ぐIT技術

まず凄いのが、利用者のデータを一括で繋ぐIT技術です。最初に建物にはいり靴を脱ぐのですが、この時に何気なく選んだ下駄箱の鍵。なんとこれが最初から最後まで個人情報を繋いでいきます。

受付で、鍵についているタグと私の個人情報を紐付けたら、私が検査に行くたびにこのタグを読み込みます。そこで都度個人情報を確認し、最後に検査結果を受け取るまでひたすらこの下駄箱の鍵で管理されていくのです。ちなみに更衣室も、この鍵と同じ番号のロッカーが開く仕組み。検査項目によっては、その場で1年半前の結果と比較して表示してくれるので、「体重増えたー」「視力落ちたー」などもすぐにわかります。

検査は午前中に終了するのですが(検査項目にもよるかもですが)、お昼を食べて(お昼も費用に含まれます)、ちょっと休憩した頃には、検査結果がしっかりとした冊子になって渡されます。

過去の経験だと、あちこちで名前を言わされたり、紙を持って回ったり、検査結果が送られて来るまでにも何週間かかかった記憶があるので、なんてスマート。

人とITが生み出すスムーズすぎるオペレーション

それともう一つ関心するのが、人とITが連携した高度なオペレーションです。

施設の中には、要所要所、本当に要所要所にスタッフが待機しています。もちろん検査技師さんや看護師さんもいるのですが、それ以外に、レセプションスタッフと、いわゆる誘導の役割をするお姉様達。

お姉様といっても、おそらくアラフォーからアラフィフくらいの「いいところの奥様」という雰囲気の清潔感のある方々。この方達が、タブレットを片手に要所に立っていまして、我々の姿を確認するとすかさず次の検査へ誘導してくれます。

おそらく私の右腕につけられた番号を確認するようで、さりげなく番号を確認し、すかさず手元のタブレットをみて、次の検査を判断するや「○○様、次はあちらの超音波検査です」と案内する仕組みのよう。また、検査室がなんらかの都合で詰まっているときは、臨機応変に空き状況をみて他の検査に変更していきます。

検査室は2フロアにまたがっているので、時に階段を上がったり下がったりしなければいけないのですが、それでもフロアを上がるなり、すぐに私と理解して「○○様…」と来るので、検査中1秒たりとも迷うことなく、過剰に待たされることもなく、流されるままに検査が進んでいきます。

時にはバリウム検査後の人に「大丈夫でした?」と気遣いをし、「場所おわかりになりますか?」と目を配り、さりげなさとホスピタリティのちょうど良い距離感とはまさにこのこと、と感心してしまうほど。それもひとりふたりではなく、10人近くいるスタッフ全員が同じ程度に、均質な対応をしています。ものすごく厳しい訓練を受けてそうなった、というよりもお互いがお互いの対応を見て自然と出来上がった空気のような感じがしたもの、非常に感動しました。

ホテルの現場でこれは可能なのか?

このスムーズすぎるオペレーションは、ホテルならどこでも叶えたい理想的な状態です。ただ、実際にここまで完璧に実現しているところは無いと思います。

VIPの車のナンバーを何千人分も記憶するという超絶技巧に頼ったり、フロントからレストランからあらゆる場所に宿泊者名簿を貼り出してみたり、そこらじゅうのスタッフがインカムを装備して、イヤホンからの声と目の前の客との会話に混乱してみたり、、、他業界の人が聞いたら冗談かと思われるようなこともあるかもしれません。

そこまではいかずとも、フロントスタッフがほとんど手元のPCばかりに目を落としていて、たいして客の顔を見ていないとか、フロントで事情を説明したのに、客室係に伝わっていない、レストランに伝わっていないということは日常茶飯事で、誰もが一度はイラッとしたことがあると思います。

ホテルの場合は、人間ドックと違って強制的に利用者に番号をつけたりはできないですし、あくまで利用者が自由に動いていい場所なので、簡単ではないことも重々承知ですが、IT技術と人間のホスピタリティが融合すると、ここまでスムーズにオペレーションができるのか…というのは素直に驚きでしたし、ホテルに一部でも取り入れることは可能なんじゃないかと、妄想が膨らみました。

ついでに内装にも工夫が随所に

ついでに言うと、施設内の内装にも微に入り細に入り工夫がされていることがよくわかります。

各検査室の前のカーペットは、さりげなく色分けがされているので、広くオープンな空間ながら、どのあたりが超音波検査エリア、どのあたりがX線検査エリアというのがパッとわかります。待機用の椅子も、安くはなさそうな木製家具で、さりげなくシートの色が違うので、誘導の際も「奥の白い椅子にお掛けになってお待ちください」と言われれば、すぐに行くべき場所がわかります。

おそらく総合病院や検査施設の内装というのは、専門の業者さんがいて、長年培われたノウハウがあるものと思うので、そのあたりはホテルとは事情が異なるとは思いますが、ホテルの設計の現場では、どうしても建築としてのインパクトやデザイン重視でオペレーションが劣後になりがち。もしくはオペレーター側が具体的なサービスの想定ができていないまま設計を依頼しているケースも多く、設計側は納期のためにわからないなりに考えるものの、あとからクロークが足りないだの、フロントの導線がおかしいだのということが起こります。

前職で所属していたホテルでも、建物竣工後に、チェックアウトはどこでやるか?なんてことを悩んでいたこともあったくらいですし、私自身も、設計段階でオペレーションの相談を受けても具体的にイメージできず、「現場はあとからなんとかするので、設計はお任せします」的な回答をしてしまったこともあります。設計サイドと施工サイドはたいてい納期に向かって「待ったなし」なので、悠長にこちらの逡巡を待ってる余裕はないのです。だからこそ設計前にコンセプト設計=サービスのイメージ作りができるかが重要ですね。わずかなオペレーションの不具合は、すなわちミスや事故やスタッフのストレス、さらに人件費の過多にも繋がります

機会があったらぜひ、病院設計のプロの方にお話聞いてみたいものです。

あ、ちなみに人間ドッグの結果は可もなく不可もなくでしたが、なぜか身長が1cm伸びていました。

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