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“生産性のフロンティアに立つ“全てはそこからだ

前回、とある「こだわりを急ぎすぎて人を不快にさせるカフェ」について書きました。何回も時間をかけて書き直したわりには、自分でもまとまってないなぁ、、と感じる駄文で落ち込んでおります。

伝えたかったことは、「静かにジャズと読書に勤しむカフェ」を目指しながらも、「客を注意する」という方法でそれを実現しようとするのは、性急であり、無理があり、本当にこだわりを伝えたければ、やるべきことはそれじゃない!ということなのですが、それをもうちょっとシンプルに、ビジネス用語っぽく分析するとすると、

「生産性のフロンティア」に乗ってない ってやつなんじゃないかと思いました。

生産性のフロンティアとは、私がいた前職の会社ではわりと共通語で交わされていたのですが、改めて説明せよと言われると自信ないので、ちょっと調べつつ書いてみます。

生産性のフロンティアとは

「生産性のフロンティア」とは、マイケル・E・ポーターが提唱した概念です。

ポーター〔1996〕によると,イノベーションによって,業務効果が限界に達するまでは,低コストと差別化の(基本戦略の)同時追求が可能となるが,その後は,いずれかの選択に迫られるトレード・オフが生じる。
ポーター〔1996〕によると,競争の本質は,競合他社を打ち負かすことではなく,価値を創造する(利益 を上げる)ことであるが,持続的な競争優位を維持するためには,トレード・オフを発見し,それを受け入れ,「何をし何をしないか」を選択すること(戦略の本質)が重要となる。
近年では,多くの製品にセンサー,ハードウェア,ソフトウェアなどが搭載された持続機能を持つスマート製品がさまざまな事業機会をもたらしているが,ポーター〔2014〕によると,業界構造が変化するなか,企業が持続的な競争優位を達成するためには,競合企業に対する低コストの実現か差別化の実現を通じた上乗せ価格の実現が必要となる。
こうした選択によって,たしかに,高い収益性と成長性を享受でき,業務効果の水準の上昇が,生産性の限界線(ベスト・プラクティスの状態)を押し上げることが可能となる。
一方,競争優位の必要条件である業務効果を高めるためには,最先端の製品技術,生産機械,販売手法, IT ソリューション,サプライ・チェーン管理法を整備するなど,バリュー・チェーン全体に業務効果を導入しなければならない。
しかしながら,競合他社も模倣すれば,業務効果は,持続的な競争優位に繋がる可能性は低くなる。
そのため,企業は,競合他社とは異なる方法を行うポジショニングによって,低コストか差別化を選択・ 集中,すなわち,「何をし何をしないか」を選択することが重要となる。
『競争優位の持続性と長期的なイノベーション戦略』日隈 信夫 中央学院大学 商学部

ここで登場している「生産性の限界線(ベスト・プラクティスの状態)」というのが「生産性のフロンティア」ということなのですが、シロウトには正直よくわからんですね。

私なりに言い換えると、昔は「一定レベルの商品をいかに低コストで生産できるか」そのものに競争があったので、品質を求めれば価格が高くなり、安さを求めれば品質が下がる、の二択状態だったわけです。だから世の中には、「めちゃ美味しいけど高い/安いけど不味い」「丈夫で長持ちだけど高い/安いけどすぐ壊れる」みたいに、どちらかに偏るのが一般的でした。

ただ、今そんなものはほぼ見当たりませんよね。300円台の牛丼は普通に美味いし、コンビニのコーヒーもそこそこ美味しい。どんなに安い車でもすぐに壊れる心配はありません。むしろ高い外車よりも壊れないくらい。それは、「一定レベルの商品を低コストをかけて生産する」ことがいろんな企業努力や技術革新でさほど難しくなくなったからです。この「どの企業もそれなりの品質をそれなりのコストで実現できるライン」というのが「生産性のフロンティア」です。

ポーターの説は、それを前提としたうえで、だからこれからの時代は…と続くのですが、そこはさておき、要するに「生産性のフロンティア」とは、成熟した現代においてビジネスが成功するためのスタートラインと言えます。まずはこの状態に乗ることが必須で、差別化だの競争優位だのというのはそれからだ、というわけ。

カフェにおける生産性のフロンティアとは

さてさて、前置きが長くなりましたが、翻って件のカフェをどう考えるか?ですが。

カフェとかホテルのようなサービス業だと、品質とは「美味しい/不味い」だけでなく「サービスが丁寧/サービスが雑」とかも同じく品質に当たります。つまり昔は「安いけどサービスが雑なカフェ」「安いけど汚くて接客もロクにしないホテル」などが普通に存在したけれど、今は3000円台のカプセルでも掃除はきちんとしているし、フロントでもそれなりの応対はしてくれます。

カフェにおいて、自分たちのこだわりを叶えるために「客に注意する」「貼り紙をする」などは、まさに安直な、いわゆる手っ取り早い方法です。その代わり客は不満を抱えるし、不穏な空気が漂います。品質が高いサービスとは言えません。これはまさに「コストを下げて品質も下げてしまっている状態」。(※もちろん常識に外れたマナーの悪い客を注意するのは別問題です。)かつて存在した、「安いだけの不味い店」と同じです。

この「サービスを提供することも品質」というところを見落としている人はたぶん多くて、高い豆で丁寧に焙煎して淹れてるんだから高品質を実現してる!と思ってるかもしれませんが、多くの消費者にとって、カフェに期待する品質は、コーヒーの味と同じぐらい、「くつろげること」です。ポリシーを持って世界観を実現することは大切ですが、「それなりの品質をそれなりのコストで実現する」ことが当たり前になってしまった現代において、ただただコストを下げてサービス品質を下げている状態は、まさしく「生産性のフロンティアに乗っていない」=ビジネスとして成り立たないレベル、ということになるのです。

逆に、客のマナーを育てたり、ターゲットに合う客をじっくり増やしていく方法は、時間という名のコストがかかります。静かな店内にするために内装に工夫を凝らしたら、経費もかかるかもしれません。ですが、高品質なサービスが実現できます。この時に、やたらハイスペックな音響設備を入れたりするのは逆の意味で生産性のフロンティアに乗っていないということになりますが、そこまで行かずとも、「客を不快にさせない」という最低限のサービスを確保しつつ、コストをかけすぎないベスト・プラクティスを追求するのが、カフェビジネスのスタートラインになるはずです。

カフェビジネスには教科書がある

世の中には、カフェおよび喫茶店ビジネスほどわかりやすく教科書が存在する業界はないと思います。スターバックスに代表されるカフェチェーン、下町にひっそり存在するいわゆる純喫茶、ホテルの1杯数千円するようなラウンジまで。いろんなランクの店が存在し、ほとんどが数百円程度で体験することができます。ホテルの実態調査をするよりははるかに簡単。

意気込んで開業する前に、まずはポーター読んでほしかったな、いやせめてスタバに通い詰めて成功の秘密を探って欲しかったな、と件のカフェオーナーの姿をぼんやりと思い浮かべながら。

それにしても、今回もわけわからない文章になっちゃった。

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