立ち止まるから、気づくこと。

なかなか体調がすぐれない春。

暮らし、装い、食など、心が動いたジャンルのエッセイを

気の向くままに手にし、時間を見つけては

ソファに横になって、少しずつ読み進める。

軽やかに暮らしていらっしゃる方々の姿を垣間見ると

自分が過ごしている見慣れた部屋も、

自分の見ている世界も、

どこか違ったもののように感じられる。

停滞した感覚、よどみが少しクリアになった気がして

心の底に残っていた、かすかなやる気がうずく。


昨日読み終わった、
西村玲子さんの『いつも、おしゃれで。』



西村さんと言えばあの、温かみのあるタッチのイラスト。

表紙には、テイストの違う洋服を着た4人の女性が描かれている。

きっと着こなしのアドバイスが込められた本なのだろうと思い、

閉館間際の図書館で、さっと手に取り

貸し出し手続きを行った。


家に帰ってよく見てみると、この本は

約2年半にわたって毎日新聞に掲載された原稿を

再構成し、書籍化したそうだ。

春、夏、秋、冬と

季節の移ろいに合わせた服装と、

それにまつわる映画、インテリア、食べ物、

西村さんがお出かけされた際のエピソードなどが満載のエッセイだった。


本の後半では、西村さんが入院されたことがわかる。

そして私には、「立ち止まって、気づく」という項が

特に強く心に響いた。

 物事の終わりは必ずやってくる。それを機会に新たな展開に向かっていく。希望を見出す。思い切って捨てる。諦める。飽きてしまったことを認める勇気を持つ。病気になったことから、多くのことを学んだように思う。

―略―

 自分の中にたくさんある欠点や、弱さにいつまでも気づかず、気づかないことをいいことに、放置したまま生きて、死んでいくところだった。だからこうして立ち止まる機会をいただいて感謝する。それを知るための病気だったのだと思う。

西村玲子『いつも、おしゃれで。』毎日新聞出版 p.126

大病された西村さんの、こうした言葉。

今の自分に寄り添うように響き、涙が出そうだった。


私も、起き上がれない日々が続いた中で

自分の欠点、弱さ、見ないふりをしていた部分を直視した。

いや、今も気づかなかったふりをしたいくらい

つらいと言えば、つらい。


自分でも隠していたことを目の前に突き付けられたようで

大人になっても、びっくりするほど成長していないなあと

あきれるやら、がっかりするやら。


そんな自分に嫌気がさすが、

西村さんの言う通り、立ち止まる機会をいただけて感謝すべきなのだろう。


あれも、これも、と

両手にいっぱい抱えることが難しくなった。


これからは、あれか、これか。

何が必要で、大切で、守りたいのかを見極める。

そして自分の選択を信じ、それをつかめる

こころと体の余裕を持とうと思う。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?