大人の生き方は自分でデザインできる

最近、真剣に「自分のしたいことを実現する」ことに取り組んでいる。

はたから見たらおかしな話に聞こえるかもしれないが、

それはそれは真剣に、情熱を持って、誠実に

自分の欲望に忠実になる努力をしている。

これは体調を崩している最中に、

はっきり自覚した重要事項だからだ。

あれもこれも、はできないと知り、
じゃあ何を選ぼうか、となった。

家族の幸せ?周りの人の笑顔?

それはもちろん大切だけど、

何よりも自分が満たされていないと、
周囲へ手渡せるものが枯渇してしまう。


だから、しばらくは
自分のしたいこと、
今までしたかったことを掘り起こしてあげて
自らを膨らまし、気持ちのコップをいっぱいにしてあげようと思った。

(コップの話は子どもたちにもよく使うたとえ。
コップの中身は
元気でも、優しい気持ちでも、愛でも、何にでも置き換えられる)


最初はほんの小さなこと。

子どもが食べ残したカレーライス。
ご飯が水を吸ってぐしゅぐしゅになってしまった
冷えたカレーは、やはりおいしくない。

子どもの食べ残しは全部、母の胃袋へ、がお決まりだったが

食べたくない気持ち、と判断した自分の気持ちを形にしたくて

その日は、ごめんなさい、とした。

先週の話。

春巻きが食べたいなぁと思ったので
その日のうちに春巻きの皮を買いに行った。

あの子は食べられるかなぁ、などという心配は
「自分を優先する」週間中にはお邪魔。
せっせと皮に具を包み、色よく揚げたらむしゃむしゃ食べる。
これにビールでも合わせれば最高の宵、なのだが
病み上がりの体にはきついので、やめた。

皮がお皿にこぼれるのもかまわず
バリっとかぶりつく。

母がご機嫌で食べているからだろうか。

え、これでご飯を食べるの~?と戸惑い気味だった子どもたちも
自然と箸が伸びていき、もう一本、もう一本と
積み重なっていた春巻きはあっという間にみんなのお腹の中へ。

たまにはママが食べたいものを食べたって、いいじゃない。


こんな風に少しずつトレーニングし
自分のわがままに振るまう練習をしていくと

とても気持ちが軽やかになってきた。

自分の選ぶことのさわやかさは格別。


さて、こうして練習を重ねる間に

心の奥底に隠してきた、ある願望が顔を出し、

何度となく気づかないふりをしてきたが、

ついに、

この勢いで、

えいやっと始めてしまったことがある。


それが、バレエ。


今までは舞台を見る専門だった。

美しい姿に心を奪われ、

時には評論家のようにじっと見据え、

とにかく、あの世界が大好きだった。


でも、本当の本当は、踊ってみたかった。

ずっとずっと昔の、幼少期のころから。

でも、子どもの頃の私は

ぽっちゃりした体型を気にしていた。

「バレエ=良家のほっそりした可憐な女の子が習うもの」

という図式を勝手に頭の中に作り上げていたちびっこ由美子は

まさかこんな体つきの、可憐さには程遠い
ふっつーの家に生まれた私が
バレエを踊るなんて、ありえない!と決めつけていた。


それを、30年もずっと、疑うことなく信じていた。


でも、ここにきて

本当にダメなの?なんでだめなの?

心がうずきだした。

太くたって、不格好だって、いいじゃない。

せっかくやりたいことがあるのだから、

やったらいい。


こうした境地に至ったのは
周りの、少し先を生きるお姉さんたちのおかげ、ともいえる。

子育てと並行しながら、少しずつ自分のしたいことにシフトしていき

それはそれは軽やかに、楽しそうに暮らしている姿を

近くで見せてもらったから。


私も、あんな風になりたい。

そう思って、
私だけが知っている
「私がしたいこと」に気づき
叶えていった。

それがどれだけ内面を満たし、自信につながるかが分かった気がした。

彼女たちの輝きの秘密は、これだ。


だから、この春からバレエを始めた。

全面、鏡張りのスタジオで

自分の想像をはるかに越える二の腕の太さとか

(そりゃあ抱っこにおんぶ×3人、してきたもの)

腹筋ゼロ、その代わりのたくましい背筋とか
(そりゃあ、おちびちゃんたちを小脇に抱えて駆けぬけてきたもの)

腰も足も、左側のおそろしいほどのゆがみとか
(そりゃあ略)


見たくもない現実を突きつけられ、

頭で思っている姿とは何億光年もかけ離れた己の姿に

ちーん…となる。


2回目のレッスンの前に

一緒のクラスの友人が
「どう、筋肉痛とか大丈夫~?」と聞いてくれたので

「いや、産後よりきつい」と返したら

通りかかった先生が噴き出していた。


周りの先輩がたに聞いてみると、

子どものころにやってて~、や

25年ぶりに再開したの~、とおっしゃっていて

さすが、顔の向きとか、雰囲気とか、決まっている。

その中で、あっぷあっぷしている私はまるで
白鳥の中に紛れ込んだ見難いアヒルの子。

毎回、優しい笑いを提供しにいっているようなものだが

それでも、いい。


自分で選んだ、自分の心を満たすための時間だから。

こんな挑戦を、この年でするなんて思ってなかった。

小学生の私がこれを知ったら、どう思うだろうか。
びっくりするだろうなぁ。

でも、足を踏み出してしまえば、
思ったよりなんてことはない。

嫌だな、恥ずかしいな、怖いな、という気持ちは

こちら側でどんな風にでも対処できるから。

誰にどう思われるか、より
自分がどう思っているか、に焦点を当てる。

その思い込みは本当に正なのか、と突き詰めていく。

これからの暮らし方を、デザインする。

自分で描き、それを選びとっていく。

この繰り返しで、足どり軽く生きられそうだ。

少々の困難を笑い飛ばせる、強さとしなやかさがほしい。


今日は、娘とバレエを見に行く日。

実は、娘も、私がバレエを始める2年ほど前から

同じ先生に指導していただいている。


友人から、バレエ教室のことを聞いて

あのレオタードのフリフリ、きっと娘も気に入るだろうなと思い

可愛いでしょ、やってみる?と勧めた私。

ごめんね、実はママがやりたかったの。

今なら、そう言える。


幸いにも、彼女もバレエを気に入っていて

頑張ってレッスンを続けているので

思いがけず、母娘の共通の趣味を見つけられた。


今日のバレエ鑑賞に向けて、昨夜から

何を着ていこっか?とおめかし談義を繰り広げた。


まだ娘には言っていないが、

見終わったらどこかでランチでもしようかな、2人だけで。

今まで家族で行ってきた、チェーン店の見慣れたメニューではなくて

おしゃれな、大人が行くようなカフェで

あの子が生まれて初めての、2人っきりの外食。

きっと喜ぶに違いない、と

スマホで検索する指も、軽やかだ。

久しぶりに巻いた髪も

ふわんふわんと揺れる。


かろやか、かろやか。

いいじゃないか。



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