佐藤由美子

米国認定音楽療法士。新刊『戦争の歌がきこえる』(柏書房) https://yumiko…

佐藤由美子

米国認定音楽療法士。新刊『戦争の歌がきこえる』(柏書房) https://yumikosato.com/war

最近の記事

「死んでいて、生きている」複雑なグリーフ:『帰還:父と息子を分かつ国』

アメリカのホスピスで音楽療法のインターンシップを始めた頃、グリーフカウンセラーから最初に学んだことのひとつが、グリーフ(悲嘆)は「曖昧さ」があればあるほど複雑になる、ということだった。亡くなった人との関係性が曖昧だった場合や、死を取り巻く状況が不明確な場合など、遺族のグリーフは複雑になることがある。 リビア人の両親の間に生まれたヒシャーム・マタールもそのような特殊なグリーフを経験した。カダフィの反体制運動のリーダーだったヒシャームの父親は、1990年に姿を消した。その後、ヒ

    • ボーナブル(バルネラブル)の意味とは?

      先日、一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会の千田恵子さんにインタビューした際、"vulnerable" (ボーナブル、またはバルネラブル)の話題になった。 日本語に直訳できない言葉なので、恵子さんは「自分の弱さを見せる」と表現し、相手との関係性において大切なことだと語った。 Vulnerableは日本語で「バルネラブル」と表記されることが多いが、発音は「ボーナブル」に近い。 以前、アメリカと日本における「障害」に対する視点の違いについて記事を書いた際、この言葉の意味を

      • 本日見つけた変な「カタカナ英語」

        ある記事で目にした「ルーチン」という言葉、意味がわからず調べると、英語の "routine" のことらしい。 この言葉「ルーティーン」と発音し、アクセントは「ティ」にあります。 Routineとは、「日々の作業」とか「慣習的・定型的な処理手続き」という意味。 一体誰が「ルーチン」としたのかわからないけど、本来の読みと全然違うので要注意。

        • 外国から輸入された本は信頼できる? ~ 日本人のバイアス

          国内に出回るインチキ本「戦争の歌がきこえる」という本を書きを始めて以来、国内で発売されている戦争関連の本を調べている。その過程で、驚くような本がたくさん出版されていることを知った。 近年、日本では「インチキ医療」の本が大量に出版されていることは以前から知っていたけど、「歴史」に関しても同様にとんでもない本が市場に出回っているとは……。 その中でも特に目を引いたのが、あるアメリカ人ジャーナリストが書いたというこちらの本だ。 「マイケル・ヨン」って誰?アマゾンのサイトによれ

        「死んでいて、生きている」複雑なグリーフ:『帰還:父と息子を分かつ国』

          伝説のシンガー、ジョニー・キャッシュの音楽

          久々にジョニー・キャッシュを聴いている。アメリカではとても有名なカントリー・シンガーだけど、日本ではあまり知られていないのでは、と思う。 音楽は言葉や国境を超えるけど、ジョニー・キャッシュの音楽は歌詞がわからないと響かないかもしれない。彼の音楽が好きな人は、メロディーやハーモニーよりも歌詞に惹かれるのだと言う。 ジョニー・キャッシュの唄い方は独特で、ギターを弾きながら話しかけるように語っているときもある。 "The Ballad of Ira Hayes"は、硫黄島の星

          伝説のシンガー、ジョニー・キャッシュの音楽

          「自由」の本当の意味とは?

          先日、「表現の自由とは?」を書いて以来、「自由」の意味について考えている。 英語では、"freedom"または "liberty"だが、明確な定義はない。日本でも「自由」と言ったとき、人によって意味することが違うと思う。 リンカーン大統領もこんなことを言っていた。 「私たちは皆、自由を謳います。しかし、同じ言葉を用いているからといって、同じ意味で用いているとは限りません」 We all declare for liberty; but in using the sa

          「自由」の本当の意味とは?

          最近よく聞く「デマゴーグ」とは?

          アメリカで最近よく耳にするようになった言葉のひとつに、"demagogue"がある。読みは「デマゴーグ」に近い。響きからして、何だか怪しい化け物みたいな感じがするけど、意味は「煽動的民衆指導者」。 Wikiの説明がわかりやすい。 デマゴーグ(独: Demagog)は、古代ギリシアの煽動的民衆指導者のこと。英語ではdemagogueであり、rabble-rouser(大衆扇動者)とも呼ばれ民主主義社会に於いて社会経済的に低い階層の民衆の感情、恐れ、偏見、無知に訴える事により

          最近よく聞く「デマゴーグ」とは?

          「表現の自由」とは何? “表現の不自由展”から考える

          国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の出来事、色々な意味で驚きました。慰安婦を表現する少女像作品をめぐり抗議が殺到し、75日間の予定だったのにわずか3日で幕を下ろしたそうです。 展示されたアートに関しては様々な意見があるでしょうが、両者の意見を出し合い、冷静に議論する機会だったと思います。それが、突然の停止となり、芸術監督を務める津田大介さんが「責任」を認め「謝罪」することに…。 この出来事で気になったことがいくつかあります。 1.自国を批判することは「反日」なのか? 「

          「表現の自由」とは何? “表現の不自由展”から考える

          今日学んだ英語

          軍隊の人を日本語では「軍人」というけど、アメリカではさまざまな呼び方があると知った。 一般的に「Soldier(ソルジャー)」は、陸軍の人のことを指す。空軍の場合は「Airman(エアマン)」、海軍は「Sailor(セーラー)」、海兵隊員は「Marine(マリーン)」。 ちなみに、Marineは陸海空軍共同の任務を行う人たちで、危険なことをする。欧米の映画とかで、敵がいるビーチに上陸してすぐに攻撃されたりするのは、大抵この人たち。 そういえば、数年前カリフォルニア州にあ

          今日学んだ英語

          フランス人青年との出会い

          「すみません、ちょっと変なこと伺ってもいいですか?」 散歩中、フランス人風の青年が話しかけてきたので何かと思ったら 「あなたの犬の写真撮ってもいいですか?」 よほど珍しい犬だと思われたみたい。 「コーギーなの?」 「ハスキーのミックス?」 「Shiba inu?」 みんなにいつも聞かれるけど、単なる雑種です...。 青森県六ケ所村付近の山林に捨てられていたところを保護されました。当時は誰も見向きもしてくれなかったけど、アメリカでは特別な犬種かと思われて、チヤホ

          フランス人青年との出会い

          "Individual-1"って何? 初めて聞いた言葉

          3週間日本に帰国して良かったことのひとつは、ニュースからブレイク(休み)がとれたこと...。アメリカでは(多分日本でも)毎日クレージーなニュースばかりなので疲れる。 先日、久々にニュースを見たら、トランプの元弁護士のコーエン被告の話題になっていた。彼はトランプの長年の「フィクサー」と呼ばれていて、いわゆる悪徳弁護士。米大統領選挙運動中に複数の女性に口止め料を支払ったことで知られているが、例の”ロシア疑惑”にも関係しているらしい。 それはさておき、コーエン被告の捜査レポート

          "Individual-1"って何? 初めて聞いた言葉

          毎日毎日りす

          あの日以来、毎日Facbookにリスが出てくるようになった。 そう、この写真をUPしてから。 プレゼントでいただいた犬用のおもちゃと飼い犬のむつ。 翌日、Facebookを開くとこんな宣伝が出てきた。 UPした写真を分析して、利用者が興味を持ちそうな商品を宣伝する、という方法らしい。 何だか気持ち悪い。でもクリックしてしまう。 次に、この写真をUPしてみた。 すると今度は、こんなのが出てきた。 思わず欲しくなった。

          毎日毎日りす

          著者にとって「理想の編集者」とは?

          私の編集者がノートをはじめたらしいので、ちらっと見てみた。すると、「編集者になって3年が経とうとしています」とある。 彼が編集者になって3年ということは、「ラスト・ソング」から3年経つということか...。この本は彼が初めて企画・編集したものだったらしい。 名前は天野潤平さん。最初に会ったとき、大学卒業したての人かと思ってビックリしたことを思い出す。この人で大丈夫なのだろうか、と思った。しかも内容は、「死」とか「喪失」。普通の若者が関心を持つような内容ではない。 でも、話

          著者にとって「理想の編集者」とは?

          本日学んだ英単語:"Sploot"とは?

          動物がこんな感じでストレッチすることを、"sploot" (スプルート)と言うらしい。 むつの場合は、片足だけやるので、"half sploot" (ハーフ・スプルート)。 ホームページ:yumikosato.com Photo credit: rsmithing via Visual Hunt / CC BY-NC Photo credit: rsmithing via Visualhunt.com / CC BY-NC Photo credit: Rain

          本日学んだ英単語:"Sploot"とは?

          「ゴロゴロ」ってどういう意味? 英語にはない日本語

          英語には、「さらさら」とか「くるくる」とか、いわゆる「擬声語」が少ない。日本語だと、雨が「ぽつぽつ」降る、とか「ざーざー」降る、とか言うけど、英語の場合はそういう言葉がない。 その代わり、動詞のバラエティーが多い。雨が降る "raining" の場合も、ちょっと降っているときは "drizzling" ざーざー降っている時は ”pouring” という感じで動詞を変える。 だから英語圏の人に、日本語の擬声語の意味を説明するのは難しい。 例えば先日、「ゴロゴロ」ってどうい

          「ゴロゴロ」ってどういう意味? 英語にはない日本語

          翻訳で失われるもの

          ここ数日、哲学的なことを書いていて、それがようやくまとまってきた。問題は、これをいかに日本語にするか...。 英語で考えて日本語にする、というパターンはどうしても変えられない。英語で考える癖がついているというのもそうだが、英語で「学んだ」「感じた」ことだからだ。 ただ、英語だとしっくりくるけど日本語にすると変とか、意味が微妙に違っている、と感じることが多い。特に観念を説明するのが難しい。 「詩とは翻訳で失われるもの」とアメリカの詩人、ロバート・フロストは言った。 俳句

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