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対談企画 第8回 防災士 尾庭恵子さんと語る聴覚・視覚障害の方たちの防災対策について

こんにちは

高槻市議会議員の西村ゆみです。

ボイシーでいろんな方と対談をしております。
こちら

発信しました内容、耳が不自由な方にも読んで頂きたいので、noteからも同時に発信しております。
※一部視覚で読みやすいように、表現を訂正しております。

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西村:研修講師、防災士、著者でもある尾庭恵子さんに起こし頂きました。いつかくる南海トラフに備えまして、耳が聞こえない、目が見えないなど情報障害を持つ方たちが、災害時に命と生活を守るために何を対策するべきなのか?を一緒に考えていきたいと思います。

尾庭さん:よろしくお願いします。私は、1995年に阪神淡路大震災で被災をしています。その後、2018年の西日本豪雨の際に災害復興支援のため、ある町に関わらせて頂きました。その時に自分が防災のことをあまりにも知らないことを知り、防災士の資格を習得しました。私の長男が生まれつき耳が聞こえずらく、先天性高度難聴です。現在、聴覚に障害のある方たちが万一の時にどういうふうにすれば少しでも安心するのか?みんなと共に逃げることができるのか?お伝えする活動をしております。

西村:尾庭さんは「いつか」くる「まさか」のために、ということで学校や企業や自治体などで、いろんな活動されていると思いますが、防災においてやはり一番何が大切だと考えていますか?

尾庭さん:常々言っているのは想像力と思いやりです。

西村:西日本豪雨の際に、ある街にボランティアに行かれたということですが、活動の中で何か気づかれたことありますか?

尾庭さん:想像力の視点で、こちらがどれだけ関心を持って、被災されている方たちのことを見ることができるか?そこがないと押しつけの支援になってしまいます。自分の想像力だけでは難しいので、しっかりとコミュニケーションをとりながら、何を今するのが一番いいのか?を判断していく力が求められると感じます。刻々と必要なことも変わっていきますし、できることも変わっていくので、そこをいかに調整していくか?マネジメントされる方の力量が求められると気付きました。

西村:ボランティアに行かれたその街では、尾庭さんは、聴覚障害される方の支援をされていたのですか?

尾庭さん:すごく気になったので運営者側に聞きにいきますと、幸い聴覚障害の方はいらっしゃいませんでした。なので、一般のボランティアの方と一緒に活動をしていました。

西村:想像力と思いやりをもって日頃から何を大切にしていくと防災になりますか?

尾庭さん:防災は万一に備えてというイメージが強いかと思うのですが、私が思うのは普段できていないことが、万一の時、しかもパニック時においてできるはずがないと思っています。日頃から丁寧にできることを増やしておく、できることをしておく、この積み重ねが防災だと思っています。

西村:具体的に日頃からできることって何でしょうか?

尾庭さん:例えば簡単なことでいうとご近所の方とのコミュニケーションです。いざというときに声を掛け合うのは難しいです。日頃からご挨拶するときに、お話をする、どういうところに誰がいるのか?など、お話することは大切です。あと料理をする際に、普段している料理がいざというときに工夫できるように、常日頃考えて台所仕事をするとか。また、もっと簡単なことですと雑然としたお部屋だと逃げられないじゃないですか?家具を倒れにくくするとか。コミュニケーションであったり家事であったり片付けであったり、大きく捉えると丁寧に生きる日常の延長が防災だと思います。

西村:私の子供は目が見えないので、常に何かがあったときに「周りの人に助けてというんやで!!」と伝えているのですが、逆に聴覚障害のお子さんの場合、みんなが「逃げて」というときに「逃げて」が聞こえないですよね
?お子さんにいざとなったときどうするのか?お話はされているのでしょうか?

尾庭さん:そうですね言い続けています。今、息子は27歳で一人暮らしをしています。目の見えない方と耳が聞こえない方と、決定的に違うのは彼らは補聴器をしているけれども、パッとみて分かりにくいことなんです。今、コードレスのイヤホンが多いので補聴器なのかイヤホンなのか分かりにくいですよね?年頃のお子さんですと髪の毛で補聴器を隠したりしますし、ぱっとみて「聞こえずらい方だな」がわかりづらい。だから、周りから助けてもらえることを期待するのは難しいと思います。何かあったときは自分から今何が起きているのか?近くの方に聞く、自分から行動することを伝えています。発語が難しかったり手話が第一言語の場合、例えばスマホで「今何が起きていますか?」と周りの方に見せるとか、なんでもいいと思うのでとにかく今自分は、困っていることをいち早く伝えるように伝えています。

西村:視覚障害だと白杖とか持っているので、周りから見て援助が必要だと分かると思うのですが、おっしゃるように補聴器の方だと分かりづらいかもしれませんね。

尾庭さん:パニックの場合、ご自身のことでみんな必死なのでなかなか周りに目を向けて下さる方も少ないと思います。だからこそ「何が起きているのですか?」をきっちりと相手に伝えるようには言い続けています。

西村:尾庭さんのお子さんは耳が聞こえなくても目はみえる、我が家は目は見えないけど耳は聞こえるということで、聴覚障害の方が視覚障害の方を助けることはできますね。

尾庭さん:そうなんです。最初の第一段階の情報さえ入れば、自分で判断できるし動くこともできます。でも最初の情報が入らなければ、そのあとの判断も行動もできません。なのでまず聞こえない方たちに、第一は情報を入れること。情報さえ入れば、場合によっては誰かを背負って逃げることもできるし、誰かの手をひくこともできるので、要支援者というくくりになるかもしれないけれど、支援者になりうる方たちだと思っています。

西村:自分から情報を取りにいくことが大事ですね。

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西村:先ほど、尾庭さん、想像力と思いやりがすごく大切と防災の点でおっしゃっていましたが、避難所の運営において情報障害の方たちが来た時の対応にて大切にするべき事はありますか?

尾庭さん:例えば聴覚障害の方ですと、アナウンスで「パンの配給が始まります」、「毛布を配ります」とか、何か音声で伝える情報に関して、すべて紙に書いて、決められた場所に張り出すということを配慮して頂けると、聞こえない方たちも何が行われているのかが分かると思います。きれいな文章でなくていいんです。単語でいいので、「パン、5時、体育館 入口」とか。ただ貼る場所を決めて頂きたいですね。情報の視覚化は、たまたまその時その場におられなかった方にとっても、こんなことがあったんだなという情報を得ることができるので、聞こえない方たちだけの配慮でもないと思います。
加えて、避難所の運営の場合、受付で障害だったりアレルギーだったりといろんなことをヒヤリングすると思うのですが、もしも聞こえにくい方がいたら貼り付けるボードの近くの場所を確保頂くような配慮が大事だと思います。また、避難所にかかわらずマスク問題もありますよね。私たちでもコンビニでマスクをしている方との会話は聞きづらくなるのですが、聞こえずらい方たちは、口の形も読んでいるので、できればそういう方と対面でお話をされることは、マスクをずらして頂きたいです。手話ができますというビブスもあればいいと思います。ビブスがなくても、ガムテープに油性のペンで「手話できます」と書いて背中に貼るとかも嬉しいです。また、手話を「できる」と言い切れない、自信がないという方は「ちょっとできます」と書いておくだけでも、自分たちに意識を向けてくれているという気持ちになります。これって、すごく大きな力になると思います。一方で、聴覚障害の方々も、聞こえませんと相手に分かるようにするのが大事かと思いますが、「この人は聞こえないのか・・」と危険を伴う場合もあるので難しい問題です。

西村:確かに一概にこうしたほうがいいと言い切れない問題ですね。ちなみに聴覚障害の方と違い、視覚障害の方たちは、避難所の中でなんとかアナウンスさえあれば情報はとれます。けれど静かに紙を貼りだされてしまうと、何が起こっているか分からなくなります。また、常に支援者が横にいるわけではないので、一人でトイレに行きたいとき、避難先の体育館で、自分がいる位置が真ん中あたりだと、自分の場所まで戻れない可能性が発生します。なので、体育館の角や壁側など分かりやすい端の場所か、または色つきのマットなどを使うと、色が見える方は分かるし、見えない方も足で触って自分の場所まで戻れます。

尾庭さん:聞こえない、見えない、と一言で言っても一人一人違うじゃないですか。程度であったりどんなサポートが適切なのかとか?なので、ひとまとめで「これが必要です」と、言うことってすごく難しいと思うので、難しいとは思いますが避難所で「どういうサポートが必要ですか?」を直接きちんと聞いて頂きたいです。

西村:緊急時の時ってどうしてもサポートする側もパニックになると思いま。ただ一言、聞いて頂けると「大丈夫です。支援者いるので、もっと困っている方に力を注いでください」と言える人もいれば「誰もいません、一人です、助けてほしい」という方もいらっしゃる、そこの思いやりと想像力を緊急時でも発揮することが求められます。ただ・・難しいのかもしれませんが・・・

尾庭さん:常日頃を大切にすることがいざというときも発揮すると思います。コミュニケーションとか準備とか言いましたけど、普段の生活から大切に人と関わってほしいです。

西村:そうですね。ちなみに避難グッズの中に聴覚障害の方たちが、これは持っておいたほうが良い!というものはあるのでしょうか?

尾庭さん:補聴器の電池とかはわりと早い段階で支給されるのですが、補聴器自体は一人一人にあわせたマッピングといって調整をすませたもののため補聴器だけがポンと借りることができても使えないんですね。なので買い替える時には、捨てずにリュックにいれて災害時に使えるようにするのは大事です。あと、聴覚障害の場合、声を出すことが難しい方もいるので笛をもって居場所を知らせることが大事です。
聴覚障害だけでなく私たちも同じですがライトはとっても大事です。真っ暗になると聞こえないし見えないしとなってしまいます。手元を照らせるライトは持ちましょう。それはスマホでいいじゃんということではなくて、スマホは情報を得るための貴重なものなので、スマホとは別に簡易のライト必要です。

西村:視覚障害の方たちは、古い白杖をもっているので古い白杖、傘でもなんでもさして分かるものを持つことがすごく大切です。手が目なので触らないと分からない。ただ、感染症などで触らないでと言われてしまうことがあるようで、薄い手袋とか除菌シートをもっておくとすごく便利なのでは?という声もあります。

尾庭さん:それぞれみんな、必要なことは違うということを逆に知っておきたいですね。

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西村:尾庭さん最後に、尾庭さんが考える「優しい街」の優しいとは何だと思いますか?防災の点から教えてほしいです。

尾庭さん:優しさとは多分、身の回りの人に興味をもって知りたいと思うことだと思います。知ったことによって想像できるじゃないですか?その想像力を活かして誰かの事を思いやることができて、それが行動に移せたら優しい行動になると思います。なので興味を持つこと、知ること、思いやること、行動すること、防災だけに限らずだと思いますが優しさにつながると思います。

西村:日頃からもっと私たちはいろんな人と接してたらいいのですが・・なかなか難しいですよね

尾庭さん:やはり知らないことって怖いじゃないですか?でも逆に知っていればなんでもないことってたくさんあると思うんです。自分にはない、見えないとか、聞こえないという特性を持っている方に、どう接していいか分からないだけで、それが距離を作っているだけだと思います。
例えば聴覚障害でいうと手話ができないとお話をしてはいけないような気持になる方も中にはいるかもしれませんが、極端な話、聴覚障害者だからといってみんな手話できるわけではないんですよね。中途失聴の方などは手話できない方もいます。コミュニケーションの方法はなんでもいいので、この人と話したい、伝えたい、分かりたいという気持ちを育てることがすごく人として大事だと思っています。我が子を育てるときも文法とか語彙とか発音とか、助詞とかよりも、目の前の人に自分の気持ちを伝えることを諦めない、そこを育てたいと思って大切にしてきました。巡りめぐって世の中の人との関わりの中で優しさというものを作り上げていくと思うので、とにかく目の前の人に興味を持たないと何も生まれないと思います。聴覚に限らず、防災上の優しさだと思っています。

西村:私、JALのCAしているときに聴覚障害のお客様が何人か乗ってこられたんですね。みなさん使っている言語が手話の方もいれば筆談の方のほうがいい、口話でという方もいらっしゃり、その度、正解はなんだったんだろう?ということを考えすぎてしまって、傷つけるのではないか?と悩んだことがありました。ただそれが子供が障害をもって生まれてきて、コミュニケーションをとる中で、私と同じように間違えてはいけないのではないか?と躊躇している姿を時々お見受けします。正解ないからもっとコミュニケーションをとることを楽しんでほしい、かかわって楽しく会話してほしいと、自分の過去の反省を踏まえて聞いてました・・・

尾庭さん:でもきっとそれも優しさの形で、どうするのがベストだったんだろうか?と考えることは、相手を傷つけてはいけないという優しさの裏返しだと思うので、おそらく世の中の人はそういう人が多いのではないかと思います。だからこそ、同じ人なので笑顔で接してもらってさえすれば傷つけることはないです。

西村:心のバリアフリーと言われていますけれども、日本も東日本大震災の際、海外から行列に並んでもお互いを思いやっている姿が注目をされました。日本人の根本にある優しさ、気を使いすぎてしまうがゆえはありますが、どうしたらいいのか?を優しさと掛け算しながら防災でも活かしてほしいですね。

尾庭さん:障害があるとかないとかではなく、どんな方も「共に」という意識を持てればバリアがなくなっているのではないかと思います。「共に」を大事にしていきたいですね。

西村:ありがとうございます。私自身、これからも啓発をしていきます

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