投資ストラテジーと経済(2)         ~「コロナなのに上がる」ではなく、「コロナだから上がる」株式市場~

コロナは飲食、レジャー(特に海外旅行)業界には大打撃を与えましたが、実はコロナによって潤っている業界は多くあります。 儲かっている人はそれをあまりアピールしないので、気付かれにくいのです。 2020年の日本の実質GDP成長率を見ると、確かに-4.8%とリーマンショック以来のマイナス成長となりましたが、リーマンショック時(2009年 ;-5.7%)ほどのマイナスではありませんでした。 そして、この-4.8%分はちょうど1年前の株価の大幅下落によって、すべて織り込まれ、それからは今年以降のプラス成長を先取りして株価は急上昇する展開となっています。 この1年足らずで世の中は大きく変わりました。 コロナは様々な変化を加速させ、特にIT分野などでは5~8年先までの変化が一気に起きたのではないでしょうか。

さらに、コロナ禍が起きてから、大規模な世界的金融緩和や財政出動により、経済は過剰なまでにサポートされ、これによって株価も高値を更新し続けています。 昨年2020年の株価への最大の貢献は、FRBを中心とした世界の金融当局による大規模緩和です。 FRBはコロナの終息が飲食・サービス業などの厳しい業種の労働者にも見られるまで、緩和を続ける方針です。 つまり、コロナの不安が消え去るまでは、緩和が続くので、株価はサポートされます。 今後、「有効な」ワクチンが世界中に行き渡り、国際的な移動が自由に再開されるまでは、もし株価が下がっても金融緩和によってサポートされる局面が続くことになります。 

また特に米国では、給付金やインフラ整備といった政策が大規模に実施され、財政政策はリーマンショック時を上回っています。 政府の借金はいずれ増税につながるとの見方もありますが、米国債の発行で賄われる今回の財政出動は、大規模な金融緩和の最中であるため、間接的にFRBが紙幣を刷って、給付金を配る構図となっています(このスキームだと政府の借金は増えにくい)。 これが将来のインフレを招くという危惧もありますが、リーマンショック時以降の金融緩和の規模と米国経済のインフレ動向、特にCPIとの関係を見ると、懸念されるほどのインフレは起きないと思われます。

リーマンショック時はバーナンキFRB元議長が過剰な金融緩和をしてハイパーインフレが懸念されましたが、市場で取引される金、銀、石油、大豆などの商品市況は上昇したものの、CPIの上昇には結びつかず、経済は安定して拡大しました。 今回も、大規模な金融緩和が行われましたが、仮想通貨などは上昇したものの、ハイパーインフレのようなことが起きるには、これでも規模は少ないと言えます。 CPIを大きく上昇させるほどの金融緩和とは、今回の5~10倍の規模ではないでしょうか。 そうした中、現在のアメリカの期待インフレ率(物価連動債の示す金利)は2%強で安定しており、名目金利も30年、20年、10年と順を追って2%へ近づいてきていますが、10年金利はまだ1.7%と、2%を下回り、実質金利はマイナス圏のままです。 これでは金利が多少上がったからと言って、株価が崩れるほどではありません。 

コロナ不安がある限り、金融緩和が続き、財政出動で実体経済もサポートされているので、米国を中心に世界経済はしっかりしており、企業業績も回復基調となっています。 株価は利益に見合った上昇を続けており、バブルとは言い難いです。 今後も堅調な展開が想定されます。  

マネーの主流はユダヤ資本からアジアファミリーオフィスへ

世界の覇権が西洋から東洋へ移っていることは、SNSでも何年も前からずっと申し上げてきましたが、金融市場を取り巻くマネーの流れも、ユダヤ資本からアジアのファミリーオフィスへシフトしてきました。 

分かりやすいところでは、ロックフェラー、ロスチャイルドなどの資本が20世紀に世界を変貌させるほど大きな勢いを生みましたが、現在では米国内においても、シリコンバレーのテクノロジー企業やバイオ企業と比べて、ユダヤ資本は劣勢となっています(シリコンバレーの創業者にユダヤ人が多いとか、イスラエルでスタートアップが盛んという話もありますが、これらは従来のユダヤ資本とはいささか結び付きが弱く、基本的には大規模なユダヤ資本はジリ貧になっていくのではないでしょうか。 ただ、完全になくなるわけではないので、今後もまだ残ることは残るでしょう)。 

米国のユダヤ系金融機関も、投資先の主流をアングロサクソンワールドからアジアへ転換しています(ただ、ユダヤ資本の略奪式お金儲けは、アングロサクソンワールドでうまくいくビジネスモデルであって、アジアへ資本を移したからといって、彼らが以前と同じように儲けることは難しいです)。 政治的には中国を批判していますが、マネーは正直に、香港を通じて、中国の成長を利益に結びつけたいと考えた動きが如実に表れています。 欧米のマネーが狙うまでもなく、アジアは香港、シンガポールという金融シティを中心に高成長を謳歌するマネーがどんどん増殖しており、中国だけでなく、ベトナム、インドネシア、タイなども実質GDP成長率にインフレ率を加えた名目の成長率は中期的なトレンドとして5%を優に超えるため、金融環境は非常に良好です。 こうしたアジアマネーの増殖は21世紀の大きな潮流となり、20世紀を謳歌した欧米マネーとは対照的となります。  

皆さんの周りでも、何となくうまくいっている方は、中国・アジア関連のビジネスとつながりがないでしょうか? 日本では中国に対して良い印象を持たない人があまりにも多いですが、そうした考えから少し離れて、お金儲けをもししたければ、アジアシフトを考えることをお勧めします。 きっと、スルッと楽にお金が流れてくることに、驚かれるかもしれません(もちろん、最大限の努力は必要ですが)。 目の前のSNSやTVに洗脳されず、歴史を、そして世界全体を、普通にバランス良く、バイアスをかけずに、平等に見れば、誰しも気付くことです。

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1900年代の100年はアメリカの時代でした(もっと申し上げれば、この500年に西洋は覇権を謳歌して、これは終わりつつあります。 ここは大事)。 

1940年に日本は当時勢いの出てきた勝ち馬に乗るつもりで、独、伊と三国同盟を組みました。 これは完全に流れに逆らった決断でした。 結果は5年後に第二次世界大戦で米英側の勝利となり、この後アメリカの覇権が拡大していくこととなりました。 100年のタイムラグをもって、今、日本は(当時ほどまだ決定的ではないものの)また似た失敗を繰り返す局面となりそうです。 2000年代の100年は中国の時代で、アメリカは今後衰退し、今のイギリス(1800年代の覇権国)くらいの地位となっていくわけですが、その大事なタイミングで、日本はアメリカと組んで、自由と民主主義という1900年代に言い尽くされた古いイデオロギーに乗って、中国に挑戦的な立場を取ろうとしているのです。 日本は代々、官民ともこうした大局の見極めができずに国益を大きく損なってきましたが、今回も、中国が衰退し始める2100年頃になって、ようやく日本人が世界で最後に、中国が覇権を取っていたと認めることになるかもしれません、このままだと。

なお、アジアの時代が来ると、欧米の考え方自体が古くさいものになってきて、ここからは例えば政治的には中央集権の良さが際立ってくるでしょう(これは欧米の人には最後まで理解できないかもしれません)。 そして、コロナ禍はそれを後押しするかもしれません。 これによって個人の自由がなくなるわけでもないでしょうし、変化は皆が望む形でごく自然にそうなっていくので、あまり心配いらないでしょう。 また、これはイデオロギーの話で、経済体制や企業のあり方は、中国も資本主義です。 資本の出し手が政府だったりしますが、それでも株主重視であるのは同じです。 現在の中国は、他の国と比べても、格別自由がない国でも、人権を侵略している国でも、理不尽なことをする国でもないと思います。       

今週の菅総理の訪米では、アメリカの家来のように、中国の台湾海峡・尖閣侵入問題を政治問題化して、日本も中国に圧力をかけることが決断されるでしょう。 そして菅総理はワクチンでももらって帰ってくるのでしょう。 こうした中国叩きの流れは、平和的なトランプ氏が大統領だった4年間は先延ばしされていましたが、バイデン氏が大統領になったことで、再び加速するのは確実です。 世界の覇権が中国に奪われる中で、日本は80年たって再び、流れに逆らって不利な陣営につくこととなります。 安倍前総理、麻生元総理などは、この辺りの観は当然持っていましたが、基礎的な歴史認識の理解が乏しい菅総理は、まんまとアメリカの言いなりになりそうで、残念極まりないことです。 日本はアジアの一員でもあるのに。 

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