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中学生と一緒に土器片クッキー「ドッキー」を本気で作ってみた

「ドッキーワークショップ」とはなにか?

わたしの代名詞的作品、土器片形クッキー「ドッキー」。土器片を模したクッキーのことで、かれこれ10年以上、ドッキーを作るワークショップを全国各地で実施させていただいています。

左がドッキーで、右が土器
(初期のドッキー)

旧Twitterでバズり、それをきっかけに、博物館や埋蔵文化財センターでのワークショップへとつながっていきました。

バズった当初の流れは以下にまとまっています。
「どちらがホンモノ!? 横浜市歴史博物館でふるまわれた「土器型クッキー」のクオリティがすごい!」

ワークショップのやり方

ワークショップの基本的な流れとしては、

① 観察する
② まねする(ドッキーを作る)
③ 食べる

という、3つのことをやります。

「③ 食べる」はテイクアウトの場合もあります。

観察は、本物の土器片を手に取り観察用のワークシートに記入するという作業で、この観察結果をもとに、さまざまな食材を各自オリジナルブレンドにて、マイ・ドッキーを作ります。

ココアやブラックココアのほか、
製菓用のけしの実や紅茶などその地域の土器に合わせて材料を用意します。


「色」や粘土の中の「混ざりもの(混和剤)」は、土器の観察や識別にとって大事な情報で、それらを食材に置き換えるというのがポイントになっています。

参加者の方の作品
(アルミの上のものが食用、右上が本物)
場合によっては、実際の出土品のような
ラッピングをして持ち帰っていただきます。


いつも使っているオリジナルの観察ワークシートがこちら↓

「文様」「色」「混ざりもの」を観察するシート

このワークシートを使うことで、土器の重要な観察ポイントごとに、お菓子に変換する作戦が立てられる…という内容になっています。

ただ、ワークシートは小さい年齢の方でも取り組みやすいという良い面もある反面、どうしても参加者個別の作業になり、観察結果が広がっていかないところがあります。

応用編にチャレンジしてみた!

それで、新たな試みとして、あえてワークシートを使わず、参加者ひとりひとりの土器片を「みんなで」観察するということをやってみました。

実施した場所は、東京都武蔵野市にある、武蔵野ふるさと歴史館

武蔵野ふるさと館さんでは、中高校生を対象にした考古学の講座を定期的に実施されています。

ドッキーワークショップは、小学生以下を対象とすることがほとんどなのですが、今回は中高校生のみが対象になるということで、ワークシートなしでやってみよう!ということになりました。

まずは、土器のかけらではなく、完全な形の土器を2種類、みんなで特徴や違いを発言し合いながら観察しました。

「勝坂式土器」と「加曽利E式土器」の特徴を
それぞれ言い合いながらまとめていきます。
ホワイトボードに板書。
完形の土器もたくさん用意していただきました。

今回は時代の違う2種類の土器を扱うということで、少なくとも「どちらの種類の土器のかけらか」までは同定できるようになるまで踏み込んでみんなで観察をしました。

各人に配った土器片。これは勝坂式土器。
井の頭公園のまわりにある遺跡から出土したものです。


同定のポイントは、文様だけでなく以下のようなものも大切です。

・上下左右の湾曲具合
・土器を製作した際の輪積みの痕跡
・表面を平滑にした際の擦った痕や磨いた痕
・上記から推測される土器片の部位

文様だけ見ても、部位が違えば土器の種類(型式)を同定し間違えることもあります。

そのため、上記のような観察の視点もとても重要になってきます。

全員で全員の土器片を本気で観察してみる

ちいさい土器片をよーく見て、
「どんな土器のどの部分か」をみんなで根拠を共有しながら特定していきます。


土器片の部位同定の根拠については私が説明しましたが、それに納得してもらえるかどうか、それぞれの土器片を全員に回して確認してもらいました。

時間と集中力は要しましたが、ここまでやったことで、参加者の観察眼はずいぶん鍛えられたのではないかと思います。

観察後のドッキー製作の様子
完成品その1
完成品その2
横方向に大きく湾曲している状態も表現されています。

(おまけ)調理室遺跡調査

ちなみに、ドッキーを焼いている間に、調理室を遺跡に見立てて、模擬的な土器片の採集調査をしたのですが、土器片の同定ができるようになったことで、分布への考察に進むことができました。

土器片カードを床に貼りまくる!
調理室の平面図に土器片カードの番号を落としていきます。
番号の土器を並べて分布の傾向を確認。


遺跡の調査は、実は「土器片」を同定することができないと、ほぼ進めることができません。

なぜなら、土器片はほとんどどこでも出土して、最もたくさん出土するものだからです。「あるある」だからこそ、一番基礎的な判断材料になるのです。

観察を追求するということ

…などと熱く語ってしまいましたが、わたしがワークショップで一番伝えたいのは、「深い観察することで状況が立体的に見えてくる」ということです。

これって、考古学以外のさまざまな日常の場面でも役に立ちますよね。(たぶん)

と思って、やっていたりします。。

参加者の対象年齢層が高かったということもあり、ここまで踏み込んだワークショップができて、わたしもけっこう熱くなってしまいました。。

でも、とっても楽しかったです♪

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