ミュージカル「黒執事」~寄宿学校の秘密~ 観劇&大千秋楽配信感想

※原作は既刊分まで読了済み
※アニメ未履修
※前作までの生執事未履修
※曲名不明の為、楽曲に関しては印象に残っている歌詞をタイトル代わりにしています。

【ミュージカル「黒執事」〜寄宿学校の秘密〜】
3月5日〜21日東京公演  天王洲 銀河劇場
3月25日〜28日大阪公演  メルパルクホール大阪
4月1日〜4日大阪公演   梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

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しっかりと感染症対策を取った上で、3月27日(土)のマチネ公演を劇場で観劇をしてきた。

アーカイブ期間中に散々東京初日をヘビロテしていたので、私の中での生執事の印象は、この東京公演初日だったわけだが、いざ劇場で観劇してみて驚いた。
初日とはまったく違うセバスチャンがそこにいた。

初日配信を見た時は、優雅で洗練されていて物腰が柔らかく、ニヒルな印象よりも優し気な印象が強いセバスチャンで、立石くんご本人の気質が強く出ているのかなと思っていた。
シエルに振り回されているのも、仕方ないなという感じで付き合っているようにも見えていた。
だから、悪魔要素が薄いというか…まぁ、だからこそ最後の「掠め取られてはたまらない」のシーンの狂気との対比が良かったと思ったわけだが、大阪公演で観劇した時は、優雅で洗練された動きはそのままに、優しげに見えた部分が綺麗に削ぎ落とされて、セバスチャンの発言、表情の一つ一つがザラついて見えて驚いた。

微笑みを浮かべていても、目が笑っていない。
どこか人間を馬鹿にしたような目線の動きや口角の上げ方といったセバスチャンの表情の一つ一つが違和感となって押し寄せてきて、その違和感が私には雑味というかザラつきに見えた。
そのザラつきが見ている側にアンバランスな印象を与えて、セバスチャンの存在を歪んで見せる。その存在の歪みが、セバスチャンが人間ではなく、悪魔であることを色濃く印象づけていたように感じた。
このセバスチャンを見て、「あぁ…セバスチャンて、本当に慈悲の心を持ち合わせない悪魔なんだな」って、改めて思ったと同時に、こんなにも3週間で印象がガラリと変わるのかと驚いた。

葬儀屋との対決後にセバスチャンがシエルに対して、「せっかく育ててきたんです。掠め取られてはたまらない」っていうシーン。
初日配信の時は、周囲に対して敵意を剥き出しにしていたセバスチャンが、観劇した時には、シエルを完全にロックオンして、シエルのことをガン見していて、「こぉっわ!!」てなった。
他なんてものは眼中になくて、ただただ狙った獲物は逃さないというセバスチャンの固い意志を目の当たりにした気分だった。


今作の中で一番好きな曲が、シエルを期待のルーキーに仕立てる為にセバスチャンが奮闘する「これくらい出来て当然」の歌詞が印象的な曲だ。
劇場で観劇した時に、銀河劇場の時よりも舞台がコンパクトにまとめられているように思って、間口の調べてみたら、ほとんど差が無かった。
しかし、初日配信で初めてこの曲を聞いた時は、テーブル間の移動が大変そうな印象だったのだけれど、大阪公演では動きやすそうだったので、もしかしたら大道具の設置間隔を狭めているのかもしれない。(私の気のせいかもしれないけれど…)
一番最初の「これくらい出来て当然」の時にバッチリマッピングと合っていたのは、見ていて気持ちよかった。
大千秋楽の時には、カトラリーをローブに仕舞った時にウィンクまでお見舞いしてくる余裕に、やっぱりこの曲好きだなってなった。
そして、この後の日替わりコーナー。
観劇した時は、クレイトンが「いつもの場所から3時間ほど離れた場所に来たようだ」って言っていて、会場から拍手。会場に合わせたアドリブを繰り出せるクレイトン役の大和くんは、やっぱりすごいなって思ったが、大千秋楽のここの場面がすごかった(笑)
まさかの修学旅行の夜。そして、のっかるミカエリス先生(笑)私が見た中では一番好きな日替わりだ。
ちなみに赤寮が下剤入りのミートパイでのた打ち回る場面は、観劇した回が最強だった。
レドモンド役の佐奈くんの動きがヤバすぎて、笑いを堪えるのが大変だったし、ゾンビみたいな動きになってて、怒られるぞ(誉め言葉)って思ったのは、私だけではないはずだ。


SNSの感想を見ていると賛否両論色々あった印象だけれども、個人的にはいい作品だったと思っている。
「クリケットの王子様」いいではないか。
クリケットのシーン、めちゃくちゃ楽しかった。テニミュを彷彿とさせたとしても、仕方ない。あちらは既に15周年を迎えて、4thシーズンに突入している人気コンテンツだ。
むしろ、テニミュという先行作品があったからこそ、今回のクリケットシーンでは、多分にそのエッセンスを取り入れて、迫力あるシーンになっていたと思う。
役者と音響照明さんとの三位一体で表現する試合場面が素晴らしい。
歌とダンスで魅了してくれることで、単調に足りがちな試合シーンに緩急が生まれて、見ていて飽きない。
それと、いきなり始まったラップバトル。
初めて聴いた時は、正直「えっ」って思ったし、「ミュージカルとしては邪道では?」と、思わなくもなかった。そして、「ヒプステ」の四文字が頭をよぎらなかったわけじゃない。むしろ、ガッツリ思い浮かんだけど、使いどころが的確だったので、そこまで目くじらを立てることではないのかなと思っている。
これが、ブルーアー先輩がいきなりラップを始めたら、「ちょっと待って‼」って、全力で突っ込んでいただろうけど、ラップを始めたのがチェスロックだった時点で、キャラクターとしては、違和感がない。
むしろ一芸に秀でた紫寮の学生としては、毛色が違う感じが演出できるし、グリーンヒルとの対決の場面でも、ラップをやらなさそうなグリーンヒルがラップで返すことで、相手の土俵でも一歩も引くことなく、戦う姿勢を見せることが出来ていたように思う。
それもこれも生執事、テニミュ、ヒプステ3作品の制作会社がネルケプランニングだったからこそできたことだなと思うのだ。
良いものは取り入れて、より良いものに仕上げていく。もちろんやりすぎは禁物で、失敗することも考えられるが、今回の生執事に関しては、絶妙な匙加減だったように思う。


久しぶりに劇場に赴いて、推しの定点カメラになるタイミングとスイッチングを切り替えて全体を見るタイミングがうまく切り替えられなくなっている自分に愕然となった。
オペラグラスを使っていたせいもあるのだが、推しの顔を見ようと思って、オペラグラスを使っていると、視野が狭くなって、引きでのやり取りを見逃してしまう。かといって、引きで見続けていると、座席の距離的に推しのお顔が良く見られない。
ジレンマである。
劇場になかなか行けなくなって、基本的に配信で見るようになってから、「今のこの瞬間の推しが見たかった」が多々あったので、「よし推しの定点カメラになるぞ」と意気込んでいったら、思っていたほど定点カメラにもなりきれなくて、「これは何回も劇場で見たい作品だったな」というのが、真っ先に浮かんだ感想だった。


非常事態宣言下で始まり、大千秋楽へ向かう中で増えていく大阪の感染者数。
いつ、公演が中止になるのかと心配しながら見守り続けた1か月間。無事に幕が下りたことにまずは何よりもホッとした。
と同時に、終わってしまった寂しさが押し寄せてきている。
だけど、終わりがあるから愛おしい。
大千秋楽のカーテンコールで挨拶をした時の立石くんの姿が、とても好ましくて「あぁ…応援していてよかったな」と、とてもあたたかい気持ちになったし、推しの初主演初座長公演ということだけでなく、1つの作品として大変素晴らしい作品に巡り合えたことに感謝している。

9月末の円盤の発売が今から待ち遠しい。
叶う事なら、また是非今回のカンパニーのメンバーでの生執事を観たいと願っている。

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