原作者とTV局の関係

セクシー田中さん の問題。脚本家もクリエイター側であり、落ち度無しとは言わないけど、原作者と脚本家の間に明らかな情報の齟齬があり、間に立っていた人間の責任の方がはるかに大きいと思う。

脚本家だけに攻撃している人もいるが、話の流れとしては
1.脚本家が、原作者からの修正依頼がきついと愚痴
2.原作者が、元々漫画の世界観を大事にする契約だったとしぶしぶ反論。加えて、何度TV局側に設定を守るよう言っても話が通らず、結局最後の2話分だけ自身で書いたが、TV脚本の流れを切ってしまい、力不足を悔いているとも発言
3.原作者の自死
が大まかな流れ。明らかにお互いにすれ違っており、元々の契約が守られていなかった。原作者の証言を信じるならこれは著作者人格権の侵害であり、契約書で意図的に著作者人格権の放棄を決めていなければ問答無用で原作者側の主張が認められる。

「クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか」



にも書かれていたことがたくさんあったように思う。
今後の教訓として言語化する意味でも、特に関係ありそうなところを引用してみる。文脈とか事例とかその他テンプレートもあるし1000円で内容は濃い。やしろ氏は炎上で認知されていることも多く、嫌っている人もいるとは思うが、少なくとも本書の中では良いことを言っているので、食わず嫌いせず読んでみることをお勧めする。
では教訓とすべきと感じたところを列挙。ちなみに、「クライアント」はテレビ局側として引用しています。
・創作関係の炎上は、お互いの前提や思惑、価値観のズレetc.が齟齬を生んでいることが多い(P.5)
・クライアントには次があるが、クリエイターはコケたら失職もあり得る(P.22)
・クライアントにとっては「商品」だがクリエイターにとっては「作品」である(P.22)
・捉え方は違えど、最終目標はクリエイターもクライアントも同じなので協力した方がいい(P.23)
・制作現場でトラブルがあった時には、クリエイター側に立つと不利になるため庇いにくい場合があり得る(P.29,30)
・個人製作と集団制作はスタンスに違いがあり、お互いの論理や前提などのすれ違いでトラブルになりやすい(P.39,40)
・クリエイターは意図しない改変を加えられたら抵抗しがちで、名前を出したがらない場合すらある(P.41)
・契約書はきちんと取り交わし、著作権関係だけでもきちんとチェックし不満点を詰めておく(P.97,98,99,100)
・コミュニケーション方法を選ぶ。特に電話は侵襲的なツールなので、LINE等でクリエイターに折り返しをお願いするなど時間の自由度を用意する(P.108-111)
・担当者変更などによる引継ぎは丁寧に(P.115)
・痛い忠告(連絡はまめにした方がいいよ、とか)は注意してくれる人がいるうちに直しておいた方がいい(P.125)
・現場や直接の担当以外が仕事内容をひっくり返す問題は常に起こり得るので、皆備えておくべき(P.143)
・リテイク問題が起きたら、”誰がリテイクを出したのか”を確認し記録しておくべき(P.144,145)
・リテイクの場と時間などを決め、確実にやりつつチェック漏れを防ぐべき(P.146,147)
・クライアント側で「こっちでやっておきます」は勝手にやらず、クリエイター側のチェックが原則(P.150,151)
・自分がかかわった作品の悪口は、別部署の悪口でも極力避けるべき(P.158,159)
・ヒアリングシートやリテイクシートなど作業記録は残すべき(P.168以降付録として実例多数)

やっぱり創作者も発注者もこの本持っておいた方がいいと思う。
現場の人間が書いているだけあって、実務的な内容が多い。

個人的に笑ったのは
・Twitter更新はLINE等への返信とは別腹(ただつぶやいてるだけ)なので、返信せずにTwitterやってても大目に見てほしい(P.113)
言われてみればそうかもw


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