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自分で作った料理(たいしたものでなくていい)への愛しさを知ってほしい

有賀さんが私が書いたこちらのnoteに対するお返事を書いてくださった中で、ちょっと驚きながらもうれしかったことがある。

私も帰りが遅くなってちょっと手抜きをしようとして、スーパーの惣菜売場で買うものがみつからず立ち尽くす日がある。

私が前のnoteに「コンビニの棚の前であんまり美味しそうでもなければ安くもないものから食べるものを選ぶのがすごく苦手」と書いたことに共感してくださったこの言葉、有賀さんのように、料理が得意で大好きな人にも、この感覚がわかってもらえるんだと嬉しかった。

この前も、同世代の同僚と「心がすさむ食事」ってあるよね、という話になった。「忙しいと出来合いのお弁当ばっかり食べてしまうけれど、空になったお弁当の容器を見るたびにうんざりする」と彼女もいっていた。

コンビニやスーパーのお惣菜は確かに便利だけれど、明らかにお仕着せであるもので生活していると、自分をぞんざいに扱っている気がして、なぜか疲れてくる。

そういうものよりも、精神衛生上は、お味噌汁と、納豆をかけた炊きたてご飯の方がよい(お味噌汁はインスタントでもいい)。1日に必要な野菜の品目には足りなかったとしても、そっちのほうがほっとする。

「疲れたときに何をどう食べるか(お店で食べるか家で食べるかレンジでチンかお湯を沸かすかお皿にうつすかいくらお金をかけるべきかなど!)」は確かに大きな問題だ。

実家にいたときは、勉強が理由でも、遊びが理由でも、疲れて夜遅く帰ってきたときでも、いつでもご飯が待っていた。家族の食事が終わっていても、「おなかすいた」といえば、何か用意してくれた。

それが当たり前だと思っていたけれど、実家を出て自分で日々の料理をするようになってから、初めて何品もおかずを作ったり、毎日違う種類の料理が出てくることが奇跡的だと知った。実家を出てから、たまに実家に帰って食べるご飯は、前に実家にいたときよりもずっと美味しくありがたく感じるようになった。

そこで気づいたのは、自分で料理を作る人のほうが、目の前にある料理(自分で作ったものにしろ、誰かが作ったものにしろ)のありがたみを感じることができる、ということだ。

生活の中で自炊をするようになってから、1品でも自分で何かおかずを作ると、その作ったものが妙に愛しくなる(決してたいしたものではない)。人に食べさせるレベルでないとしても、それでも自分で作った一品のあたたかみがありがたく感じる。

最近は専らスープと炊きたてのご飯とあとはもずくとか納豆とかと一緒に食べるだけで、平日の夜は満足する。ちゃんと生活している自分を褒めたくなる。

でもその一品を作ることのハードルだって、人によって高さは様々だ。何時に帰ってくるのかとか、次の日何時に起きなきゃいけないのかとか、それぞれ事情がある。

でも私は、本意ではない「すさむ食事」よりも、自分のために「ほっとする食事」を選べる人が増えるといいなと思って、「私レベルの料理面倒くさい人」が作る気になるようなレシピ本がほしいと思った。

料理の本を作る人たち、つまりシェフや料理家たちは、みんな料理が得意だし大好きで、おいしいもののためなら面倒な作業もいとわない、ヘンタイな人たちだからだ。

有賀さんのnoteにある「ヘンタイな人たち」という言葉に笑ってしまった。でも本当にそのとおりだ。ヘンタイであるプロの方の知識をわかりやすく、知識のない人に伝えるのは、教えるほうも教えられるほうも大変だ。でも本当は、苦手な人、知識がない人こそ、専門家の知識を必要としている。

ヘンタイであるプロの人は、もっともっと、手をかければ美味しくなるからと、親切心ですごいものを教えたくなってしまう。でも素人にとっては当然難しく感じるし、ハードルが高くなってわずかにあったやる気の炎を消してしまいかねない。知識がない人ほど、5手間を増やして10美味しくなるやり方よりも、手間を1増やして2美味しくなる方法を知りたいのだと思う。

こんなツイートをしてくれた方がいらっしゃった。「料理上手の人の簡単が簡単じゃない」という感覚は、とてもよくわかる。

そもそも、今回の本は、料理をしただけで自分を褒めたくなるような人たちをターゲットにしている。忙しくても、自炊したい思いを持っている人は多い。「しない」と決めて割り切って迷わない人はいいけれど、「なんとなくしたほうがいいよなー」と思いながらできたりできなかったりの間をふらふらする人が大半だと思う。

そういう人にとっては、多少見た目が美しくなくても、大雑把な料理でも、自分で作ったというだけで満足して美味しく感じるものだと思う。だからまずは「自分で作る」ってことのハードルをめちゃくちゃ下げなきゃいけないと思った(そのため何度もいうけれど有賀さんには普段やらないような手抜きの方法をたくさん考えていただいた。懲りずにお付き合いいただけたことには感謝しかない)。

料理の凸凹コンビが二人三脚で作った『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』好評いただいております。

有賀さんが書いてくださった凸凹コンビという言葉は、まさにという感じ。有賀さんと私だけでなく、本当に人によって、料理に対する考え方や感覚は違うから、いろんな人の思いや悩みを知りたいです。こちらのイベントに私も参加予定なので、お会いできる方楽しみです。

上のイベントは満席のようですが、4/22(日)のB&Bのイベントはまだお席あるようです。ご興味ありましたらぜひご参加ください。


トップ写真は @yukitsunesumi (instagram)です。私が好きな写真を撮る人です。




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