足、のこと。6

【術前検査、貯血、手術説明】

全身麻酔の大きな手術を受ける場合、手術の前に色々な検査を受け、さらに手術中の出血に備えて自分の血を貯める「貯血」というものを行う。検査は肺機能を調べたり、詳細なレントゲンやCT、麻酔科との面談、などなど。貯血は3週間にわたって、週に1度400ccずつ貯めに通う。鉄剤も出された。どうも飲むと胃が気持ち悪くて、ほとんど飲まなかった。その分食べた。合間に検査をしたり、それなりに忙しいので仕事をギリギリまでしなくちゃいけない理由がなければ、入院の1ヶ月前には仕事に区切りをつけておくのがよいと思う(病院によって多少の違いはあると思うので参考までに)。手術について、どうしても気になることがあった。ネットでどれだけ調べてもよくわからなかったので、大谷ドクターに聞くことに。「手術の...傷跡ってどのくらいの大きさになるんですか?」「そうですねえ、側面に、Uの字ができるような感じだね。」もっと細かく知りたかった。傷口は目立つのか、下着で隠れるのか...。診察室を出、別の看護士に、何気ない感じで同じ質問をする。「傷口って、目立ちますか?下着で隠れますかね?」「うーん...。ボクサータイプのなら、ギリギリ隠れるかなあ。普通の形だとちょっと難しいかもしれない。」わたしのおなかには10年以上前に受けた別の手術の傷跡が今でもある。薄くなってはきたけど、わたしは自分の身体が傷だらけでみすぼらしくなっていくような気がして悲しかった。看護士のおなかは丸々とふくらんでいて、もうあと何ヶ月かで新しい生命が誕生することがわかった。彼女と自分の人生を思って、とてつもなく悔しくて、一人になったら涙がでた。彼女だって、わたしは知らないだけで、何か大変なことを抱えているのかもしれない。そう思う余裕なんてないくらい、わたしはわたしが可哀想で仕方なかった。

【限度額適用認定書の申請】

日本の健康保険では、この「限度額適用認定書」を申請することによって、1ヶ月どれだけ医療費がかかってもあなたの支払いは何万円ですよ〜、というシステムになっている。支払額は、健康保険を払っている人の収入によっていくつか区分に分かれる。入院、手術をする人は絶対に絶対に申請するべき。マストです。申請から認定書が届くまでの期間も考えると、早めにやっておくに越したことはない。ちなみに、最初に全額支払って後から還付される「高額療養費」という制度もあるので、万が一「えっ!!知らなかったよ!!」となってもなんとかなる。が、やはり事前に申請しておくのがベターでしょう。後から戻るとはいえ、何十万単位の出費ってきついもの。そして、限度額認定で適用される範囲は入院、手術などにかかる医療費は含まれるけど、差額ベッド代(大部屋イヤ!とか、大部屋希望してたけどいっぱいで入れなかった、とかの場合)、パジャマ代(病院によるかも。自分で用意してください、というところもある)、食事代は別なので、1ヶ月以上入院する場合のひと月の支払額は『限度額+自己支払い分』てことになる。わたしの場合、大部屋でパジャマは自分用意だったので限度額+1万円くらいだったかな。10万円もかかりません。

【入院準備】

約2ヶ月程度の入院、そして退院してからもほとんど動けないらしい、というネットの前情報から、家中をプチバリアフリー化。しばらくは室内も杖で移動なので、まずしゃがむということができなくなる。なので、食器棚の食器を使い勝手のよいレイアウトに変更したり、タンスの一番下はあまり着ない物に変えたり(退院したら季節が変わってるので衣替えもしておくとよい!)、足の悪い人の目線で見るとまったく違う部屋に見えてくるのが不思議だった。

【買っておくべきもの】

何はなくともマジックハンド。2ヶ月の入院でちょっとしたマジックハンド使いになれるくらいにはわたしの第三の手となってくれる。ほとんど寝たきりの1週間(地獄)において、ヤツがいなかったらすべてのものはベッドサイドに落ち、そして拾えず途方にくれていたことでしょう。ナースコールがんがん押せるほどの厚かましさはないので(隣の部屋のじいさんが「何かが落ちた気がする」と言ってナースコールしていた)、amazonあたりで購入をオススメします。レビュー読んで色々選べるし。値段は2千円しなかったかな、100円ショップでも売ってるみたいだけどすぐ壊れるらしい(amazonレビューによる)。病院の売店にも売っていた、けど驚愕するくらいめちゃくちゃな色だった。あれをベッドサイドに置くセンスは持ち合わせていない。あと、自宅風呂場用の椅子。背もたれがついてて足の高いやつ。それまでは100円ショップでも売ってるような、小さいのを使っていたけどしゃがむのがNGなのであれがないとしばらく立ちシャワー一択になります。無理。予想より、水場で裸は怖い。転んだら人生おしまいだぞ、という気持ちで入る風呂には椅子が必要。心の安定にも、身体の安定にも。もちろん購入はamazonで。「それを買った人はこれも買ってるよ」のところ、だいたい風呂場椅子とマジックハンドはセットになりがち。脈々と続く変形性股関節症の先輩が作ってくれた道にわたしも一歩足を踏み入れたのだった。

【買っておくべきもの・2】

手術後は、リハビリがはじまり、車いす→松葉杖2本→松葉杖1本→ロフストランドクラッチ、という必殺技みたいな名前の杖を使用できるレベルでようやく退院となる。ロフストランドクラッチ(以下、ロフストと呼ぶ)はその後の生活でもしばらく使うことになるのでできれば入院前に用意しておくといい。ロフストは病院から借りることもできるけど、医療用です!て感じでまったく格好よくないので、サイズ感だけ確かめたらあとはネットでオシャレなの選ぶのをオススメします。わたしのはドイツ製で、オールブラックにこだわった。とにかく格好いい。ロフストの特徴は、肘下の部分に荷重をかけられるようになっていて、松葉杖ほど助けてくれないけど、T字杖よりは荷重を逃せる。逃せる荷重は松葉杖1本が2分の1、ロフストが3分の1、T字が10分の1、だったかな。ロフストの時期がけっこう長いので、あのとき色々選んで、これなら!というものに出会えたのはよかったと思う。一つ言いたいのは、日本の杖メーカーもう少しなんとかなんないか、と。ドイツ見習ってほしい。杖持っただけでオシャレをあきらめなくちゃいけないなんて、そんなのおかしい。




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