2023/12 読書感想文「AIに、恋の仕方を聞いてみた」

今月から読書感想文をすることに決めました。まあ色々あるんですが、ちゃんとした文章を読みたいというのが一番の理由です。タイトルでわかる通り、できるだけ毎月やっていきたいなと思っています。

記念すべき第一弾は「AIに、恋の仕方を聞いてみた」。作者は「狼と香辛料」や「WORLD END ECONOMiCA」でお馴染みの支倉凍砂さんです。最近SNSで見かけてかなり面白そうだったので選びました。

本書はチューリングテストをクリアしたAIが普及した未来の高校生たちのさまざまな恋愛模様を描いたお話になっています。

AIの解像度がかなり高く、「AIに対してどのような姿勢で接するべきか」という問題に対して、全話を通してそれぞれメッセージを出しているのが良かったです。特に、三話の「AIはあくまで計算機なので、結局は使う人(つまり学習データ)によって良くも悪くも、強くも弱くもなるよね」という答えは「確かに」とハッとさせられました。

最終話である五話では、創作とAIの関係性についてひとつの未来を描いています(実際に読んで欲しいのであえて明言はしませんが)。とある登場人物の行動の真意を解きながらお話が展開されていくんですが、登場人物のエモさもあってウルッときてしまいました。

あと、実在の人間をモデルにしたAIや、AI(というかデジタル)の実存についても論じていたのも良かったです。本書は一般にイメージするSF作品よりはかなり軽めですが、SF作品としてちゃんと強度を持っています。

文章は会話文が中心で一文が短くなっていて、とてもテンポ良く読むことができました。やっぱり、面白い小説というのは面白い会話が多いんですよね。あと、支倉凍砂さんは割と小難しい文章を書くイメージがあったので、これは意外だなと思いました。

そして、なによりも本書の一番良かったところは、登場人物とその人間模様です。登場人物全員(特にヒロイン)がそれぞれ面倒くささを抱えています。その面倒くささ具合がなんというか、ティーンエイジャーっぽい甘酸っぱさを感じるんですよね。大人から見れば「そんな面倒くさいことしないでもいいのに」と思うような、回りくどい方法で意中の相手に好意を伝えようとしたり、自分の想いをハッキリさせようとしたりします。

特に、二話で自分と意中の相手のモデルのAIを作って、AI同士や自分とAI、相手とAIがいい感じになるか確認してから告白しようとするヒロインは、面倒くささの極みでした。そんな登場人物ばかりなので、終始ニヤニヤしながら読み進めていました。

狼と香辛料やWORLD END ECONOMiCAでも感じましたが、支倉凍砂さんはちょっと面倒くさいヒロインを描かせたら天下一ですね。絶妙なさじ加減で面倒くささと可愛さを両立させています。

まとめ

本書は高校生の甘酸っぱい恋愛を通して、AIとの関わり方についていくつものメッセージが込められている作品でした。特に、昨今話題に上がる生成AIについても書いています。何か創作をしている人にぜひ手にとって欲しい一冊です。興味が出たらいかがでしょうか。では、また。

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