いまはまだ会社という虎の威を借りている狐がわたしなのだ
「ローン審査、無事通りましたよ!」
不動産の担当者からのショートメッセージが携帯に届いて、ホッと胸をなでおろす。
今年の夏、マンションを購入すると決めて、不動産の人と色々やり取りをしていた。
マンションという、人生で一番高額な買い物をするにあたって心配だったのは当然お金のこと。
ローン審査の通過はその第一段階だったから、通過した時は「はー良かった」と思ったと同時に、ふと、
「でもこれって私が会社員だからだよなあ」
とも思った。
会社員だからこそ、会社という後ろ盾があったからこそ、ローン審査が通ったんだよなあ、と。
勤めているのは小さい規模の会社だけど、バックにある親会社が「あー、あそこね」と言われるような大企業。
とはいえ私自身はその大企業に勤めているわけではない。けれど、お金を貸す側からすると、充分すぎる安心材料なんだろうな、と。
そして手堅い業界で「なかなか傾きませんよね」「世の中に必要な分野ですよね」と言われるような分野の仕事。
それゆえ私という個人ではなく後ろ盾込みで信頼されてしまう。
だから今回みたいなことがあるといつも思ってしまう。
「虎の威を借る狐だよなあ」と。
わたしは狐なのに、虎の威を借りることで実力以上のものが手に入ってしまうことがある。
わたしは、それが、とてもこわい。
長年付き合いのある個人事業主の女性がいて、その人は「どれだけ売上あげててもフリーランスは不安定な職種って見られてローン審査が通りにくい」と言ってて。
でもその人は人望も信頼も厚くて、メディアにもしょっちゅう出ていて、わたしの何倍も稼いでて。わたしからすると「自力で稼ぐ力のある、信頼に値する人物」なんだけど。
実際のところは、彼女の旦那さんが手堅い業界に勤めているということでローン審査を通過することが多いらしい。「なんだかなあって思うわ」と彼女は笑っていたけど。
どれだけ世の中が変わっていっても、まだまだ
会社員=安心安全安定=信頼できる
という風潮は根強い。
わたしが言いたいのは「ローン審査とか通すのは会社員が有利だよ!」ということではない。
かといって「会社員やってたら自分の実力がわからなくなるからフリーランスになるべし!」と言いたいわけでもない。
わたし自身、会社は好きだし辞める気はない。
大事なのは、
《自分の実力を正しく把握する》
ということ。
世間的に「すごい人っぽく見える」ことと「その人自体がすごい」かは似ているようで全然違う。
そこを見誤って、会社という虎の皮をかぶってるだけのやつが「俺は虎だ!ガオー!」って言ったところで、実際ガオーとは言えないんだな。皮をはいだら、しょせん狐だから「コンコン」なのよ、鳴き声は。
よく父が趣味で行ってる囲碁クラブの仲間の話で「大企業とか銀行とかでお偉いさんやってた人が、囲碁クラブでも偉そぶってるけど、会社辞めたらそんなん関係ないっちゅうねん」って言ってたけど、同じ話だと思う。虎の威を借りてる時間が長いほど、自分が狐なことに気付かない。
だからわたしも会社を退職する頃にはほんとの虎になりたい。
目標は、
会社の年収と複業の年収が同額になること。
会社だけじゃない確固たる居場所を持っていること。
「個」として自分の足でしっかり立っていること。
複業で月10万もいってないやつが何言ってんだと言われそうだけど、定年まであと20年ぐらいあるから、いけそうな気もしている。
いまはコンコン鳴いてるけど、退職するころにはガオー!って威勢よく次の人生に飛び出してやっからな。
という決意を、今は狐のわたしが、ここに残しておくこととする。コンコン。
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