「空色に誘われて」

※素人の空想ストーリーです。


第一章「始まりの便り」


ある夏の暑い日、五人のもとに送り人の宛名も
名前もない手紙が届いた。空柄の封筒から
取り出した真っ白な用紙には深い青で


「貴方がこの世に生まれでた意味は

何だと思いますか?答えを書いて

虹の丘公園の小さなポストへ投函

してください。もし、正解なら、

貴方のほしいものを差し上げます」


と書かれていた。不思議な手紙が巻き起こす
ささやかな物語。


小野島 光花(おのしま みはな)

虹の丘中学2年生。特技は歌。母子家庭で
母は働き詰めほぼ無人家。1年の夏にクラスの
皆から無視されほとんど学校に行かなくなった。
悪い事をした訳ではない、ただ気に入らないからとそれだけの理由。でも、母に言えなくて学校に行って午前中は教室には行かず屋上と図書館で
時間を潰して家に帰った。先生は、手に負えないと諦めてほったらかし。母はお昼に出かけて夜
遅くにしか帰らないから、早く帰ろうとも
気付かれない。その日は、郵便物がポストから
溢れ出ていたので取り出した。広告やら請求書
やらくだらないチラシ。ため息を付きながら
見ていいてふと目が止まった。


光花「ん?…何これ」


空色の封筒に名前だけ記さている。裏返しても
宛名はかかれていない。なんのいたずらか?
と他の郵便物を台所のテーブルに置くと、部屋へ
入るとカバンをベッドへ放り出して中身を取り
出す。


光花「貴方がこの世に・・・意味?…はっ?
   気持ち悪っ!」


一旦は床に投げ捨てたが、少し見つめて拾い
上げた。


光花「私のほしいもの・・・」


手紙を感慨深げにみつめる。光花が、手紙を
見つめている頃、別の場所では・・・。


昇「うわっやっべ!」


警察「おい、こら!まて!」


毎日警察から逃げている少年。今日も全力疾走で
路地裏という道を抜けていく。

風上 昇(かざかみ のぼる)

空の上中学2年。特技は物造り。両親に見放されていると感じ夜遊びや万引を繰り返し、毎日警察に追われている始末。最近は家に居るのも嫌に
なり、街を放浪。寝床は決まって近場の、不管理な空き家だ。今日も最近見つけた鍵の壊れている空き家へ、警察をなんとかまいて逃げ込んだ。


昇「はぁ、はぁ、あ~やばかったぁ」


床に倒れ込んで、深呼吸をした。掃除のされて
ない、湿ったホコリ臭さが鼻をつく。日が落ちて空が暗くなってくる。


昇「はぁ〜家でてもう1ヶ月かぁ」


窓から雲ひとつない星空を見上げた。星の名前
すら分からない。でも、少し心が和らいだ。
元住居人が置いていったのであろう古い本を、
押入れから引っ張り出し、枕にして体を委ねた。どうせ親は捜索願いすら出してないだろうとなと
思った。追いかけてくる警察も親が探してるとか
言ってこないから、ただの歩道だと思った。
万引きや深夜徘徊で、たまたまみつかった警察
から逃げる毎日に、だんだんと疲れ果ててきて
いた。翌朝、太陽の眩しさに目を覚ますと、視線の先に昨日はなかったはずの空柄の、封筒が
おちていた。昇はゆっくりと起き上がり、よろけながら手紙を拾う。


昇「・・・え?俺あて?」


取り出した白い用紙をゆっくりと開いて目で
追っていく。


昇「なんだこれ?誰だ?いつ入った?
  なんで、俺なんだ?」


窓の外を覗くも誰もいない。ホコリまみれの床に足跡すらないのに、とうやって?いつ誰がなんの目的で、こんな手紙入れたのか。窓から投げ入れるにも、汚れた窓に自分以外の手あとはなさそうだ。


昇「ふざけんなよ!何のいたずらだよ!」


床に投げ捨てようとしたが、何故か気になって、ズボンのポッケにしまい込み、また街へ出た。
昇が街へ繰り出したその頃・・・。


とある陸橋の上にいた少女は、今にも命を断とうとしていた。気分転換に散歩してくると親に嘘をついて。

庭山 可憐(にわやま かれん)


土浦山中学3年。特技は暗記。


可憐「もう、無理。私には親の期待の高校に
   なんて入れなっ学校にっいけっのもっ
   やだっ」

 
涙で言葉が、かき消される。小さい頃から物覚えが早く、親に期待ばかりされ、テストの点数が
下がると、勉強の量が増え、学校よりも塾に
通わされた。友達と、遊びたいのに全部、その
ために失い、そのせいで友達が離れていった。
可憐の心はもう、限界だったのだ。手すりから
少しだけ身を乗り出そうとした時、


少女「ねぇ、おねぇちゃん」


視線をやると、ランドセルを背負ったおさげの
少女がたっていた。


少女「おねぇちゃん、これ・・・」


可憐「え?・・・なに?」


空柄の封筒を差し出してきた。


少女「あのね、さっきお願いされたのこの手紙を
   渡してきてって」


可憐「え?誰に?」


少女「キレイなおにいちゃん。はい、これ
   どうぞ」


可憐「ありが…とう」


可憐は手すりから手をはなして、手紙を受け
取った。少女は走り去る。その男性の姿を探す
ようにあちこち見てみるが、それらしき人は
いない。宛名のない封筒から、恐る恐る白い
用紙を出し、ゆっくり開いて、音読し始めた。


可憐「貴方がこの世に生まれでた・・・ほしい
   ものを・・・」


握りしめたまま地べたに崩れおちた。なぜこの
タイミングで、こんなものを渡してくるのかと、一瞬感情のままにやぶきそうになり、手を止めてゆっくり立ち上がると家に向かい歩き始めた。
可憐が思いとどまった頃…。


とある病院で診察を終え戻った少女は、母を
問い詰めていた。


水潮 雫(みずしお しずく)


川下中学3年生。特技、三味線。沖縄に親戚が
いて、毎年遊びに旅行へ行くのが楽しみだったが病気が悪化して体を動かすのも困難になった為、入院する事になり酷く落ち込んでいた。


雫「ねぇ、本当のこと言ってよ!もう、治らない
  んでしょ?」


母「そんなことないわ、きっと治るから、
  そんな悲しいこと言わないで」


雫「先生が言ってるの聞こえた。もうこれ以上は
  無理って」


母「それは、聞き間違いよ…」


雫「もう帰って、ひとりにして!」


雫は、布団に顔をうずめた。母は、カバンから
空色の封筒を出して


母「あなたに手紙がきてたわよ。ここに置いて
  いくね、また明日来るからね」


力ない言葉でそれだけ言って病室をあとにした。布団から顔を出し、目の前のテーブルに置かれた封筒をしばらく眺めてから手を伸ばす。少し、
軽いため息をついて中身をを出した。窓からの
太陽の光で少しだえ透けて青い文字が不思議と
輝いて見えた。


雫「貴方がこの世に・・・」


封筒を裏返しても宛名はない。しばらく見つめて眠気に襲われそのままベッドに力なく倒れると、目を閉じた。手からひらりと手紙が滑り落ちる。
いつも、診察の後はなかな眠れず気分が悪い
のに、その手紙を読んだ後は、何故か穏やかで
心地よかった。
雫が眠りについた頃・・・。


3日前に保護され、施設にやってきた少年がいた。推定年齢は10歳ほど。


中林 靑都(なかばやし あおと)

風福児童保護施設に保護されたて。記憶を失っている様で、身元を示すものは見つからず、駅の
ベンチでぐったりしてる所を保護された。誰かが
質問しても一切口を開かず、数人いる職員の中で唯一心を開いたのは、最近入社してきた若手の
新人、夢乃という名前の女性だった。


夢乃「靑都くん、焦らずにゆっくりなれてけば
   いいからね。話したい事あるなら、いつ
   でも聞くから」


靑都はゆっくりと頷いた。


配達員「すいませーん、郵便でーす」


夢乃「はーい、今行きまーす」


数枚の手紙を持って戻ってくると、配り始めた。生活が苦しくかったり、家庭の事情などで、預け られている供たちへの親や親戚からだった。
青都は、自分に来るはずないと無関心に一点を
みつめている。


夢乃「靑都くん、よかったねお手紙きてるよ」

もしかしたら、親?親戚?記憶がないから、誰
から来たかなんて察しもつかないし、来ることも
不思議でたまらなかった。ゆっくりと受け取り
空色の封筒をしばらく見つめて中身を取り
出した。漢字が読めずに夢乃に目で訴えて読んでもらうことにした。


夢乃「貴方がこの世に・・・意味・・・ほしい
   ものを…」


靑都は、夢乃の手元をみて宛名を探す素振りを
した。でも何処にも書かれていない。

夢乃「誰からか名前がないね」


小さく頷き、もう一度と催促し読んでもらって
いると、不思議と涙が流れてきた。特に感情が
そこにある訳ではなくその流れるものは謎だ。


夢乃「え?青都くん!?なんで泣いてるの?」


心配する夢乃に青都は、首を左右に振った。
訳が分からなずただ、胸がぎゅーっと熱くなる。


こうして5人それぞれに手紙が渡り、手紙を出しに
行くと言う選択肢を与えられた。宛名もない謎の手紙は、どこか不思議で時に気味が悪く、普通
なら捨ててしまいそうなものだが、手放せない。

5人はいったい何を書くのだろうか。
時は動き出した。






第二章「チャンス?」


光花の母は、学校に呼ばれていた。つい最近
新しく転任してきたやる気に満ちた真っ直ぐな
女性教員に。もちろん、理由は毎日の早退。


母「どういうことですか?」


先生「朝、登校してほとんど圖書館か保健室に
   いて授業も出ず、お昼になる前にはすぐ
   帰宅しているんです。体調が悪いのかと
   聞くと、そうではないと言うし、何か悩み  
   でもあるのかと聞くと教えてくれなくて、
   お母さんなら事情を知ってるかと、今回お
   呼びしました」
  

母「すみません、そんな事知りませんでした。
  生活のために1日ほぼ働き詰めで、帰る頃には
  光花は寝ているので、ろくに話も…」


先生「そうですか、では今ここで話をしたいな
   と私は思いますが、お時間はよろしい
   ですか?」

母「はい、大丈夫です。私も光花がなぜそんな
  事をしたのか知りたいので…」


先生「光花さん、学校を早退する理由を私に
   教えてくれないかな?悩みがあるなら
   一緒に解決していきたいな。光花さんの
   ペースでいいから話してくれない?」


見つめる母を一瞥し眉をさげた。


光花「話しても無駄だよ。担任の先生は、聞く
   だけで何もしてくれなかったし…」


母「光花ずっと我慢してたの?私にも話さず」


光花は、頷いて涙目で下を向いた。先生は、少し
身を乗り出し声をかける。


先生「光花さん、私は聞くだけにしない!絶対
   約束するから、私も全力で答え探す
   から、話してほしいな」


光花は分かったと言って、深呼吸をすると、
震える声で話し始めた。窓の外ががオレンジに
輝染まり始め夜を迎えようとするその頃…。


全力疾走で警察から逃げていたが、この日は、
体がだるくて足の重さもあり、すんなり警察に
つかまってしまった昇。


警察「たくっ、やっと捕まえたよ…おまえなぁ」

警察に腕を捕まれ、声をかけられた途端視界が
ぐにゃりとゆがむ。

警察「おい!大丈夫か!?」


昇は、人生が終わったと思った。悪い事ばっか
したからバチが当たったんだなと薄れゆく意識の中感じた。数時間後ゆっくり目を開けると、目前に見覚えのある天井が広がる。


昇「あれ?俺…ここは?」


右隣に誰かいるのが見え、すぐ両親と気づいた。
まさかの光景にこれは夢かと思う。


母「昇、大丈夫?すごい熱出して倒れたって、
  警察から連絡あって飛んできたのよ。ずっと
  家に帰って来ないから探してたのよ」

涙でぬれる母の目が昇るには不思議だった。


父「このばかたれが!家にも帰らんでどこ
  ほっつき歩いてたんだ?ずっと探して
  たんだぞ!あんまり母さんに心配させるな」


昇「さがしてた?俺を?」


これは、都合のいい夢だろうか?まだ頭がぼーっとしているため、目の前の真実を疑った。面倒な俺を親が探すはずがない。きっと本当に目が冷めれば・・・。


昇「これが夢なら、俺言いたい事ある」


母「えっ、何?」

滅多に話しかけてこなかった息子が必死に何かを
伝えようとしてる事が嬉しいのか、母親の目が
見開いて、昇の顔を覗き込んだ。

昇はふわふわした感覚の中、夢ならば言える
だろうと、ゆっくり話し始めた。


昇「あのさぁ、俺ずっと・・・」


昇が本心を語ろうしているその頃。可憐は、部屋の鍵を締めて全ての物を拒否し始めた。両親が
驚きドアを叩き叫ぶ。



母「可憐!どうしてこんな事するの?塾の先生が
  嫌いなの?それなら塾変えるから!ねぇ、
  お願い出て来てちょうだい!」


可憐「ちがう!そんなんじゃない!」


父「テストの点数が上がらなくて、落ち込んで
るんだろ?でもな、お前なら大丈夫!もっと勉強すれば」

可憐はなんで勝手に決め付けるんの!?といら
だち、ドアに向かって枕を投げつけた。


可憐「ちがう!そーじゃない!」


こんな言い合いが、かれこれ30分ほど続いて
おり、何を言ってもきっと勉強、勉強って言ってくるんだと、可憐は両耳を塞ぎ涙を流した。
開けていた窓から、風が吹き込んで。手紙が足元におちた。可憐はそれを握りしめ、深呼吸する。


可憐「お母さんも!お父さんも!もうやめてよ!
   勉強!勉強!うるさい!私の気持ち少し
   くらい考えてよ!!!」

可憐が珍しく大声を出した頃…

雫はその日、珍しく体調が良かった。でも、毎日不安は消えなくて、いつ自分がこの世を去るのか本当はすごく怖かった。先生が言っていたあの
言葉が脳裏にこだましている。


母「雫、気分はどう?」


病室の扉を開けて母が入ってくる。


雫「おかぁさん…今日はいいよ。なんか落ち
  着いてる。心地がいい」


母は、娘の笑う顔を見てほっとした表情を
みせた。あれから数日はベットにもぐりこみ
話をすることもなかったからだ。


母「ね、雫が好きなプリン。先生に聞いたら、
  食べてもいいって、おやつにしない?」


袋から小さなプリンを2つ取り出した。


雫「えっ?お母さんもたべるの?」


母「そりゃあ、美味しいものは一緒に楽しみたいじゃない?フフフ」


女子高生の会話か!と雫は突っ込みを入れて
笑う。久々の甘味が、体に染み渡っていく。
久しぶりに穏やかな時間が流れた。


母「あのね、この間雫が言ってた話なんだけど
  あれは雫の勘違いなのよ」


雫「え?何のこと?」


母「もう限界っていう話し」


雫「あぁ…。お母さん、いいよそんな誤魔化す
  とかしないで。無理なんでしょ?」


母「違うの、いいから聞いて。この病院の機械が
  古くて雫の治療をするには限界があるって事
  なの。だからね、もう少し性能の良いものが
  ある所に移さないとって話だったのよ」


雫「えっ?ほんとに?」 


母「うん、先生変わるから、少し寂しくなる
  かな?って言ってたよ」

雫の目から大粒の涙がこぼれてきた。


雫「うぅ〜。怖かったよ〜。私ねもう、沖縄に
  行けなくなるってっおもっ、てっ、お母さん
  と一緒にまたいきたっ・・・」


雫が不安を語り、母の胸の中で泣いていたろ…


星空がきれいで、青都は窓から暫く眺めていた。


夢乃「青都くん、ご飯の時間だよ」 


呼ばれて数名の子供とテーブルを囲む。皆は
各々に話をしだした。青都は一言もまだ言葉を
発していない。夢乃は、青都が話せないのでは
ないかと、身体を心配していた。そんな時、一時預かりの8歳ほどの気の強そうな少年が口を
開く。


少年A「青都、お前も話したい事何かないのか?
    全然話してくれないじゃんか」


この施設2度めの利用になる少女が突っ込む。


少女B「A、少しは気を使ってあげなよ。来た
    ばかりだから緊張してんの!」


親に捨てられこの施設で暮らし始めて1年になる
5歳ほどの少年はゆったりと青都に話しかける。


少年C「僕も、最初はね、怖くてなかなか話せ
    なかったよ。青都兄ちゃんも、ゆっくり
    でいいよ。ここ怖くないよ」


青都「あ、ありがとう。」

青都は少し震える小さな声をもらした。他の
テーブルで話してた子たちも、会話が止まり、
驚いてた視線が集まる。


青都「あのね、ぼ、僕なにも覚えてないんだ。
   だから、何を話したらいいか、分から
   なくて、でも皆の話す、すごく楽しいよ」


夢乃は、嬉しくて泣いてしまった。


少年A「あー、夢乃先生泣いてるー!夢乃先生
    どっか痛いの〜?チューして直して
    あげるー!」


少女B「もーAってば、デリカシーなさすぎ!
   何でもチューで治るわけじゃないんだ
   よ!スケベー!」


少年C「デリカシってなんのお菓子?スケベー
    って妖怪?」


青都は、二人の会話にふっと吹き出して笑った。夢乃もつられて涙をふきながら笑った。


青都「それ、お菓子じゃないと思うよ。でも
   ぼくも、よく分からないや」


少年A「なぁ、ほんとに何も覚えてないのか?」


青都「うん、でも少しだけ覚えてる事あるよ」

夢乃「青都くん、それ本当?」


青都「うん、でもね人の顔だから先生にどう
   やってお話したらいいか分からなくて…」


手紙が来てから、5人に不思議な変化「話す」と
いうチャンスがきた。伝えた先にまっている
ものとは…。

  


第三章「筆に込める思い」


光花は、先生に全てを話した後、クラスへ行き、先生に側に居てもらい皆に思いを伝えることに
なった。怖さで足が震えて、言葉もうまくは
出なかった。教壇の前に立って詰まりそうな息を
ゆっくり吐いた。先生のきいて!の声に、教室の
注目が集まる。


光花「私は、人付き合いが苦手です皆に嫌な思い
   させる事もあります、分からないから、
   教えてほしい…です。仲良くなれなくても
   せめて、普通の生徒として、クラス居さ
   せてください。お願いします」


数分、教室が静まり返って生徒の一人が、なんだ
そんな事か、それなら最初から話してくれれば
良かったのにと声を上げたと同時に、数名の女子
が、私にも色々聞いてねと、手を引っ張って和の中に入れてくれた。最初に無視を始めた女子は、一切目を合わせず、その後も無視を続けていた。光花は、放課後屋上に先生を呼び出す。沈んで
いく夕日をフェンス越しに見つめた。ドアが、
開く音がする。


先生「光花さん、話ってなに?」


光花「先生にお礼が言いたくて。私、担任の先生
   にも図書館や保健室の先生にも話した
   のに、聞くだけで何もしてくれなくて、
   もう逃げればいいやって思ってた。でも
   先生が転任してきて考えて動いてくれて
   …ほんとにありがとうございます」


先生「そう、だったの。長いことつらかったね。
   少しでも力になれたなら良かった。」


光花「でも、この時期に転任ってめずらしい
   ですね。先生はなんでこの学校に転任
   してきたんですか?」


先生「前の学校でね、研修として入った頃、
   対応を誤って、一人の命を絶たせて
   しまったの。そのせいで、変な噂が
   広まっちゃって学校クビになったの。
   あちこち回ったけど、噂のせいでね受け
   入れてくれる所なくて、色々話を聞いた
   この学校の校長が、受け入れてくれたの
   頑張ってみなさいって」


光花「そうだったんだ。辛い話なのに、話して
   くれてありがとう。私、怖かったけど、
   話してみてよかったよ。先生がいるなら、
   これからも学校頑張れる気がする」



光花が、学校へ通う決意をした頃…。


昇は、久々に母親の手料理をたべていた。食べてるうちに涙が止まらなくなる。ろくに口もきかず
勝手に見放されたと思いこんでいただけに、
暖かな食事が体に染み渡ってきた。


母「少しは落ち着いて食べなさい。喉につまらす
  わよ。食べ物は逃げないんだから」


昇「んぐっ!げほっげほっ!」


母「だから言ったのに〜、もぉ」


目の前に出された水を飲み干して、奥のソファーに座る父を一瞥した。ガミガミと長時間言われ、ビンタの1つでも飛んでくるかと思ったのに、この
静かで平和なワンシーンが不思議でたまらない。


昇「母さん、父さん・・・俺、今まで酷いこと
  したのに、なんでせめないの?なんで家に
  入れてくれたの?」


母「そりゃ怒りたかったわよ、でも昇が戻って
  きたって思ったときには怒りより、ホッと
  したの。すごく嬉しかったのよ」


母は今にも泣きそうだった。父は照れくさそうに


父「お前が寝てるときに散々怒鳴ってやった、
  それで十分だ。二度とこんな心配を
  かけるな、お前が無事に戻ってきた。
  それがなによりだからな」


新聞を読んだまま背を向けている父の肩が
かすかに揺れてるのが分かった。


昇「うん、ごめん。本当に悪かった…俺ずっとさ
  見放されてたと思ってたから、そんな心配
  してるとか思わなかったんだ…」


見放されていたと思っていたから、罪悪感が
ふつふつとこみ上げてきて、それと同時に感謝が溢れ出てきた。


昇「本当にごめん、ありがとう」


父「で、お前、学校はどうするんだ?」


昇「もう・・・通うのは無理だ・・・やめて
働きたい。父さんと母さんに、迷惑かけてきた
ぶん、返したい。それじゃ駄目かな?」


父「・・・そうか、だが中学も出ず仕事を探す
  のは難しいぞ、覚悟はできるか?バカに
  される事もあるんだ、それでも歯を食いし
  ばってやらなきゃいけんぞ」


昇「自信はないけど、俺頑張りたい」


昇は、決意を固め、その父は息子の手助けをすることを決めたその頃…。


あの日、部屋に閉じこもり怒鳴って思いの丈を
ぶつけた可憐。両親は、今までの事が娘を苦しめていた事にショックを受け、話し合っていた。
食事は取るものの、部屋からはほとんどてることはない。


母「可憐・・・ねぇ、可憐」


ドア越しに疲れた母の声が届く。


可憐「・・・なに?」


母「下に来て、話さない?」


可憐「言いたい事は、全部伝えたからもう、
   何も話すことないよ」


母「今度は、私達の話を聞いてくれないから?」


可憐「聞きたくない、どうせまた勉強の大切
   とか必要性とか並べて、私を思い通りに
   させようと思ってるんでしょ」


母「そんな事言わないから、1度でいいかは話を
  聞いてくれない?…おねがい可憐」

可憐は渋々分かったと言い、期待など持たずに
母とともにリビングへ向かった。両親と対峙する
形でソファに腰を下ろした。


父「可憐・・・すまなかったな」


可憐「へっ?」

予想に反して誤ってきた父に可憐は驚いた。


母「私達、期待ばかりして可憐に無理させてた
  のね。知らなくてきつい思いさせて、
  ごめんね」

可憐「…私、ほんとは学校に行きたかったの。
   部活やってみたかったし、放課後くらい
   友達作って、色んな話しながら一緒に
   帰ったり、休みの日は遊びに行きた
   かった」

両親は黙って、うんうんと頷きながら聞く。

可憐「でもね、お母さんとお父さんのこと好き
   だから、ずっと言えなかった…そんな事
   言ったら裏切るみたいで、いえなっ」

涙で言葉が詰まった。


父「ずっと学校行きたいの我慢させてすまな
  かった。寂しい思いさせてすまなかった」


母「可憐、塾はもう行かなくていいよ」


可憐「えっ?本当に、いいの?」


父「あぁ、いいよ。また可憐が必要になったとき
  は、私達にいいなさい」


可憐「お父さん、お母さんありがと私、勉強も
   ちゃんと頑張るよ。私、学校に行く準備
   してくる!」


可憐が明日から普通に学校へ通うことになり
楽しみにしている頃…。



他の病院へ移ることになった雫。慣れ親しんだ
先生たちと分かれるのは寂しいけど、治ると信じて、別れを告げた。車に乗り込みながら


雫「お母さん、今度はどんな先生にあえる
  かな?」


母「面白い人だったらいいね」


雫「うん」


1時間ほどで到着し、数人の先生が入り口で出迎えてくれた。病室は若いこともあり、小さいながらも個室を用意してくれた。病室に、入ってきた
先生は、ショートカットの黒髪にタレ目の女性で
話し方もゆったりとした面持ちだ。
 
先生「雫ちゃんこんにちわ」


雫「こ、こんにちわ」


緊張気味に返事をした。以前にも、穏やかな
割に、嫌がらせをしてきた先生がいて変えて
もらった経験があるから不安だった。


先生「今日から雫ちゃんの担当になりました、
   はたおと言います。よろしくね」


雫「よ、よろしくお願いします」


緊張で声が出なかった。そんなとき、はた
ちゃーんと数人の子どもたちが入ってきて、先生を取り囲んだ。


子供たち「はたちゃん、一緒にまた、あれやろ
     ー!やろー!」


先生「いや、参ったわぁ、もぉーせめて、先生
   ってよんでくれないかしらぁ」


雫は、子供たちにもまれ、困り果てながらも、
仲良さげにする様子を見て、少しだけ笑った。


先生「皆、ここはおねーちゃんのお部屋だから、
   あっちでやろーねー」

子どもたちは、雫に後で遊びに来ていい?と
何度も聞いてきたので、いいよと返事した。

先生「雫さん、賑やかでしょう。また後で診察 
   に来ますので休んでてね」

雫「はい、ありがとうございます」


子どもたちに引っ張られながら、先生は病室を
出ていった。母は微笑んで言う。


母「あらあら、先生大変そうだね。でも、良さ
  そうな先生で私安心したわ」


雫「うん、私も少しだけホッとした」


新たな病院で雫の入院生活が始まる頃…。


風福自動保護施設に、1本の電話が鳴り響いた。


夢乃「はい、風福児童保護施設の夢乃です」


警察「鈴練警察署のものなんですが掲載された
   青都くんの写真をみた方から連絡があり
   まして、もしかすると自分たちの子供かも
   しれないと言ってるのですが、会いに行き   
   たいと言っています。どうさますか?」


夢乃「ほ、本当ですか!?あ、でも私の一存では
   決められないので上の者に報告してから、
   また連絡してもいいですか?」


警察「はい、よろしくお願いします」


夢乃は、電話を切ると嬉しくて施設長のもとへ
足早に向かった。


コンコン


施設長「はい」


夢乃「夢乃です、報告したいことがあるのです
   が、入ってもいいでしょうか?」


施設長「はい、どうぞ」


夢乃「失礼します」


施設長は、ふかふかのソファーに腰掛けて机に
向かい書類に筆を走らせていたが、手を止めた。


施設長「なんでしょうか?」


夢乃「お忙しい所先申し訳ありません。先日、
   届け出を出した青都くんなのですが、先程
   警察から連絡があり、息子かもしれない
   と言うかたから、会いたいと申し出が
   あったそうです」


施設長「そうですか、その方たちの情報は何か
    聞きましたか?」


夢乃「あ、いえ、すみません。施設長に確認
   してから、また折り返し連絡するとだけ
   伝えてしまいました。」


施設長「なら、明日伺う旨を連絡し、明日鈴練 
    警察署へ行き情報を聞いて、出来れば
    その方々にも来てもらって、二人の
    写真を撮ってきてもらえる?あの子に
    見せてみて反応を見ましょう」


夢乃「はい、分かりました」


施設長「情報を確認して、おかしな点がなけ
    れば、青都くんに会ってみたいか確認
    をしてから、彼に会う意思があるならば
    予定を立てましょうか」


夢乃「はい、ありがとうございます」


連絡を取り合い、翌日夢乃は早速警察署へ向
かった。事前に警察に連絡を取ってもらっていた
両親と思われる2人も来てくれていた。挨拶をする


夢乃「こんにちわ、はじめまして。風福児童
   保護施設の夢乃と申します。今日は
   来てくださりありがとうございます」


女性「こんにちわ、中林と申します。写真を見た
   ときは、ほんとに驚きました。急に姿を
   消してしまって、捜索願も出したんです
   けど、見つからなくて…ここ最近は眠れず
   二人して疲れ果てていました。そんな時
   警察の掲示板をみて嬉しくてすぐ、電話を
   したんです」


夢乃は、色々話をきき青都くんに見せるため2人の写真を撮らせてもらった。

夢乃「あの、実は青都くん記憶をほとんど無くし
   ているんです」

それを聞いた2人はうろたえた。いなくなって
その後何があって記憶が消えたか分からないのと、今後会えたときにどうやって打ち解けて
行こうかという戸惑いなのだろうと思う。

夢乃「でも、お二人の顔は覚えているかもしれま
   せんよ。これだけは覚えているんだと以前
   教えてくれたんです。教えてくれた顔は
   お2人と似てるきがします。まずは、
   お会いしてみませんか?」

2人が、はいと返事をしたのを聞いて、夢乃は
施設長への確認と青都くんへの意思確認を終え
たらまた連絡すると伝えて、警察署を後にした。

翌日、室長に話したあと夢乃は青都の元へ
向かった。その日は星空がきれいで、2階の小さなコテージで、青都は最初来たときと同じように
眺めている。


夢乃「青都くん」


青都「ん?なに?」


夢乃「あのね、話があるんだけど、今聞いて
   もらってもいいかな?」


夢乃「うん、いいよ。なんの話?」


夢乃は側にきて、目線を合わせると深呼吸して
ゆっくり言った。


夢乃「あのね、実は青都くんの両親を探す
   ために警察に届け出を出してたの。
   そしたら、昨日連絡があってね、昨日、
   会ってきたの。これ見て」

夢乃は昨日撮らせてもらった写真を青都くんへ
みせた。差し出された携帯をのぞき見て動きが
止まる。

じーっと眺めて・・・


青都「あ!この人達ね前に先生にした人だよ。
   僕、最近ね少しずつ記憶がポツポツ
   浮かんで消えたりする事があるんだけど、
   この人たち、沢山出てくるときあるよ」


夢乃「そうなんだ。それすごい事だよ。この2人が
   青都くんに会ってみたいって言ってるん
   だけど、どうかな?会ってみたい?」


青都「・・・うん、僕も会ってみたい」


夢乃は、力の抜けるようなため息をついた。


夢乃「はぁ〜よかったぁ〜。じゃ連絡してくる
   から、お日にち決まったら、教えるね」

青都「うん、僕なんか楽しみだよ。先生、
   ありがとう」

夢乃ははずんだ足取りで電話をしに向かった。
青都は、両親かもしれない人とあうことになり
もしかしたら、記憶も戻るかも知れない、もし
戻らなくてもきっとまた築き上げていけるよねと夢乃は耳元でなるコールを聞いて相手が出るのをまっていた。

手紙がきてからまるで、魔法がかかったかの
ような展開が起こっている。それぞれ、5人に
気持ちの余裕が出てきた頃、あの送られてきた
手紙をそれぞれ取り出して見ていた。


光花「これ、書こうかな」

と休み時間の図書館で見つめる。


昇「これ、返事してみっかなぁ?」

退学届を出し家に帰ってきてからのベッドの上で見つめる。


可憐「そういえば、この手紙のことすっかり
   忘れてたなぁ」

放課後、帰り支度をする教室でふと出てきた手紙を見つめる。


雫「お母さん、そういえばあの手紙
  どうしたっけ?」


母「あぁ、それならそこの机の中よ」


雫「返事書こうかなぁって思って」


母に、取ってもらった手紙を、窓からの太陽に
照らして見つめた。


青都「ねぇ先生、僕ねお母さんとお父さんかも
   しれない人にあってお話終わったら、あの
   手紙に返事を出しに行きたいんだ」


夢乃「あの手紙?」


青都「うん、最初に来た空柄の」


夢乃「あぁ〜あの手紙。ね、中身なんて書いて
   あったの?」


青都「秘密〜!笑」


夢乃「えー、ケチ〜笑」


両親かもしれない人たちに会いに行く車の中で、手紙を見つめた。それぞれが、封筒から用紙を
出すと。書かれいた文字が消えていて、下の
隅っこに投函予定日付と、直接その場所へポストヘ入れに来るよう記されていた。

彼らが書く答えとはどんなものだろうか…。





最終章「記す答え」


「貴方がこの世に生まれでた意味は

 何だと思いますか?」


5人はそれぞれの場所で、その用紙をみつめ、ペン
を持ち、空白にしっかりと記そうとしていた。
5人が迷わずに書いた文字は・・・。


「わからない」


その答えの続きに、気持ちを少し書き込み、最後にありがとうございましたとお礼を文字にした。


指定されたのは日曜日の午後3時。


光花「お母さん、ちょっと今から虹の丘公園に
   行ってくるね」


母「公園?何しに?」


光花「手紙出しにいくの」


母「手紙なら、すぐそこのポストがあるじゃ
  ない、バスに乗ってまでって。そこじゃ
  なきゃだめなの?」


光花「うん、そこのポストじゃなきゃだめなの。
   いってくるね」


母「はーい、気をつけて行ってらっしゃい。
  夕飯までには帰ってきてね」

光花「はーい!」


光花は、玄関から足早にバス停へ向かった。少し遅れて来たバスへ乗り込み、そっと背もたれに
身をまかせ、窓からの景色に目をやる。


その頃、昇は出かけようと玄関へ。


母「昇、どこにいくの?」


昇は背中を向けたまま靴紐を結ぶ。


昇「だちのところ」


母「何時にかえってくる?」


昇「多分夕方くらいかな」


母「友達ってどんな子?」


昇「あーもー、別にいいだろ?もう居なく
  なったりしないから、ちゃんと帰ってくる
  から、心配しなくて大丈夫だよ」


母「うん、わかった。気をつけてね」


昇「おう、いってきます」


母に、見送られて家を出ると、使い古しの整備
し直した自転車またがり、走り出した。背中で揺れるリュックにはもちろん、あの封筒がしっかり入っていた。


その頃、可憐も出かける準備。


母「今日は、どこへ行くの?」


カバンに、飲み物やら必要品を入れながら質問にこたえる。


可憐「虹の丘公園にだよ」


母「あら、懐かしいわぁ〜。昔、家族でよく
  行ったのよ」


カバンのシャックを締めながら


可憐「え?行った?家族で?覚えてないな」


母は、立ち上がり近くの棚からアルバムを出て、
1枚の写真を取り出すと、可憐に渡した。


母「まだ、よちよちの時だから覚えてないのは
  仕方ないわ〜。色んなものに興味津々でね
  前見ないで何度も転んで泣いてたわよ」


可憐「お母さん、この写真もらっていい?」


母「いいけど、何するの?」


可憐「お守りにするの」


母に、いってきますと言って、玄関を出ると、
肩掛けのカバンを揺らしながら、ゆっくりと歩き
出した。


その頃雫は、外出許可書をとりに行った母を病室で待っていた。早くしないと、3時に間に合わ
ない。ガラガラとドアの開く音がして、不安そうに母を見つめる。母は、にっこり笑って両手で
おっきなまるをつくった。


雫「やった!信じて着替えもしてたんだよ!
おかぁさん、ありがと!」


小さくガッツポーズをした雫。


母「ただし、何かあったときの為に近場には私が   
  待機していてって」


雫「わかった。お母さんほんっとにありがとう。
  久々にお出かけだから、楽しみぃ〜」


雫は、母に付き添われ、公園へ向かうため車に
乗り込んだ。いつも聞いていたお気に入りの
曲をかけて、走る。


母「ね、帰りにご飯食べに行く?」


雫「え?いいの?」


母「先生からオッケーとっといたの」


雫「お母さんやるぅー、お父さんは来る?」


母「仕事終わったら向かうって」


雫「うれしぃー!皆でご飯〜ご飯」


その頃、青都は両親らしき二人の家で暮らし始めることになっていた。DNA鑑定をした結果、99%一致し息子である可能性が高いため、記憶が戻る可能性を信じて、一緒に住む事になったのだ。


母「青都、今日はとこに行くの?夢乃さんと
  一緒?」


青都「虹がつく公園に夢乃さんといく」

母「そう、夕飯に青都の好きなハヤシライス
  作って待ってるね」

青都「うん、ありがとう。僕ってハヤシライス
   好きなんだね。覚えてないけど、すこく
   楽しみ!」


記憶は、ほんの少しずつ戻ったりまた消えたりと、その繰り返しではっきりとしないまま
だった。


母「いいのよ、思い出すのはゆっくりで。気を
  つけてね、道が分からなくなったら連絡
  して、迎えに行くからね」


青都「うん、あの、えっと、ありがとうござい
   ます。いって…きます」


母「行ってらっしゃい」


青都は、記憶が戻らずとも母の1言にどこか、安心感を感じている。玄関を出て、小さな手提げを
揺らながら、迎えに来た夢乃とゆったりとした
足取りで向かった。


虹の丘公園は、半分が遊具などがあり、子ども
たちが、数人遊んでいた。残り半分は、木漏れ日の輝く散歩道のようなコースになっていて、その一番奥に休憩所と小さなほこら、そして、今は使われてないポストが大木の下に設置されていた。


一人、また一人と手紙を持って5人が集まって
くる。1人増えるたびに、驚きがおきる。5人
全て集まっても、まだ来るんじゃないかと、
あたりをキョロキョロ。


光花「はじめまして、クラスの皆から無視されて
  て学校やめようかなって思ってたときに手紙
  が届いた光花と言います」


昇「はじめまして、両親には見放されたと
  思って、家出して町中を放浪して警察から
  毎日逃げる日々を送ってるときに手紙が
  届いた昇と言います」


可憐「はじめまして、親に期待されて、学校より
   塾に通わされて友達もなくして、向上心も
   なくして精神的にまいって、自殺しようと 
   しているときに、手紙が届いた可憐とい
   ます」


雫「はじめまして、小学1年から病気にって、
  だんだん悪くなって、検査をするたびに、
  本当はもう、なおらないんじゃないかって、  
  生きることを諦めそうなときに、手紙が
  届いた雫と言います。」


青都「はじめまして。駅のベンチでぐったりして
   る所を保護されて、記憶がなくて、親の
   ことも何も覚えてなくて、星を見れば記憶
   が戻るんじゃないかって、親にも会えるん
   じゃないかって、毎日星を眺めて過ごして
   るときに手紙が、届いた青都といいます」


自己紹介をひととおり終えると、大木の下にある木造のツタが絡み少し四角が変形した、ポストへ1人ずつ、お礼を言って入れていった。


昇「なぁ、思ったんだけどさ、当たってるか
  なんて、誰が教えてくれるんだ?」


可憐「確かに、このポストってもう使われてない
   って聞いたし、返事届くかわからないね」


光花「確かに・・・宛名も名前も分からない
   のに、届くのかな?」


男「大丈夫、ちゃんと届きましたよ」


5人はどこから声がするのか、辺りを探した。男は木の上からすっと、降りてきた。少し青の入った銀髪に透き通るような白肌、少し大きめの青い
目は5人をまっすぐ見ていた。


昇「あんた誰だよ!」


男「君たち5人に手紙届けた者です。手紙確かに
  受け取りましたよ」


光花「なぜ、私達5人だったんですか?他にも沢山
   人間はいるのに」


風に白髪が揺れる。太陽の光でキラキラ輝いた。


男「僕にもわからない。僕は上の人に使わされて
  やったから、理由は知らされてない」


青都「うけとったって、お兄さんが手紙を受け
   取ったってこと?なら答え当たってるから  
   わかるんですか?」


男はゆっくり、横に首をふった。


雫「でも、ちゃんと届いたって」


男「僕じゃなくて、上の人だよ。その人からの
  伝言は手紙で届けるから、読んでください
  って言ってました」


昇「じゃあ、あんたは誰なんだよ」


男「・・・さぁ、誰なんでしょうか。3日後に
  届くそうなので、それぞれの場所で待って 
  てくださいとの事です。では僕はこれで」


強い風が吹き抜けて、5人は目を閉じ顔を
そむける。目を開けたときには男の姿は
どこにもなく、木漏れ日が風に揺れるだけ
だった。


光花「答え、すぐに教えてはくれないん
   だね・・・」


5人は少しため息をついた。その日は、お互いに連絡先を交換し手紙が、届いたらまた、集まろうと約束をして別れたその3日後、5人は、あの
ポストの前に集まり手元には、あの空柄の封筒。


昇「じゃ、皆いっせいに開けようぜ」


5人「せーの!」


5人が同時に封筒から用紙を取り出し開いた。
深い青色で皆同じ内容だ。


「正解です。答えは人生を最後まで生きとし
 生ける者が最後に見出すものです。そして、
 君たちの一番ほしいものは、目の前にある
 はずですよ。よく目の前をみて考えてみて
 ください」


5人は、暫くそれぞれ目を合わした。


可憐「あのさ、会うのも2回目でお互いをよく
   知らないけど、もし皆がいいなら、
   私達・・・」


青都「友達になりたい」


光花「うん、なろう。私も友達になりたい。
   せっかく出会ったんだし」


昇「だな、俺も皆と友達になりてぇ」


雫「私も友達ほしい!なりたい」



そう、5人が1番欲しかったものは、お金とか地位
とかじゃなくて、希望とか、愛とか目に見えない
幸せ。辛さで忘れかけていた、大切にしたい
繋がり。5人は、それから時々あつまり、いろんな
ところへ行って、互いの家に遊びに行き、不思議なほ気が合う大切な仲間になっていった。


それぞれの人生は始まったばかり。今日もまた、何処かで、誰かに空柄の封筒が届いている。
その時貴方ならどんな答えを書きますか?


貴方がこの世に生まれ出た意味は

なんですか?・・・。


ー・・・完・・・ー



最後まで読んでいただき、ありがとうござい
ました。つたない文章お許しください。

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