お見合いパーティ参戦前夜

「あの、再々婚以上って、どういうことですか?」

と、40そこそこの男性にまじまじと聞かれてから、何となくお見合いパーティからは離れていた。
このパーティ業者のプロフィールは、ごていねいに未婚、再婚、再々婚以上と選択するのが必須だ。
ああ、私は二度も離婚したんだな、と思う瞬間である。
たぶん世の中の多くの人が一度も経験しないことを、二度までもしちゃったんだな、と思う。
ふたりの男性に、バツをつけたということだ。
申し訳ない。私などのために、心底申し訳ない。
二度とも私から言い出した離婚、言い訳はたくさんできるけれども、私がより多く傷つけたことは間違いない。

それでも私は、日々、寸暇を惜しんでマッチングアプリにのめり込み、お見合いパーティを物色する。
そう、まりかは恋人がほしい。
女として隣を歩み、小さな幸せを一緒に重ねてゆける人がほしいのだ。

そんなわけで、明日のパーティに向けて、絶賛準備中だ。
つくり込んだ写真と、練り込んだプロフィール文で如何ともできるマッチングアプリと違って、お見合いパーティは一発勝負。
しかも、10人もの男性と順繰りにお話をするのだから、ひとりと話ができるのは、ほんの数分。
着るもの、お化粧、プロフィール文と、綿密な作戦が必要だ。

これまでのパーティは、3回参加して、マッチングは一度だけ。
しかも、そのあと一度、食事に行ったけれども、何せ会話が弾まない。
先方からはまた会おうと言われたけれども、色よい返事をすることができず、結局、お正月のあけおめLINEでそれきりにしてしまった。
敗因は、趣味や知的好奇心を満たす人を選ばなかったことだ。
私自身が落ち込むだけでなく、先方もがっかりさせることになる。
今度こそ戦略的にゆこう。

前回までは、電車で20分の県庁所在地で参加したけれども、今回は満を持して銀座に参戦だ。
まりか、マッチングアプリがまあまあうまくいっているから、いい気になっているぞ。

また、今回の参加条件が非常によろしい。

『食べることに幸せを感じる、ぽっちゃりした女性』

何とまあ、まりかのためにしつらえられたようではないか。
しかも、男性は身長170cm以上、収入1000万円以上が条件という。
少なくとも、165cmの身長を気にする必要はないし、大卒を引け目に感じる可能性も低いだろう。

件のギターさんは、収入こそ1000万円超えのようだが、身長は163cmで食も細かった。
私が居酒屋さんでメニューを追加するたび、ビールをおかわりするたび、「まりかさん、よく食べる方ですか?」と、たずねた。
いま振り返れば、怪訝な表情をしていた。
そのあたりも、彼としてはトキメキを感じなかったんだろうな。

でも、世の中にはきっと、ぽっちゃりふわふわ、にこにこよく食べる女性がいい、という男性もいるはずだ。
私はよく食べ、よく飲み、よくしゃべる。
控えめとはほど遠い女だ。
ただいま70kgオーバー、少しやせたいなとは思っている。
でも、だれに遠慮することなく、あーあやっちゃったと思いながら、食べたいものをたべ、飲みたいお酒を飲みたい。
それがいい、という殿方とめぐり逢いたいものだ。


お見合いパーティは、一瞬が勝負だ。
スマホのアプリに表示されるお相手のプロフィールにさっと目を通しながら、小さな壁に囲まれたスペースで5分ほどお顔を合わせただけで、マッチング希望を出さなくてはならない。

さあ、まりかよ、きみはいかに自分を売り込むのか。

お風呂で考え抜いた末、ふたつの作戦を思いついた。

その1:プロフィール文をうんと短くする。
限られた時間で読んでもらえるよう、スクロールが必要ない長さに直した。
要素は、
・子育てがひと段落ついたこと
・二度離婚していて、「つれあい」ということばにあこがれていること
・ネコと旅が好きなこと
の3点に絞った。

その2:ローズピンクのリネンのワンピースを着てゆく。
本当は買ったばかりのカーキのワンピースにしようと思っていたのだけど、パーティは第一印象勝負。
今回は目立つ色を試してみよう。


さあ、この作戦が吉と出るか、凶と出るか。
今夜はワンピースと同じローズに、ネイルを染めたらとっとと寝よう。


*2023年4月7日の活動状況
・もらった足あと:4人
・もらったいいね:0人
・やりとりした人:1人
メッセージが来たのは、商社のリョウさんだけ。
これから一泊で大分に出張です、だけだった。
ディーラーのあっくんは、LINEを入れたけど既読スルー。
ぱっと熱くなったけど、遠距離恋愛は面倒になって、しゅっと冷めたかな。

サポートしてくださった軍資金は、マッチングアプリ仲間の取材費、恋活のための遠征費、および恋活の武装費に使わせていただきます。 50歳、バツ2のまりかの恋、応援どうぞよろしくお願いいたします。