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[鳥取県湯梨浜町] 空き家物件の撮影 Pt.2 - 撮影編

こんにちは、地域おこし協力隊の空き家/移住担当の遠藤です。

空き家物件の写真をカメラでちゃんと撮りたい理由や、機材の基本については、前回の記事 Pt.1の方をまずご覧ください。↓↓↓

撮影した物件写真が一部載っているのはコチラ。↓↓↓

こちらの記事 Pt.2 では、空き家物件を撮影するにあたって覚えておきたいこと撮影方法のコツや注意点などを写真付きで実地に解説します。なお、参考用写真の撮影のために使った物件は実際の空き家ではなく、湯梨浜町のお試し住宅です。

次に、Pt.3の編集編では、撮影が終わった後の工程である Adobeソフトによる編集の方法をスクリーンショット付きで解説して行きます。使用するのは Lightroom Classic と Photoshop です。これらのソフトをダウンロードしていない方のために、簡単なソフトの概説も後ほどします。できる機能の多さに対して値段は安いので、ぜひサブスクってみてください。

それでは早速解説して行きたいと思います。
(使用機材がフルサイズ・ミラーレスのため、それを前提とした記事になってます)


撮影する前準備

カメラとレンズの状態をチェック

写真がお好きな方にとっては基本的な話になってしまいますが、撮影前にカメラとレンズの清掃をしておきます。センサーにごみやほこりが付着していたりすると、当然撮影した写真にも映り込むので、後々編集で消すのが億劫になるからです。

赤丸 : 写真に映り込んだごみ
わかりやすくするため白黒にしてます

とりあえずブロワーレンズペンを持っておくと便利です。センサーやレンズの清掃だけでなく、カメラ本体の電子接点なども定期的に清掃しておくと突然の故障を少しでも防げると思います。

清掃箇所としては、傷をつけないよう注意しながら、レンズ前面にブロワーとペン、レンズ後面にブロワー、センサーにブロワー、背面液晶にブロワー、ファインダーにブロワーとペンという感じです。注意点としては、センサーに直接触れるのは厳禁です。

赤枠 : センサー。触らぬ神に祟りなし。

清掃後は模様のない白い壁などを撮影してみて、撮影した写真にごみやほこりが映り込んでいないかを確認するとベターです。

また、空き家物件の撮影は、所有者 or 管理会社立ち会いの元で行われることが多いかと思いますので、基本的には一発勝負になります。なのであらかじめバッテリーの残量確認をし、あれば予備バッテリーを持って行くと安心です。
冬の空き家は結構冷えるので、厳寒期の寒冷地ではたとえ室内であってもバッテリーが急に残量不足になることもあるかも。冬場に建物の外観写真を撮る時などは注意してください。

カメラの事前の設定確認

物件撮影するにあたって必要となる設定をしておきます。カメラメーカーまたは機種によって設定方法や用語が異なることもありますが、以下では SONY 機を前提としてますので、適宜お使いのカメラにあわせて読み替えてください。

① 記録形式を RAW にする
編集した際にRAWの方がJPGより画質の大きな劣化を抑えられます。また、RAWデータの方が情報量が多く(そのため画像データの容量も大きくなりますが)、補正できる調整幅が広いです。

編集するなら RAW編集しないなら JPG のように、使い分けてもOKです。

RAW で撮影した場合、PCなどに取り込んだ後は現像ソフトが必要になります。後述する Adobe の Lightroom が現像ソフトにあたります。
RAW を現像すると JPG になる、というイメージです。

RAW+JPG でもOKですが、その分画像データの容量も大きくなります。

② グリッドラインを表示する
普段から設定している人も少なくないかも知れません。
物件撮影においては、スナップ写真とは異なり、水平と垂直が取れていること、が重要になります。グリッドラインを表示させておくと、縦横の目安になります。
水平と垂直が出ていれば写真として良くなる、というよりも、写真として違和感がなくなります。「建物は普通まっすぐだ」という思い込みを私たちは持っているがゆえに、それが斜めに映されていたりすると強い違和感を生じます。
基本的には、できるだけ水平と垂直を維持しながら撮影しつつ、編集で後から微調整する、という方針で作業しています。
グリッドラインとともに、カメラ内蔵の水準器をディスプレイに表示しておくのも有効です。

3分割のグリッドライン。方眼や対角+方眼でもOKです。

③ セルフタイマーを設定する
空き家物件を撮りに行く記念に自撮りするため・・・ではありません。
基本的には三脚の上にカメラを乗せた状態で撮影しますが、暗い室内ではシャッタースピードを遅めにすることで、レリーズボタン (シャッターを切るために押す部分) を押す際の振動がカメラ本体に伝わりやすい状態になっています。
そこでセルフタイマーを設定することで、レリーズボタンを押してから数秒後にシャッターが切れるようにしておけば、シャッターを切る時には手をカメラから離している状態なので、レリーズボタンを押した際のブレを防ぐことができます。セルフタイマーの時間は2秒くらいの短めでOKです。

SONY機ではドライブモードからセルフタイマーを設定できます。

下のようなリモコンをカメラに接続することで、レリーズボタンを押さなくても外部リモコンでシャッターを切ることもできます。(が、そこまでする必要はないので物件撮影には使ってません)

実際に撮影してみる

どんな目的で何を撮るか

一般的な物件写真と同じく、外観、玄関、各部屋、台所、トイレ、風呂、庭、廊下、倉庫などを網羅的に撮影することは変わりません。

ただ、近隣の市町村からだけでなく、移住者として遠方から空き家物件を探している人もいますので、周囲の景観や環境で目を惹くものがあれば、それもあわせて撮影しておくと良いです。その際、隣家の表札や車のナンバーなど、個人情報につながるものが映っていれば、撮影後に編集で処理します (やり方は Pt.3 編集編で後述する「編集時の注意」を見てください)。

田舎に住むことに慣れると自然が身近にあることを特別だと思わなくなりますが、都市に住んでいる人には、「家から海が見える」「田んぼが見渡せる」などが案外価値として映ることもあります。都市からの引越しを考えている移住者の目線をもって物件を撮影すると、その物件の良さを取りこぼさないで魅力を伝えられると思います。

また、空き家物件は個人の居住用としてのみ使われるとは限りません。カフェ、ゲストハウス、グループホームや学生寮 (相談を受けたことがあります) として使いたいという人が空き家物件を見ていることもあります。そういうニーズも存在することから、事業用物件としてなら広さや動線はどうだろうか?という視点も持ちつつ物件撮影をする、というのも心がけとして持っていて良いと思います。

三脚の使い方

Pt.1 機材編でも少し書きましたが、暗い室内でシャッタースピードを確保するために三脚を使います。

使用する場合は、脚2本を自分側 (手前) にし、1本を被写体側に出します。

脚を1本前に出す

三脚には水準器がいくつか付いていると思いますので、それを使って水平を出します。三脚の水準器で水平を出し、さらにカメラ本体に内蔵されている水準器を使用すると水平精度はより高まります。

水準器たち

三脚のメリットは、水平を維持しながらシャッタースピードを稼ぎつつ撮影ができることですが、一方でデメリットとしては、セッティングが手間で構図が限られて来ることが挙げられます。

また、空き家のなかは狭かったり、障害物に遮られたりなどして、三脚のスペースが十分でないことも多々あります。ですので、全てのシチュエーションで三脚を使わなければならない、ということではなく、三脚を立てるとベストポジションで撮影できないなと感じる時は、必要に応じて手持ちで撮影することも検討してください。その際は、三脚用の露出設定から手持ち用の露出設定に変更する (手ぶれしないシャッタースピードにするなど) のを忘れずにします。

ちなみに「三脚に乗せて撮影する時はカメラ本体の手ぶれ補正をオフにする」という常識 (?) があります。三脚に乗せて手ぶれ補正をオンにすると逆に写真がブレる、ということみたいですが、個人的な実感として、オンのままでも特にブレない気がしています。それよりもむしろ、手持ち撮影に切り替えた時に手ぶれ補正をオフからオンにし忘れる、ことの方がリスキーな気がするため、三脚に乗せて撮影する時もカメラの手ぶれ補正はオンのままにしています。今後空き家物件の撮影を続けるうちに考えが変わるかも知れませんが・・・。

カメラの露出設定

カメラを三脚に乗せたら、カメラの露出設定をして行きます。

まず、カメラ上部のダイヤルまたはボタンを操作して、絞り優先モード (AモードやAvモードとも呼ばれます) にし、F値を8から11程度に設定します。F値をこれくらいに設定することで、写真の手前から後ろまでピントが均等に合っているように見えます。
F値が低すぎる (F2.8とか) と合焦していない部分がボケすぎますし、F値が高すぎる (F22とか) と回折現象という現象により画質が若干低下します。

ISO感度は、普段オートになっていると思いますが、ここでは ISO100 で固定します。ISO感度を低くすることで、ノイズを抑えます。

絞り優先モードにしているため、シャッタースピードは、カメラがF値とISO感度を考慮して適正露出になるようカメラが計算し、自動設定してくれます。三脚がなければ手ぶれしてしまうような遅めのシャッタースピードになると思います。

この設定にしてみて、イメージしたより暗いな/明るいな、という印象であれば、露出補正をプラス/マイナスすることで写真の明るさを調整します。

ホワイトバランスはオートでOKです。Pt.3 で紹介する Adobe ソフトによる編集時に、ホワイトバランスを調整することもできます。ちなみに、ホワイトバランス以外は撮影時の設定が全てとなり、撮影後にF値やシャッタースピードを変更する、ということはできません。

フォーカスモードは、動かない被写体を撮るため、AF-S (シングルAF) にします。より厳密にピントを合わせたい場合は MF (マニュアルフォーカス) でも構いませんが、空き家物件撮影ではほぼ使っていません。

ところで、三脚から下ろして「手持ちで撮影する時」は、シャッタースピードが遅すぎるため、この設定だと確実に手ぶれします。三脚から手持ちに切り替える時は、ISO感度をオートにする (ISO感度を上げる) ことで、ノイズは発生しますが撮影可能です。F値を小さくすることでもシャッタースピードを速めることはできますが、ピントが部屋内の一部にだけ合っている写真は、物件写真として結構不自然になります。

物件写真で一番避けたいのは「ブレ」。次に避けたいのは「ボケ」。あってもどうにかなるのが「ノイズ」ということになると思います。ブレとボケは編集ソフトでもどうにも修正できませんが、ノイズはある程度除去できます。その方法は、Pt.3 の編集編「ノイズを除去する」で解説します。

部屋のタテ・ヨコを意識して撮る

物件写真は「傾けて撮らない」ということを特に意識します。

斜めに傾いた写真。吐いちゃう。

上の写真は極端にカメラを傾けて撮っていますが、どうでしょうか。

床・壁・天井の角度は本来真っ直ぐであるべき、という固定観念を誰しも持っているため、かなり不自然な写真に見えます。船酔いしそう。物件を普通に撮っていてここまで極端に斜めになることはないと思いますが、建物のタテ・ヨコは意識しすぎてもしすぎることはありません

タテ・ヨコをきっちり撮るに越したことはありませんが、傾きを直すには、Pt.3の編集編で解説する「傾きを修正する」を参照してください。

画面の隅に壁や扉の端が映り込まないように撮る

見本として同じ部屋を撮った写真を2種類用意しました。1枚目は画面の隅に壁の端 (戸当たり) が映っていて、2枚目は映っていません。

画面の左、左上、右にメインの被写体(=部屋)となるもの以外が映り込んでいる
画面四隅にメインの被写体(=部屋)以外のものが映っていない

スナップ写真などでは額縁効果として、メインの被写体を囲むように別の物体を映し込む手法がありますが、このようなケースでは、額縁効果はない方が部屋がすっきりと見えるのではないかと思います。

部屋をなるべく整えて撮る

空き家物件は家財が残されていたり、部屋が乱れがちなことも多いので、軽く部屋を整えてから撮るようにしています。所有者の許諾を得てから、簡単に移動できるものを視界の外に移動させたりする程度です。

また、扉やふすまを開けて撮るか、閉めて撮るかを迷う時があります。

押し入れなどは開いていても霊界の入り口になるくらいで特に良いことはないので、基本的には閉めます (立て付けの問題で閉まらないこともありますが)。

扉は、閉めた方がすっきりとした写真にはなりますが、扉を閉めることで閉塞感が出るとか、部屋自体がシンプルで味気ない感じに映る場合や、部屋と部屋の動線を意識させたい場合などは、扉をあえて開けたまま撮ることもあります。

偉そうなことを書いていますが、押し入れとか扉に共通して言えることは、「単純に閉め忘れてることも多い」です。反省。

電灯をつけるか、自然光か

空き家はそもそも電気が止まっていることも多く、したがって自然光一択なシチュエーションも多いです。しかし、電気が通っている場合は、部屋の電灯をつけるべきかどうかを考えます。

手短に言えば、「電灯と自然光のどちらがよく見えるか」で決めます。

あまりにも部屋が暗い場合は電灯をつけることがありますし、自然光で十分光源が確保されていて、かつ電灯が味気ない白色蛍光灯などの場合はつけません。
「やや暗いな」と感じる程度の光量で、電灯が白色蛍光灯でしたら、個人的にはあまり電灯はつけないことが多いです。

見下ろすように撮らない

同じ部屋を2種類のやり方で撮ってみました。まずはご覧ください。

やや低めから撮る
上から撮る

2枚目はかなり極端に上から撮っていますが、カメラを手持ちで撮ったり、スマホで急いで撮ったりすると、目線が高くなり上から部屋を見下ろすような写真になりがちです。

上から覗き込んで撮るような構図になると、部屋の奥に遠近法で視線が誘導されないため、奥行きが出にくく、空間が詰まったような感じになります。

部屋を広く見せるためには、やや低めの位置から撮影することを意識するのがベターです。

縦構図か、横構図か

どちらで撮るか悩みます。が、ケースバイケースだと思います。実際に縦構図、横構図の写真を見てみましょう。

縦構図
横構図

縦構図では、画面手前に洗い場がどーんと映されていて、「浴室は広め」という広さが強調される写真になっています。

一方で横構図では、浴室は広めであるというメッセージは薄まっていて、「シャワーや鏡などはこんな感じですよ」という設備が強調されています。

どちらかが絶対的に正解であるというよりも、何を映したいかで正解が決まって来ると思います。

おわりに

Pt.3 の編集編に続きます!

(ほんとはPt.2で完結する予定でしたが10,000字を超えてしまったので分割します)