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教科書だけで解く早大日本史 2021文学部 1

 今回から2021年度一般選抜の問題をとりあげていきます。2020年版は社会科学、政治経済、法、人間科学、商の5学部で止まってしまったのもあり、2021年度に関しては文学部から始めたいと思います。

 大隈銅像がある早稲田キャンパス(本キャン)に対し、文学部と文化構想学部はやや離れた(とは言っても東西線の早稲田駅からはこちらの方が近い)戸山キャンパス(文キャン)になります。

 いまは学生会館も文キャンにあるので、本キャンの学部生にもなじみがあるのでしょうが、学生会館が南門側にあった頃は本キャン生にとって文キャンはなかなか訪れる機会の少ないキャンパスでした(所沢や大久保に比べれば行ったでしょうが)。

 さて、文学部はかつては「第一文学部」でした。プロフィールなんかで、「文学部」か「第一文学部」かを見ると年齢がわかりますね。演劇科などもあり、早稲田と文学の深いつながりをもつ大切な学部です。

※公式ページには問題未掲載(執筆時)

※東進データベースは要登録です。

なお、今回から教科書は『山川 詳説日本史B』の日B309を使用します。ページ数などの引用は特に断りがなければこちらになります。

〔Ⅰ〕では考古学分野が出題されました。これは文学部ならではの特徴といえるでしょう。文学部志望者はここも押さえておきたいところです。

◎1 沖縄など琉球諸島について

ア 沖縄県では貝塚から旧石器時代の人骨が数多く発見されている。
イ 沖縄県では港川人、山下町洞人など数カ所で旧石器時代の化石人骨が発見されている。
ウ 沖縄県では旧石器を数多く出土する遺跡が見つかっている。
エ 後期旧石器時代には、海面低下のため沖縄本島から台湾まで陸続きであった。
オ 浜北人は沖縄県で最初に発見された化石人骨である。

 正しい文を一つ選択する問題です。

「現在までに日本で発見された更新世の化石人骨は、静岡県の浜北人や、沖縄県の港川人・山下町洞人など、いずれも新人段階のものである。」(9頁)太字は引用者によるもの

 教科書9頁の記載の通りです。更新世は地質学による区分で氷河期にあたり、旧石器時代にあたります。したがってイが正文でした。また、オが誤文であることもわかります。

 さらに9頁の資料で「更新世末期の日本列島」という地図が掲載されており、沖縄と台湾が陸続きでないこと、旧石器文化の主要遺跡がないことも確認できます。ウ、エともに誤文です。

 アについては教科書では判別できません。本州から九州までが縄文時代だったころ、南西諸島では貝塚文化と呼ばれる食料採集文化が続いていたことは15頁の脚注②に書かれていますが、貝塚から旧石器人骨が多数でてきたことを否定する文はありません。ただ、主要遺跡がないことからも判断はできそうです。

 正文を教科書本文で特定できましたので◎評価となります。

〇2 縄文時代の各種の漁労活動について

ア 網を利用した漁法は縄文時代には発達しなかった。
イ 貝塚で釣針が見つかることはないので、銛を使った漁をしていたと考えられる。
ウ 縄文海進があったため、東京湾岸には貝塚は見つかっていない。
エ 弥生時代になると農耕社会へと変化するため、貝塚は全くなくなってしまう。
オ 貝塚は漁労活動の道具だけでなく、ニホンシカやイノシシの骨、埋葬された人骨が出土することもある。

 正しい文を一つ選択する問題です。

また、海面が上昇する海進の結果、日本列島は入り江の多い島国になり、漁労の発達をうながした。このことは、今も各地に数多く残る縄文時代の貝塚①からわかる。釣針・銛・やすなどの骨角器とともに石錘・土錘がみられ、網を使用した漁法もさかんにおこなわれていた。また、丸木舟が各地で発見されており、伊豆大島や八丈島にまで縄文時代の遺跡が見られることは、縄文人が外洋航海術をもっていたことを物語っている。(13頁)太字は引用者
①「…土器・石器・骨角器などの人口遺物のほか、貝殻に含まれるカルシウム分によって保護された人骨や獣・魚などの骨が出土し、…。なお、日本の近代科学としての考古学は、1877(明治10)年にアメリカ人のモースが東京にある大森貝塚を発掘調査したことに始まる。(13頁 脚注①)

 貝塚の文の前段には狩猟の主な対象としてニホンシカとイノシシがあげられており、脚注にある獣の骨として想定できることからオが正文としてよいでしょう。

 なお、ア、イ、ウは引用の通り誤文です。エについては教科書では判断できません。貝塚は大部分が縄文時代のものですが、弥生時代になっても漁労活動がなくなるわけではないので、貝塚がまったくなくなくということはないでしょう。

 脚注に依拠して正解にたどりつきましたので〇評価です。

×3 縄文時代の「海峡を越えての往来」について

ア 腰岳産の黒曜石が、朝鮮半島に運ばれて石器に用いられている。
イ 関東地方で製作された縄文土器が、北海道の遺跡でも多数出土する。
ウ 北海道白滝産の黒曜石で作られた石器が、青森県やサハリンで出土している。
エ 糸魚川産のヒスイが、北海道にも運ばれている。
オ 秋田県で産出したアスファルトが、北海道に運ばれ接着剤として用いられている。

 誤文を一つ選択する問題です。

 黒曜石の分布状況は14頁の「日本列島におけるおもな黒曜石産地の分布」という地図資料で確認できます。解説では「黒曜石は、石器の原材料としてさかんに用いられた」とあり、九州の腰岳(佐賀県)から朝鮮半島へ渡っていること、北海道白滝から青森三内丸山、サハリンへ渡っていることが確認できます。

 教科書ではここまでです。用語集では「ひすい(硬玉)」の項目で新潟県姫川が産地だということはわかりますが、北海道へ運ばれたことは書かれていません。また、「アスファルト」が北海道、秋田、山形、新潟で産出し接着剤として使われたことも書かれています。秋田産が北海道へ運ばれたかどうかは書いてありませんが、関東地方でみつかっており交易の証拠となることは指摘してあります。黒曜石の交易網のことを考えれば、ひすいやアスファルトが海峡を越えて運ばれていたと考えるのが自然でしょう。

 誤文はイでよいでしょう。土器が広範に分布したという点では、北海道では北東北と同系統の円筒土器が多数出土していますが、この分布に関東地方は含まれていません。交易なども含め、北海道のホームページで確認できます。

※なお、東進データベースでは正解が「オ」となっています。大学発表の解答例、代ゼミ、河合では「イ」が正解とされています。オが正文であることは上記リンクの北海道のページで確認できます。

 教科書、用語集でも正解にたどりつけませんでしたので×評価です。

 今回はここまでにします。

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