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月の本質を考える

私が最も月という天体の本質を突いていると感じるのは「心理占星術の視点で捉える月・深層心理から促される本能的第一欲求としての月・母親との関係を通して認識する月」です。たとえばリズ・グリーンは次のように月を語ります。「月はへその緒の繋がりがもたらす安心感の代替物としての情動的調和や本能的親密さへの切望が最大になる場所を象徴している」ーー


私はありのままの姿でここにいてもいい、私はありのままでいても世界から愛され受け入れられているーーその本能的安心感の充足は「健やかな心身を保ち、創造的で喜びある人生を歩んでいく」上で、まず必要とされるもの、私たちの情動的土台となるものです。この第一段階が満たされていないと、いつも自分に対する欠如感と不安を抱え、何をしても足元が覚束ない「危なっかしい人・非常に不安定な人」になります。



そして、誰かや何かからその欠如感を埋めてもらおう、外側からエネルギーを与えてもらおうとするので、太陽(自発的自己・生命力・創造性)が隠れてしまいます。行動のすべてが自己防衛であり自己保存でしかなくなるのです。本人はあまりそれを意識していないことも多いですが、恋人や親友、周囲の人はそれを如実に感じ取ります。その状態で親密さを示してくれる他者の多くは、途中で自分の身の危機感と限界にぶち当たり離れていくか、共依存に陥りお互いに出口を失うかーーという結末になることも少なくないでしょう。



私はありのままで受け入れられているという絶対的感覚、私は何を証明する必要もなく何の不足もないのだーーこの誰もが渇望する本能的安心感の在り処を出生時の月が示しているのです。



でも、ここで月の二重性が生じてきます。私たちは渇望するものを決して手に入れることができないーーというパラドックスが存在しています。渇望とは「私にはそれが欠けている、持っていない」と感じているからこそ、湧き上る感情です。自分で「無い」と思っているものは「無い現象」を生み出します。



「映し鏡」という言葉があります。これは「映し出されたものから学びなさい」という意味です。月に照らしだされた自分自身の姿・渇望を見て己を知るということです。昔の人は「月を直接見てはいけない」と言い、水面に映した月を愛でました。これは月を追い求めてはいけない、追い求めるとそれは逃げていく、それ以前に魅入られてしまうかもしれない・・・だから、その反対側からアプローチせよということに感じられます。昔の人は真実を知っていたのかもしれませんね・・・



本当は無いわけではありません。あまりにそれを渇望しているから、不足・自我の危機に感じるだけなのです。私たちは何かに囚われすぎると、そのもの自体をありのまま認識できなくなるのです。とても美しい容姿を持っているのに、「私の鼻は誰よりも醜いのだ」と信じている女性は、永遠に美しさを手に入れられないでしょう。いくら整形をしても満足できない心理は渇望と囚われから生じるからです。



それと同じことがすべての出生時の月に起こります。だからこそ、一旦手放すということです。強い囚われとしがらみを手放すのです。月がそのような二重性を抱えているからこそ、反対側(反転星座・反転ハウス)からアプローチせよということです。占星術における「反転」はもうひとつの姿です。牡羊座と天秤座は同じエッセンスの二つの側面です。双子座と射手座、蟹座と山羊座、乙女座と魚座・・・すべてがそのように「裏表・二極」で存在しています。



たとえば、出生時の月が蠍座であれば、「誰かとの深く揺るぎない特別な絆、繋がり」こそがあなたの第一欲求の在り処です。自我が本当に欲しいものがそこにあります。たとえば、出生時の月が双子座であれば「知的で文化的で自由に情動が流れる繋がり」があなたの第一欲求の在り処です。たとえば、出生時の月が牡牛座にあれば、「物質的かつ環境的安定と独自の価値観と感覚を認めてもらえること、価値観(自分にとって大切な値打ちあるもの)の共有ができる繋がり」があなたの第一欲求の在り処です。



そして、幼い時、それを母親との関係性の中に強く求めていたはずです。母親から何よりもそれを与えて欲しかったのに・・・でも、それは得られません。母親(他者や世界との情動的関係性のひな形)から得られないから、自分で手に入れるしかないのです。そのためには母親からの心理的かつ物理的自立が不可欠です。でも、ここで大多数の人が超えられない壁を体験します。



つまり、出生時の月があなたに苦しみや欠如や不安定さや囚われを与えるか、本当の安心感を与えるかは、まずは母親からの自立の度合いで決定されます。月は多重構造です。月がどんな作用を与え、どんな天体になるかは人によって異なります。つまり、月はレイヤー構造なのです。私たち自身の在り様によって、それを反射しては見せる形を変えていきます。(だから、どんな月解釈も間違いではありません。月の多面性の一側面を表現しています。)



母親から真の自立を果たしている人は、実際に月の悪影響を受けません。かなり少数ではありますが、人生の早い段階で月の囚われからフリーになる人もいます。そのような方は例外なく、太陽の輝き方・パワーが圧倒的です。多くの場合、そのような方たちは幼い時に両親に頼れなかった環境で育っています。相当な貧困状態であったり、心理的自立を要求されていたということです。



自分自身の弱さと環境に負けるか(月)、爆発的生命力・創造力を出すか(太陽)の二者択一の過酷な運命を、人生の早い段階で超えてきたからこそ、自分が第一欲求として渇望しているものは「外側からは決して得られない」と心底知っているのです。(一種の悟り・圧倒的覚悟ですね)だから、自分で(太陽で)それを手に入れています。自分が欲しいもの、必要なものは、すべて自分で生み出すことができると知っているのです。



そのような人が身近にいたら、あなたは超ラッキーです。その人のエネルギーを真似てみましょう。その人の視点を取り入れてみましょう。エネルギーは転写が可能なんです。そして、すべての太陽はそれ(周囲も明るく照らすこと・誰かの月を温めて癒すこと)を望んでいます。



美しきかな、太陽と月・・・
世界は安心しても大丈夫な場所です。地球は美しく母なる受容性に溢れ、二面性をまるごと受け入れてくれる星なんですから。

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